著者
久保島 吉貴 外崎 真理雄 橋田 光 田端 雅進
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第124回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.184, 2013 (Released:2013-08-20)

ウルシ材は耐湿・耐水性に優れるため水桶や馬桶などに用いられ,材が軽いことから網浮木として用いられてきた。また材色を活かして寄木細工にも使用されている。しかし材の特性は一部の地域産材に関しては得られているものの十分な知見が得られているとは言えない。現状では伐採後に放置されている樹液採取後のウルシ材の利用し新たな産業の創出や漆産業の維持・拡大につなげて行くには,材の特性を解明し,特性を活かした利用法を開発する必要がある。そこでウルシ材の主に物理的,力学的な物性を検討した。その結果,静的曲げヤング率,静的曲げ強度および衝撃曲げ吸収エネルギーは小さいものはスギと同程度で大きいものはカラマツおよびアカマツと同程度であり,密度と有意な相関関係が存在した。従って材の強度は密度から推定される妥当な範囲であると考えられるが,樹液採取が樹齢10-15年程度で行われるため丸太の直径が小さいことと,生産本数がスギ,ヒノキおよびカラマツなどと比較して極めて少ないことなどを考慮した用途開発が望まれる。用途としては既に開発されているものに加え産地の小中学校や体験教室などの教材にも利用出来るのではないかと考えられる。
著者
保谷 剛志 田中 克 浴野 泰甫 竹内 祐子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

マツノザイセンチュウ(以下線虫)は、世界の広範囲で激害を及ぼしているマツ材線虫病の病原体である。先行研究において、線虫の病原性因子を精査するために、病原力の異なる2つの近交系系統から17系統の組み換え近交系(RIL)が作出された。RILにおいて増殖力と病原力の間には高い正の相関があることが明らかになっており、増殖力が線虫の病原性因子の一つである可能性は高い。本研究では、これまで菌叢上培養時の個体数増加速度として評価してきた増殖力の要因を細分化し、RIL及びその親系統を対象に表現型評価を行った。各系統を同調培養し、ほぼ同時に産卵された卵を分離して水中で静置後、孵化していなかった卵の数から各系統の孵化率を算出した。その結果、孵化率はRILにおいて連続的に変異していた。また、孵化率と増殖力の間で明確な相関関係は認められなかった。現在、各系統の雌の増殖型4期幼虫を一頭ずつ分離し、雌成虫へ脱皮後に雄成虫と交配させ、4日分の累計産卵数を計数することで各系統の産卵数を評価している。発表では、重回帰分析の結果などを基に、各形質が線虫の増殖力にどの程度関与しているかを議論したい。
著者
安野 諒 長島 啓子 田中 和博
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.129, 2018

<p>近年、一度の撮影で360°すべての方向が撮影できる全天球カメラが注目されている。本研究では全天球カメラ「RICOH THETA S」で撮影した全天球画像から植被率を数値で求められるか検討した。京都市左京区の宝ヶ池公園の尾根、斜面、谷部で、撮影高度(1.2m、1.6m)、プロットサイズ(3m、5m、7m、10m)で撮影した計24枚の全天球画像から画像解析によって推定植被率を算出した。そして、現地調査で得た目視植被率と比較した。画像解析は、まず全天球画像を切り取り、編集可能なJPEGイメージとして保存した。その画像の彩度、明るさ、コントラストを上げ、RGB成分毎に分割した。分割したgreenの画像からredの画像を引き算し、その画像からフリーソフト「CanopOn2」を用いて植被率を推定した。その結果、最大誤差10.2、最小誤差0、RMSE4.955となった。また、プロットサイズが7mの時に誤差が小さくなる傾向がみられた。地形により誤差の違いが見られたため、更に推定方法を改良していく必要がある。</p>
著者
三浦 真弘 花岡 創 平岡 裕一郎 井城 泰一 磯田 圭哉 武津 英太郎 高橋 誠 渡辺 敦史
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.126, 2015

