著者
佐藤 圭史
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

平成22年度は、優秀若手研究者派遣事業にもとづき英国グラスゴー大学・中東欧研究所に研究滞在した。ホスト教官であるデヴィット・J・スミス教授のもと、ソ連邦末期における、北東エストニア地域を中心としたロシア語話者による自治領域創設問題を研究した。スミス教授の提案に従い、2009年にActa Slavica Iaponica誌に掲載された、資源動員論にかんする自身の論文を発展させる形で研究を進めた。これにともない、資料収集のため、2010年2月と2011年3月にエストニア共和国でフィールドワークを実施した。2度のフィールドワークの実施と、グラスゴー大学滞在中のスミス教授の指導によって、英国派遣終了時には「北東エストニア地域における自治領域創設問題」と題する論文を、概ね完成させるにいたった。優秀若手研究者派遣事業での研究テーマとは異なる分野での研究でも発展がみられた。一つは、ソ連末期のソ連史において決定的に重要な事件である、独ソ不可侵条約付属秘密議定書の公開をめぐる問題である。いま一つは、旧ソ連空間の非承認国家における和平交渉にかんする問題である。モルドヴァでは、1993年から紛争解決の交渉にあたっているOSCE、モルドヴァ共和国統一省での資料収集とインタヴューを中心にフィールドワークを実施した。ここでの研究結果は、グラスゴー大学とドイツのギッセン大学が共同開催した言語問題にかんする国際会議で発表した。
著者
綿貫 豊 佐藤 克文 高橋 晃周 岡 奈理子 高田 秀重
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

海鳥の移動と体組織の汚染物質をつかって汚染分布をモニタリングする新しい手法を開発した。ミズナギドリ類2種130個体以上をバイオロギング手法で追跡した。繁殖期において、尾腺ワックス中の残留性有機汚染物質濃度は異なる海域で採食する個体毎に異なり、PCBs,DDTs,HCHsでそのパタンが違った。越冬中に生える羽の水銀濃度にも、異なる海で越冬期を過ごす個体毎で差があった。これらの地域差は汚染物質の放出源と拡散によって説明できた。この手法によって海洋汚染を海洋区プラニングで必要とされる空間スケールで測定できる。
著者
蟹江 章
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.95-104, 2007-01-25

カネボウやライブドアなどの粉飾が相次いで明らかになり,財務諸表監査に対する不信感が高まっている。公認会計士・監査審査会による検査の結果,わが国の大手監査法人における監査の品質管理に重大な問題点があることが指摘されている。そして,これに基づいて,金融庁から監査法人に対して業務改善指示が出される事態となっている。 こうした監査不信を増大させるような状況を改善するために,日本公認会計士協会や金融審議会などが様々な角度からの対応策を発表したり検討したりしている。例えば,監査法人の強制的ローテーションや監査法人に対する刑事罰の適用などがあげられる。本稿では,こうした対応策が,監査に対する信頼回復にどの程度の有効性をもつか,そしてまた,より有効な対策となるために何が必要かを批判的に検討した。
著者
喜田 宏 岡崎 克則 迫田 義博 河岡 義裕 高田 礼人 伊藤 壽啓
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

新型ウイルスの亜型予測に資するため、鳥類および動物インフルエンザウイルスの疫学調査を実施した。ロシア、モンゴル、中国および北海道で、渡りカモの糞便3,987検体を採取し、亜型の異なるインフルエンザAウイルス212株を分離した。宮城県のブタからH1N2ウイルスを分離した。北海道大学を含む動物インフルエンザセンター5機関で25株のH9ウイルス株を交換し、解析を共同で開始した。渡りカモのウイルス遺伝子を比較解析したところ、日本で分離されたH9インフルエンザウイルスと1996年に韓国でニワトリに被害をもたらしたウイルスが近縁であった。1995~1999年に中国のニワトリから分離されたH9N2ウイルスの遺伝子解析の結果、渡りカモのウイルスと異なる亜群に分類され、ノイラミニダーゼに欠損が認められた。内部蛋白遺伝子は1997年の香港の強毒H5N1ウイルスに内部蛋白遺伝子を供給したH9N2ウイルスの系統とは異なった。香港のブタ、カスピ海のアザラシの抗体調査を行い、インフルエンザウイルスが感染した成績を得た。インフルエンザウイルスの異種動物間伝播機構を明らかにするため、ニワトリ雛の気嚢継代によって得たニワトリ馴化株の遺伝子再集合体を作出し、ニワトリ肺における増殖性を調べた。HA遺伝子を入れ替えた遺伝子再集合体の増殖性に変化はなく、他の因子が関与することが示唆された。新型ウイルスの出現に備え世界の動物インフルエンザの疫学調査とワクチン候補株を系統保存・管理するプロジェクトをWHOに提案し、各国とのネットワーク形成に支援が得られることになった。
著者
迫田 義博 青木 博史
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

