著者
阿部 真 阿部 篤志 齋藤 和彦 高嶋 敦史 安部 哲人 高橋 與明 宮本 麻子 小高 信彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>沖縄島北部やんばるに固有の着生ラン、オキナワセッコク(<i>Dendrobium okinawense</i> Hatusima et Ida)は、地域を代表する植物種のひとつだが、森林伐採や乱獲により激減したとされる。発表者らはこれまで、着生木(ホスト)について樹種の選好性を明らかにし、また、林分情報の整理から分布における成熟林の重要性を指摘した。本研究は、2015(平27)年から2018年にかけて確認した野生株の情報をさらに集積し、林分履歴や地形との関係を解析した。これによって同種の分布をより正確に把握すると共に、立地条件を明らかにし、希少種の適切な保護・回復のために有効な森林管理を検討する。研究は(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(4-1503及び4-1804)の支援を受けた。また、環境省の調査資料(やんばる地域希少植物生育状況調査、平27〜28)の提供を受けた。</p>
著者
大島 順子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p> 世界自然遺産登録を目指す「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」が、2018年5月国際自然保護連合(IUCN)から登録延期の勧告を受け、日本政府が登録推薦を取り下げたことは記憶に新しい。行政が主導してきたこれまでの取組みに対し、多くの地域住民は登録に向けて様々な不安や危機感を持ち合わせている状況下にある。それは、「登録だけ」が目的にされ、そこに暮らす生活者の視点からの世界遺産の意義やその影響が具体的に語られないことも一因と言える。 筆者は、以前より地域の指導者と共にやんばるの森及びそこに生息する動植物の環境保全とその利活用において潜在的に地域が抱える課題について検討し、その解決に向けた取組みとして多様な学びの場を企画・運営している。今回は、やんばるの森の管理体系および林業に従事している人々に対する理解を深め、やんばるの森の活用の在り方を探ることを目的とした大学主催の公開講座の成果を報告する。世界自然遺産候補地の自然環境はそこに住む人々の生活の場でもあり、そこで林業に携わる人々と都市部に住む人々との間で体験型の学びの交流を通した再文脈化を図る学習の場としての機能を持ち合わせている。</p>
著者
高階 空也 中馬 いづみ 亀山 統一 梶村 恒 黒田 慶子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>日本,台湾を含む世界各地で,2000年代からデイゴの不開花や枯死が増加し,デイゴヒメコバチの寄生が原因とされてきた。しかしKuroda et al. (2017)は,沖縄島のデイゴ衰退木から<i>Fusarium solani </i>種複合体(FSSC)に属する菌(仮称strain A, B)を検出し,接種実験によってそれらの病原性を明らかにした。沖縄島の4地点および沖縄島から400km離れた石垣島で,strain AとはITS領域で1塩基のみ異なるstrain Bと,strain Aとはそれぞれ1塩基,8塩基異なる菌株(仮称strain C, D)を検出した。Strain A, B, Cは養菌性キクイムシと共生関係にある菌の集団Ambrosia <i>Fusarium </i> Clade(AFC)のclade A,strain Dは同様にAFCのclade Bに属することが判明した。石垣島と沖縄島のデイゴ衰退木から合計3種の養菌性キクイムシ<i>Euwallacea </i> spp. が検出されており,その1種ナンヨウキクイムシ(<i>E. fornicatus </i>)は沖縄ではマンゴーの害虫と認識されている。この種は本菌株と近縁でAFCのclade Bに属する菌<i>F. ambrosium </i>(チャの病原菌)と<i>F. euwallaceae </i>(アボカドの病原菌)との共生が知られており,養菌性キクイムシによるデイゴ病原菌の媒介の可能性について今後検討が必要である。</p>
著者
寺嶋 芳江
