著者
本村 健太
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

基礎的段階として、初年度・次年度にVJ表現やWebデザインの展開事例を実践研究として構成学的な観点から総括した。最終年度には、実践研究を継続するとともに、その源流を探る試みとして、バウハウスのルートヴィヒ・ヒルシュフェルト=マックによる「カラーライトプレイズ」を中心とする考察を行った。カラーライトプレイズは、ライトアートの美術史上のみならず、インタラクティブ映像メディア装置の源流として「カラーミュージック」の系譜のなかでも捉えられ、今日的な表現にまで至る、芸術と技術の融合による総合芸術的なあり方を確認することができ、初期バウハウスの「プロジェクト」が現在においても有効であることの例証となった。
著者
佐藤 文子 山口 浩 斎藤 俊一
出版者
岩手大学
雑誌
Artes liberales (ISSN:03854183)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.85-97, 1993-06
被引用文献数
1
著者
木村 直弘
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

これまでの思想史的研究の成果をふまえ、Energetik的音楽理論が演奏実践へ及ぼした影響と当時の「線的志向」との相関関係にアプローチした。Energetikerの一人クルトの造語である「線的対位法」という術語は、最終的に、ロマン派的和声を克服するものとして「新音楽」あるいは「新即物主義」から重宝され、「線」という語は1920年代のスローガンにまでなったが、注意しなければならないのは、シェンカーら調性音楽に依拠したEnergetikerたちも、この「新即物主義者」の作曲家や演奏家たち同様「線への志向」=対位法的思考重視という結論に至ったことである。実はこうした対立関係は、調性音楽を擁護しシェンカーと逆にそれを否定したシェーンベルクの各々の『和声論』での論争にもみられるが、彼らは結局同根であった。それは、シェーンベルクに傾倒したグールドの演奏美学に、シェンカーの演奏技法論と通ずる点が多いことからもわかる。まさにシェーンベルクの12音技法の目的が結局調性音楽の完全否定ではなくその継承にあったのと同様に、グールドの演奏における対位法的志向は、ゲーテの有機体美学に根ざしたシェンカーに通底する、(シュナーベル経由の)非常に19世紀的な自律的音楽作品観へのオマージュになっている。同様に、「ロマン的解釈」の指揮者として語られることが多くシェンカーに熱心に師事していたフルトヴェングラーの演奏は生演奏で最大限の効果を発揮するので、演奏会を否定し録音した多数のテイクからの継ぎ接ぎをいとわなかったグールドのそれとは、まったく相容れないように思えるが、やはり楽曲の、「構造」に分析的に肉薄するという姿勢は通底しており、それは結局対位法的思考の重視へと必然的に帰結した。シェンカーやクルトの的音楽理論は戦後、音楽記号論へ大きな影響を及ぼしたが、音楽記号学者がグールドの演奏分析を好んで行うのも、実はここに一因があると言いうる。
著者
矢内 桂三
出版者
岩手大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

田沢湖は海抜249m、水深423m(湖底は海抜-174m)の巨大なサークル状凹地である。田沢湖の成因(起源)は今だ謎のままであるが、次の4つの可能性が考えられる。つまり(1)噴火口(火山噴火による火口湖)説、(2)構造的陥没湖説、(3)隕石衝突孔(メテオライト インパクト クレーター)説、(4)その他の説である。初年度と次年度は湖岸域から、多数の岩石資料を採取し顕微鏡により観察した。また、秋田大学工学資源学部に保管されている数個の湖底からドレッジされた貴重な岩石を含む大量の岩石サンプルについても検討してきた。しかし、隕石衝突による特異な岩石種(角礫岩やシャッターコーンなど)はまだ確認できていない。また、この間に国外の隕石衝突孔(米国のオデッサ・クレーター)などを現地調査し、田沢湖と比較検討を行ってきた。隕石衝突時の衝撃によって隕石孔から大量の物質を放出する例が国外には多く知られている。このため本研究の最終年は田沢湖の外側数キロ地点までの野外地質調査を実施し、多くの試料を採集し顕微鏡により観察した。しかし、この地域に於ても衝突によると思われる現象は今のところ確認できていなし、衝突起源の岩石サンプルも得られていない。田沢湖の成因については(1)の噴火口説は地質学的に否定されているし、(2)陥没湖説もサークル状に400m以上も陥没することが可能なのかどうか疑問である。(3)の巨大隕石衝突の可能性を一番に考えたいが、今だ確かな証拠は得られていない。もしかしたら、第4の説(いわゆる伝説)がこれからも続くのかもしれないが、一片のインパクタイト(衝撃石英や衝突球粒などの衝突起源物質)の発見が、田沢湖を日本初の隕石衝突孔にするはずである。今後も湖底からの岩石採集や周辺地域の詳細な野外地質調査等を続けなければならない。
著者
阿部 裕之
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

