著者
山口 亮 鈴木 拓馬 山田 晋也
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

近年、気温の高い日が多く、特に夏季の最高気温が30℃を超える日が増加している。このため、原木シイタケ栽培の夏季における休養中のほだ木への影響が懸念される。そこで、自然条件よりも高い温度でほだ木を休養させ、子実体発生への影響を検討した。 シイタケ中高温性品種2種を接種したほだ木を用いて、浸水、子実体採取、休養の順番で複数回繰り返し、発生した子実体の生重量及び個数をほだ木ごとに測定した。発生は2014年5月から2015年12月にかけて8及び12回行った。休養は通常の栽培で用いられる遮光ネット下及び加温した遮光温室下(以下、遮光区、加温区)で行った。加温区のほだ木内部温度は、遮光区よりも平均で2から3℃高い状態となった。 ほだ木一代の子実体発生量は、2品種ともに試験区間で差はみられなかった。しかし、発生回ごとの子実体発生量は試験区間で差がみられる場合があり、夏季に限ると加温区における発生量は減少し、浸水から収穫までの日数が増加し、高温下での休養の影響が現れた。その後の発生回では、加温区の発生量が遮光区を上回ったことから、ほだ木への影響は長期に及ばないと思われる
著者
渡邉 章乃 佐藤 友美 矢口 行雄
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース 第114回 日本林学会大会
巻号頁・発行日
pp.362, 2003 (Released:2003-03-31)
参考文献数
2

1. はじめに 植物の葉の葉内および葉面を含めた範囲を葉圏といい(Carroll, 1977)、葉圏に生息する菌類は葉の表面に分布する葉面菌と内生菌を含め、葉圏菌といわれている(Petrini, 1991)。しかし、これらの菌類の役割についての研究はほとんど蓄積がないのが現状であり、さらに内生菌の中には、病原菌として報告されている菌類も含まれている。また葉圏菌に関する研究は葉面菌または内生菌のどちらか一方に集中していて、これらの比較検討を行った研究はほとんどない。そこで本研究は、内生菌および葉面菌と病原菌との関係のメカニズムを解明するため、葉面菌および内生菌を分離・同定し、既報の病害報告と比較検討を行い、さらに異なる樹種における菌類発生の季節的変動パターンの比較検討を行った。2. 方 法 葉面菌および内生菌を分離、同定するため、東京農業大学世田谷キャンパス内にある常緑および落葉広葉樹それぞれ4種を供試木として葉を経時的に採取した。常緑広葉樹としてトウネズミモチ、サンゴジュ、キョウチクトウ、ヤマモモの葉を、さらに落葉広葉樹としてソメイヨシノ、ウメ、トウカエデ、ニセアカシアの新葉の展開した2002年4月から12月の間に合計19回各葉をそれぞれ採取した。各樹木から1調査木につき5から8枚採取し、採取後、直ちに直径1cmのコルクボーラーでくり抜き葉ディスクを作製した。表面殺菌処理また無処理として、葉ディスク3枚を葉の表面をPDA培地に接するように置床した。各処理後、室温下で2週間の培養後にそれぞれ発生した菌類のコロニー数をカウントした。3. 結果および考察1) 常緑および落葉広葉樹の葉から分離された葉面菌と内生菌 常緑および落葉広葉樹8種の葉面菌と内生菌を検出するため、各葉の表面殺菌区および無処理区から分離された菌類を同定した結果、常緑および落葉広葉樹の供試葉からほぼ同様な19属の菌類が分離された。無処理区では、Alternaria sp.、Microsphaeropsis sp.、Cladosporium sp.、Pestalotiopsis sp.の順に高頻度で分離された。また処理区では、Phomopsis sp.、Phyllosticta sp.、Colletotrichum spp.の順に高頻度で分離された。Phomopsis sp.、は、両処理区より高頻度で分離された。またPhyllosticta sp.は無処理区からは全く分離できなかったことから葉面には生息せず、代表的な内生菌であることがわかった。これに対して、Pestalotiopsis sp.、Epicoccum sp.、Botrytis sp.、Phoma sp.、Mucor sp.、Trichoderma sp.は処理区から全く分離できなかったことから、葉内には内生できない代表的な葉面菌であることがわかった。今回行った表面殺菌法の処理区と無処理区では、処理区から分離した菌類は内生菌と特定できるが、無処理区では葉面菌と内生菌の一部が分離されることが推定された。葉面菌を分離するには洗浄法が一般的な方法であるが、本実験の結果から、無処理区から分離された菌類は明らかに処理区の分離数より多く、これらは代表的な葉面菌であるものと考えられた。このことは、Petrini(1991)により、葉面菌は葉の老化に伴い内生すると報告されていることからも推察された。2)葉面菌および内生菌の季節的変動 各処理区から分離した菌類のコロニー数の季節的変動を調査した結果、葉面菌は常緑および落葉広葉樹8樹種で、同様な結果が得られ、4月から12月までの全期間で同様なコロニー数を示した。これに対して、内生菌は、常緑広葉樹では葉面菌同様に季節的な変動はみられなかったが、落葉広葉樹では、新葉展開後、6月頃より12月にかけて増加傾向を示した。以上の結果より、葉面菌は樹種が異なっていても、同様な発生傾向を示した。しかし、落葉広葉樹の内生菌では、新葉が展開後、6月ころまでは全く検出されないことがわかった。次に各葉より発生した菌類の発生率の季節的変動を調査した結果、葉面菌は常緑および落葉広葉樹ともに同様な結果が得られた。すなわち最も高頻度で分離されたAlternaria sp.およびCladosporium sp.は4月から12月の調査中でほぼ全ての期間で同頻度に発生したが、Microsphaeropsis sp.は4月から12月にかけて減少傾向を示し、Pestalotiopsis sp.は8月以降増加する傾向を示した。内生菌では、高頻度で分離されたPhomopsis sp.、Phyllosticta sp.、Colletotrichum spp.の3属菌について比較検討した結果、常緑広葉樹ではPhomopsis sp.とPhyllosticta sp.は、4月から12月までの全期間で分離されたが、Colletotrichum spp.は4月から12月にかけて増加傾向を示した。また落葉広葉樹では、Phomopsis sp.は4月から12月にかけて減少する傾向を示し、Phyllosticta sp.とColletotrichum spp.は7月から発生がみられ、12月まで増加傾向を示した。
著者
安宅 未央子 小南 裕志 深山 貴文 吉村 謙一 上村 真由子 谷 誠
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第125回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.388, 2014 (Released:2014-07-16)