林木は、異なる環境に種苗を移動した場合、成長等形質に影響する可能性が懸念される。このため、主要林業用樹種のスギでは、環境条件や天然分布の情報を基に種苗配布区域が設定され、種苗の移動が制限されてきた。一方、林木育種事業により設定された次代検定林の調査データとGISデータを利用して特定地域内の林木の移動による影響評価の解析を行ってきたところ、確かに移動の方向により不利益が生じる場合が認められるものの、影響を生じない場合もあることなどが明らかとなった。しかし、日本では共通系統を利用して異なる環境間の大規模植栽試験の実施とその詳細な影響評価について報告例がなく、広域の種苗移動による影響の有無について不明なままである。本研究では、全国各地のスギ精英樹27クローンを用いて、全国9カ所の苗畑で2年間の成長を調査し、産地および植栽場所による成長への影響を評価した。これらのデータを元に種苗を移動した場合のスギの影響評価について検討を行い、現行の種苗配布について議論を行う。
著者
三村 真紀子 山口 勝司 重信 秀治
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.125, 2014

日本国内に広く生育するモミジイチゴ(<i>Rubus palmatus</i>)のゲノム配列決定を行った。この種のゲノムサイズは230-250Mbp程度と推定されている。屋久島から採集したヤクシマキイチゴ1系統Pal03を解析対象系統とした。これまでの研究から、屋久島に生育するモミジイチゴの亜種ヤクシマキイチゴは、ホモ接合度が比較的高いことが分かっている。180bpのペアエンドライブラリと、インサート領域が3kbpのメイトペアライブラリを作成し、イルミナ社HiSeq2000を用いて対象種のゲノムサイズの86x coverage(推定)にあたる2.9億リード(100bp/リード)を取得した。新規ゲノムアセンブルには、ALLPATHS-LGを用いた。結果、ゲノムサイズは253Mbpと推定され、N50 contigが23kbp, N50 scaffoldが212kbpであった。Contigの総長は、232Mbpであり(ゲノムサイズの92%)であり、またScaffoldの総長は253Mbp(ゲノムサイズの100%)であった。今後RNAseqによるアノテーションを行い、キイチゴゲノム情報の基盤とする。
著者
三柴 淳一 Vincent Pullockaran 那須 嘉明 増田 美砂
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.114, pp.35, 2003

1. 背景および目的森林資源を有する開発途上国は現在,開発と保全の両立という問題に直面している。これまで多くの国では政府主導による管理が行われていたが,地域住民の協力が保全の鍵となることが明らかになるにつれ,森林管理における住民参加が急速に普及しつつある。こうした世界の潮流に先駆けて共同森林管理(Joint Forest Management,JFM)に着手したのがインドである。インドの人口は10億を超え,さらに拡大しているにもかかわらず,FAOによると過去10年間の森林面積は0.1%とわずかながら増加に転じている。そこで本研究では,実際にどのような人々がJFMに参加し,どのような活動を行っているのかを具体的な事例に則して明らかにし,その結果をもとに森林保全に果たす参加型森林管理の役割について考察したい。2. 研究の方法調査地としては,819人/km2(2001年)という全国平均の2倍以上の人口密度を抱えながら高い森林率(28.6%)を維持しているケララ州を選び,2002年9月__から__11月に現地調査を行った。まず森林官などキーインフォーマントへの聞き取りや二次資料による概況調査を行ったところ,ケララ州では近年になってJFMを応用した参加型森林管理が実施されるようになり,それらはParticipatory Forest Management(PFM)と総称されていることがわかった。次に比較的早くからPFMが導入されているトリシュール県ランドゥカイ村の事例を取り上げた。ランドゥカイの地理条件は,中規模都市からバスで1時間の距離,背後には保護対象の国有天然林とティーク人工造林を控える都市近郊の側面も有する農村地域である。地域住民で組織され,PFMを運営している森林保護委員会Vana Samrakshana Samithies(VSS)の構成員から無作為に抽出した40世帯を対象に,__丸1__家族構成,__丸2__土地所有,__丸3__農業活動,__丸4__農業・農外収入,__丸5__森林への依存についての聞き取り調査を行った。3. 結果および考察インドの森林をめぐる決定はトップダウン方式でなされ,中央政府の方針にしたがい州政府において具体的な行動計画が策定され実施されている。PFMにおいては画一的なモデルを避け,地域情勢を考慮した様々なヴァリエーションを設けている。ただし,モデルの設定は住民参加によるボトムアップではなく,現状では州政府レベルで開発した雛型を現地に適用する形式を取っている。ランドゥカイ村は,過去の森林解放と不法侵入によって形成されたという経緯を持ち,すべての住民が他地域からの移住者である。VSSには国有林周辺に居住する人々が概ね組織され,VSSの中心メンバーによって策定された5ヵ年計画,マイクロプランに基づき活動している。ただし2001年7月の実施以来行われた活動は,わずかな植林と現在区域の見回りが行われているのみであり,むしろ定期集会や実行委員会会議を通じた啓蒙活動が活動の中心となっている。参加住民への聞き取りによると主な参加の理由は,VSS実行委員による勧誘であり,次に職の機会を期待してであった。活動開始後の全体集会への参加状況については,参加理由に何らかの目的があった人々を除くとあまりよくない。しかし,ランドゥカイは小農村ながら人材豊富でVSS代表者は経済学修士,実行委員も短大卒以上が4割,また一般メンバーにおけるリーダー的存在には元小学校校長がいる。参加住民の生活状況は自らの農地でゴム園やココヤシを主体とするアグロフォレストリーを営んでいるが,家計は農外収入で補っており,出稼ぎや仕送りに依存する世帯も少なくない。国有林内では,管理協定で認められた薪炭材やわずかな非木材林産物の採集だけが行われ,禁止されている放牧は今も続いているが,地域内の家畜数自体が少ない。牛,ヤギとも調査対象世帯平均で0.5頭であった。またVSS活動開始後に林産物採集場所を変更したのは40世帯中1世帯のみであった。当該地域では林地の境界がすでに確定しており,その後の急激な森林減少は認められない。森林の行方を規定する要因はむしろ,森と住民という二者間の直接的関係ではなく,土地利用や就労機会など両者をとりまく地域の経済構造全体にもとめるべきである。PFMが森林保全に果たす役割としては,それまで少しずつ進行していたであろう資源の劣化を,同様に緩やかに回復に向かわせるという点,現在土地依存傾向の見られる地域情勢が今後変化した際,国有林に対するバッファーゾーンになり得る可能性および雇用創出の可能性に認められるが,それを直ちに州やインド全体に見られる森林増加という逆転現象の説明に用いるにはいささか無理がある。また森林管理のあり方を考えるに際しては,林地という限定された側面だけに注目するのではなく,地域の持つ様々な条件全体を考慮した設計を行う必要があると思われる。
著者
松崎 誠司 芝野 貴希 諸冨 允延 佐藤 孝吉
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

