著者
徐 玉子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第46回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.68, 2012 (Released:2012-03-28)

本発表は在韓米軍基地村の米兵専用のクラブで「エンターテイナー」として働くフィリピン移住女性たちの生活に密着した参与観察とインタビューに基づいて、よく国際人身売買の犠牲者として表象される彼女たちが移住先の性産業で遂行する労働をミクロなレベルで考察する。それによって、これまであまり議論されなかったセックスワークにおける感情労働について論ずると同時に、労働過程で発現されるエイジェンシーを浮き彫りにする。
著者
吉村 美和
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第49回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.E11, 2015 (Released:2015-05-13)

旧ユーゴスラビア紛争における民族浄化は、大量虐殺、および組織的強姦や強制妊娠などの性暴力による排除が横行した凄惨なものであり今なお民族集団間に遺恨を残している。報告者は、コソボ紛争時にセルビア人男性からアルバニア人女性に対して行なわれた性暴力を対象に、性被害に遭遇した女性たちを支援しているコソボの民間施設を訪問し、紛争時の性被害とそれ以後の生活の実態について聞き取り調査を行った。その結果、アルバニア人の慣習法であるカヌン(Kanun)が、性暴力を受けた女性たちに大きな影響を与えていることが明らかになった。今回の報告では、先行研究とフィールドでの事例を照らし合わせながら、アルバニア人女性たちが経験した性被害の事例を3つ提示し、それらを分析することでカヌンと紛争時の性暴力の関係について考察していく。
著者
フィッシュ マイケル
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

This paper will explore the kinds of interventions into the Anthropocene in contemporary Japan that are enabled in the exhibits at the Nifrel aquatic and interactive zoo in Kansai.
著者
西尾 善太
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第51回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.C17, 2017 (Released:2017-05-26)

本発表では、従来の権力/抵抗といった二項対立的な空間認識の展開に対し、多様な軌跡・歴史のもつれ合いと配置として「ともに投げ込まれている空間」の可能性を考察する。具体的には、第二次世界大戦によるマニラの荒廃のなかで市井の人々によるジープニーという交通機関の発展と、近年、急激に増加した自家用車との間で発生した深刻な交通渋滞を事例とする。
著者
春日 直樹
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.98, 2018 (Released:2018-05-22)

近年の人類学では、身体と精神、自然と文化、人間と非人間などの西洋近代的な二分法を批判する代替的なアプローチがいくつも提起されてきた。本発表ではメラネシアの主にパプアニューギニアの民族誌に依拠して、ローカル・ノレッジをつうじたあたらしい二分法を提起する。「みえるもの」「みえないもの」というそれによって、(1)「私」という意識と物理世界との関係を呈示し直し、(2)人間の記号活動と対称性の論理とを関連づけ、(3)「呪術」についての新解釈を提起する。
著者
荒木 亮
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.20, 2018 (Released:2018-05-22)

本発表は、インドネシアの地方都市・西ジャワ州バンドゥンの周辺に位置するスンダ人・ムスリムの村落(K村)にて行われている憑依儀礼(クダ・ルンピン〔kuda lumping〕)について報告する。そのうえで、かかる儀礼的慣習に対する、人々のイスラームという視点に基づいた語りを手掛かりに、村落社会の発展(近代化)とイスラーム化、さらには伝統復興といった現地の生活世界を素描する民族誌的な試みである。
著者
村津 蘭
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.21, 2018 (Released:2018-05-22)

本発表は、西アフリカのベナン共和国南部の新教会の悪魔祓いを受けた女性の事例を基に、「妖術師」が悪魔祓いの中で対処されることを通して、どのように「妖術師」として具現化するのかということを言説・身体・物質の観点から描きだす。さらに、不幸の原因を判じるための卜占と比較し、悪魔祓いが相談者側の力の増大につながっている点について議論する。
著者
吉野 晃
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.22, 2018 (Released:2018-05-22)

タイ北部の山地に居住するミエン(ヤオ)は、男性中心的な道教・法教的儀礼体系を保持してきたが、〈廟〉を作り、女性シャマンが儀礼を行う新しい宗教現象が起きている。この宗教現象における女性シャマンの活動履歴と、シャマン集団を統合する師弟関係・結縁儀礼について報告する。
著者
斎藤 俊介
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.174, 2018 (Released:2018-05-22)

本発表は、北部タイのコン・ムアン社会において行われる、母系親族を基調とした出自原理にしたがい形成される祖霊祭祀集団について報告するものである。それが理念的なクランであり、実際に系譜として辿れるリネージとは乖離しているという点に留意しつつも、同じ祖霊を祀る集団、すなわち同一の母系クランに帰属する集団単位の可変性と祖霊祭祀にまつわる実践のありようについて、北部タイの社会変容との相関から考察を加える。
著者
山本 恭子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.50, 2018 (Released:2018-05-22)

