著者
池田 茂
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.192-195, 1955

鳥取県岩美郡,鳥取市,及び気高郡内の海岸砂丘地における被覆植物並びに海岸砂防造林木(幼令木)の寄生菌について調査研究したが,要約すればつぎの通りである。<br> (1) 被害被覆植物<br> コウボウムギ,ハマゴウ,ハマボウフウ,イヌムギ,<br> スナビキソウ,ケカモノハシ,ハマニガナ,ナデシコ,<br> ハマヒルガオ,ウンラン,オオ分マツヨイグサ,アキノキリンソウ,<br> トメムカシヨモギ。<br> 被害造林木(幼令)<br> ニセアカシャ,ポプラ。<br> (2) 見出された病原菌<br> <i>Alternaria, Macrosporium, Diplodia, Phyllosticla, Botrytis, Bacterium</i>.<br> (3)病原菌で最も多いのはAlternaia で Macroporium や Diplodia, 細菌類がこれに次いでいる。また原因不明(生理病)の病害もかなり多い。
著者
田中 博春 小熊 宏之
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.114, pp.280, 2003

I. はじめに 分光日射計データから得られる各種植生指標の季節変化を、CO2吸収量ならびに葉面積指数の季節変化と比較した。データは、国立環境研究所苫小牧フラックスリサーチサイト(カラマツ人工林)のタワーデータを用いた。・各種植生指標:全天分光日射計 英弘精機MS-131WP使用。地上高40mに設置した上向き・下向きの日積算日射量より各種植生指標値を算出。波長帯は、可視(Ch3:590-695nm≒ 赤)と近赤外(Ch5:850-1200nm)の組み合わせ[図1-a]、ならびに可視(Ch2:395-590nm≒青・緑)と 近赤外(Ch4:695-850nm)の組み合わせ[図1-b]の2通りを用いた。・CO2フラックス日中積算値:クローズドパス法非分散型赤外線分析計Li-Cor LI-6262使用。地上高27m 9:00から16:30までの30分値を加算、日中の積算値とした[図1-c]。・葉面積指数(LAI):光合成有効放射計Li-Cor LI-190SB 地上高1.5mと40mの下向き光合成有効放射量(PAR)の日積算値の比から、Lambert-Beerの式を用いPAI(Plant Area Index)を算出。落葉期の測定値を減じLAIとした [図1-d]。II. 日中CO2フラックスと植生指標GEMIの整合性[図1-c] Ch2とCh4から求めた植生指標GEMI(Global Environmental Monitoring Index)の季節変化と、日中積算CO2フラックスの極小値を結んだ包絡線の季節変化の間によい一致がみられた[図1-c]。特にカラマツの萌芽後のGEMI値の急増時期や、展葉に伴うGEMI値の増加傾向が、CO2フラックスの変化傾向とよく一致している。ただし紅葉期は両者は一致しない。これは、光合成活動が低下した葉が落葉せずに残るためと思われる。III. 各種植生指標の季節変化 [図1-a,b] これに対し、植生指標としてよく用いられる正規化植生指標NDVI(Normalized Vegetation Index)は、CO2フラックスの季節変化傾向と一致しなかった。NDVIは春先の融雪に伴う値のジャンプがあり、また6__から__10月の活葉期に値がだいたい一定となる。この特徴は、Ch3とCh5から求めた図1-aの4つの植生指標も同様であった。しかし、Ch2とCh4を用いた図1-bのGEMIと、近赤外と可視の差であるDVI(Difference Vegetation Index)にはこれらの特徴がみられず、CO2フラックスの季節変化傾向と同様に萌芽後に値が急増し、6月にピークを迎えた後なだらかに減少した。IV. 葉面積指数LAIと植生指標GEMIの整合性 [図1-d] 葉面積指数(LAI)が正常値を示す、積雪期以外のLAIの季節変化を、Ch2とCh4によるGEMI(≒CO2フラックスの季節変化)と比較すると、カラマツ萌芽後の展葉期にはGEMIより1__から__2週間ほど遅れてLAIの値が増加した。タワー設置のモニタリングカメラの日々の画像の変化を見ても、カラマツの葉の色の変化が先に現れ、その後に葉が茂ってゆく様子がわかる。 萌芽後、LAIは直線的に増加するが、GEMIの増加は立ち上がりは急なものの徐々に増加量が減ってくる。これは、萌芽後LAIの増加とともに葉の相互遮蔽が生じ、下層まで届く光量が減少するため、群落全体としての光合成活動が低下することが原因と思われる。 他にも、今回の測定方法ではLAIとしてカウントされていない林床植物のCO2フラックスの影響等が想定される。<CO2フラックス・LAIデータ提供: 産業総合技術研究所 三枝 信子・王 輝民>
著者
藤原 敬 鈴木 春彦 速水 亨
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

