著者
中島 佳緒里 櫻井 優太 清水 遵
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.325-333, 2009-03-30 (Released:2009-05-01)
参考文献数
28
被引用文献数
1

本研究は, 摂食行動における身体内部の手がかりとして内臓感覚に注目し, 満腹感に関する内臓感覚表現語の構造の特定と内臓感覚表現尺度を作成することを目的とした。健康成人の内臓感覚表現を模索し, 表現語の尺度項目を作成するためにフォーカスグループによる予備調査を行った。  予備調査は, 53名の20~30代の健康成人を対象に, 満腹感あるいは空腹感を示す表現について, 食事前後の自由記述による質問紙調査を実施した。その結果, 満腹感あるいは空腹感を示す表現は, 「具体的・局所的な表現」56表現, 「状態に対する認知的表現」34表現が抽出された。内臓感覚表現の予備尺度には具体的な表現である38語を使用した。  本調査では, 作成された予備尺度を使って, 健康な大学生340名を13時と16時の2群に分けて質問紙調査を実施した。質問紙は, VASによる満腹感あるいは空腹感の程度と, 予備尺度38項目で構成された。探索的因子分析の結果, 満腹感に関する内臓感覚表現は。3因子構造であることが明らかになった。第I因子19項目は‘何かある感じ’‘膨れた感じ’‘ズッシリする’‘たまっている’など, 内臓の容量や重量を示す表現から「容量・重量因子」とした。第II因子9項目は‘キュルキュルする’‘縮まる’‘グルグルする’など消化管の蠕動運動の表現から「運動因子」とした。また, 第III因子5項目は, ‘はきそうな’‘痛い’‘気持悪くなる’など嫌悪を示す表現から「嫌悪因子」とした。  さらに, VAS値を基準変数とした重回帰分析の結果, 満腹感に関する内臓感覚表現は, 「容量・重量因子」と「運動因子」により形成されていることが明らかになった。以上の結果より, 内臓感覚表現尺度の作成を2因子により作成し, 尺度の項目分析を行ったところ2つの表現が削除され, 「容量・重量因子」12項目, 「運動因子」5項目となった。削除項目を除外した後のクロンバックα係数は, それぞれ0.94, 0.80であり, 作成した尺度は妥当性の高い結果であった。
著者
高屋 むつ子 菅野 美千代
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.112-120, 2002-09-30 (Released:2011-01-31)
参考文献数
13

宮城県やその近辺県を中心とした女子短大生の漬物に対する嗜好性と摂食状況並びに市販漬物利用状況と調味に対する嗜好性を把握する目的で, 宮城県にある尚絅女学院短期大学学生544名を対象にアンケート調査を行い, 以下のような結果を得た.1. 漬物に対するイメージは「塩分が多く健康によくない」「漬物より生野菜の方が断然健康によい」「保存食品」といったマイナス・イメージをもつ者と, 「嗜好食品」「野菜を食べるための調理法」「食物繊維・ビタミン・ミネラルの宝庫」といったプラス・イメージをもつ者とに二分された. 特に宮城県以外の他県出身者(主に東北地方)は漬物を「保存食品」として捉えている者が多く (p<0.05), また, 専攻別では他専攻より食物栄養専攻の方が「嗜好食品」として捉えている者が多かった (p<0.05)2. 漬物が食卓にでる頻度は「時々でる」49.4%, 「必ずでる」40.3%で, いずれも核家族より拡大家族の方が顕著に多かった (p<0.01). 摂食頻度は「1日1回」「週1回」「3日に1回」と分散し, 居住地別, 家族形態別で差がみられた.3. 漬物の嗜好度はかなり高く, 嫌いと回答した者は僅か5%であった. また, 漬ける人の有無で嗜好度に差がみられ, 漬ける人がいる家庭は有意に好み (p<0.05), いない場合は嫌う傾向が強かった (p<0.01).4. 食卓における漬物は「自家製・市販漬物併用」59.1%, 「市販漬物」25%, 「自家製漬物」15.9%で, 核家族は市販漬物利用者が多く, 拡大家族は自家製漬物が多かった (p<0.01).5. 自家製漬物品目は胡瓜浅漬, 白菜浅漬が最も多く, たくあん漬, 梅干は自家製群, 拡大家族群で有意に多かった. 市販漬物63品目中購入頻度が高く, 好きな漬物は白菜キムチ, 梅干, 胡瓜浅漬, カリカリ梅, かつおたくあん, 白菜浅漬, 茄子浅漬で, 居住地, 居住形態別で有意差がみられた. また, 苦手・嫌いな漬物はピクルス, らっきょう漬, セロリ浅漬, 奈良漬, わさび漬, 粕漬, べったら漬, 甘酢しょうがであった.6. 今後の市販漬物利用状況については「利用したい」が「自家製漬物が好き」32.3%, 「市販漬物が好き」68.5%, 「どちらも好き」81.9%で, 市販品に対する依存度が高かった.7. 市販漬物を購入する際に注意する点は「味」99.1%, 「賞味期限」63.5%, 「価格」56.2%, 「表示内容」33.6%であり, 価格のみ居住形態で差がみられた (p<0.01).
著者
真鍋 久
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.200-206, 2003-12-25 (Released:2011-01-31)
参考文献数
16
被引用文献数
4

