著者
寺町 信雄
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.1-21, 2009-03-12

1996年-2005年における日中間の貿易構造の特徴を議論する。使用する主なデータは,UNCTAD/WTOの国際貿易センター(ITC)による「SITA 1996-2005」のSITCの5桁の貿易データである。 先ず日中間貿易の総額について概観した後,SITC大分類より日中間貿易の純輸出比率曲線を導出し,それを用いた議論を行う。次にSITCの5桁の貿易データを用いて,一方向貿易・双方向貿易・垂直的産業内貿易・水平的産業内貿易・単価が異なる双方向貿易に仕分けし,一方向貿易に比べて双方向貿易および垂直的産業内貿易の割合が徐々に上昇していること,対中輸入より対中輸出の方がこの傾向が強いことを明らかにする。また,SITC貿易データを国連の用途別のBEC分類の貿易データにコンバートして,産業用資材と部品の中間財と,資本財と消費財の最終財に区分した日中間の貿易構造についても明らかにする。続いて,一方向・双方向・垂直的・水平的などに仕分けしたSITC分類の品目であると同時に,用途別のBEC分類の品目である仕分けを行うことによって,日中間の貿易構造の詳細な特徴を新たに追加する。最後に,まとめと今後の課題について述べる。
著者
江淵 直人 中塚 武 西岡 純 三寺 史夫 大島 慶一郎 中村 知裕
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

オホーツク海および北西北太平洋親潮域の高い海洋生物生産性を支えている物質循環のメカニズムを,海洋中層(400~800m)の循環と鉄の輸送過程に注目して,現場観測と数値モデルによる研究を行った.その結果,オホーツク海北西大陸棚起源の鉄分が,海氷の生成とともに作られるオホーツク海中層水によって移送され,千島海峡で広い深度層に分配された後,西部北太平洋に送り出されている様子が定量的に明らかとなった.
著者
鈴木 賢 高見澤 磨 宇田川 幸則 崔 光日 石井 知章 坂口 一成
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

2009年段階で正式に登記された社会組織は43万1069団体(うち社会団体23万7847、民営非企業事業体19 万479、基金会1843)に上るが、これを遙かに上回る未登記の団体が闇で活動しており、不安定な法的状態にある。設立に当たっての業務主管部門での設立許可と民政部門における登記という二重の管理体制を取ることにより、法人格取得へのハードルを高くしていることがその背景にある。結社については「許されていないことは、禁止される」というのが実態であり、憲法の結社の自由規定とは裏腹に「結社禁止」が原則となっている。目下、社会団体法制の整備に向けて議論が続いているが、いかに社会団体の活性化を図りつつ、他方でその反体制化を避けるべく上からの政治的統制も緩めないという二律背反を具体的な制度に表現するかは容易な課題ではない。厳しい法制環境、共産党組織による統制のなかでもすでに民間団体は、市場経済化のなかで多元化しつつある利益の調整機能、社会の自律調整機能、行政には困難なサービス提供機能、ある種の政治的「参加」機能、社会的公益機能を果たすことによって、政治の民主化を欠く中国で一種の緊張放散的効果をもたらしている。
著者
小山 靖人
出版者
北海道大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-04-01

光学活性な有機化合物と無機化合物とを合理的に複合化することで、有用な機能性素子・素材が創出される。不斉有機金属触媒、分離分割材料、円偏光発光性材料などがこれらの代表的な例である。不斉場と無機物の合理的な複合化は、今後の革新的な素子・素材創製において重要なコンセプトであると言える。らせんポリマーは、その繰り返し構造間で生じる「空孔」や「溝」といった光学活性低分子には存在しない特異な不斉場を有する。そのためラセン高分子を機能性材料の土台として活用する研究が近年盛んに研究されている。こうした背景の下、我々は①高次構造が完全に片方巻きで、②様々な無機化合物と容易に複合化でき、③多彩な用途に利用することができ、さらに④ラセンの高次空間を外部刺激によって自在にコントロールできるような、「元素ブロックのラセン集積ツール」の開発を目的に研究を推進している。本研究では(i)元素ブロック材料を簡便に合成する新しい高分子合成法と(ii)汎用性・信頼性の高いラセン集積場の創製に分類して研究を実施しており、本年度は(i)、(ii)についてそれぞれ成果を得、発表した。結果として、(i)高分子ニトリルオキシド反応剤を用いる簡便な無機ガラス表面修飾法を見出し発表した。また2官能性ニトリルオキシドを用いる高分子連結法をこれまでに報告しているが、その分子連結点に蛍光性素子であるボロンエナミノケトネートを導入する方法論を開発し発表した。さらに(ii)については、糖鎖の剛直な片巻きらせん構造の有用性に着目した研究を推進し、天然由来の1,2-beta-グルコピラナンやアミロースの構造に化学的に手を加えることで、元素ブロックの集積に対し有用な土台となることを明らかとした。
著者
武田 靖 村井 祐一 田坂 裕司
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