森林管理の義務と支援を直接対象とした国際約束をめざした国際森林条約の不調を背景に、市場を通じたアプローチが、国際的な持続可能な森林管理達成の一つの方向性を示すものとなった。第三者認証による「森林認証システム」、行政の森林法の手続きをベースとする「合法性証明システム」など、である。これらのシステムは日本市場で一定の役割を果たしているが、コスト効率性と信頼性を巡り議論がある。効率的で信頼性のあるシステムを構築する視点で、両者のシステムを、分析・評価する。森林経営の評価手続きを、①FSCの森林認証要求事項と、②森林法の森林経営計画の認定要求事項を比較検討すると、後者は運用実態として、生物多様性保全・労働安全分野・事業者への注意義務などの面で不足している面が多い。ただし、森林経営計画の記載様式は柔軟にできており、実質的な認定の基準となっている市町村森林整備計画との連携で、持続可能な森林管理のツールとしてさらに発展する可能性をもっている。森林経営計画とセットになった合法証明システムのサプライチェーン管理の効率性・信頼性の評価と合わせて、さらなる検討が必要。
著者
楢崎 達也 美濃島 浩 廣田 智行 森下 勝典 林 貴康
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

団地化は20年前から必要性が叫ばれている林業振興に必要不可欠な取組だが、進捗は全く芳しくない。理由の一つは団地化のための手法が見出されなかったことである。森林組合の業務を「森林管理サービス」業と定義し、団地化を民間企業で行われる「営業活動」だと定義すれば手法が見える。計画的且つ効率的な団地化を行う上では、森林所有者が納得しやすい施業提案が必要。現在の課題は次。①紙プラン書ではプランナーは説明しにくく所有者は理解しにくい、②作業Before、作業内容、作業Afterを十分に見せてない、③プラン書の作成がシステム化されておらず非効率、④「提案型」としながら1つの提案の「押し付け営業」、⑤お客様の要望に応える仕組みでない。解決のため「真の提案型営業」をコンセプトに,タブレットPCによる提案営業支援アプリを開発。これにより、視覚的にわかりやすい提案を、森林所有者と相談し妥協点を探り、その場でプラン書を修正し、仮契約を結ぶ。プランナーには、無理なプラン書作成の軽減、ポイントを得た定型的な説明等のメリットがある。説明をしにくい「森林管理サービス」業であるからこそ、ITの活用が有効である。
著者
水本 晋
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.284-287, 1955

