著者
渡辺 優
出版者
天理大学
雑誌
天理大学学報 = Tenri University journal (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1-28, 2018-10

今日の人文社会科学全般に巨大な足跡をのこしたミシェル・ド・セルトーであるが,領域横断的なその業績を包括的に理解しようとする試みはいまだ少ない。本稿は,彼の言語論を軸に「ひとつのセルトー」像の提示を試みる。神秘主義の言語論からはじめて,彼のキリスト教論の重要性を強調し,「パロール」をめぐる思考を追跡する。それは,経験と言語活動の乖離という,キリスト教および文化の危機をめぐる先鋭な問題意識に裏打ちされていた。パロールをめぐる彼の「神学的」思考は,1970年代以降,歴史記述論や日常的実践論を通じて西欧近代の学知の根本的な問いなおしへと展開してゆく。「他者のパロール」を求め続けた彼の思考は,それ自体,「宗教」が学知のうちで「思考不可能なもの」となった時代の宗教言語論である。
著者
初谷 譲次
出版者
天理大学
雑誌
天理大学学報 (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.129-141, 2015-02

カスタ戦争(メキシコ史上最大規模の先住民反乱:1847~1901年)の末裔であるクルソーマヤは,メキシコ・キンタナロー州において,軍事的色彩は喪失しているとはいえ,今なお,反乱過程で再編成した強固なエスニック・コミュニティを形成している。十字架信仰と教会護衛制度を軸とするマヤ教会コミュニティは植民地支配によって押し付けられたカトリックの祈りを自らの文化資本として再領土化している。他方で,メキシコ国家は,1910年の革命以降一貫してきた「統合主義」的先住民政策を,サリナス政権(1988~94年)期における新自由主義路線への方向転換を契機として「多文化主義」へとシフトしてきている。本稿は,マヤ教会コミュニティが国家によるマヤ先住民の包摂を促進する受け皿となっていることを肯定的に捉えようとするものである。
著者
倉持 史朗
出版者
天理大学
雑誌
天理大学学報 (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.51-77, 2014-10

監獄費国庫支弁法が成立した1900(明治33)年に感化法が成立した。その内容は不良行為や犯罪を行った児童を監獄から分離し,福祉的・教育的処遇(感化教育)によって(再)犯罪予防を企図した画期的なものであったが,実際には公立感化院の整備は大きく遅れた。そのような状況の中で同法制定を契機として犯罪・不良少年に対する処遇の改善を企図していた監獄官僚たちは,司法省管轄下にある特別幼年監(独立設置した懲治場)を主な舞台として「感化教育」を実践していくことになる。本研究はこのような司法省による懲治場改革(特別幼年監の設置)に焦点をあて,それらの改革がまさに幼少年犯罪者に対する「感化教育」の実践であったことを明らかにすることを目的にしている。そのため,従来研究では用いられてこなかった神戸監獄・洲本分監,福島監獄・中村分監,横浜監獄女子懲治場の資料を分析し,各懲治場の教育方針やその体制,学科教育及び生活指導や入所児童などの状況について検討した。
著者
古賀 崇
出版者
天理大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度は研究課題についての海外調査を実施すると同時に、研究課題に関連するテーマで成果発表を行った。調査としては平成29年7月に、米国オレゴン州ポートランドにて開催された「米国アーキビスト協会(SAA)」年次大会に参加し、あわせて翌月にかけてカナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学(UBC バンクーバー)にて研究者らへの聞き取りを行った。これらに共通する主要なテーマのひとつは「デジタル・フォレンジック」(デジタル上の情報・データの復元)であり、アーカイブズの実務への導入状況や、産・官・学の連携がそれを後押ししている現状などを確認することができた。また前年度の研究・調査に引き続き、「一次資料を用いた教育(Teaching with Primary Sources: TPS)」をSAAが力を入れて推進していることを認識した。これらの両面とも、政府情報が前面に出る活動とは限らないが、公文書ほか政府情報の取り扱いが問題視されている日本の現状に鑑みても、「政府情報リテラシー」を考える上での重要な要素と捉えることができる。なお、UBCではデジタル・フォレンジックの詳しい教育内容(シラバス、文献リストなど)を確認することもできたが、その分析については次年度に持ち越している。一方、成果発表としても「デジタル・フォレンジック」が中心であり、上記のような米国・カナダでの調査結果も踏まえ、国際比較をレビューとしてまとめた成果を「研究ノート」(査読あり)として上梓した。また「日本におけるデジタルアーカイブに対する批判的検討(特に政策面を中心に)」も、政府情報と関連づけつつ成果発表を行い、上記の調査を踏まえた国際比較という観点も踏まえ、複数の口頭発表を行った。さらに、「政府情報リテラシー教育」を日本で実践した試みについても、口頭発表を行った。
著者
中村 久美
出版者
天理大学
雑誌
天理大学学報 = Tenri University journal (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.77-92, 2017-02

オスカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』の序文では,鏡がこの作品を読み解く鍵であることを暗示する文章が並ぶ。鏡自体,ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』や,ギリシャ神話のメドゥーサ退治に使われた鏡のように,一種魔術的な要素を持ち,虚像と実像の乖離を本来的に内包するものだが,この作品においては肖像画が鏡の役割を果たすというひねりを効かせており,「誠実」な人間と「真実」の人間という世紀末的対立を際立たせている。肖像画が魂の真実を映し出す時,鏡に映っているモノとはいったい何なのだろうか。本稿では夏目漱石の『幻影の盾』もヒントにしつつ,『ドリアン・グレイの肖像』を中心にワイルドにおける鏡と真実,ほんものとにせもののありようを探る。
著者
朱 鵬
出版者
天理大学
雑誌
天理大学学報 (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.41-70, 2015-02

光緒二十年(1894)は,中国にとって特別に意味のある年であった。それは,中国にとって,日清戦争の勃発によってもたらされた外部からの刺激ばかりではなく,わずか数年の間に,中国の社会文化の深層に大きな変化がおこったからである。その影響は深遠であり,例えば,光緒三十一年(1905)科挙制度の廃止によって,清朝の統治をささえる政治理念の土台が動揺し,結局,社会体制の崩壊につながっていたことは,その一つの重要な出来事である。 本稿でとりあげる「提督学政」とは,清朝の地方学務に携わる高等官僚である。科挙制度の社会基礎を維持するのに重要な役割を果たしており,学校試の統括,本試験郷試への人材推薦,及び地方学問風紀の保護など,彼らの動向は,科挙制度のバロメーターとして,そのときの社会状況を反映している。本稿の目的は,現存する提督学政の自筆史料を解読し,地域学務の実態を整理しながら,科挙試験廃止直前までの科挙制度を確認することである。この自筆史料というのは,光緒二十年貴州学政に就任した嚴修の『蟫香館使黔日記』である。そこには貴州学政を勤めた嚴修の毎日が記録され,学政の業務日記として極めて貴重である。 しかし,学政に関する研究の少ないなか,嚴修のこの日記も民国期に刊行されて以来,貴重であることを認識されながらも,ほとんど図書館の書架に収蔵されたままになってきた。すでに過去のものとなった科挙に対する関心の薄さと,史料の整理と解読に時間がかかることがその原因であろう。本稿は,『欽定大清會典則例』や『欽定学政全書』といった清朝の法令集をも対照しながら,学政の待遇や院・歳試など幾つかの点を通じて,嚴修の貴州学政業務を確認し,制度廃止直前であっても地方では,その制度が従来とかわりなく厳格に実施されていた実態を明らかにしたい。科挙の廃止と西洋的な教育の導入は,中国教育制度史上において,まさに晴天の霹靂であった。
著者
朱 鵬
出版者
天理大学
雑誌
天理大学学報 (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.41-70, 2015-02