気流の空間的構造を定量計測するPIV(Particle Image Velocimetry)を技術開発することを目的とし3年間の研究の実施を通じて多面的な成果を上げた. 大規模な気流計測における主要な問題は, 環境負荷の少ないトレーサを開発すること, ならびに三次元非定常構造を定量捕獲するための光学設計, さらには速度ベクトルデータの高密度化であった. 平成18年度は, トレーサの開発としWatermist法, Soap Bubble法, ならびにTuft Resonance法について検討を行い, さらにPIVに適合したトレーサの注入方法を設計・検定した. これと同時に300m規模の大気流動場を三次元計測する問題点提起実験を実施した. 平成19年度は開発したトレーサ注入法と光学系を実例計測によりデモンストレーション実験した. 計測対象は竜巻のPIV計測, 樹木や鉄塔をモデル化した透過性物体の周囲空間流動のPIV計測である. 平成20年度は大気ダウンバーストを室内モデル実験置換し, カラートモグラフィックPIV技術の実証実験を実施した. これらの開発の結果, 従来まで低密度データの2次元計測に制約されてきた気流構造計測が, 3次元高密度データ取得が可能となるに至った. また応用実験から気流のもつ固有の流動場が新たに発見され, これらについてのダイナミクスを論文等で発表した.
著者
小林 正伸 小林 隆彦 進藤 正信
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

膵癌細胞株を用いて,DNA microarray法にて多くの遺伝子産物の発現が亢進することを見出した.その中で,アドレノメジュリンという血管拡張因子とされていた遺伝子に着目してアドレノメジュリンアンタゴニストペプチドを腫瘍内に注入する実験を行ったところ,完全に腫瘍が退縮した病理標本上は,太い血管の新生が抑制されており,血流不足となって退縮した可能性が考えられた.今後はNaked DNAにてアドレノメジュリンアンタゴニスト発現ベクターを用いた遺伝子治療の検討が必要になる.さらに,従来の我々の研究成果で膵癌細胞にHIF-1αが恒常的に発現していたという結果を考えると,HIF-1の機能阻害が膵癌の増殖を抑制する可能性が考えられた.そこでHIF-1の機能を阻害することによって膵癌の治療が可能か検討した.その結果,dominant negative HIF-1αの導入によって生体内腫瘍増殖が抑制され,その機序として嫌気性代謝機構の阻害が主な機構であることを見出した.血管新生にはそれほどの差を認めなかった.試験管内での検討でも,アポトーシスに対する感受性が増加していることを明らかにできた.以上の結果は,膵癌の生体内増殖にHIF-1の機能が重要であることを示唆しており,HIF-1を標的とする治療法の可能性を示唆している.今後もHIF-1の下流にて細胞を低酸素環境や低栄養環境から守ろうとする適応応答機構を明らかにし,それを標的とすることで,癌特異的な治療法の開発が可能と考えられた.
著者
向井 宏 岸 道郎 波多野 隆介 飯泉 仁
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