日本の森林で一般的な複雑地形の林床面では、落葉が不均一に分布し、その結果として分解呼吸や土壌呼吸の空間変動の要因となると考えられる。落葉堆積量の空間分布は、有機物量の違いによって呼吸量を変動させるだけでなく、水分に代表される環境因子を変化させることによって分解呼吸量に影響を与えるため、堆積量-環境因子関係を考慮に入れた堆積量-分解呼吸量の変動特性を調べる必要がある。本研究では、京都府・山城試験地(1.7ha)を190プロット(10×10m)に分け、落葉堆積量の測定(プロット毎にN=12)を年に3回(2,6,10月)行った。これと落葉量を変えて連続観測した分解呼吸と落葉層内含水比の結果から、落葉堆積量の空間分布が分解呼吸の時空間変動特性に与える影響の評価を行った2,6,10月の落葉堆積量はそれぞれ0.2~6.6、0.3~5.5、0.2~2.9tC/haで、流域内の空間変異が非常に高いことを示した。呼吸観測からは、堆積量によって異なる落葉層内の含水比鉛直分布が、分解呼吸の時間変動に強く影響を与えることを示した。本発表ではこれらをふまえて、複雑地形における落葉堆積量の空間分布が群落全体の有機物分解過程に与える影響の評価を試みる。
著者
安宅 未央子 小南 裕志 吉村 謙一 深山 貴文 谷 誠
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