豚コレラウイルスの病原性発揮に関与すると考えられている自然免疫回避機構を分子レベルで解明することを目的とし、ウイルス非構造蛋白N^<pro>の点変異体や欠損体を作製し、1型IFNの産生抑制に必須なアミノ酸領域を決定した。このアミノ酸の変異は、(1)C112R、(2)D136N、(3)H5Y、L8F、P17Sのいずれかであることがわかった。また、この自然免疫の調節に関与するN^<pro>上のアミノ酸の変異は、豚における病原性発揮の要因の1つであることを明らかにした。
著者
山本 哲生 墻内 千尋 荒川 政彦 渡邊 誠一郎 渡部 直樹
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

惑星系円盤におけるダストの衝突進化と熱進化の素過程,観測結果を読み解くうえで重要な光学に関する研究,ダスト生成とその後続解析実験,ダスト衝突実験,氷表面における分子反応等,物質進化の総合的研究を展開した.加えて,この分野の研究基盤形成にも貢献した.研究グループの交流を促進し,国内の関連研究グループの組織化を図り,研究コミュニティー形成を積極的に推進した
著者
戸田 正憲
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究は、ニセヒメショウジョウバエ属を中心としてショウジョウバエ科の系統関係を形態形質により解析することをめざして、1)ニセヒメショウジョウバエ属の単系統性を検討する。2)ニセヒメショウジョウバエ属の各種群間及び本属とショウジョウバエ亜科の主な分類群間の系統関係を明らかにすることを目的とした。ショウジョウバエ科10属41種を66形質について分岐分析した結果、次の結論が得られた。1,ニセヒメショウジョウバエ属は多系統群である:fenestrarum種群、nigricolor種群、miki種群、denticeps種群は一つ単系統群にまとめられるが、tenuicauda種群はトゲオショウジョウバエ属と一緒に別の単系統群を形成する。2,ニセヒメショウジョウバエ属の5つの群群のうち、fenestrarum種群、denticeps種群は単系統群であるが、nigricolor種群は2つの別々の単系統群に分割され、tenuicauda種群は側系統群である可能性がある。また、miki種群の単系統性は今のところ結論できない。3,fenestrarum種群、nigricolor種群、miki種群は単系統群を形成し、denticeps種群と姉妹群の関係にある。4,この4種類から成る単系統群はシマショウジョウバエ亜属と姉妹群の関係にある。5,フサショウジョウバエ属とヒメショウジョウバエ属はそれぞれ単系統群である。6,ショウジョウバエ亜科の中では,まず最初にマメショウジョウバエ属が分岐した。しかし、その後の単系統群(ニセヒメショウジョウバエ属+シマショウジョウバエ亜属、トゲショウジョウバエ属+tenuicauda種群、ハシリショウジョウバエ属、フサショウジョウバエ属、ヒメショウジョウバエ属、ヒョウモンショウジョウバエ亜属、ショウジョウバエ亜属)の分岐関係については、まだ結論できない。
著者
佐藤 文昭 見上 彪 林 正信 喜田 宏 桑原 幹典 小沼 操 遠藤 大二 児玉 洋 久保 周一郎
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1987