北海道東部厚岸町を中心とした別寒辺牛川・厚岸湖・厚岸湾という一連の水系において、集水域全体における陸から沿岸域への生元素物質の流入、とくに農業(畜産業)生態系から流出する窒素化合物が沿岸の海草藻場やカキ・アサリを中心とした沿岸生産におよぼす影響を以下のような面から研究した。GISによる集水域の利用形態区分。集水域の土地利用形態が河川水質におよぼす影響とその評価。3河川河口部における定常状態での年間出水量および栄養塩濃度の測定。3河川河口部における降雨時の出水量および栄養塩濃度の測定。厚岸湖内における水温、塩分、栄養塩濃度、クロロフィルの毎月観測による窒素の分布と生態系への取り込みの推定。厚岸湖における堆積物の年代測定と有機物堆積速度の推定。厚岸湖における海草による窒素吸収速度の推定。河川における水草による窒素吸収速度の推定。実験によるアサリの物質取り込み量の推定。底生および付着珪藻類のアサリ・カキの餌への貢献の評価。航空写真に基づく厚岸湖アマモ場の歴史的変遷。安定同位体を用いた厚岸湖の食物網の把握。数値シミュレーションによる生態系モデルの構築とその検証。その結果、厚岸湖の生態系の高い生産性は、陸上からの常時の適度な栄養塩の流入と、沿岸域に成立しているアマモ場の高生産性に依存しており、大雨時に供給される大量の栄養塩は、ほとんど沿岸域の生産に寄与していないことが明らかになった。そのような大雨時の一気の流出を抑え、常時の栄養塩を含んだ水の供給に、森林や湿原の存在がきわめて重要であることも示唆された。
著者
浅沼 敬子
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ゲルハルト・リヒターによる1960年代のフォト・ペインティング作品(写真を元にした絵画作品)については、リヒター本人の言もあって、多くの研究者がその政治的、歴史的意味を指摘することに慎重だった。しかしミステレク=プラッゲの基礎研究(1990/1992)以降、近年では、2007年のディートマー・エルガーやディートマー・リューベルの指摘に見られる通り、リヒターのフォト・ペインティング作品のさまざまな意味が指摘されている。本研究の第一の成果は、ミステレク=プラッゲにならって、ドイツの週刊誌「シュテルン」「クイック」「ブンテ」「レヴュ」「ノイエ」(「レヴュ」と「ノイエ」は1966年に統合された)の1962-66年を再調査し、さらに「シュピーゲル」誌の調査、前誌の1959年、1967年分等の調査を加えて、リヒターが切り抜いた約160枚のうち、約70枚の写真の出自を特定したことである。それによって、ミステレク=プラッゲやエルガーらが部分的に指摘した、リヒターのフォト・ペインティング作品の歴史的、さらにいえば「悲劇的」意味が、より説得力ある仕方で指摘されるに至った。本研究の第二の成果は、1960年代のゲルハルト・リヒターのフォト・ペインティング作品から、1988年の『1977年10月18日』を経て、ドイツ国会議事堂のために制作された1998年の『黒、赤、金』にまで通底する意味的一貫性を指摘したことである。『黒、赤、金』は、一見すれば抽象的作品だが(これは油彩ではなくガラス作品である)、よく知られているように、リヒターはこれを「ホロコースト」写真をもとにした、1960年代以来のフォト・ペインティング的作品として構想していた。従って、1960年代から1990年代まで、リヒターの試みの一貫性が指摘され得るのである。こうして、リヒターの画業を1960年代から再構成することによって、従来個別にしか指摘されてこなかったその政治的、歴史的意味を、一貫したものとして描き出したのが本研究の重要な成果である。
著者
海住 英生
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究課題では、強磁性薄膜のエッジとエッジに有機分子を挟んだ強磁性薄膜/有機分子/強磁性薄膜量子十字素子を提案し、その表面・界面構造、電気伝導特性、並びに、磁気特性を調べることを目的とした。初めに、表面状態、磁化状態、及び、エッジ状態について詳細に調べた結果、Co/SiO_2が量子十字素子の電極材料として最も適していることがわかった。次に、本研究課題で構築した独自の成膜・研磨・エッチング技術を用いて、Co/有機分子/Co量子十字素子を作製し、その特性評価を行った。その結果、室温にて非常に興味深いスイッチング特性を見出すことに成功した。
著者
安達 大輔
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