日本の森林に多くみられる斜面林では、林床面に供給される有機物(主に落葉)の不均質な分布によって、落葉分解呼吸量は空間的に変異する。さらに、温帯林においては、落葉層含水比のダイナミックな変動に従って、落葉分解呼吸速度は時間変動する。本研究は、複雑地形が特徴的な山城試験地(京都府)において3つのスケール(①プロット・②トランセクトライン・③流域スケール)を対象に、落葉量の空間的・時間的な変動が落葉分解呼吸速度・量に与える影響を定量化した。 まず、①では、320cm<sup>2</sup>区画での落葉の含水比と分解呼吸速度の連続測定によって、落葉量がこれらの変動特性に与える影響を評価した。次に、②では、1斜面37地点(1m毎)で毎月測定された落葉量とそれを基に推定した落葉分解呼吸量の空間分布と季節変動を評価した。さらに、③複雑地形の試験地流域全体へと拡張し、流域全体(1.7ha)での落葉堆積量の観測を行うことによって、落葉分解呼吸量の代表値を推定した。以上より、落葉分解呼吸は、落葉の量とその含水比の不均質な分布を通じて、土壌呼吸の時間的・空間的な変動の重要な制御因子になることを明らかにした。
著者
河上 智也 小林 高嶺 保原 達 春日 純子 松本 真悟 阿江 教治
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

近年の研究では、土壌有機物はリグニン単体と比べて滞留時間が長い事が示されており、鉱物とのキレート結合による化学的吸着が土壌有機物を強く隔離していると考えられている。加えて、土壌有機物の分解過程において、微生物由来のアミノ酸などが増加する事から、新たに物質が生成されている事が示唆されている。 そこで我々は、分解過程で微生物により生成された物質が、鉱物の吸着により安定化し、さらに吸着の度合いによってその蓄積量が左右されると考えた。これを検証するため、吸着度合いが異なる土壌について、本来微生物に速やかに消費されると考えられるグルコースを与えた培養実験を120日間行い、土壌の吸着度合いと炭素蓄積量の関係について調べた。 その結果、グルコース濃度は短期間で急激に減少し、最終的には検出されなくなった。しかし、全炭素量をみると、添加したグルコースに対して多いものでは1/3以上の炭素が残っていた。更に、残った炭素量は吸着度合いの大きい土壌ほど高い値を示した。これらの結果から、微生物によりグルコースは別の物質に変化し、鉱物の吸着により安定化、さらに吸着の度合いによって炭素蓄積量は左右されたと考えられる。
著者
小林 高嶺 河上 智也 保原 達 春日 純子 松本 真悟 阿江 教治
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第127回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.399, 2016-07-08 (Released:2016-07-19)

土壌有機物は非常に多様な構成を示すと考えられていたが、近年の研究から一部の土壌有機物は微生物由来のものに徐々に置き換わりながら、一部のアミノ酸組成や構成成分が似た物質へと収斂していく可能性が示唆されている。本研究では、土壌分解物に収斂性があるのかを検証することを目的とし、まず新鮮な桜島火山灰にグルコース、ミズナラ、トドマツの異なる3種類の有機物を添加し120日間の培養を行った。さらに0,30,60,120日目において各土壌を20g採取しKCl、超純水、リン酸緩衝液による逐次抽出を行い、抽出液において有機物の分解生成物や土壌中のアミノ酸組成の変化について検証を行った。その結果、全炭素においてはグルコース区では30日目までに減少がみられたが、ミズナラ区、トドマツ区に大きな変化は見られなかった。一方、全窒素では、グルコース区、ミズナラ区では大きな変化は見られなかったが、ミズナラ区で大きな増加がみられ、微生物の活動により窒素固定が行われたと推測された。これから土壌有機物の分解生成物にC/N比的な収斂は見られなかった。発表では、アミノ酸分析の結果も交えて考察を加えていく。
著者
安藤 正規 柴田 叡弌
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.131-136, 2006-04-01 (Released:2008-01-11)
参考文献数
45
被引用文献数
6 6

本総説において, シカ類による樹木剥皮発生の特徴とシカ類が剥皮を行う要因について総合的に検討した。シカ類は剥皮をする際に樹種を選択しており, この選択性は森林の樹木構成に影響を与えていた。世界中の多くの研究報告においては, シカ類による剥皮は冬季の餌不足が原因であるとされていた。一方, いくつかの研究報告においては冬以外の季節に発生する剥皮について, 実験的な証明はないものの, ルーメン胃内環境の適正化を目的として樹皮を採食しているという可能性が示唆されていた。今後この点について明らかにしていくためには, 飼育シカ類を用いた実験研究および野生シカ類のルーメン胃内環境の詳細な調査が不可欠である。また, 「シカ類が反芻動物としての消化生理をもつ」という視点をもつことは, シカ類の採食生態を研究していく上で新たな発想を与えてくれるであろう。
著者
小見山 章 中川 雅人 加藤 正吾
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.220-225, 2011 (Released:2011-12-29)
参考文献数
25
被引用文献数
3 18