本研究の主眼は有用な動物用リコンビナント多価ワクチンの作出に必要な基磯実験の実施にある。リコンビナント多価ワクチンはベ-スとなるベクタ-ウイルスとワクチンの決定抗原遺伝子を結合することにより作出される。ベクタ-ウイルスとしてはマレック病ウイルス(MDV)と鶏痘ウイルスに着目し、それらのチミジンキナ-ゼ遺伝子中に挿入部位を設定した。また同時に、MDVの感染から発病の過程に関る種々の抗原遺伝子の解折とクロ-ニングを行った。すなわち、ワクシニアウイルスをベ-スとしてNDVのHN蛋白遺伝子を組み込んだリコンビナントワクシニアウイルスを作出し、NDV感染防御におけるHN蛋白に対する免疫応答が感染防御に重要な役割を果たすことを明かにした。加えて、インフルエンザウイルスおよびニュ-カッスル病ウイルスの感染防御に関る抗原遺伝子の解折により、抗原遺伝子群の変異を検討した。続けて上記のウイルスベクタ-に外来遺伝子を組み込み、リコンビナント多価ワクチン実用化への可能性を検討した。すなわち、ニュ-カッスル病ウイルス(NDV)のヘマグルチニンーノイラミニダ-ゼ蛋白(HN蛋白)とマレック病ウイルスのA抗原の遺伝子をバキュロウイルスベクタ-に組み込み、生物活性と抗原性をほぼ完全に保持した蛋白を得ることができ、ワクチンとしての使用に有望な結果を得た。MDVの単純ヘルペスウイルス(HSV)のB糖蛋白類以蛋白遺伝子をバキュロウイルスベクタ-へ組み込み、高純度の蛋白を得た。さらに、本研究では、将来非常に有用なワクチンを作出するための基磯的な知見とリコンビナント多価ワクチンの実用化を近年中に可能にする実験結果も含むといえる。これらの有用な知見により、本研究は初期の目的を達成したばかりではなく、リコンビナントワクチン実用化への次の目標である野外試験による効用の証明のためにも一助となったといえる。
著者
喜田 宏 清水 悠紀臣 岡部 達二 関川 賢二 見上 彪 笠井 憲雪 小野 悦郎 大塚 治城 喜田 宏
出版者
北海道大学
雑誌
試験研究(A)
巻号頁・発行日
1993

1.オーエスキー病ウイルス(ADV)の前初期(IE)蛋白IE180の機能ドメインを解析した結果、初期および後期遺伝子の転写活性化に関与する領域、IE遺伝子の転写抑制に関与する領域および核への移行シグナルが明らかになった。2. ADVの初期蛋白EP0が感染細胞の核に局在し、IE、初期TKおよび後期gX遺伝子の転写を増強することが明らかになった。この転写増強作用には、EP0分子のN末端に存在するRINGfinger領域が必須であり、酸性アミノ酸を多く含む領域も関与することが判明した。3.蛋白工学手法によって、ADVのIE遺伝子の転写抑制因子を作出した。これら因子の転写調節作用を解析し、以下の成績を得た。1) IE180のDNA結合ドメインとヒト単純ヘルペスウイルスのトランスアクチベータ-VP16の結合ドメインとのキメラ蛋白は、ADVのIE遺伝子の転写を抑制した。このキメラ蛋白はウイルスの増殖を著しく阻害した。2) IE180およびEP0のdominant-negativemutantはウイルスの増殖を抑制した。4.ウイルスの増殖を最も強く抑制した3-1)キメラ蛋白遺伝子をC57BL/6マウス受精卵にマイクロインジェクション法によって導入した。1系統のF1マウスに本遺伝子が導入されたことを確認した。現在、このF1マウスを用いてトランスジェニックマウスの系統を確立しつつある。今後、系統化されたマウスが本遺伝子を発現していることを確認してウイルス感染実験を行う予定である。
著者
久保 周一郎 八木 康一 小山 次郎 広瀬 恒夫 高橋 迪雄 伊沢 久夫
出版者
北海道大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1987