研究最終年度にあたる今年度は、ロシア・ロマン主義文学を、同時代に開発された写真と比較して読み直す研究を行った。その一環として、2011年6月から7月にかけてロシア・モスクワに滞在し、国立図書館でゴーゴリ作品の集中的な分析に取り組んだ。また同年10月から11月のモスクワ滞在では、ロシア・ロマン主義と関係する思想家たちによるプラトン受容について研究をおこなった。こうした海外での調査を含む研究活動からは以下のことが明らかになった。前年度までに研究をおこなった、見えるものを無限に疑うロマン主義的な自己反省の運動は、記号とそれが指示する対象との結びつきが失われた時代において「かつてあった」はずのものを取り戻そうとする記憶のあり方と同じ思想的枠組みの中にある。同時に、「かつてあった」はずのものを「ロシア的なもの」と同一視するロマン主義的ナショナリズムからのゴーゴリ文学のずれも明らかにすることができた。すなわち、ゴーゴリ作品においてイデア的な「かつてあった」はずものは表象されることがないので、読者は記号からその指示対象を想像しては打ち消す行為を繰り返しおこなうように強いられる。絶対にイデアにたどり着かないことに起因する反省の強迫的な反復のうながしである点において、ゴーゴリにおける記憶のあり方は、プラトン的な想起からは隔たっている。それは20世紀初頭にベンヤミンによって近代的メディアである写真の特徴として指摘されたものに近づいている。両者ともに、記号が指示対象になる瞬間の反復可能性を保証することで、出来事が起きる現場へとテクストを読む者をたえず送り返すのである。そこではテクストが、ヴァーチャルな対象を再生産する装置として身体に接続されてゆく。この意味で、ゴーゴリはロマン主義文学の可能性を極限まで突き詰め、写真と共有される近代的なテクストと身体の関係を見いだしたと結論できる。
著者
小林 甫 ボロフスコーイ ゲンナデ ストレペートフ ヴィクト ベルナルディ ロレンツォ メルレル アルベルト デイアマンティ イルヴォ サルトーリ ディアナ グリサッティ パオロ ネレシーニ フェデリコ カヴァリエーヴァ ガリー カンコーフ アレクサンド 上原 慎一 横山 悦生 田中 夏子 土田 俊幸 新原 道信 浅川 和幸 小内 透 所 伸一 杉村 宏 木村 保茂 クム ソフィア コルスーノフ ヴィクトル KORSUNOV Victor KONKOV Alexander BOROVSKOI Gennadi STREPETOV Victor DIAMANTI Ilvo BERNARDI Lorenzo リム ソフィア カヴァリョーヴァ ガリー ディアマンティ イルヴォ グリサッテイ パオロ 山口 喬
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

