著者
植野 真臣
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.e1-e6, 2023-04-15

CBT(Computer Based Testing)は,従来の日本型テストとはまったく異なる考え方に基づいたテスト技術で,単にペーパーテストをコンピュータ上に置き換えたものではない.本稿では,CBTの考え方,最先端技術と問題,について解説する.具体的には,1.CBTの世界標準,2.テストの測定誤差と等質性,3. CBTでしか実現できない能力測定,4. CBTを用いた大学入学者選抜,について述べる.
著者
高岡 詠子
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.239-243, 2023-04-15

本会では8年間にわたり,教員免許状更新講習を開設してきた.その経験を活かし,2022年7月〜8月に4日間のオンライン研修(一部対面を含む)を行い,その内容を収録・編集しコンテンツ化を行った(コンテンツ化は文部科学省教員講習開設事業費等補助金事業).10月中旬から2023年1月まで,コンテンツ化した映像をオンデマンド配信した(研修からオンデマンド配信まで文部科学省の後援をいただいた).研修内容としては,学習指導要領に沿った内容とすることに加え,特に補助金事業タイトルにある「教員免許状を保有するものの教職には就いていない者または外部人材が教職に入職する際に活用できる」ことを重視した.夏のオンライン申込者が524名,オンデマンドのみの申込者数は119名,デジタルバッジ申請者は延べ6,612名であった.
著者
大日方 太一 河本 浩明 山海 嘉之
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.926-940, 2023-04-15

人間の作業に起因するミスはときに重大な事故につながるため,作業のモニタリングシステムは有用であると考えられる.作業には全身の動作で行われるものと手元の動作で行われるものがあり,全身と手元の情報を取得可能な状況下で手元の細かな動作を含めた動作認識ができれば,システムは様々な作業のモニタリングが可能になると考えられる.そこで本研究では,作業のモニタリングシステムの実現に向け,非接触に全身と手元の情報を取得可能な状況下で全身と手元の動作を認識可能な手法の提案・研究開発を行い,実際の手洗い作業での試験を通して提案システムによる作業の実施判断の実現可能性を明らかにすることを目的とする.モニタリングが必要な作業として,手指の複雑な動きがある手洗い作業を対象に提案システムを構築した.RGB-Dカメラを用いて非接触に全身と手指の骨格三次元座標を取得し,その骨格情報から一連の作業を認識するモニタリングシステムを開発した.動作の認識に使用したモデルは,手指と全身の骨格情報のそれぞれから特徴量を抽出・統合することで,手元と全身の動作を同時に認識可能にしている.手洗い作業の試験より,提案システムは手洗い動作をF値のマクロ平均87.1%で認識でき,一連の手洗い作業を高い精度で推定し,不足した動作を正しく判定できることを確認した.以上より,提案システムによる作業の実施判断の実現可能性を確認した.
著者
栗林 健太郎 三宅 悠介 力武 健次 篠田 陽一
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.635-649, 2023-03-15

物理空間上のセンサやアクチュエータ等のデバイスとサイバー空間上の計算処理とを架橋するIoTシステムにおいては,双方向のデータフローの構成が重要な課題となる.本研究は,階層的なアーキテクチャからなるIoTシステム全体を,単一のプログラミング言語で統合的に構築することを可能とするデータフロー基盤を提案する.その実現のために解決すべき課題として,(1)IoTシステム全体を構築可能なプログラミング言語としてどの言語を選択するか,(2)選択したプログラミング言語によって多様かつ双方向性を持つデータ取得方式に対応できるか,(3)IoTシステムの階層的なアーキテクチャにおけるデータフローを見通し良く扱えるか,の3点を示した.各課題に対して,(1)各層の実装に用いるプログラミング言語としてElixirを選択する,(2)Elixirを用いて多様かつ双方向性を持つデータ取得方式に対応できる基盤としてPratipadを提案する,(3)Pratipadにおいて階層的なアーキテクチャにおけるデータフローを一望のもとに把握できる記法を提供する,という3点の提案手法により解決を図った.提案手法について,有効性および適用可能性について評価した.その結果,提案手法が本研究の目的を実現するとともに,実用的な機能および規模を持つIoTシステムの構築に適用可能であることを示した.
著者
筧 捷彦
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.179, 2023-03-15