獣医学は本来,総ゆる動物に係る医学である. 今日の獣医学は幾多の曲析を経て多くの学際領域をもつ. このことは獣医学の多様性と表現され,多様化の傾向は諸外国に比ベ我が国で著しい. 本研究の目的は,獣医学の在り方について獣医学およびその関連領域の研究者が議論し,21世紀に対応できる獣医学の未来像を構築することである. このため,検討すベき領域および分担者を以下のように決め,各領域から見た獣医学の内容を調査分析し,その成果を昭和62年8月25日北海道大学学術交流会館において全国から参集した獣医学会員(約350名)を対象に公開シンポジウムを開催した. 1.久保,伊沢班員(北大・獣),高橋班員(東大・農),広瀬班員が(帯畜大)は獣医学の現状を分析し,比較医学および比較生物学としての獣医学および臨床分野における高度情報化システムの確立の重要性を強調した. 2.深沢利行班員(九大・農),羽田野六男班員(北大・水産),八木班員(北大・理)は動物性タンパク質確保とその生産動物の疾病防除に関し,畜産学・水産学および獣医学の研究組織の連帯の確立を指摘した. 3.日高敏隆班員(京大・理)は伴侶動物および産業動物の精神衛生について動物行動学の関与の必要性を強調した. 4.加藤巌班員(千葉大・医),小山班員(北大・薬)は実験動物あるいは動物実験の分野の発展に対する獣医学のより一層の貢献を要望した. 5.伊藤浩司班員(北大大学院環境科学)は環境科学および生態学の立場から獣医学における動物の生命倫理の確立を提案した. 6.葛西道生班員(大阪大・基礎工)は21世紀の獣医学の発展のため,獣医学領域における生物工学の研究体制の早期確立を強調した.以上の成果を総合し, その詳細を昭和62年度科学研究費総合研究(B)成果報告書(様式1, 冊子)に紹介すべく準備中である.
著者
伊沢 久夫 根路銘 国昭 児玉 道 見上 彪 藤原 公策 久保 周一郎 KODAMA Michi
出版者
北海道大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1984

ボツリヌス中毒:動物のボツリヌス中毒の原因毒素であるボツリヌス菌【C_1】型およびD型毒素、その重鎖および軽鎖を精製して單クローン性抗体(以下MAb)を作出し、本邦で保存する菌株の全ての毒素と反応させ、毒素が4つのグループに別れることを明らかにした。マウス肝炎:1株のマウス肝炎ウイルスに対するMAbを作出し、1部MAbはウイルスポリマーと、残るMAbはウイルス核酸と特異性を示すこと、また両MAbは他のマウス肝炎ウイルス株とも反応することを見い出した。マレック病:本病による腫瘍に由来する株化細胞の表面抗原に対するMAbを作出した。MAbは野外発病鶏の腫瘍細胞とも野外飼育鶏の末梢血細胞とも大差なく反応し、陽性例にあっても腫瘍また末梢血細胞を問わず陽性細胞の出現率は低率であることが分った。豚コレラ(以下HC):ブタ白血病由来腫瘍細胞とHC免疫豚の系、また精製HCウイルス免疫マウス脾細胞とP3U1細胞の系では融合は不成功に終ったが、HC感染豚腎細胞免疫マウスの脾細胞を供試し抗体産生細胞を最近樹立した。インフルエンザとパラミクソウイルス感染症:インフルエンザウイルスのHAとNAに対するMAbを用い、本ウイルスの抗原変異と組換え体の起源を、またパラミクソウイルスのMAbを供試して本ウイルスのエピトームの安定性と抗原変異を明らかにした。ウシ白血病:作出した地方病性ウシ白血病腫瘍関連抗原のMAbは、野外発病牛の腫瘍細胞全例と反応し、本病の生前診断や予知に使用しうる可能性を示唆した。伝染性膵臓壊死症:作出した抗体産生細胞はいずれも継代不能あるいは微生物によるコンタミネーションのために維持しえず、研究は不成功に終った。
著者
喜田 宏
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