森林の経済価値は収益性だけでなく、伐採時期、更新、保育等のやり方やその方向性を検討するために必要不可欠である。そこで、金員収穫表の作成を聞き取り調査および各種データにより試みた。資料の入手性、実用性、価格が低迷状況のヒノキ等を考慮し、静岡県富士宮市を事例とした。聞き取り調査は、地元のT林家を対象に行い、収穫表(地位、林齢)をもとに、時代区分(1980~1985年、1995~2000、現在)における造材方法および、価格を活用して作成した。各種データからは、収穫表、素材市場における木材価格、素材の形状、立木の細り表を利用して作成した。さらに、造材、搬出等の素材生産、更新方法、保育方法の迅速な検討材料として加工し、森林経営のシミュレーションを行う。
著者
江崎 功二郎
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.58-63, 2011 (Released:2011-06-22)
参考文献数
36
被引用文献数
1 2

無散布木と散布木を均等に配置したコナラ林で2008年およびミズナラ林で2009年に研究を実施した。散布木にフェニトロチオン1.6%乳剤をカシノナガキクイムシ成虫の穿入直後とその約3週間後に, 地上から6mまで樹幹散布した。散布木において1回目散布後に穿入数の増加は認められなかったため, 穿入直後の散布は穿入の継続を断ち切ることを示した。さらに, コナラ林およびミズナラ林の無散布木において1回目散布後に新たに発生した穿入木の本数割合はそれぞれ81.1%および95.7%であったが, 散布木ではそれぞれ2.8%および18.5%に抑えられ, 穿入密度は低くなる傾向があった。このため, MEPの2回散布は成虫の発生期間を通じて, 高い穿入防止効果を維持できることを示した。
著者
マンフロイ オダイル ジョセ 鈴木 雅一 田中 のぶあき 諸岡 利幸 蔵治 こいちろ
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.115, pp.P4049, 2004