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>ブ―タン王国は、北を中国、南をインドと接した小国である。ここでは宗教的理由、および自国のアイデンティティを確立するという観点から独自の森林施策を進め、木材利用のための伐採を極力制限して天然林のまま保全するという政策をとっている。食用きのこの人為的栽培として原木でシイタケが、稲わらでヒラタケが生産され、野生きのとしてマツタケと冬虫夏草が採取されている。森林資源の利用が著しく制限されている中で、木材の利用を前提とするシイタケの原木栽培、あるいは森林内での野生きのこ採取がどのように行われているのかを把握し、さらに現時点での問題点を提示する目的で調査を行った。森林の現状は2015年に行なわれた全国森林資源調査の結果、文献、および聞き取りによって把握した。きのこ生産状況については、国立きのこセンター資料と聞き取りにより調査した。ブータン王国における森林、原木シイタケ栽培と木材利用、野生きのこ採取と森林の保全についての現状を明らかにするとともに、森林利用の問題点を提示する。</p>
著者
牧田 直樹 大橋 瑞江 渡邉 直人 遠藤 いず貴 暁 麻衣子 矢原 ひかり 谷川 夏子 片山 歩美 久米 朋宣 松本 一穂
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>森林生態系の炭素循環を評価する上で、土壌呼吸の約半分を占める有機物分解呼吸の特性を正確に理解することは重要である。本研究では、リター基質の菌根菌種特性及び分解時間に対する変化が分解呼吸にどの程度影響を与えるかを評価するため、枯死細根の初期形質および呼吸速度・分解率・形態特性の変化を調査した。マレーシア・ランビル国立公園において、外生菌根種、内生菌根の単子葉類種(ヤシ科)と双子葉類種の計3タイプの枯死細根をメッシュバッグに詰めて土壌に設置し、18ヶ月の間に定期的に回収した。枯死根の残存重量は時間経過と共に低下し、それらの分解速度は種タイプによって異なった。枯死根における規定温度での呼吸速度は、分解進行に伴い上昇傾向がみられた。以上より、分解呼吸のパターンは時間経過に伴う基質の変化に特徴付けられ、それらの呼吸速度の強度は種特性によって規定されることが示唆された。</p>
著者
安井 瞭 Helbert Helbert 寺嶋 芳江 奈良 一秀
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>外生菌根菌(以下菌根菌)は樹木の根に共生し、土壌中の無機栄養分を樹木に供給する菌である。琉球列島において広く分布する固有種の「リュウキュウマツ(<i>Pinus luchuensis</i>)」の根には、菌根菌が共生していることが明らかになっている。琉球列島の島々はその形成史の違いにより2つのタイプに分けられる。古期岩類や火山活動によって形成された山地を有する島で、海進時にも海没しなかった「高島」と、琉球石灰岩からなる低平な島で海進時に海没したとされる「低島」である。高島のリュウキュウマツは自生のものであるが、低島のリュウキュウマツは1680年代以降に沖縄本島から移入されたものである。このように高島と低島では地史やマツ林の形成過程に違いがあり、これらの違いが菌根菌群集に影響している可能性が考えられる。本研究では琉球列島の低島に成立しているリュウキュウマツ林において、土壌中に埋土胞子群集として存在している菌根菌を分析し、これまでに調べられている高島のデータと比較することで、菌根菌群集の違いやその要因について考察する。</p>
著者
深山 貴文 高梨 聡 北村 兼三 松本 一穂 山野井 克己 溝口 康子 安田 幸生 森下 智陽 野口 宏典 岡野 通明 小南 裕志 吉藤 奈津子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>フィトンチッドとも呼ばれる森の香り物質は、主にゴム様の香りのイソプレン(C<sub>5</sub>H<sub>8</sub>、以下ISO)と、樹脂香のα-ピネンに代表される複数のモノテルペン(C<sub>10</sub>H<sub>16</sub>、以下MT)からなる。ISOは主に広葉樹、MTは針葉樹の葉から大量に放出され、その量は人為起源の揮発性化合物より多いため、地球のオゾンやエアロゾルの原因物質として非常に重要であるが観測例は少ない。本研究では、2015年12月から2018年12月までの3年間、森林総合研究所(KHW、YMS、FJY、API、SAP)と琉球大学(OKI)の全国6林分の微気象観測タワーサイトにおいて230回、日中の森林大気中のISOとMT(主要8種の合計)の採取を実施し、濃度の季節変動特性と気温-濃度関係の評価を行った。ISOはコナラ-アカマツ林のYMS、MTはスギ-ヒノキ林のKHWで最大値が観測され、主要樹種が放出源となっていると考えられた。全サイトで最高気温が観測された8月のMT濃度は高かったが、亜熱帯のOKIは8月、暖温帯のYMSとKHWは5~6月、冷温帯のFJY、API、SAPは7月にピークが観測された。この違いは、亜熱帯のOKI以外ではMTが冬季に葉内に蓄積され、北方ほど放出開始直後の高放出の時期が遅れて生じている可能性が考えられた。</p>