新型インフルエンザウイルスの出現機構に関する我々の仮説を実証し、さらに、今後出現し得る新型ウイルスの抗原亜型の予測に資するため、ウイルス遺伝子を詳細に解析するとともに、豚を用いて感染実験を実施し、以下の成績を得た。1.中国南部の家禽から分離されたH3インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)の抗原性ならびにその遺伝子を詳細に解析した。得られた成績から、中国南部では家禽が渡り鴨由来ウイルスを豚に伝播する役割を果たしたことが分子生物学的に裏付けられた。2.由来宿主を異にするH3およびH1インフルエンザウイルスに対する豚の感受性をしらべた。実験の結果、豚の呼吸器は豚および人のインフルエンザウイルスのみならず、渡り鴨および家鴨のH3ウイルスにも感受性を示すことが明らかになった。さらに、豚の呼吸器では容易に遺伝子再集合ウイルスが産生されることが実証された。3.H2ーH13HA亜型の鳥類由来インフルエンザウイルスの豚における増殖と抗体応答をしらべた。実験の結果、これまで鳥類のみに分布するとされていた多くの抗原亜型のウイルスが豚に感染し、その呼吸器で増殖することが明らかとなった。またこれらの鳥類由来ウイルスに感染し、鼻汁中にウイルスを排泄した豚の血清はホモのウイルスの血球凝集を阻止しなかったが、明らかな血中抗体応答がELISAによって検出された。以上の成績は何れの抗原亜型のHAをもつウイルスも豚に導入され得ること、ひいては新型ウイルスとして今後人の間に出現する可能性があることを示唆している。また血球凝集阻止試験による血清疫学成績が必ずしも正確な情報を提供しないことが示された。
著者
水波 誠
出版者
北海道大学
雑誌
電子科学研究 (ISSN:13402455)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.94-95, 1993

研究(電子科学研究所第1回研究発表会要旨 平成5年10月21-22日)
著者
良村 貞子 下田 智子 小笠原 克彦 岡崎 光洋
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

高精度TV会議システムを活用し、大震災で被災した宮古、気仙沼、大船渡、石巻を含む全国9か所の調剤薬局に送信機器を、大学に受信機器を設置し、実務経験10年以上の看護職者を相談員として遠隔健康相談を行った。相談の内容は血圧、体重コントロールや食事、育児、皮膚のトラブルおよび糖尿病の自己管理など多様であった。遠隔健康相談員の確保は容易でなかった。健康相談では個人情報保護が重要となるため、新たなクラウドを活用し、他者がアクセスできない状況で、潜在看護職者の協力を得て、在宅での受信時にiPadを活用し、問診、視診が実施可能か検証を行った。iPadは健康相談には十分活用可能であることが明らかとなった。
著者
河本 昇 石川 健三 中山 隆一
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

1.グループ代表者の河本は、ツイストされた超対称理論とトポロジカルな理論の量子化の関係を明らかにした。このツイストの操作をディラック・ケーラーツイストと命名し2次元ではN=2, 4次元ではN=4の拡張された超対称性を持つ超対称ヤング・ミルズ理論に導かれることを示した。この定式化を格子上に拡張し、格子上で厳密に超対称性を保つ定式化を提唱した。特に格子上で差分演算子がライプニッツ則を満たすように新たな非可換性を導入した。また拡張された交換関係を持つ定式化がこの定式化と同等であることも明らかにした。具体的には2次元N=2のBF理論、ベス・ズミノ理論、超対称ヤング・ミルズ理論、更に3次元N=4の超対称ヤング・ミルズ理論に適用した。超対称性が格子上で厳密に成立していないと言う批判に対し、この批判が当たらないことを現在示そうとしている。2.研究班メンバーの石川は高移動度の高いランダウ準位で発現している非等方的量子ホールガス状態を、同氏らが開発したフォンノイマン格子表現での平均場理論に基づいて解析し、特異な中性零エネルギー状態の性質解明や、周期的な外場中での安定な相状態の探索、量子ホールガス状態による新たな量子ホール領域の解明等に成功した。また、波束粒子の散乱による、運動量と位置との両変数を近似的に観測する振幅を定式化した。3.研究班メンバーの中山は超弦理論に現れる非可換空間に関する研究を行った。2次元非可換球面上の非可換積の新しい表現を見つけ、4次元非可換球面上の場の理論の構成を行った。また、非可換トーラスの解析を行った。当研究班では、通常の研究推進に加え、海外との共同研究及び、冬の学校として組織する研究会の運営の為の資金としてこの特定研究補助金が役立った。特に1.の研究においては、イタリア、トリノのD'Adda氏と超対称理論の格子上での定式化に関する共同研究が行なわれ、研究交流資金として重要な役割を果たし、大いに成果が上がった。
著者
田中 愼一
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