多角形の柱型の花器などを、図面から金属冶具を設計しアルミニウムの金型を製作する。実用寸法を考え大きさを設定する。図面をもとに制作したアルミニウムの金型の種類と大きさは、次のとおりである。450×225×h225(mm)長方形、300×300×h300(mm)正方形、おおよその直径140×h300~h500(mm)の寸法内に分類される、3、5、7、8、9、10角柱である。更に、水盤などに応用できる、大型の径の金型を設計する。図面をもとに制作したアルミニウムの金型の種類とおおよその大きさは、次のとおりである。おおよその直径430×h300(mm)の寸法内に分類される、5、7、8、9、10角柱である
著者
中里 まき子
出版者
岩手大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

まず、ジャンヌ・ダルク処刑裁判を題材とする20世紀の文学作品(ジャン・アヌイ『ひばり』(1953)、ベルトルト・ブレヒト『ルーアンのジャンヌ・ダルク処刑裁判1431年』(1954)、ティエリー・モールニエ『ジャンヌと判事たち』(1949)等)を体系的に取り上げ、「ジャンヌ・ダルク処刑裁判記録」をはじめとする歴史資料との比較を試みることにより、各作家の創作の独自性を浮かび上がらせた。続いて、ジョルジュ・ベルナノスがエッセー『戻り異端で聖女のジャンヌ』(1929)において寡黙なジャンヌ・ダルクを提示したことに着目し、言語をめぐる同作家の問題意識との関連性を考察した。
著者
宮崎 雅雄
出版者
岩手大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

ネコは、同種の尿を嗅ぐと、頭を持ち上げ口を半開きにして恍惚とした表情を提示する。これはフレーメンと呼ばれる本能行動である。フレーメンが単純で再現性の良い本能行動であり、ネコの脳が齧歯類より高次で霊長類ほど複雑になっていない点に着目し、フレーメンを行動レベルから分子レベルまで研究して、高次な動物の本能行動の発動機序を解明するための研究基盤を構築した。
著者
松木 佐和子 渡邊 陽子 大野 泰之
出版者
岩手大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

アンケート調査から、クスサンは北海道全域および北東北3県に広く分布していることが明らかになった。クスサン幼虫の摂食試験により、これまで食樹として知られている他の広葉樹よりもウダイカンバを与えたクスサンの生存率・成長率が高かった。また、ウダイカンバ成木の春葉では幼虫の生育は良好だったが、成木の夏葉や稚樹葉では不良であった。以上のことから、北海道で見られるようなウダイカンバ成木の純林はクスサン被害のリスクが高い森林だと言える。東北地方でも不成績造林地などに侵入したウダイカンバの蓄積や林齢は増しており、そのような場所では注意を要する。
著者
井上 祥史 伊藤 敏
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

仮想空間の中で疑似体験が可能な環境として, 磁場中の導体をマウスで触ってその中の電子の運動の仮想実験, 自分の脈拍と同期して動く心臓の表示, GPSを用いて古代遺跡を再現し鑑賞できる仮想現実システムなどを作成し, 教育利用に向けての評価を行った. またそれらの作成過程でUSB-IO を用いた制御教材およびImageJを用いた画像解析による運動解析の方法を提案し, 教材としての有用性を示した.
著者
宮崎 眞
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、(1) 複数の人が役割を分担する共同活動の中で言語行動の始発を促すより効果的なスクリプト・スクリプトフェイディング(以下、S・SF) 法の開発、(2)S・SF 法の特長を生かした新たな般化促進法、(3) スクリプトを自らが管理し活用する自己管理法の開発、である。対象者は5 名の知的障害を伴う自閉症者であった。制作やゲーム等の活動の中で、会話行動を指導した結果、S・SF 法により、会話行動が促進されることと学校において会話の頻度が著しく増加した。スクリプトの新たな提示法としてタブレット端末による提示法を開発し、有効性が確認できた。
著者
山崎 友子 HALL James 西館 数芽 山崎 憲治 山崎 憲治
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