光緒二十年(1894)は,中国にとって特別に意味のある年であった。それは,中国にとって,日清戦争の勃発によってもたらされた外部からの刺激ばかりではなく,わずか数年の間に,中国の社会文化の深層に大きな変化がおこったからである。その影響は深遠であり,例えば,光緒三十一年(1905)科挙制度の廃止によって,清朝の統治をささえる政治理念の土台が動揺し,結局,社会体制の崩壊につながっていたことは,その一つの重要な出来事である。 本稿でとりあげる「提督学政」とは,清朝の地方学務に携わる高等官僚である。科挙制度の社会基礎を維持するのに重要な役割を果たしており,学校試の統括,本試験郷試への人材推薦,及び地方学問風紀の保護など,彼らの動向は,科挙制度のバロメーターとして,そのときの社会状況を反映している。本稿の目的は,現存する提督学政の自筆史料を解読し,地域学務の実態を整理しながら,科挙試験廃止直前までの科挙制度を確認することである。この自筆史料というのは,光緒二十年貴州学政に就任した嚴修の『蟫香館使黔日記』である。そこには貴州学政を勤めた嚴修の毎日が記録され,学政の業務日記として極めて貴重である。 しかし,学政に関する研究の少ないなか,嚴修のこの日記も民国期に刊行されて以来,貴重であることを認識されながらも,ほとんど図書館の書架に収蔵されたままになってきた。すでに過去のものとなった科挙に対する関心の薄さと,史料の整理と解読に時間がかかることがその原因であろう。本稿は,『欽定大清會典則例』や『欽定学政全書』といった清朝の法令集をも対照しながら,学政の待遇や院・歳試など幾つかの点を通じて,嚴修の貴州学政業務を確認し,制度廃止直前であっても地方では,その制度が従来とかわりなく厳格に実施されていた実態を明らかにしたい。科挙の廃止と西洋的な教育の導入は,中国教育制度史上において,まさに晴天の霹靂であった。
著者
中村 久美
出版者
天理大学
雑誌
天理大学学報 (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.113-128, 2015-02

月と鏡はともに他者の像を反映するという相似の機能を担い,心理的にも互いに隣接する観念である。両者は地上の現実世界の反映であると同時に,異次元世界へと人を誘う扉でもあり,我々のなじみ深い世界にぽっかり空いた未知の世界,夢の世界への入り口である。しばしば絵画や文学作品の主題ともなり,重要な場面に欠かせない道具ともなる月と鏡であるが,これらは偶然というより,見かけの相似以上のつながりがあるのではないだろうか。西洋とわが国の文学作品を比較した時,その結びつきはより明らかになるが,東西の違いもまた浮かび上がる。月は西洋では不吉な事件の前兆となることが多く,日本では異界への入り口の象徴になることが多い。また鏡は西洋では現実の真実を現すのに使われ,日本では裏面の真実が語られる。
著者
西田 円
出版者
天理大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は,競技者が競技成績の停滞・低下によって無力感状態に陥る現象に焦点を当て,無力感状態が生起する要因を明らかにし,競技者に対する有効な介入方法を検討することであった。まず,競泳選手の練習場面におけるセルフ・エフィカシー尺度を作成しセルフ・エフィカシーと関連のある帰属スタイルを明らかにした。次に,無力感状態から回復した経験のある選手へのインタビューから,パフォーマンスの向上を実感した直後に無力感に陥りやすいことが示唆された。また,パフォーマンスが停滞している状況にあっても,指導者や周囲から期待され認められているという実感は,練習の継続や試合への出場に繋がる重要な要因となっていた。
著者
奥島 美夏 永井 史男 金子 勝規 池田 光穂 石川 陽子
出版者
天理大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本年度は引き続きASEANにおける看護・介護人材の調査を中心に進めた。まず、奥島はマレーシア、ブルネイ、インドネシア、ベトナムで現地調査を実施した。本プロジェクト初のマレーシア・ブルネイの調査では、保健省・看護師協会・大学などを訪問し、政策方針、外国人看護師の受け入れ状況、看護教育、卒業後の進路などについてインタビューを行った。両国はインドネシアと同じマレー語圏だが主に受け入れ国であり、しかし近年は現地看護師のシンガポールや中東への流出にも苦しんでいることがわかった。金子はタイ、カンボジアにおいて現地調査を実施し、医療政策や病院経営などについて調査を進めた。また、インドネシアにも奥島の調査に合流し、地方部(東カリマンタン州)における保健医療の現状を探るため、保健所(地域保健センター)、助産院、看護学校、現地民の自宅介護などについて参与観察・インタビューした。地方部では海外就労の機会は少ないが、結婚・出産・育児などのライフステージに合わせて大学や大学院への進学や、昇進にむけたプロモーション(地方勤務)などを行い、長期的な勤務を続けていくことが可能であることがわかった。永井は金子、および研究協力者の河野あゆみ教授(大阪市立大学看護学部)と、タイにおいて共同調査を実施し、医療政策や看護教育のほか、介護制度の普及と自治体の役割について調査した。なお、同教授には次年度の成果論集にて、主に看護教育面に関する報告・執筆などでも協力を依頼する予定である。さらに日本国内では、石川がEPA看護師や所属機関関係者へのインタビュー、池田は多様な保健医療の在り方と今後の動向について講演を行った。
著者
深見 英一郎 岡澤 祥訓 田中 祐一郎
出版者
天理大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、運動の苦手な生徒に焦点づけた効果的な指導方法について検討した。生涯スポーツの基盤づくりを担う体育授業において、仲間と協力して運動に取り組み技能成果を高めることの楽しさをすべての生徒に体験させたいと考えた。運動に対する動機づけの観点から周到な準備と授業中の働きかけを重視した結果、特に運動の苦手な生徒たちが積極的に運動に取り組み豊かな人間関係と技能成果が生まれる優れた体育授業を実践することができた。
著者
幡鎌 一弘 井上 智勝
出版者
天理大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