樹形法則を構造的・力学的に解析した既往のパイプモデルと静力学モデルに基づいて, 日本の冷温帯林を構成する樹木について, 様々な場所や樹種に共通して適用できる相対成長関係が存在するかどうかを検討した。岐阜県の冷温帯林2カ所で, 20種81本の樹木 (最大DBH: 61.9 cm) を伐倒して地上部重と, それらを含む12種19本について根系 (最大DBH: 72.3 cm) を掘りあげて根重を調べた。他の研究者が公表した冷温帯樹種における地上部重と根重のデータと比較対照した上で, 地上部重 (22種157本) と根重 (13種33本) を用いて, 2種類の相対成長式を誘導した。幹比重を使用したモデル誘導型の共通式は, その推定値に地上部重で12.59%, 根重で17.67%の相対誤差があった。これら共通式の相対誤差は, 以前から使用されてきた従来型の通常式の相対誤差 (それぞれ18.62%, 22.25%) より小さかった。提案する共通式は, 冷温帯林で現存量や成長量を非破壊的に求める際に, 場所や樹種に対する汎用性, および推定値の再現性を相対的に高める手段になる。
著者
岡本 透 伊藤 優子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

2014年9月27日に長野県と岐阜県境に位置する御嶽山山頂の西〜南西斜面の地獄谷谷頭部で水蒸気噴火が発生した。その後、噴火活動は低下したものの、噴煙の発生は現在も継続している。降水および渓流水の水質に対する御嶽山の噴火の影響を把握するため、降水を週一回、渓流水を月一回程度の頻度で採水し、水質のモニタリングを行っている。火口の南東に位置する降水採水地点では、冬の季節風が強まると火山ガスの影響と見られるpHの低下、塩化物・硫酸イオン濃度の上昇が生じた。噴火と同時に噴出した火口噴出型泥流に起因する土石流が発生した長野県王滝村濁沢川では、土石流の発生直後から渓流水水質に著しいpHの低下とECの上昇が生じた。その後、積雪期にはpHが上昇し、ECが低下して安定したが、融雪期以降は増水時にpHが低下した。一方、火山灰降灰域である火口の東側では、2015年の梅雨期以降増水時に著しくpHが低下する渓流が認められるようになった。これらのことは、御嶽山周辺の流域における火山噴出物の渓流への流入は、積雪に覆われている状況では抑制され、積雪に覆われていない状況では降雨によって促進されることを示していると考えられる。
著者
飯島 勇人 長池 卓男
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

近年、ニホンジカが個体数を増加させている。それに伴い、ニホンジカによる植生の摂食圧が高まり、植栽木にも深刻な被害が出ている。効率的にニホンジカによる摂食を防止するためには、ニホンジカによる摂食リスクを定量的に評価し、優先度を付けた対策を実施する必要がある。本研究では、広葉樹植栽地を対象とし、ニホンジカ密度、防除方法(防鹿柵とそれ以外)、植栽後経過年数が植栽木の生残に与える影響について検討した。山梨県内の過去6年以内に植栽された広葉樹造林地を対象に、各調査地で100個体の植栽木の生残、樹高を調査した。また、山梨県内で収集されているニホンジカ密度指標に一般化状態空間モデルを適用し、植栽地周辺のニホンジカ密度を推定した。植栽木の生残は、推定したニホンジカ密度が高く、防鹿柵以外の防除方法であり、植栽後年数が経過しているほど低かった。防鹿柵以外の防除方法で平均的な植栽年が経過している場合、ニホンジカ密度が11.2頭/km2での植栽木の生残率は50%と推定され、21.7頭/km2での植栽木の生残率は10%と推定された。今後は、周辺環境や植栽樹種が植栽木の生残に与える影響を明らかにする必要がある。
著者
内山 憲太郎 加藤 珠理 上野 真義 鈴木 節子 須貝 杏子 松本 麻子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