本研究はコデイワカイガラタケ,ヒロバノキカイガラタケ,キチリメンタケ及びキカイガラタケの4種に対する,シラカシ,オニグルミ,カツラ,クリ,シラカンパ,スズカケノキ,ヤナギ等7種の広葉樹材の耐朽力を28&deg;Cの定混器内において比較したものであつて,実験結果の概要は下記の如くである。<br> 1. 供試材片上における菌糸の発育は,キチリメンタケが最も良好で,キカイガラタケは不良,コゲイロカイガラタケ及びヒロバノキカイガラタケは発育中位であつた。<br> 2. 心材は一般に配朽力が強く,なかんずくクリ心材は最も強大であつた。これに反し,各辺材は一般に耐朽力が弱く,なかんずくシラカンバ及びヤナギの辺材は全供試材片中最も激しく腐朽した。<br> 3. 自然界に於て,一般に針葉樹材を侵害するものとされているコゲイロカイガラタケ及びキチリメンタケは実験室内の条件下では広葉樹材にも強い腐朽力を示し,亀裂性褐色朽を基因した。而してヒロハノキカイガラタケの腐朽力は梢々弱く,キカイガラタケは最も弱かつた。
著者
坂 拓弥 山本 清龍
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第127回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.798, 2016-07-08 (Released:2016-07-19)

2013年,環境省はグリーン復興の一つとして,青森県八戸市蕪島から福島県相馬市松川浦までの区間を地域の自然や暮らし,利用者と地域の人々などを「結ぶ道」とするため,みちのく潮風トレイルの整備を開始した。トレイルには震災復興の役割に加え,交流人口の増加や観光復興が期待されており,今後,地域の受入体制の構築,強化が必要である。そこで本研究では,青森県八戸市から岩手県久慈市までの区間を対象に,①三陸沿岸部の来訪者,実際にトレイルを歩いたハイカー,受入側であるトレイルサポーター,地域の関係者の4者のトレイルに関わる意識を明らかにすること,②トレイルの管理と地域の協働に関する課題を明らかにした上で協働の方向性を論考することの2点を目的とした。研究結果から,来訪者のトレイルの認知度は低いものの利用意向には前向きなこと,ハイカーは道迷いに不安を感じ,案内標識の整備を期待していること,サポーターは活躍の場を求めていることが明らかになった。さらに,地域の関係者へのヒアリング等から,協働の方向性としてサポーターの連携と協議の場の必要性が示唆された。
著者
佐原 奈々美 中村 俊彦 逢沢 峰昭 大久保 達弘
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.100, no.4, pp.102-109, 2018-08-01 (Released:2018-10-01)
参考文献数
43
被引用文献数
2

亜高山帯落葉樹林の実生の発生・定着におけるコケ群落の役割について明らかにするため,日本中部の亜高山帯において常緑針葉樹林の伐採約60年後に成立した落葉広葉樹優占林の森林構造および実生・稚樹の発生・生育状況についての調査を行った。その林分ではダケカンバ等の落葉広葉樹が高木層・亜高木層に優占し多量の種子を生産しているにもかかわらず低木層以下では落葉広葉樹よりシラビソやオオシラビソ等の常緑針葉樹が優占していたことから,今後この林分の常緑針葉樹林への遷移が示唆された。林床では地表面でカニコウモリ型とコミヤマカタバミ型の草本群落,また倒木上ではキヒシャクゴケ型とタチハイゴケ型のコケ群落が存在した。倒木上の2種類のコケ群落では多くのシラビソとオオシラビソの実生・稚樹がみられ,その高さと年齢はキヒシャクゴケ型よりタチハイゴケ型で高かった。シラビソとオオシラビソの実生・稚樹の成長を調べ,またシラビソの種子落下および播種試験を実施した結果,コケ群落による落下種子の捕捉および発芽床としての効果が確認され,亜高山帯林での常緑針葉樹の実生・定着に倒木上のコケ群落が大きな役割を果たしていることが明らかになった。
著者
根田 遼太 井上 純大 中村 健太郎 堀 隆博 渡辺 晋二
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.126, 2015