東日本大震災被災地の調査および中・高・保育園で実践的研究を行った。災害サイクル図を析出し、災害を予報,復旧復興も含めて全体系として把握することが,減災・災害弱者を生まない・災害に強い地域作りでも肝要であることを示した。また、学校が組織的避難に加え、地域の復興を意識した教育活動により、子ども達に復興の担い手としての意識を高めていることをフォーラムで明らかにした。防災教育とは「被災地から学ぶ」ことが示された。
著者
呉 松竹
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、高価な貴金属めっき(Au, Ag)に代わる次世代超高耐熱めっき材の開発を目指し、新規なナノ積層型のSn/Ag3Sn/Ag(Ag膜厚-20~300 nm)系多層めっきを開発した。このSn/Ag3Sn系多層めっきは、優れた耐熱性、耐摩耗性、耐硫化性および光反射性を持つことが確認された。これら性質は、主に最表面の硬質Ag3Sn層と軟質Ag層の複合化による導電性付与と摩耗性改善の複合効果によるものと考えられる。このSn/Ag3Sn/Ag系多層めっきは、車載端子、LED反射材および大電流高速充電コネクタなどに幅広く応用できると考えられる。
著者
花見 仁史 吉森 久
出版者
岩手大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本補助金によって、X線、電波を含む追観測が実現できた。これにより、1)多波長深宇宙探査で検出した10万個の銀河データベースを再構築をし、2)多波長スペクトル解析から赤方偏移、星質量、星形成率、ダスト量を再導出し、3)星形成と銀河中心核(AGN)の活動性を赤外線ー電波スペクトルで分離して、1000個のz<3の赤外線銀河を星形成銀河、AGN銀河、星形成+AGN銀河に再分類し、4)AGNのブラックホールへの質量膠着率を再導出し、5)z<0.8でのAGNによる星形成の抑制傾向などを明らかにした。一方、銀河の系統樹を再構築する統計的因果推論については、多波長データの誤差評価が今後の課題と残された。
著者
吉川 信幸 伊藤 伝 八重樫 元
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

従来病原が未定であったオウトウ芽枯病、リンゴ輪状さび果病、リンゴ奇形果病、およびリンゴえそモザイク病の病原ウイルスの解析に、次世代シークエンサーによるバイローム解析を応用し、オウトウ芽枯病からはオウトウBウイルス(ChVB)、リンゴえそモザイク病からはリンゴえそモザイクウイルス(ApNMV)の2種の新ウイルスを発見するとともに、リンゴ輪状さび果病の病原は、リンゴクロロティックリーフスポットウイルスの一系統であることを明らかにした。
著者
伊藤 芳明
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、アブラナ科野菜等に含まれるイソチオシアネート化合物の抗糖尿病効果の作用機序の解明を目的として、第1にイソチオシアネート化合物の1つであるphenethyl isothiocyanate (PEITC)がAktやErkの活性化を介してインスリン様作用を発現していること、第2にPEITCによるEGF受容体family分子であるErbBの活性化が部分的にAktの活性誘導に関わっていることを明らかにした。
著者
松嶋 卯月 庄野 浩資
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

重水は水と化学的性質が似ており植物体の根から良く吸収されるため,植物水分生理を研究するとき良くトレーサとして用いられる.一方,近赤外線には,水に吸収されるが重水にほとんど吸収されない波長帯があり,それを利用し,近赤外分光イメージングと重水トレーサを組み合わせることで,葉,茎,根など植物体内における水移動を可視化できる.本研究では,植物体内における水移動を巨視的,微視的に可視化する方法を確立し,あわせて,本イメージング法用のユーザーインターフェイスを開発した.
著者
佐々木 淳
出版者
岩手大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究成果より、ブロイラーの野外例では2週齢時にはすでに脊椎膿瘍を発病している個体が存在することが判明した。多くの病鶏では第六胸椎の関節部に出血を伴う亀裂が生じており、本症の初発病変と考えられた。病変部より大腸菌群やSalmonella Infantisなどのサルモネラ属菌が分離された。2週齢前後では胸椎の椎体に気嚢がみられないことから、本症の感染経路は経気道感染よりも血行性感染が強く疑われた。
著者
比屋根 哲 大石 康彦 山本 信次
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は,野外における森林教育・林業教育のあり方について,その理念と今後の課題,森林教育の現状,森林教育効果の把握手法に関して,多面的に検討したものである。また,ドイツ(フライブルク)とイギリス(ロンドン,他)で,森林教育関連事項の予備的なインタビュー調査を実施し,それぞれの国民の森林観,とくに林業観について日本人と比較・検討した。森林教育の理念と今後の課題については,これまでの実践の中で得られた野外活動の意義上可能性,また活動上の留意点について具体的に明らかにするとともに,森林教育研究の意義と課題についても整理した。森林教育の現状については,岩手県,秋田県,福島県の事例をとりあげて調査・検討した。主として林業家が主体的に教育活動を実践している事例分析からは,林業関係団体などが市民,行政と協力しつつ林業家を後押しするシステムを構築することで,市民の動きと連動した森林教育実践が可能になること,また行政による森林インストラクターの養成活動は,インストラクターが活躍できる場を確保しつつ,活動の場となるソフトの運営などはフレキシブルな対応が可能なNPO等の民間団体に依拠して進めることが有効なことを明らかにした。森林教育効果の把握は,質問紙法,ビデオカメラを用いた児童の行動分析,森林活動家のライフヒストリーの分析等を試み,それぞれの手法の有効性を明らかにした。海外調査では,とくにドイツ人と日本人において自国の林業に対する認識や評価のあり方が大きく異なっていることを明らかにした。学会セッシヨン「森林教育の課題と展望」では,森林教育の目標は多様であり得るが,実践においては目標の明確化が重要であり,また教育を実施する側が楽しく実践できる取り組みを創造していくことが重要であることが浮き彫りにされた。