情報入試研究会10周年を記念して,これまでの活動を振り返るとともに,次の10年に向けてやるべき課題を展望する.
著者
赤澤 紀子 赤池 英夫 柴田 雄登 角田 博保 中山 泰一
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. コンピュータと教育(CE) (ISSN:21888930)
巻号頁・発行日
vol.2023-CE-169, no.16, pp.1-7, 2023-03-04

共通教科情報科は,2003 年に「情報 A」,「情報 B」,「情報 C」の選択必履修から始まり「社会と情報」と「情報の科学」の選択必履修を経て,2022 年に「情報Ⅰ」(必履修 2 単位)と,2023 年「情報Ⅱ」(選択 2 単位)となった.これまで,情報の科学的理解に重きを置いた科目「情報 B」「情報の科学」が設置されていたが,他の科目と比べ履修の割合が少なかった.しかし「情報Ⅰ」は高校生全員が履修するため,これから「情報」を履修するすべての高校生が情報の科学的理解に重きを置いた学習を進めることになる.共通教科情報科は,小・中・高等学校の各教科等の指導を通じて行われる情報教育の中核の教科の一つであり,隣接する中学校技術・家庭科や,高等学校の他の教科と連携することで,より効果的な学習ができると考える.そこで,本研究では,教科書の索引の用語の着目して「情報Ⅰ」と数学,中学校技術・家庭科の用語の比較を行い,科目間の関係について調査分析を行い,高等学校の科目間の関連,中学校と高等学校のつながりについて述べる.
著者
森茂 智彦 山口 穂高 藤巻 吾朗 生駒 晃大
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.289-300, 2023-02-15

棚卸作業において,画像認識によって部材の数量を求めることは有用である.しかし,その精度が100%となることは保証されないため,正確な数量の把握には目視による認識結果の修正も必要である.当然この修正は速く正確に行えることが望まれる.そこで本論文では,画像を格子線で区切ることによって修正作業が効率的に行えるとの仮説を立て,検証する.木製の丸棒部材を用いて検証した結果,未検出の部材のみが含まれる画像の修正では格子線の影響が限定的であり,誤検出の印を消す修正および未検出と誤検出の同時修正が必要な画像において格子線を用いた条件で未修正数が減少した.一方で,修正に要した作業時間は格子線の有無によって変わるとはいえなかった.よって,丸棒部材において格子線は,画像認識後の修正作業を阻害する可能性は少なく,誤検出した印の修正に有効であると結論づけられる.
著者
岡藤 勇希 牧田 昌大 松村 耕平 馬場 惇 中西 惇也
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.366-376, 2023-02-15

近年では,人間の労働力のサポート手段の1つとして,コミュニケーションロボットが積極的に活用され始めている.一方で,公共空間でロボットと対話をする際には恥ずかしさが発生することが知られており,これによりロボットの利用が妨げられる可能性がある.そこで本研究では,公共空間においてロボットの利用を促進させるために,ロボット利用時の恥ずかしさの発生要因と,恥ずかしさがロボット利用に対して与える影響を明らかにすることを目的として,ロボットを利用するサクラを用いた実験を実施した.実験結果より,ロボット利用中に感じる恥ずかしさは,周辺からの注目と周辺からの理解による要因に影響を受けることが示された.また,利用中の恥ずかしさを減少させることにより,ロボットとのインタラクション時間が延びることが示された.
著者
高木 正則
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.e32-e44, 2023-01-15