高速シークエンサーやSNPアレイの登場により、ゲノム情報の乏しい生物種においてもゲノムワイドな遺伝解析が比較的容易に行えるようになってきた。しかし、多検体に対して、数千~数万の遺伝子座のタイピングを行うのは未だコストがかかる。その一つの解決策として、制限酵素断片配列の網羅的解析がある(RADseq:Restriction-site Associated DNA sequencing)。本報告では、頻度の異なる2種類の制限酵素組み合わせを用いることで、ゲノムサイズの小さな種から大きな種まで、比較的自由度高くデータ量と解析遺伝子座数を調節できるddRAD(Double Digest RAD)の手法を日本産の14樹種に対して適用した結果を報告する。解析に用いた樹種のゲノムサイズは0.3~19.4Gbの範囲である。12種類の制限酵素の組み合わせを試した結果、7種類の組み合わせにおいて比較的良好なデータが得られた。いずれの樹種においても、数千~数万座の1塩基多型が検出された。一方で、特にゲノムサイズの大きな樹種においては、制限酵素の選択がデータ量に大きな影響を及ぼすことがわかった。
著者
深山 貴文 森下 智陽 奥村 智憲 宮下 俊一郎 高梨 聡 吉藤 奈津子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.98, no.2, pp.59-64, 2016-04-01 (Released:2016-06-14)
参考文献数
17
被引用文献数
2

森林土壌のテルペン類の放出特性に関する研究は少なく,特に空間分布特性の評価が必要とされている。本研究はアカマツ林床が放出するテルペン類の主成分であるα-ピネンについて,その放出量を測定するための土壌チャンバーを開発し,空間分布特性と変動要因について検討した。野外観測の結果,樹幹からの距離とα-ピネン土壌放出量の関係性は方位の違い,個体差に関わらず認められなかった。アカマツのリター堆積量とA0層上の放出量の間には関係性が認められなかったが,リター堆積量とリター除去後に測定したA層上の放出量との間には春秋共に正の相関が認められた。室内実験で十分にリターを撹拌した場合,リター量とリターの放出量の間には線形的な関係が認められた。アカマツ林床では特に春に高い放出量が観測されるが,これはA0層上に存在する樹脂成分が放出量の不均一性をもたらすと共にその高い放出の原因となっている可能性が考えられた。
著者
日暮 悠樹 谷口 真吾 松本 一穂
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第127回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.234, 2016-07-08 (Released:2016-07-19)

【研究目的】亜熱帯広葉樹林の天然下種更新地での微地形の違いが更新実生の動態に及ぼす影響を4成長期間、継続的に調査した。【方法】調査地は、沖縄島北部の70年生常緑広葉樹林(2011年10月に4.8haを皆伐)と伐採地に隣接する残存林である。調査は、残存林内の林床と伐採面の微地形(凹、凸)ごとの林床に実生調査プロット(凹斜面16㎡、凸斜面16㎡、林内12㎡)を設置し、2012年から2015年までの成長期ごとに林床に発生した実生をナンバーリングした。【結果と考察】更新実生の凹斜面での出現種数は成長期ごとに増加し、遷移後期種の定着が年々増加した。凹斜面の成長期ごとの出現本数は凸斜面に比べて1.3から1.9倍多かった。一方、更新実生の凸斜面での出現種数は4成長期とも凹斜面よりも多かった。凸斜面の出現本数は4成長期とも凹斜面、林内よりも少なかった。凹、凸斜面における更新実生の平均樹高は成長期ごとに常に凹斜面が凸斜面よりも高かった。また、凸斜面は凹斜面に比べて、更新実生の成長が遅い傾向であった。この結果、凹斜面は凸斜面に比べ、遷移後期種が新規に加入、定着後に成長しやすい環境であると推察された。
著者
陳 碧霞
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第127回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.3, 2016-07-08 (Released:2016-07-19)

This study investigated residents’ attitudes toward tourism development in nature reserves. Local people have a very positive attitude towards ecotourism development, and considered that they could benefit from the economic activities related to tourism. Residents were supportive of the conservation of natural resources, preservation of culture, sustainable community development, and community participation in ecotourism planning and management. Socio-demographic characteristics also influenced residents’ attitudes, for example, younger and more highly educated community members were more likely to support learning more about natural and cultural resources and landscapes. The results suggest that the relevant government agencies should invest in training residents, particularly young, well-educated residents, so they are able to take up alternative employment in the tourism industry in protected areas, such as ecological tour guides and nature interpreters.
著者
亀山 統一
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第127回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.379, 2016-07-08 (Released:2016-07-19)