神道の本所である吉田家の玄関帳「御広間雑記」元禄12(1699)年~宝永7(1710)年のインデックス約6200点を作成し、近世神道史研究を発展させるための基礎的作業を行った。あわせて、吉田家・白川家の対抗を考える上で重要な人物である臼井雅胤の活動と、臼井と一条兼香・道香によって創設された白川家八神殿の背景を明らかにした。さらに、17世紀後半における神職による神仏分離の活動が祭礼の由緒の説明に影響を与えていることを示した。
著者
倉光 ミナ子
出版者
天理大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

1.理論的枠組みの検討本研究の理論的枠組みとしての「トランスナショナルな場所」を考えるにあたり、トランスナショナリズムについての研究が盛んであるイギリスの人文地理学の文献を収集し、検討を行なった。その結果、多くの研究が先進地域へ流入する国際移動者を対象とした研究であること、また、このような現象を捉えるにあたり、「場所」ではなく「空間」という概念を使用していることが改めて明らかとなり、理論的枠組みの再検討が必要となった。2.フィールド調査:9月に2週間弱、サモアにおいて実施した。調査内容は以下の通りである。1)仕立て業店舗の分布の変容について:2年間のデータを基に、アピア都市部における仕立て業店舗の移り変わりについて調査を行なった。その結果、店舗数は依然として増加傾向にあるが、その一方で閉店に追い込まれている店もあった。また、フィリピン人女性の縫い子を雇用するという傾向が顕著になっていた。2)仕立て業店舗における顧客の調査:昨年の調査と同じ店舗において、その店を頻繁に使用する顧客に関する観察・簡単な聞き取り調査を実施した。その結果、双方の店ともに販売には都市部特有のイベントの影響を強く受けることがわかったが、帰還移民の多い店舗では衣服の多くが海外コミュニティのために購入されており、人だけでなくサモアの衣服が海外へ流入する様子が観察された。3.研究成果の公表に向けて本年度は研究機関を変更したこともあり、理論的枠組みおよびフィールド調査の結果が十分に整理・検討できなかったので、本研究に関わる研究成果をまとめ、発表するまでにいたらなかった。本研究の研究期間は終了を迎えたが、来年度のうちには、これまでの成果をまとめ、公表していく予定である。
著者
中谷 敏昭 林 達也
出版者
天理大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

高齢者が自立生活を維持するためには下肢筋機能が維持されていることが望ましい.本研究では,連続ジャンプ(SSC動作)を用いて下肢筋力や筋パワーなどの筋機能を改善する運動プログラムの効果と中止の影響を検討した.連続ジャンプは,Borg-RPEで14.3程度,着地時の床反力は体重の約2倍程度であった.3ヶ月間のトレーニグでは,下肢筋力やバランス能力が改善した.トレーニグ終了後は,脚伸展能力が低下する傾向にあった.トレーニング期間を5ヶ月間に延ばした場合には,下肢筋力とバランス能力が改善した.連続ジャンプを用いた本課題のトレーニグは,高齢者の下肢筋機能やバランス能力を改善するプログラムと言える.
著者
奥島 美夏 池田 光穂 石川 陽子 鈴木 伸枝 永井 史男 高畑 幸 服部 美奈
出版者
天理大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-11-18