著者
知念 良之 芝 正己
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>沖縄県における住宅の一般的な構造は鉄筋コンクリート造であったが,県外産プレカット材による木造建築の動きが報告され,戸建の木造率は2001年の4%から2017年の29%へ増加した。2015~2016年には,沖縄県の「国際物流拠点産業集積地域」で2つのプレカット工場が開設されるなど新しい動きがみられる。本研究では,この展開に着目し,プレカット工場進出の動機や活動実態,公的補助の適用の有無などを関連事業者に対するインタビュー調査を通して明らかにすることを試みた。プレカット工場は,いずれも県内供給が前提で,公的補助の適用対象となる県外出荷に関しては工場が所属する企業グループの得意分野や経営戦略の差異から判断が分かれていた。また,住宅の強度を重視して人工乾燥材を積極的に多用し,生産や出荷の調整を通して県内市場へ安定供給する役目を担っていた。これは,県外産プレカット材を取り扱う県内業者も同様であった。一方,県内の木材産業に対する認知度の低さや木造関連技術者の少なさから人手不足となり,生産が制限されていることやボイラー燃料需要が無いため加工時に排出されるオガ粉や端材の処理費用が生じる課題を抱えていることが明らかとなった。</p>
著者
谷口 真吾 上原 文 松本 一穂
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>【研究目的】リュウキュウコクタン(<i>Diospyros ferrea</i>)の繁殖枝に環状剥皮と摘葉を施し、繁殖資源の配分を繁殖モジュール単位で検証した。【方法】供試木は樹高5.0m、胸高直径18cmの40年生雌株2個体である。開花期である2018年5月中旬に繁殖枝の無剥皮区と剥皮区に摘葉処理する(摘葉しない0%摘葉区、葉数の50%摘葉区、葉面積の50%摘葉区、100%摘葉区)の8処理区を設けた。幼果実のステージである同年6月下旬、繁殖枝を覆うチャンバーの中で安定同位体である13CO2を無剥皮区と剥皮区の0%摘葉区にそれぞれ同時に発生させ、トレーサー実験法により光合成産物の転流を追跡した。さらにトレーサー実験後から果実の成熟段階(7月上旬、7月下旬、8月下旬)に応じて繁殖枝をサンプリングし、処理区ごとに葉、枝、果実の可溶性全糖を定量した。【結果と考察】果実の高さは無剥皮区、剥皮区とも0%摘葉区が最も高く、100%摘葉区は最も小さかった。13Cは無剥皮区の100%摘葉区における果実と枝に高濃度に検出された。この結果、無剥皮区では0%摘葉区から100%摘葉区への光合成産物の転流が認められた。この転流現象とともに、定量した可溶性糖の動態と果実サイズの変動を考察する。</p>
著者
松英 恵吾
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第129回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.503, 2018-05-28 (Released:2018-05-28)

スマートフォンによる森林計測用アプリを開発した。本アプリでは測高については角度センサの相似比を利用した計測機能、直径および断面積測定については角度センサの相似比による距離測定結果と内蔵カメラによる光学的な幅の計測を利用した計測機能を実装した。その上でテスト端末において機械的に精度検証が可能な建物、ポール等に対して計測試行を実施し各種センサでの計測特性の把握を試みた。その結果、高さ計測については一定の条件下においてRMSE5%以下の精度を有することが確認できた。幅測定については誤差無く測定が可能であることが確認された。検証用の森林調査(樹木位置図作成、樹高、胸高直径毎木測定)を行い、合わせて試作アプリによる計測を試行した。その結果樹高測定についてRMSE6.8%の精度で計測できた。比較対象とした専用のレーザー測高器が7.3%であったことから一定の実用性を確認できた。一方、断面積測定についてはRMSE40%となった。想定した精度を満たすことができなかったが、比較対象とした専用のレラスコープにおいてもRMSE47%となっており、精度検証における真値の設定について課題を残す結果となった。
著者
小池 伸介 葛西 真輔 後藤 優介 山崎 晃司 古林 賢恒
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.279-285, 2006-08-01 (Released:2008-01-11)