納豆粘質物の主要成分であるPGAには多量のD-グルタミン酸が含まれている. なお, 納豆をD-アミノ酸含有食品として捉える場合には, PGAを含めた納豆全体に, 如何なるD-アミノ酸がどの程度存在するのかを把握しておく必要がある. しかしながら, そのような報告はなされていない. そこで著者は関連の調査をおこなうことにし, 今回は, 納豆の「粘質部位」を分析して以下の結果を得た.(1) 納豆の粘質部位から, D-グルタミン酸のみならず, D-アスパラギン酸やD-アラニンが検出された.(2) それらのD-アミノ酸は, D-グルタミン酸が結合型ならびに遊離型, D-アスパラギン酸のほとんどが結合型, D-アラニンの大部分が遊離型で見出された.(3) D-アミノ酸の含量については, 結合型D-グルタミン酸が納豆100gあたり3mmo1以上という大変高い状態にあったほかは, いずれの遊離型ならびに結合型D-アミノ酸も納豆100gあたり0.5mmo1以下であった.
著者
下村 道子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.87-91, 2016 (Released:2016-10-31)
参考文献数
17
被引用文献数
1

Japanese food culture is characterized by a large number of fish dishes and the use of seasonal ingredients. The Japanese archipelago is surrounded by warm or cold currents depending on the season, which affects which species of fish travel near land and are caught. Although the highest-profile method of Japanese fish preparation is to eat it raw as sashimi or sushi, fish can be prepared variously through grilling, boiling, pickling, frying, simmering in soup, or mincing. Fish to be heated is cooked with fermented seasonings such as miso, soy sauce, sake lees and vinegar. Because of the warm and humid weather in summer, since ancient times, fish have been preserved through pickling rather than drying. When fish is cooked or processed, umami compounds are generated in the meat, improving the taste. However, beyond the meat, the skin, bones, and internal organs can be cooked and eaten as well. There is scientific basis behind each of these traditional cooking methods, and the continuation of these dietary habits constitutes the food culture of Japan.
著者
本澤 真弓 亀谷 小枝
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.43-52, 2001-06-30 (Released:2011-01-31)
参考文献数
21

全国ネットの4種のテレビ局について, 1999年6月初旬の1週間の放映内容を基に, 食に関するCMを抽出して, チャンネル別, 曜日別, 時間帯別, 食品・飲料別に集計し, CM中の訴求商品の種類, CM露出回数および訴求内容の特性を解析した.(1) いずれのchにおいても食品および飲料のテレビCMの全テレビCMに占める割合は, 1週間では土日よりも平日の方が高く, また1日では18時以降の夜帯よりも朝6時~および正午~の朝帯と昼帯の方が常に高かった. このことは, 食CMの訴求対象と密接に関連するだけでなく, CM料金および視聴率との関わりから, 食品CMが多数回のCMの反復露出により認知率の向上をはかる傾向にあることが伺えた.(2) 食品CMを8種の食品群にグループ化した場合, 「菓子類」および「調味料類」のCMの種類が他の食品グループのCMよりも圧倒的に多く, またCM露出回数も顕著に高かった. 飲料CMを4種の飲料グループに分類した場合, 「清涼飲料類」および「コーヒー・紅茶飲料類」のCMの種類ならびにCM露出回数が最も高く, 次いで「茶系飲料類」の順であった.(3) 食品CM, 飲料CMともに, 種類およびCM露出回数の多い商品CMは, 特定のchでの集中した反復露出を行う傾向が認められた.(4) 食に関するCM中の訴求特性を8つのカテゴリーに分類した結果, 食品CMでは, 日常の基本食材となるような「肉・魚介.卵・豆類」, 「穀類.主食類」, 「調味料類」CMでは「食味」に次いで「品質・安全性」を訴求するものが多く, 「菓子類」, 「栄養補助食品類」のCMとは異なる訴求特性を示した. また, 商品の種類ならびにCM露出回数の多い「菓子類」, 「調味料類」CMは, 新発売などの「新規性」を訴求するCMの割合が他の食品グループの場合に比べて若干高く, 商品認知のための知名広告として, テレビの媒体機能を有効活用していることが推測された.飲料CMの訴求特性については, 「清涼飲料類」および「茶系飲料類一CMでは, 「素材・成分」を訴求するものが「食味」訴求の割合より高く, 特定成分や素材の除去.軽減や, 添加・増量による飲料のデザインの傾向の強いことが伺われた.
著者
井上 吉世 林 淑美 原 知子 和田 珠子 水野 千恵 中原 満子 伊藤 知子 村上 恵 的場 輝佳
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.313-319, 2010-03-30 (Released:2010-04-30)
参考文献数
17