昨年度までの研究によって、非重工業化地域の内発的な産業・社会の発展を将来的に担う、青年層における青年期自立の内実は、職業的自立と社会的自立との相互連関を追求することで考察しうることを確認した。本年度はそのことを、3カ国の青年層に対する「共通調査票」を作成して、定量的に分析することに主眼を置いた。イタリアでは、ヴェネト州内の国立技術高校、職業高校(ヴィチェンツァ市)、私立の職業訓練機関(ヴェロ-ナ市)の生徒を対象とした。サハリンでは、ユジノサハリンスク市、コルサコフ市の職業技術学校、普通科高等学校/リチェ-イの生徒、失業地帯マカロフ市の職業技術学校生と失業青年を取り上げた。日本は、北海道・長野県・岐阜県の工業高校生、東京の工業高等専門学校生、そして北海道と岐阜県の職業能力開発短期大学校生を選んだ。教育階梯差と地域差を考慮してである。この国際共通調査の結果を含め、2年数か月の研究成果を持ち寄り、国際研究報告会を札幌で行った(平成6年10月6日-11日。イタリアの報告4、ロシア3、日本6)。イタリア人の報告によれば、工業や手工業を学んでいる青年層は、現在校を自ら選んで入学し(学科への興味、技術・技能の習得など)、卒業後は家業を継ぐか、自らによる起業を望んでいる。ロシアにおいては、不本意入学的な職業技術学校生と、“意欲"を示す高校生/リチェ-イ生に二分されるが、卒業後の進路としては、いずれも第一次・第二次産業を志向せず、第三次産業の何かの部門を熱望している(銀行、商業、貿易など)。小売業、旅行業、漁業の中小企業を希望する者も25-30%いる。日本では、教育階梯差に関わりなく、一定の不本意入学生を含みつつ、おおむねは「就職に有利だ」という理由で入学し、(イタリア、ロシアと同じく)厚い友人関係を保持している。しかし、卒業後の進路には地域差が見られる。中小企業の選択は各々3分の1程度だが、他の地域への転出希望において北海道(工業高校生、ポリテクカレッジ生)、城南の中小企業地帯出身者が多い東京の高専生に高かった。対極に、岐阜(工業高校、ポリテクカレッジ)と長野とが来る。岐阜県では名古屋など愛知県内への通勤希望も多い。-だが、生活価値志向においては、日本(4地域)とイタリアには大きな違いは存しない。いずこにおいても、自由時間、家族、友情、愛情に高い価値を置き、やや下がって仕事が位置づく。シンナーや麻薬、理由のない暴力、汚職を否定し、結婚前の同棲を許容する。しかし、ロシアでは、高い価値の所在はほぼ同じだが、許し難いことの上位に、親や友人を援助しないことが入り、戦争時の殺人が許容される。ここには、ロシア(サハリン)的な生活上の紐帯と、反面での国家意識とが発現している。ところで、こうした共通の生活価値の存在は、一方では、若い世代が「市民社会」的なネットワーキングを形成しつつあることを示唆する。しかし、他方、職業的な価値志向としては“分散"することもまた事実である。私たちは現在、両者の相互関係の規定要因を見いだすべく分析を重ねているが、重要な要素として注目すべきは、「SOCIAL ACTORS」である。それは、イタリアでは「職業訓練-公的雇用斡旋(学校は不関与)-家族文化-労働組合-他のアソシエーション(社会的サービス分野でのボランティア)-地方自治政府」の連鎖として理解されているものである。青年層は、その生活価値・職業価値を、このような連鎖のなかにおいて、各自がそれぞれ意味づけてゆく。かつほぼ30歳位までは、多くの職業・職場を移動し、自らの“天職"を見いだすのだと言う。またロシアにおいても、1991年以前においては、90%以上の青年が第10学年まで進学して職業訓練を受けるとともに、アクタヴリストーピオニール-コムソモ-ルなどで社会生活のトレーニングを積み、同じく30歳位が各人“成熟"の指標であった。-こうしたイタリア、旧ロシアに対し、日本社会での青年期自立(職業的かつ社会的自立)の「SOCIAL ACTORS」は、企業内の教育・訓練が担ってきたとされる。だが、高等教育機関への進学率の上昇のなかの青年層は、アルバイトなどの学外生活を含む学校生活をそれに代用させているとも言い得る。この点の追究が、次回以降の研究テーマを構成する。
著者
緑川 光正 麻里 哲広 小豆畑 達也 石原 直 岡崎 太一郎
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

鉛直荷重は建築構造物の耐震性能を損なうものと一般に考えられている。柱中間部浮き上がり(CMU)機構を有するロッキング架構は,鉛直荷重を活用して地震応答低減を図る構造システムである。先行研究では,浮き上がりに伴って容易に降伏するベースプレートを柱脚部に設置したロッキング架構の地震応答低減効果や地震時挙動を明らかにした。本研究では,今までの研究成果に基づき,CMU機構を有するロッキング架構(CMU架構)の耐震性能を明らかにすることを目的として,簡易解析モデルによるCMU架構の基本力学特性,CMU機構(荷重伝達+エネルギー吸収)の静加力実験に基づく性能評価,CMU架構の地震応答特性を解明する。
著者
川島 正行
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

前線に伴う雲による降水を表現する微細格子雲解像モデルにより温帯低気圧に伴う降雨帯の構造、成因について調べた。まず、理想化した数値実験により、地上の寒冷前線に伴う降雨帯のコアーギャップ構造について調べ、その成因である水平シア不安定波の発達は環境風の鉛直シア、局所的な鉛直シアに強く依存することなどを示した。また、観測された前線に伴うその他の各種降雨帯の構造、成因について現実的な設定の数値実験により明らかにした。
著者
但野 茂 GIRI Bijay
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