本稿では,情報Iの「3.コンピュータとプログラミング」で学ぶことになっている「モデル化とシミュレーション」分野の問題として,2020年11月に公開された「情報」試作問題(検討用イメージ)の第4問「交通渋滞シミュレーション」について解説する.
著者
文部科学省初等中等教育局学校デジタル化プロジェクトチーム情報教育振興室
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.78-81, 2023-01-15

学習指導要領の改訂により,小学校,中学校,高等学校の情報教育の学習内容はより実践的な内容に改訂された.その内容は,Society 5.0時代にふさわしい,将来どんな進路に進んでも必要となる知識へと大きく変わった.その実践的な学習内容を各学校段階ごとに解説するとともに,高等学校が直面している指導環境の最新の情報など情報教育を取り巻く喫緊の課題などについて触れることとする.
著者
小宮 常康 佐藤 喬 Tsuneyasu KOMIYA Takashi SATO
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.490-494, 2021-08-15

高校では2022年度から必履修科目「情報I」の学習が始まり,情報教育の充実が図られる.それに基づいて大学入学共通テスト「情報」が加わる方針が示されている.そこで,本会第83回全国大会で開催されたイベント企画「2025年実施の大学情報入試への展望」では,情報教育と情報入試について,これまでの動向と最新情報を提供し,これからの大学情報入試へ向けた展望を議論した.本稿では,本イベントについて報告する.
著者
大鐘 勇輝 榎堀 優 梶 克彦
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.145-157, 2023-01-15

医療技術の発達による寿命の延伸と,これにともなう高齢化によって介護業界の人手不足が社会問題となっている.高齢者介護施設では日常生活の介助のほかに,健康維持を目的とした活動量の把握・管理が求められる.そこで本研究では,車椅子使用者を対象とした低コストなモニタリング手法を目指し,BLEビーコンを用いた自走・介助の判別および,活動量の推定手法を提案する.BLEビーコンから発信される電波は,距離の二乗に反比例して減衰するため,受信機との距離によって受信電波強度は変化しやすい.そこで,介助者に取り付けたBLEビーコンの受信電波強度が,各シチュエーション(介助者がいない,介助者が車椅子を押す,介助者が近くを通る)によって異なる特徴を,自走・介助の推定に,車椅子の車輪に取り付けたBLEビーコンの受信電波強度が,車輪の回転によって変化する特徴を,活動量の推定に用いた.評価の結果,自走・介助の推定は93.0%の精度で,活動量推定の指標となる車輪回転数の推定は100.0%の精度で推定できた.
著者
中山 泰一
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.73, 2023-01-15

2018年に高等学校の新学習指導要領が告示され,情報科は情報の科学的な理解に重点を置き,「情報I」と「情報II」が開講されることとなった.同じく2018年に,2025年からの大学入学共通テストで「情報I」が出題される方向性が示されたことから,都道府県市の教育委員会での情報科教員の採用が促進されることとなった.しかしながら,情報科のみを担当する教員(情報科専任教員)が少ない問題がある.情報科専任教員は発展的内容を教える「情報Ⅱ」を開講するためにも必要である.大学における情報科教員の養成はされている.都道府県市の教育委員会には,積極的に教員採用をして,情報科専任教員を増やしていただきたい.
著者
水谷 英彦
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.e18-e23, 2022-12-15

国内で多くの音楽作品の著作権を管理するJASRACがブロックチェーン技術を活用した楽曲情報管理システム「KENDRIX」を実用化する.その目的や背景は何なのか.本稿では,新たな広がりを見せる音楽活動のスタイルとJASRACが行ってきた音楽著作権管理というビジネスモデルとのギャップを埋めるためにブロックチェーン技術を採用するに至った経緯について解説する.
著者
Naoki Umeda Naoto Yanai Tatsuya Takemura Masayuki Okada Jason Paul Cruz Shingo Okamura
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, 2022-12-15