参考文献数
41
被引用文献数
7 7

ツキノワグマの糞に飛来する食糞性コガネムシ (以下糞虫) を山梨県芦川村および東京都奥多摩町で調査した。18種が確認された。いずれも広域に分布し, 他の動物の糞でも確認されている種であった。種により季節消長は異なり, 5種は春から秋にかけて成虫が出現したが, 13種は特定の季節のみ成虫の出現が確認された。日周消長は, トラップで採集された10種のうち5種は昼間中心に, 4種は夜間中心に飛来する種, 1種は季節的に活動時間帯が変化する種であった。糞虫の活動場所は, 8種はdwellerで, 糞の表面および糞の内部でのみ確認された。10種はtunnellerで, 糞下部の土壌内からも糞とともに確認された。Tunnellerは, 産卵期以外も, 糞とともに土壌内から確認された。ツキノワグマの糞に数多く飛来した, コブマルエンマコガネ, クロマルエンマコガネ, マエカドコエンマコガネはいずれも, 昼間中心に飛来し, tunnellerタイプの糞虫であった。
著者
宮坂 隆文 Oyunchimeg Mongolkhatan Batsukh Siilegmaa Jamsran Undarmaa
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第130回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.41, 2019-05-27 (Released:2019-05-13)

モンゴルでは、近年の家畜頭数の急増により、草原の劣化が問題となっている。モンゴルにおいて牧畜は、文化・経済両面で重要な産業であり、行政による一方的な規制は現実的でなく、牧民と連携した施策が必要となる。本研究では、今後の対策立案に向け実践的な指針を得るため、モンゴルの国立公園におけるバッファーゾーン管理に着目した。モンゴルの国立公園は、周辺地域をバッファーゾーンと定め、ゾーン内の牧民生計を支援し、適切な草原利用を促しながら、彼らと協力して管理を行うよう法律で定められている。一方で、モンゴル政府の予算・人手不足により、実際はほとんどの国立公園が上記管理を行えていない。その中で、フスタイ国立公園は唯一NGOが管理を担い、長年バッファーゾーン管理にも取り組んでいる。本研究はフスタイ国立公園を対象に、NGOが行政や牧民といかに協力して公園管理を行っているのか、そしてその管理が牧民生計にどのような変化をもたらしているのか、を明らかにすることを目的とした。本発表では、管理を担うNGOの主要スタッフと、周辺牧民121名への聞き取り調査結果をもとに、フスタイ国立公園の協働型自然資源管理の現状と課題を報告する。
著者
野口 亮 平柳 好一 益守 眞也 河室 公康 八木 久義
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.114, pp.428, 2003

1.はじめに 地形の起伏が大きい早壮年山地からなる東京大学秩父演習林の急斜面上では、200cm以上の火山灰由来物質が堆積しA層が80__から__100cmと厚く発達した黒色土が分布する。本研究では土壌断面内における化学性、植物珪酸体、微細形態学的特徴の垂直的変化から、急斜面上で特異的に厚い土層と発達したA層をもつ土壌の堆積過程を明らかにすることを目的とした。2.調査地及び、調査方法 調査地は東京大学秩父演習林内の28林班に4小班と31林斑い13、14小班である。28林班に4小班では傾斜17°の南向きの急傾斜面中腹に土壌断面を作製した(プロット1)。厚さ90 cmのA層を持つ黒色土であった。同地点での植物珪酸体抽出用試料採取時の土壌断面をプロット2とする。31林班い13小班では、傾斜26.5°の南向き極急斜面の中腹に土壌断面を作製した(プロット3)。黒色土であり、A層の厚さは100 cmであった。プロット3より20 mほど上方の同一斜面上に位置する傾斜22°の急傾斜地の31林班い14小班にも土壌断面を作成した(プロット4)。A層の厚さが70 cmの黒色土であった。プロット1及びプロット3において化学分析用及び微細形態学的性質研究用として土壌層位ごとに試料を採取した。また、プロット2及びプロット4において植物珪酸体抽出用に土壌試料を採取した。3.分析採取試料の化学性として、pH、リン酸吸収係数、全炭素量、陽イオン交換容量、交換性陽イオン量、塩基飽和度などを調べた。植物珪酸体は抽出を行い、鉱物顕微鏡下で検鏡した。大型のファン型植物珪酸体について表面の孔隙量により3段階に分別し、各段階の分布割合を調べ、植物珪酸体の風化度の指標とした。また、ササ類由来とススキ類由来の植物珪酸体の比率を調べた。