骨組織はナノサイズのミネラル粒子がコラーゲン構造に沈着した複合構造を有する。規則的な原子構造を有する材料にX線を照射すると、その規則性に応じて回折X線が発生する。骨組織においては、コラーゲン鎖の周期構造がX線の小角散乱を引きおこし、ミネラル結晶の格子構造からは広角へのX線回折現象が生じる。このX線の回折パターンを解析することで、結晶構造や分子構造といった微視組織の構造変形を検出することができる。そこで、本研究では牛皮質骨から力学実験用の試験片を作製し、試験片負荷時に発生する回折X線の2次元パターンから、ミネラル内部のひずみと結晶学的な構造特徴の変化を調査した。その結果、X線回折により骨組織負荷時にミネラル結晶に明確な構造変化が生じていることが検出された。また、結晶配向と負荷時の変化および除荷時の形態再現性が作用負荷の履歴に依存して変化することを示した。このX線回折結果が示したように、負荷による超微視形態的な変化は明確であるにもかかわらず、作用応力と弾性率の間にはこのような複雑な挙動が現れなかった。すなわち、マクロな特性観察から微視構造に生じる変化を判断することは難しいといえる。今回確認した微視構造レベルのミネラル粒子間および、ミネラル-コラーゲン間の組織の付着と剥離挙動に関する特性は、骨組織破壊の発生源として考えることができる。本結果を生体骨に適用することで、非破壊的に測定可能なナノレベルの構造情報を基にした骨強度診断の実現が期待される。特に、整形外科分野において、骨の加齢や疾患の進行を定量的に診断し、骨折リスクを予測する新しい臨床応用技術として利用される可能性が高い。
著者
TSURUGA Hifumi MANO Tsutomu YAMANAKA Masami KANAGAWA Hiroshi
出版者
北海道大学
雑誌
Japanese journal of veterinary research (ISSN:00471917)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.127-136, 1995-01-31
被引用文献数
3

Genetic variations within and between local populations of Hokkaido brown bears, Ursus arctos yesoensis, were quantified by means of DNA fingerprinting using a minisatellite DNA probe. The estimates of the average heterozygosity (gene diversity) H were 0.302 and 0.241 for the populations on the southwestern part of the Oshima peninsula and the Shiretoko peninsula, respectively. These values suggest that local populations studied in this study have low genetic variability compared with those for other animals. The degree of genetic differentiation between the populations, measured by the coefficient of gene diversity (GST), was 7.9 percent and 19.5 percent. These results indicate a low degree of genetic differentiation between the local populations. The results obtained are discussed in relation to a population bottleneck in the ancestors and subsequent expansion of their habitat.
著者
日合 文雄 中村 美浩
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

本研究は作用素環上の非可換確率論と非可換力学系を解明することを目的とした。非可換の確率論・積分論は通常Von Neumann環(以下、V.N.環)上で定式化され、確率測度または測度に相当するものとして正規な状態または荷重が用いられる。状態または荷重がトレースとなる場合は従来より盛んに研究されている。通常の古典的確率論はV.N.環が可換な場合として非可換確率論に包含される。以下に本研究で得られた主要な成果を述べる。1.行列論、作用素論において、固有値と特異値(s-number)の概念は重要であり、これらを用いて定義されるmajorizationと呼ばれる順序は作用素のノルム不等式や作用素から各種の空間の研究に有用である。これらのs-numberとmajorizationの理論はトレースをもつ一般のV.N.環上で定式化できる。日合はV.N.環上でmajorizationとstochastic写像の関係を解明した。行列の和と積のs-numberに関して基本的なmajorizationが知られているが、日合・中村はこれらをV.N.環に付随する可測作用素の場合に拡張して証明し、これからいくつかのノルム不等式を導いた。2.古典的確率論において重要な条件付期待値とマルチンゲールの理論は非可換確率論でも大きなテーマである。日合・塚田はV.N.環上の状態または荷重に関する非可換【L^p】空間において条件付期待を考察し、【L^p】ノルムでのマルチンゲール収束を確立した。3.作用素環の間の写像に対しては、完全正値性に基づく順序が最も自然である。これまで線形な完全正値写像が考察されていたが、安藤・ChoiおよびArvesonは非線形な完全正値写像の表現定理を最近与えた。これを発展させて、日合・中村は非線形完全正値写像の表現問題と拡張問題を解明した。