琉球列島のマングローブ林において、メヒルギKandelia obovataは、林縁部や林外では低樹高で、しばしばテーブル状の薄く平らな樹冠をなす。このテーブル状樹形の個体の樹冠上部は、大潮の満潮時における冠水位置とよく一致している。大潮の満潮時の潮位よりも少し高い位置にまで伸長したメヒルギ枝では、頻繁に頂芽や当年枝の壊死が起こり、ときに枝の枯れ下がりが起こって、テーブル状の樹形が形成・維持されている。 西表島及び沖縄島のマングローブにおいて、それら壊死過程に関与する菌類について検討した。枝の枯れ下がりには、メヒルギ枝枯病が強く関与していた。成木では、本病は冠水面の直上ばかりか、日々冠水する樹冠下部でも感染発病し、枯死枝には高率で分生子殻を形成した。一方、稚樹では枝の枯れ下がりはまれであった。成木でも稚樹でも、頂芽や当年枝の壊死部位では、Pestalotiopsis sp.などメヒルギ枝枯病と異なる多様な菌が分離された。それらは、健全部位の優占的な内生菌とは異なった。分離された菌類について、菌叢の類別化を進めるとともに、シークエンスによる種の推定を試みたので報告する。
著者
谷口 真吾 日暮 悠樹 松本 一穂
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第127回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.524, 2016-07-08 (Released:2016-07-19)

【研究目的】林冠が閉鎖した亜熱帯常緑広葉樹林の林床における天然下種更新(前更更新)の実態把握と前更更新由来の実生の動態を調査し、林分の後継樹としての消失種、加入種、生存種の生活史特性を考察した。【方法】調査林分は4.8haの皆伐地に隣接する70年生常緑広葉樹林である。伐採地の林縁から林内に直線距離で30m以上入った斜面上部と中腹部の林内に10×10mの毎木調査プロットを3区設置し上層木の胸高直径、樹高の計測と個体識別を行った。実生調査プロットは毎木調査プロットに近隣する林床に1×1mのプロットを12㎡設置した。皆伐から2成長期経過後の2013年から2015年まで成長期ごとに林床に生育する実生をナンバーリングし、加入種と消失種の動態と定着実生の成長量の変化を調査した。【結果と考察】3成長期とも加入種、消失種はそれぞれ10種以下で変動した。上層木の構成種と林内に更新した前更更新実生の種組成は類似度が高かった。新規の加入種は被食散布型の種子をもつ樹種が多かった。台風攪乱による林冠層の葉量の低下に起因する林内の光環境や林床の水分状態の変化が加入種、消失種の動態に影響を及ぼすことが推察された。
著者
錦織 達啓 伊藤 祥子 辻 英樹 保高 徹生 林 誠二
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.97, no.1, pp.63-69, 2015-02-01 (Released:2015-04-07)
参考文献数
32
被引用文献数
4 10

林床からの137Cs流出の起きやすさを知るため,福島県内の林床被覆状況が異なる四つの林分を対象に,斜度37~39°の斜面に3 m2の試験プロットを設け,2013年5月から10月の145日間,表面流出水に含まれる懸濁態および溶存態137Csを観測した。137Csは最大でも土壌蓄積量の1.1%しか移動しなかったが,その移動量はプロット間で最大10倍異なり,ヒノキ林で最も多く,次いで落葉広葉樹林,アカマツ林,スギ林となった。移動した137Csの96%以上が懸濁態であり,土壌侵食量は下層植生や有機物層に乏しいプロットで多かったことから,林床被覆量が137Cs移動量に強く影響したと推察された。表面流出水と近傍の渓流水中の懸濁物質の双方において,137Cs濃度と有機物量の間に正の相関が確認された。これにより,渓流水中の137Csの一部が林床起源であること,その林床起源の137Csは主に有機物層に由来していたことが示唆された。ヒノキ林は林床被覆に乏しい傾向にあるが,福島県には少ないため,最も広く分布する広葉樹林の林床被覆状況が森林からの137Cs流出に大きく影響すると考えられた。