微細形態学的特徴は土壌薄片を作製し鉱物顕微鏡下で観察した。4.結果および考察4.1 化学性いずれの土壌も、リン酸吸収係数及び活性アルミニウムテストにより、新生代第四紀の火山灰を母材とする土壌であることが確認された。塩基飽和度は非常に低く、高い層で7%、低い層では1 %を下回っており、極めて塩基の乏しい土壌であった。また、全炭素含有率はいずれの土壌においてもA層で大きく、全体的に極めて多量の腐植が集積していることを示している。4.2 鉱物組成プロット1,3ともに全層に輝石、石英が多く含まれており、重鉱物のみを見ると、半分以上を紫蘇輝石が占め、次に普通輝石が多く、角閃石、黒雲母、磁鉄鉱が含まれていた。この重鉱物組成を奥秩父(滑沢、栃本)、三峯付近のローム層の重鉱物組成(埼玉第四紀研究グループ、1967)と比較すると非常に似ており、八ヶ岳東側緩斜面のローム層中の重鉱物組成(小林、1963)とも似ていることから、今回採取した土壌も、八ヶ岳を由来とする火山灰を母材とすると考えられる。また、プロット1,3ともにB1層以深で磁鉄鉱の割合が増加しており、B1層以深の土壌は埼玉第四紀研究グループの分類によると、関東ローム層序の武蔵野ローム層以前に対比される、Dローム層以前のローム層に相当すると考えられる。B1層より浅い部分の土壌は関東ローム層序の下末吉ローム層と同時代に対比されるEローム層であると考えられる。4.3 植物珪酸体プロット2ではササ類由来の植物珪酸体が、プロット4ではススキ類由来の植物珪酸体の比率が多くなっていた。A層における腐植の由来は、検鏡結果からプロット1及び2ではササ類が、プロット3及び4ではススキ類が腐植の主な供給源であると推定される。植物珪酸体の風化度は、プロット2では0__から__40 cmにかけて、プロット4では0__から__30cm、30__から__70cmのそれぞれの深さにおいてほぼ一定の値を示し、風化度1,2,3の植物珪酸体の含まれる割合も一定となっており、40 cmの深さまでの植物珪酸体が土壌に供給された年代に差がないことを示唆していた。また、偶発的な崩落物と考えられる大角礫が含まれており、斜面上部尾根では火山灰が厚く堆積していないことから、これらの土壌は、比較的短い期間に、マスウエィスティングによって斜面上部から土壌が運搬されて堆積した二次堆積の影響を受け形成されたと考えられる。また、プロット4では、30cm深と70cm深を境に、風化度が異なっていたことから、少なくとも2度、異なる時期に二次堆積の影響を受け形成されたと考えられる。プロット2の40__から__70cmの深さでは深くなるほど植物珪酸体は未風化のものが減少し、風化の進んだものが増加していた。このことから、この深さにおける土壌は二次堆積の影響をあまり受けずに長い年月をかけて一次堆積による火山灰の堆積と、腐植の集積が併行して起こった結果発達した土壌であると考えられる。
著者
後藤義明 玉井幸治 深山貴文 小南裕志
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.193-201, 2005-06-01 (Released:2008-05-22)
参考文献数
37
被引用文献数
4 5

山火事の延焼速度予測モデルとして最も一般的に使用されているRothermelモデルと,山火事の物理的強度の指標であるByramの火線強度を,日本の森林の可燃物に適用して,日本で発生する山火事の強度を推定した。火線強度推定のために必要な,可燃物の燃焼特性を示すパラメータ値の相対的な重要度を調べたところ,表面積一体積比以外のパラメータは,可燃物の種類を問わず固定値を用いても問題はないものと考えられた。火線強度は樹林地よりも草原で大きく,斜面の傾斜や風速の影響を強く受けた。日本で発生する山火事の火線強度を推定したところ,林床にコシダが密生するアカマツ林を除いて,いずれも850kWm-1以下とアメリカやカナダの森林で報告されている地表火の火線強度の範囲内(10~15,000kWm-1)にあった。しかし,コシダが密生するアカマツ林の火線強度は20,000kWm-1以上に達していたと推定された。この値は,繰り返し起こる山火事によって維持されていると考えられているフィンボスやチャパラルなど,地中海性気候下の植生での火線強度に匹敵するものであった。
著者
南 享二 河村 喜美恵
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.136-140, 1954