夏季休業期の8月7日〜18日に岡山・鳥取・神戸で、前期試験期の9月3日〜14日に東京・名古屋で、それぞれ11泊12日の資料調査旅行をおこない、特に岡山大学附属図書館・岡山市立中央図書館・鳥取県立図書館・神戸市立中央図書館・東京大学経済学部図書室・東京都立中央図書館・愛知県図書館・名古屋市鶴舞中央図書館で有益な資料を閲覧し一部を複写により収集した。あわせて22泊24日にわたったこの資料調査旅行で地域に密着した肥料経済史研究を東京に即しておこなうのが時間的にみて効率的と判断し、秋以降の調査地をあえて東京に限定せざるをえないものと決心した。そして10月28日〜11月2日、12月16日〜20日、1月8日〜13日の3回、あわせて14泊17日の資料収集旅行を東京で行ったのである。東京在住の方からすれば、わずか半月の短期間でいかほどの成果があるものか疑問視もされようが、わたくしとしてはいまだ経験したことのないような資料収集の喜びを味わうことができた。資料発見への道筋をひらいてくれた偶然性の楽しみを感得しえたという気すらした。名古屋でもそういうことがあったが、東京ではその感を深くした。比較的短い滞在期間でも集中的におこなえば資料収集の成果少なからずとの確信を得、またそれを実践した。7万円に達した複写費によって収集しえた資料にもとづき東京を中心とした戦前期、とりわけ明治・大正肥料経済史にかんする実証的研究を数本の論文という形で来年度から執筆できるものと判断している。すでに発表した拙稿「明治肥料経済史の一断面」を発展させる下肥経済にかんする実証的研究のための資料を今回の科研費によって発見し、一部を収集しえたことに感謝もし、それにむくいるべく資料分析にもとづく研究成果をあらわしていくつもりである。
著者
亀山 慶晃
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

水生植物は陸上の植物に比べると無性繁殖への依存性が強く、特に浮遊性の水生植物では植物体が断片化することによるラメット数の増加や、水鳥による長距離散布が集団の維持に大きな役割を果たしている。昨年度までの研究によって、浮遊性の水生植物タヌキモはイヌタヌキモとオオタヌキモの雑種第一代であり、有性繁殖能力は完全に失われているものの、広い範囲に、かつ両親種とは異なる生育地に分布していることが明らかとなった(Kameyama et al.2005)。本年度は、タヌキモがどのように形成され、集団を維持しているのかを明らかにするため、北海道苫小牧市と青森県津軽平野の計33の湖沼からタヌキモ類を採取し、AFLP分析をおこなった。その結果、1)タヌキモ類3種の各集団は大部分が単一のクローンで形成されていること、2)各クローンは複数の集団に認められ、特に津軽平野のタヌキモ5集団は全て単一のクローンであり、同一のクローンが苫小牧市にも分布していること、などが明らかになった。また、親種であるイヌタヌキモとオオタヌキモは完全に異所的に分布しており、両者の遺伝子型をどのように組み合わせても現存するF1雑種、タヌキモの遺伝子型を得ることはできなかった。これらの結果から、1)タヌキモは気候変動が激しかった時代、本来は異なる環境に生育するイヌタヌキモとオオタヌキモが偶然出会ったことで形成され、2)殖芽や切れ藻による無性繁殖によって生き残ってきた、と考えられる。不稔のタヌキモが長期間に渡って集団を維持している背景には、雑種強勢による旺盛な無性繁殖能力、水鳥による長距離散布、交雑による新たな環境への適応、などが関与しているものと推察された。