本研究は保健医療人材の国際移動に関する学際共同研究であり、日本・東南アジア間で2008年より開始した経済連携協定(EPA)による外国人看護師・介護福祉士候補の送り出し・受け入れを軸として、送出諸国(インドネシア・ベトナムなど)の保健医療・教育・移住労働を先進モデル国であるフィリピンと比較つつ課題を分析した。送出諸国は、1990年代の中東・英米での受け入れ開放政策や2015年末のASEAN経済統合をうけて人材育成・学歴引き上げを急ぐが、受け入れ諸国との疾病構造や医療・教育制度の相違などから必ずしも即戦力にはならず、ポストコロニアル的紐帯が薄い日本では職場適応・定住化にも困難があるとわかった。
著者
山田 政信 魯 ゼウォン 奥島 美夏
出版者
天理大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、日本産ブラジル系プロテスタント教会を主要な事例として次のテーマについて明らかにした。①ブラジルに帰還した夫婦の再適応戦略としての司牧活動。②ブラジル帰国と再適応:カンポグランデ・ホーリネス教会のケース。③デカセギ現象と日系宗教:マリンガ市の事例。④神の王国ユニバーサル教会の日本における展開。⑤ブラジル系プロテスタント教会の脱領域的なコミュニティ。⑥ヨーロッパのブラジル系プロテスタント教会(予備調査)。⑦日本の韓国系・インドネシア系プロテスタント教会。主たる成果は、雑誌論文3件、国内学会発表2件、海外発表2件(うち招待講演1件)、図書1件である。
著者
中谷 敏昭
出版者
天理大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,中高年者や高齢者の健康づくりとしてトレーニング施設ではなく,自宅(イン・ハウス)で効果的なトレーニングを実施させるためのシステムの開発と実践をおこなった.まず,定期的なトレーニングを専門家の指導の元に3ケ月あるいは6ケ月(週に2回あるいは1回の計24回)行わせ,その後に運動継続を目的としたフォロー教室と健康づくりのための情報誌を作成して体力の変化を検討した.その後,イン・ハウスで行う筋力トレーニングのための活動筋の自覚的疲労感を指標とした強度スケールを開発し,生理学的強度との関係を若年男性と中年女性を対象に検討した.その結果,アームカール運動をもちた筋力トレーニング時の強度スケールは若年男性および中年女性とも,運動回数の進行とともに増加し筋電図仕事量でみた生理学的強度やBorg-RPEスケールとも強い相関関係をしました.その後,中年女性を対象に自宅で週に3回のアームカール運動(「かなり効いてきた」と感じる回数まで)を2〜3ケ月間行わせたところ,等尺性肘屈曲力と「限界」と感じる回数が増加し,筋力と筋持久力の改善に効果的な方法であることが明らかにできた.また,本研究の片側アームカール運動のトレーニングでは,反対側(非トレーニング側)の筋力と筋持久力が改善されcross-education効果を生じさせた.以上のことから,本研究のイン・ハウスの筋力トレーニングで利用するための活動筋の自覚的疲労感を指標とした強度スケールは筋力と筋持久力を改善させる指標としては安全で効果的な内容であることが示された.
著者
谷山 正道
出版者
天理大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

幕府寛政改革に関する研究は、享保および天保のそれに比べて大きく立ち遅れていたが、1960年代に入って以降前進をとげるようになった。しかし、そこで主に分析対象とされたのは、東国幕領に対する改革農政(「名代官」による農村復興のための諸政策)であり、西国幕領に対するそれについては視野の片隅におかれ続けてきた。こうした研究状況をふまえて、本研究では、西国特に先進地畿内の幕領を主なフィールドとしてそこから幕府寛政改革を見つめなおすことを課題とし、平成8年度から10年度にかけて関係史料の調査・収集を進めた。寛政改革を主導した老中松平定信は、それまでの西高東低の経済状況を是正し、劣勢であった「東」の地位を高めようとした政治家としてよく知られている。これに関わって注目されるのは、改革農政も「西」と「東」の実状をふまえ、双方をにらんだ形で展開されていった事実である。その代表例は公金貸付政策であり、公金の貸付を媒介として「西」の経済的なゆとりを「東」の窮民の救済にあてようとする側面を有していた。これと併行して、農村荒廃が進んでいた東国の幕領に対してはその復興に力点をおいた諸政策が推進されていったが、西国特に先進地畿内の幕領では、改革政権成立当初の御料巡見使への数多くの訴願や国訴の展開からうかがえる民衆の期待や願いに反して、年貢の増徴に力点がおかれ、改革後期には勝与八郎を中心に年貢増徴をめざした政策が本格的に推進されていった。これによって、一定の増徴は実現されたが、民衆の反対の声が高まるようになり、結局十分な成果をあげえないまま、他の政治問題もかかわって、松平定信は退陣を余儀なくされるに至った。