アカメガシワとスギについてその木材と木材の室温こよる1%NaOH抽出残渣の乾溜を行つた。<br> アカメガシワの場合,アラカシの場合と同様に20&deg;C毎の溜出液量の変化を見ると260&deg;Cにおける極大値が1% NaOH処理により消失すること力現出された。酸の生成の少いスギにおいてはこの現象は見られない。<br> 溜出する酷酸量についてみると次のことがわかつた。溜出全量において1% NaOH抽田残渣の場含無処理木材に比し著しく酸量を誠じ,しかもその減量は1% NaOH抽出液中に定最された酷酸にほぼ等しい。また注目すべきはアカメガシワ・スギ・アラカシの3種の樹種間において, 1% NaOH抽出残1査の場合ほぼ等しい酸量が得られており,溜出曲線もほぼ相等しい。<br> 単位溜分中の溜出酸の濃度については,アメガシワおよびスギは共に,木材の場合はそれぞれ240&deg;C, 260&deg;Cに最大値をもつが、1% NaOH抽出残渣の場合はこれが失われている。また1% NaOH抽出残渣については上述の2樹種およびアラカシの間においてほぼ似た変化の曲線をえがき.最大値は280~300&deg;Cの溜分にあり,全酸として約10%, 揮発酸として約5%のほぼ一致した値を示した。なお酸の生成の少いスギにおいては無処理木材の場合において同じ溜分に極大が存在し,その極大値が上記のものとほぼ等しい。ペントーザンの母は木材の場合と1%NaOH抽出残淺:の場含との間に署しい差はなく,かつ樹種の聞では甚しく異るので,もしペントーザンが溜出する醋酸の有力な根源であるとすれば, 1% NaOH抽出残澄の乾溜において一定の酸の溜出量を得る事実を説明し得ない。<br> 以土の事実にもとずいて考えると, 著量の醋酸を溜出する本材の場合には大部のものが室温で1% NaOHにより除去ぜられる原木材中のアセチル基に由来するものであり、したがつて溜出酸量の樹腫による差異はこのアセチル基の量の差によるものであると考えられる。
著者
黒河内 雅次
出版者
日本森林学会
雑誌
林學會雑誌
巻号頁・発行日
vol.15, no.11, pp.970-977, 1933

(一)九州本土に於ける樟の天然分布を霧島由雲仙岳に就て調査するに其の限界は年平均氣温14度内外一月の平均氣温3度内外特に最低氣温平均は(一)1度内外、八月平均氣温は25度内外である。<br> (二)樟の生長は肝屬半島内之浦營林署管内最も良好であつて九州海岸に沿ふて八月と一月の氣温差を求むるに内之浦最も少く生長不良なる所程大であるのを見れば一年を通じ氣温變化少い所程良好の樣である。<br> (三)降水量は天然分布を支配するものとは考へられないが土地的要素と相待つて生長に重要なる影響を與ふるものと云へよう。<br> (四)樟の成績は土壤の水分も多く空氣の流通も良好なる程好成績の樣である。<br> (五)基岩の花崗岩たると砂岩たるとを問はず成績良好なる所は砂壤土であつて根の進入してゐる部分は粘土分多く深層に至るに從ひ其の量減ずる所は理學的性質も良好で樟の生長も良いが之と反對の關係にある土壤即ち深層に至るに從ひ粘土分多い所又は表層も深層も土性變り無く堅密なる土壤は成績不良の樣である。<br> (六)成績良好なる土壤は腐植質の含量も多く土壤酸度も低い樣である。<br>即ち樟の生育は一年通じ氣温の變化少い地方が良好であつて降水量の多い地方では砂壤土の如き理學的性質良好なる且つ酸度も低い土壤が良好の樣である。
著者
丸山 エミリオ 石井 克明 斎藤 明 大庭 喜八郎
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.346-349, 1993

<i>Jacaranda mimosaefolia</i> D. DON was regenerated by shoot-tips subcultured on GAMBORG'S basal medium with the largest concentration of kinetin [6-furfurylaminopurine] (KIN) (100 &mu;M). After six weeks of culture, a six-fold multiplication rate was achieved. Rhizogenesis frequency was 100% on half-strength amounts of the same initial medium containing indole-3-butyric acid (IBA) (0.49, 4.9 &mu;M) alone, or in combination with naphthaleneacetic acid (NAA) (0.27 &mu;M). Rooted shoots were transferred to vermiculite substratum and acclimated successfully in a growth cabinet.