2011年3月に発生した東日本大震災の津波被害を受けた東松島市沿岸部(宅地、畑地等)を対象に、被害後3年半経過した植生及び土壌状況(化学性、物理性)の調査を行ったので報告する。東松島市沿岸部8箇所において周辺域の植生を調査し、長谷川式土壌貫入計を用いた土壌硬度の測定及び0-10cm、10-20cm、20-30cmの深さごとの土壌化学性(pH、電気伝導度、C/N比、土壌塩類)を測定した。<br> 調査地の植生は、木本種の出現はほぼニセアカシアのみであり、草本種ではセイタカアワダチソウなどの外来種が優占した。ニセアカシアの樹齢は3年であったため、津波被害直後に成立した可能性が高い。土壌硬度は植物生育に概ね良好な値を示したが、化学性は一部で土壌塩類、pH、C/N比などが植物生育にとって異常値を示した。津波被害を受けた沿岸部は3年半経過した現在でも海水の塩の影響が残っていると見られる場所が存在し、土壌改良および適切な植生誘導がなければ、旺盛な繁殖力と塩類堆積土壌への適応性の高さによりニセアカシアの優占する景観となる可能性が高いと考えられた。沿岸部の正確な植生動態の予測には、今後の詳細かつ広域な調査が必要である。
著者
徳岡 良則 早川 宗志 木村 健一郎 高嶋 賢二 藤田 儲三 橋越 清一
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.126, 2015

足摺宇和海国立公園内の愛媛県愛南町鹿島にはアオギリの樹林が約6 haあり、貴重な群落としてその重要性が指摘されてきた。アオギリは豊後水道沿岸域に点在するが、遷移系列上の位置づけや過去の資源利用に関する知見は限られている。対象地域におけるアオギリの分布を調査した結果、本種は撹乱地に早期に分布を拡大する先駆樹種的性質が示された。地域住民の証言では第二次大戦前後には主にアオギリの繊維から綱を作り農具や漁具等の材料とし、一部の個体は山地斜面、耕地境界、人家裏に植栽されていた。アオギリにはジョウドノキ、ジョウドギ、アオギ、カタナギ(愛媛県佐田岬)、ヘラ(愛媛県由良半島、大分県津久見)、イサキ(高知県大月町、大分県蒲江、宮崎県北浦)の地域呼称があった。漁村でのアオギリの採取・利用法や個体管理に関する証言、豊後水道を挟んだ大分県と愛媛県や高知県に共通したアオギリの地域呼称が存在することは、沿岸集落に現存するアオギリの一部は、海路を通じた植物利用文化の伝播に由来する可能性を示唆している。資源利用の役割を失ったアオギリは、現在点在する成木を種子源として、周囲の陽地へ今後も定着していくと予想される。
著者
原田 盛重
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林學會誌
巻号頁・発行日
vol.22, no.7, pp.390-392, 1940

1) ランシンボク.テレピンノキの乳液は中性にして,全く毒性を有せず。<br> 2) タイトウルシ,アンナンウルシ,マンゴウは酸性反應を呈し,その中タイトウルシ,アンナンウルシは毒性強く,マンゴウは僅かなり。<br> 3) ランシンボク,テレピンノキの乳液中の蛋白質の結晶は五角形,六角形をなし結晶が僅かなり。<br> 4) タイトウルシ,アンナンウルシ,マンゴウは蛋白質の結晶が槍状,圓錐状,角柱状をなし,結晶の數が比較的多く,タイトウルシに特に特微ある結晶を有す。
著者
矢竹 一穂 秋田 毅 中町 信孝 本間 拓也 前田 重紀 水越 利春 河西 司 阿部 學
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース 第115回 日本林学会大会
巻号頁・発行日
pp.P3053, 2004 (Released:2004-03-17)
参考文献数
2

新潟県十日町市珠川の林地、開放地、道路が混在し、連続した林分と分断・孤立した林分が分布する地域におけるリスの分布と林分の利用状況について、給餌台の利用状況調査とテレメトリー法により調査した。発信機を装着した4個体の夏_から_秋季の行動圏には1)連続した林分を利用、2)分断・孤立林分内で完結、3)複数の分断・孤立した林分間を移動して、利用する3タイプがみられた。車道上の轢死事例があり、孤立林分間の移動の延長として、今後も道路横断の可能性が考えられる。
著者
土井 裕介 尾形 信行
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.129, 2018-05-28