イザイホーは沖縄県久高島において12年に一度、行われてきた女性が神女に就任するための儀式である。そして神女は年間20以上行われる神行事を支える重要な役割を担ってきた。しかし、イザイホーを受けるものがいなくなり、1978年を最後に行われてない。現在イザイホーを受けた神女は最も若くても70才を越える。本研究ではイザイホーを受けた女性の生涯を振り返っての語りから、イザイホーが神女に与えたものについて考えた。
著者
ガザン
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.171, 2018 (Released:2018-05-22)

本発表では、東北チベット・アムド地域及び青海チベット村落社会における死の儀礼に関する幾つかの事例を取り上げながら、先ず、死の儀礼に対する準備作業、葬儀のプロセス、死に対する宗教者が果たす役割と世俗的社会集団による経済的支援などについて述べる。そうした上で、儀礼に見られるあの世へと導く主導者・聖人と葬儀に対する精神的や経済的に支援する俗人は一体どのような関係でつながっているか、そのつながりによって行う死の儀礼がつなぐ共同性について考察する。
著者
福浦 一男
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.19, 2018 (Released:2018-05-22)

上座部仏教・精霊信仰・霊媒術が混淆する伝統的な宗教性を保持する古都チェンマイでは近年、元来互いに異なる筈の母系祖霊崇拝と霊媒術が協同してひとつの儀礼を実践する事例が増加し、他方精霊信仰の歴史的な重要性を認めて霊媒との協同作業を実践する複数の上座部仏教僧が存在する。これらの事実は、社会変動が続く現代タイ社会において現地の伝統的な宗教性を再構成し、宗教職能者を相互に連関させる実践宗教の力を示している。
著者
宇田川 彩
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

本発表は、アルゼンチン・ブエノスアイレスで行った現地調査に基づき、2011年に社交スポーツクラブで開催されたユダヤ・ブックフェアを主要な事例として、アーカイブが創るユダヤ人コミュニティについて論じる。アーカイブする単一の主体が存在せず、ローカルタームとしての「文化」的、「宗教」的なユダヤ性がパラレルに存在していることが、現代的な「コミュニティ」の在り方であることを指摘する。
著者
朱 藝
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.176, 2018 (Released:2018-05-22)

本分科会は、これまで交流の少なかった文化/社会人類学的なビジネスを対象とする研究と、ビジネス分野におけるエスノグラフィ実践とが相互に関わるための「コンタクト・ゾーン」を生み出すことを目的としている。主に、海外における日系企業や組織研究から見る人類学的アプローチの可能性と限界、ビジネスエスノグラファーから見るウェブデザインにおける文化的差違、企業へのエスノグラフィ導入・適合プロセスを議論する。
著者
石川 俊介
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

本発表では、長野県諏訪地域のケーブルテレビ局A社を事例に、ローカルメディアが地元の祭りに「当事者」として深く関わっていることについて論じる。発表者はA社の番組制作課にアルバイトとして関わりながらフィールド調査を行った。その中でA社が氏子である視聴者のニーズに即した番組制作を行っていること、氏子たちもそのサービスを祭りの一部として認識していることが明らかになった。
著者
山本 真鳥
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

サモア社会の伝統的な互酬経済は、海外への移住が広範に生じると共に、その送金がきっかけとなって大きな変容にさらされた。互酬性による儀礼交換の経済はその中で過剰に加熱してきた。その後2000年前後から、政府のイニシアチヴにより生じた、女性の伝統的な仕事の見直しと、儀礼交換縮小および「伝統回帰」の政策介入により、その制度にはさらに大きな変化が生じている。
著者
三浦 敦
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.149-171, 1990

本稿では, 日本の一村落の政治過程とその背景となる社会秩序との分析を通して, そこに働く権力過程やその相互関係を, F.Barthの企業家モデルのアイデアを使って明らかにすることを試みる。こうした日本における政治現象の過程論的視点からの人類学的研究はまだ十分とはいえない。ここで対象とするZ村は主要産業である漁業と林業の不振と過疎化に直面して新たに農業の商品化を試みようとしているのであるが, それを推進する現村長と農協理事長への支持は, その活発な活動にもかかわらず芳しくない。この不支持の理由は交換関係に基く村の社会秩序の考察を通して明らかになる。村には贈与交換と商品交換という二つの交換関係が, それぞれ異なる権力過程によって維持されている。役場と農協の活動はここに新たな交換関係を導入し村社会を変化させるものとして考えられるが, そこでの彼等の権力過程は社会秩序によって制限されるのである。