Border gateway protocol (BGP), which is known as a backbone protocol of the Internet, is constantly the target of many hijack attacks. To combat such attacks, many extensions of BGP have been developed to make BGP more secure. However, to perform experiments to evaluate their performance, most BGP extensions require the utilization of platforms, such as testbeds, with high operating costs. In this paper, we propose Scalable QUagga-based Automated Configuration on Bgp (SQUAB), a lightweight evaluation tool for protocols under development and for protocols that will be developed by a user with actual devices locally. SQUAB can configure BGP networks automatically, and thus it can significantly reduce the overhead of experiments on BGP and its extensions. Unlike conventional testbeds, SQUAB can set up BGP networks locally and its execution requires only a computational resource of a typical laptop computer. We used SQUAB in experiments to check the validity of functions based on network topologies in the real world. Our results show that SQUAB can configure a network composed of 50 routers within 52.9 seconds and consumes only 354.7MB of memory. Furthermore, as a SQUAB application, we evaluate route convergence in networks mixing BGP and BGPsec and then show that route selection differs due to BGPsec while the convergence time is stable.------------------------------This is a preprint of an article intended for publication Journal ofInformation Processing(JIP). This preprint should not be cited. Thisarticle should be cited as: Journal of Information Processing Vol.30(2022) (online)DOI http://dx.doi.org/10.2197/ipsjjip.30.829------------------------------
著者
Xuping Huang Shunsuke Mochizuki Katsunari Yoshioka
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, 2022-12-15

IoT malware Mirai and its variants continue to evolve and their activities consume network resources, particularly radio resources. This paper proposes a method to identify connection types and estimate the wireless uplink speed of malware-infected hosts observed by IoT honeypot by using the Connection Type Database of Maxmind's GeoIP2, a well-known industrial resource for IP address related information, and Network Diagnosis Tool (NDT) database, a measurement data set of the uplink speed of various networks. The proposed Mobile Network Identification method divides IP addresses into IP ranges assigned to each Autonomous System (AS), and then employs the NDT database based on the IP ranges. We analyzed the infected hosts observed by IoT honeypot to assess and validate the precision of the proposed technique. Our method estimates the maximum average uplink speed of the infected cellular host to be 40.6Mbps, which is between two reference measurement results of cellar networks, indicating the adequacy of the proposed method.------------------------------This is a preprint of an article intended for publication Journal ofInformation Processing(JIP). This preprint should not be cited. Thisarticle should be cited as: Journal of Information Processing Vol.30(2022) (online)DOI http://dx.doi.org/10.2197/ipsjjip.30.859------------------------------
著者
寺元 貴幸 小村 良太郎
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.9, 2022-12-15

高等専門学校(以下高専)は全国に国立,公立,私立合わせて57高専があります.この高専ではさまざま方法で情報処理教育を実践し学生の学びを支援しており,その学生達は進路として多種多様な企業への就職や起業,大学への編入学など多彩な選択が可能となっています.特にプログラミング教育に早くから取り組んでおり,毎年多くのコンテストを開催しています.また近年はセキュリティ教育も非常に重要と考えており,K-SECという名称でサイバーセキュリティ人材の育成を全国の高専で展開していますので,これらのようすを紹介いたします.
著者
水無田 気流
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.2-3, 2022-12-15
著者
須藤 祥代
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.19-25, 2022-12-15

本稿では情報Iの事例を取り上げている.1つ目が,単元の導入で実施している基礎知識を学習する協働学習で,主体的・対話的な学びにより,学びを人生や社会に生かそうとする態度を養うための授業デザインである.もう1つが,得た知識・技術を活用してよりよい社会を創ることを意識して思考・判断・表現をする授業デザインとして,PBL(課題解決学習)を実施しているデータの活用と情報デザインの各分野の事例である.学習サイクルを何度も回し徐々に質の高い理解を図っていくことで,知識の量を削減せず,質の高い理解を図るための学習活動の質的改善をしており,カリキュラムマネジメントや授業時数に応じた授業デザインも紹介している.