In this analysis, we investigated effects of increase of number of raingauges, spatial variability, extent of zones of intense TF dripping and effect of wind speed on TF measured in a 10 X 10 m plot of a lowland tropical forest in Lambir, Sarawak, Malaysia. Daily TF catches by 20 fixed raingages in a 10 X 10 m plot, called fixed plot, was measured over two years. During this same two years, by using additional 20 relocating raingages, TF was also measured during a period of about one month in each of 23 different plots, of same size as the fixed plot, inside the limits of the 4 ha crane site biological plot. An intense daily TF measurement with 60 raingages for a period of about 2 months duration was carried out in the fixed plot. From this period, 15 single storms separated by 6 hours dry spell could be extracted. Analysis of the TF data were based on the TF ratio which is the percent TF catch of a gauge or gauges in a storm or period of time divided by total open rainfall in the same period. The main results were as follows. 1) General TF characteristics: Mean Total TF in the fixed plot was 82 % of the open rainfall in the first year and 87 % in the second year. Mean TF measured in the 23 relocating plots were in average 9% greater than TF measured in the fixed plot during a same period. 2) Intense TF measurement in the fixed plot:Interpolation of the percent TF ratio caught by the 60 gauges over all the 2 months period of intense measurement in this plot showed that zones of relatively intense dripping occupied less than 10 % of the area of the plot. Analyses of the 15 single rainfall storms selected from this period also showed the occurrence of zones of intense dripping in 11 of the storms but the pattern or place of occurrence of these zones were not constant. Mean catches by the 20 fixed set of TF gauges (gauges used to measure TF during the two years period) in 15 storms differed from 0.2 to 0.6 mm of the mean catches of all 60 gauges in the same storms. In addition, analysis of the TF ratio catches of the 60 gauges in each of the 15 single storms with empirical variograms suggested no spatial autocorrelation between gauges percent catches, and therefore TF catches by individual gauges within this plot can be regarded as independent and the TF process as random within plots of this size. Finally, the distribution of the 60 gauges TF ratio in the fixed plot resembled the distribution of the TF ratio measured in 520 different points in the 23 relocating plots inside the 4 ha plot. 3) Wind speed effect: In the present study site storms occurs both in the night, usually under calm wind condition and afternoon usually in active wind condition that make the separation of the wind speed effect alone in TF difficult. Despite of that, low mean TF in the fixed plot was associated with storms occurred under windy condition or afternoon. An increase in the total stemflow of the fixed plot for storms under windy condition was not found, and therefore rainfall interception loss calculated as the difference of rainfall and TF-plus-stemflow was higher for storms under windy condition.
著者
安藤 正規 鍵本 忠幸 加藤 正吾 小見山 章
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.98, no.6, pp.286-294, 2016-12-01 (Released:2017-02-23)
参考文献数
43

落葉樹林に生育する樹上性の半寄生植物であるヤドリギ (Viscum album L. subsp. coloratum Kom.) の分布に,林冠構造が与える影響を検討した。落葉樹林に170×190m のプロットを設置し,各立木 (胸高直径≧20cm) のヤドリギの有無を記録した。立木位置,樹冠投影面積,樹高,梢端高 (樹高+標高) をもとに,解析木からある距離の円内に存在する立木本数を,各解析木の孤立や突出の指標とした。各解析木周囲の立木本数とヤドリギの分布との関係を調べるために,一般化線形混合モデルによるロジスティック回帰分析を行った。解析木周囲の立木本数の増加は,ヤドリギの存在に有意な負の効果を示した。梢端高を考慮しない立木本数のカウント方法に比べ,解析木より梢端高が高い立木のみを対象としたカウント方法においてモデルの妥当性が高かった。落葉樹林において,樹冠の孤立と突出が,ヤドリギの分布を決める重要な要因であると考えられた。ヤドリギの分布は林冠木の空間獲得競争に関係していることが示唆された。
著者
森貞 和仁 大野 泰之 澤田 智志 片倉 正行 吉岡 寿 中岡 圭一 高宮 立身
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.115, pp.P1056, 2004