<p> 近年、局地的な豪雨に伴う土砂災害とともに、山地渓流域から流木等が流出する流木災害が問題となっている。渓流内には、様々な腐朽段階の倒木が存在しており、直径や長さ等の形態的な特徴とともに腐朽段階が倒木の挙動に影響することが指摘されている。そのため、山地渓流域における腐朽段階ごとの倒木の蓄積量や、それと集中豪雨前後における挙動との関係を把握しておくことが、今後の対策立案のために重要であると考えられる。そこで、本研究では、倒木の腐朽段階等の形態的特徴と集中豪雨前後の倒木の移動等の状況を調査した。大阪府の北部、中部、南河内、泉州の各地域の4渓流を調査地とし、2017年2月に各渓流における直径10cm以上の倒木の長さ、直径、位置、樹種、腐朽段階、渓流への移入状況、流向となす角を記録し、2017年10月の台風第21号、第22号通過後に再度調査を行った。 その結果、倒木の長さが短いほど集中豪雨後に大きく移動する傾向が見られた。発表では、倒木のその他の形態的特徴と倒木の移動に関する解析結果を示し、山地渓流域における倒木の挙動について議論したい。</p>
著者
江草 智弘 佐藤 貴紀 小田 智基 鈴木 雅一 内山 佳美
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第127回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.133, 2016-07-08 (Released:2016-07-19)

森林小流域においては、地下水が流域界を越えて移動し、流量・水質形成に大きな影響を及ぼす。既存の地下水移動量を求める研究の多くは年水・物質収支を用いており、年より短い期間の移動量を求めた研究は少ない。短期水収支法は、「流量が同程度の2時点では、流域内の水貯留量の差は無視できる」と仮定する。その結果、2時点間の損失量(蒸発散量と地下水移動量の和)は期間降水量-期間流量によって算出される。本研究の目的は、短期水収支法を用い、年より短い期間の地下水移動量を明らかにすることである。我々は神奈川県丹沢山地に位置する大洞沢流域(NO1; 48ha, NO3; 7ha, NO4; 5ha)を対象とした。2010-14の5年間、降水量・流量の観測を行い、短期水収支法を適用した。今までの研究により、NO1では年間の地下水移動量が小さいことがわかっている。従って、我々はNO1の損失量は蒸発散量を表すと仮定し、NO3, 4の損失量からその値を減じ、地下水移動量を算出した。夏季を中心に、NO3では地下水が流域外に流出しており、NO4では逆に流入していた。いずれの流域でも期間降水量と地下水移動量に相関があり、降雨に伴う地下水位の上昇による地下水流入量の決定が示唆された。
著者
若原 妙子 石川 芳治 服部 恭也 森山 希美 臼井 里佳 岩﨑 紀子 船木 健
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.128, 2017

<p>降雨量は自然環境を評価するための基本データであり、水資源量の把握や土砂災害予測の指標として欠かせない。地上で直接降雨を観測する雨量計は、無風で上空が開けた平地に設置することが理想とされる。しかし実際の雨量観測値には、地形や風、雨量計の受雨面積など様々な影響が加味されている。本研究では東京都大島町(伊豆大島)の草地斜面に通常の転倒マス型雨量計、受雨面積が転倒マス型雨量計の約40倍である雨量検定装置および風向風速計を設置し、降雨、風および受雨面積が降雨捕捉に与える影響を調査した。その結果、降雨イベント毎の雨量は、雨量検定装置のほうが雨量計より約6-8割多かった。降雨量15-80mmの中程度の降雨イベントでは、風速が強まると雨量計の降雨捕捉率は低下した。平均風速5m以上では、雨量計の降雨捕捉率は約5割まで低下した。また、大きな降雨イベントで雨量捕捉率は低下した。強雨・強風下で計測された雨量には捕捉損失が多く含まれると考えた。降雨と風速は関係するため、今後は短い時間分解能で捕捉率を解析するとともに、斜面向きと風向の影響を解析する。</p>