二酸化炭素吸収源としての森林の役割を正確に評価するには森林が成立している土壌炭素量および森林伐採など土地利用変化に伴うその変化量を精度良く評価することが必要である。土壌の分析・測定値はある一定の広がりをもつ土壌の代表値であるので,森林伐採が表層土の炭素貯留量に与える影響を精度良く推定するには土壌炭素量の空間的変動に基づいた多点サンプリングを行う必要がある。褐色森林土3カ所(北海道,秋田,愛媛),黒色土3カ所(長野,広島,大分)調査地において森林伐採前と伐採直後に3mないし4m間隔で規則的に100点程度のサンプリングを行い,鉱質土壌深さ0-30cmの表層土における炭素量の空間的変動とその変化率から目標精度に見合うサンプリング方法を検討した。その結果,表層土に含まれる土壌炭素量は土壌の種類によって違い,黒色土の炭素量は褐色森林土より明らかに多かった。空間的変動の指標として炭素量の変動係数を比較すると,褐色森林土ではどの調査地も約20%以上で試料採取点による変動が大きかったが,黒色土では大分以外の2調査地では約10%と比較的均質であった。伐採後の変動係数はどの調査地も伐採前と同じレベルであった。伐採に伴う変化率は平均で-7%(秋田)から+17%(愛媛)と調査地によって違う傾向を示したが,どの調査地でも採取地点による変動が大きかった。伐採前の調査結果から目標精度(信頼度95%,誤差5%)で表層土の炭素量を推定するには少なくとも褐色森林土で60点,黒色土で20点必要とみられた。伐採前後で土壌炭素量の変動係数に大きな変化がみられない。上記の点数を継続サンプリング,分析することで伐採後の変化を追跡することが可能と考えられるが,調査を継続して更に検討する必要がある。
著者
陶山 大志 永石 憲道 坂越 浩一
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.94, no.4, pp.161-166, 2012
被引用文献数
1 1

簡易な材質診断法である横打撃共振法によって, 松江城山公園のクロマツ240本について樹幹内部の腐朽・空洞面積率を推定した。本法の診断指標は樹幹直径<I>D</I>と樹幹打撃音の共振周波数<I>F</I><sub>r</sub>の積 (<I>D・F</I><sub>r</sub>値) である。あらかじめ (1) クロマツ健全木30本について本法の測定と伐採調査を行い, 診断基準となる健全木の<I>D・F</I><sub>r</sub>値の平均値と範囲を明らかにした。 (2) 同健全木の円板を用いて空洞面積率と<I>D・F</I><sub>r</sub>値の減少率の関係を明らかにした。本公園の調査木について地上高1 mで本法の測定を行い, (1) (2) の情報に基づき推定腐朽・空洞面積率<I>R</I><sub>iv</sub>を求めた。この結果, <I>R</I><sub>iv</sub>が1&sim;30%は40本 (17%), 30&sim;59%は6本 (3%) であった。本法の精度を評価するため, 27本についてレジストグラフを使用した貫入抵抗法によって推定腐朽・空洞面積率<I>R</I><sub>rg</sub>を求め, 3本について伐採して地上高ごとに実測腐朽・空洞面積率<I>R</I><sub>am</sub>を計測した。<I>R</I><sub>iv</sub>は<I>R</I><sub>rg</sub> (<I>r</I>=0.88) と<I>R</I><sub>am</sub> (<I>r</I>=0.80) の両者との間に高い正の相関が認められたことから, 本法によってクロマツ樹幹内部の腐朽・空洞面積率を推定できることが示された。
著者
福山 研二
出版者
日本森林学会
雑誌
森林科学 (ISSN:09171908)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.24-29, 1997-06-01 (Released:2017-07-31)
著者
稲場 彩夏 愛甲 哲也
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第127回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.791, 2016-07-08 (Released:2016-07-19)

野生動物への給餌が希少な種の保全策として行われる一方で,無秩序な餌付けによる人と野生動物の関係への悪影響も懸念されている。条例によって餌付けを禁止する自治体も増えつつあり、実態や市民意識の把握が必要である。本研究では、立地と背景の異なる自然公園と都市近郊林で,餌付けの実態と市民意識を明らかにし,その相違と今後の課題を考察する。 札幌市円山公園では,定期的に餌付けの実態を現地踏査し,6月と10月には意識調査用紙1,000部を配布し、549部の回答を得た(有効回答率54.9%)。知床国立公園では,7月と9月に計1,208部を配布し、492部の回答を得た(有効回答率40.7%)。 円山公園では,頻繁にリスや野鳥への餌付けが確認された。意識調査では,人と動物との距離は離れる程望ましく,餌付けへの対策を望む意見が多かった。餌付けへの態度で回答者を分類すると,餌付けに寛容な集団がおり,より近い距離を望み、他の回答者よりも餌付けへの対策を望む意見が少なかった。 今後、餌付けに何らかの対策を取る場合、餌付けに対し寛容なグループへの情報提供や教育の方法などを慎重に考慮する必要があると考えられた。