This study clarifies the applicability of a sensory evaluation to easily determine the life span of frying oil on the fried food cooking in the kitchen. Two types of foods, i. e. , a chicken fillet and potato, were deep-fried coated with two types of flour, i. e. , potato starch and wheat flour. Frying was continued until the flavor score of the oil had dropped to 3. A sensory evaluation of the frying oil and each fried food was then carried out. The life span of the frying oil to reach the flavor score of 3 was slightly longer for the potato compared to the chicken fillet. It was suggested that the scores for the viscosity and rancid flavor of the frying oil corresponded to the flavor score result of the frying oil. The flavor and taste of the potato fried in the oil with a flavor score of 3 were not good. However, it was difficult to judge the degradation by the appearance of the fried chicken fillet coated with potato starch. The flavor score of the frying oil corresponded to the rancid flavor of the frying food in any case. The color of the frying oil and the taste of the fried materials varied case by case. These results suggest that the flavor score of the frying oil is a useful and easy method to determine the life span of frying oil in the domestic kitchen when a potato starch or wheat flour coating is used.
著者
水野 和代
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.98-105, 2011-09-30 (Released:2011-10-27)
参考文献数
17
被引用文献数
2

This research intends to present a measure to increase vegetable consumption by evaluating the difference in vegetable consumption awareness between young and middle to elderly aged groups by a questionnaire survey. Survey data was analyzed through factor and image analyses, e.g., the SD method. The result of the analysis showed that both groups were aware that vegetables are essential in diets and beneficial to health. Different responses were obtained for other parameters such as consumer benefit, image, and expectations from each group. Young respondents were less reluctant toward processed vegetables, expected results in their physical appearances, and anticipated immediate effects. On the other hand, middle to elderly aged respondents had a good image of fresh vegetables but not processed vegetables. These respondents expected health benefits and prevention of current and future diseases because of vegetable consumption. Therefore, to increase vegetable consumption, it is critical to identify measures that consider the difference in awareness between different age groups.
著者
白井 智美 影山 洋平 佐藤 拓也 柳楽 大気 相澤 有美 志賀 孝宏 田所 忠弘 鈴木 司 小林 謙一 山本 祐司
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.49-56, 2016 (Released:2016-07-28)
参考文献数
27

Numerous epidemiological surveys have shown that consuming coffee can prevent cancer development. Caffeine and chlorogenic acid are the most well known constituents which are included in coffee and prove to have an positive effect to prevent cancer. Although these constituents are known to directly act on anti cancer machineries, such as anti-oxidant effect. There are also studies showing that benefit of functional food is exhibited by metabolic changes. Therefore, we may anticipate that changing metabolic pathways may occur during coffee intake and further expect lowering the cancer risk. Thus, in this study, we analyzed the effect of administration of coffee to Eker rat which are a renal cancer and a metabolic syndrome model rat. By giving 1% coffee for 100 days, we found that renal cancer development was suppressed. We further analyzed the metabolic change by metabolomic analysis in liver and observed that the abnormal carbohydrate and ketone body production in Eker rats were restored by coffee consumption. We also confirmed that these effects were not due to the recovery of tumor suppression gene TSC2 expression. Thus, coffee may have a anti-cancer effect by changing the metabolic pathway and lower the risk factors which may lead to cancer development.
著者
会田 久仁子 角野 猛
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.145-152, 2007 (Released:2007-11-07)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

市販及び自家製のかぶらずしと大根ずしの諸成分と微生物について検討した。得られた結果は以下のとおりである。  1) 市販かぶらずしのナトリウム量, カリウム量, 食塩濃度および水分活性は, それぞれ平均734mg/100g, 197mg/100g, 1.9%, 0.958, 同様に大根ずしは675mg/100g, 144mg/100g, 1.7%および0.956であった。一般生菌数はかぶらずしで平均6.1×105/g, 大根ずしで4.8×106/g, 乳酸菌数はかぶらずしで4.8×105/g, 大根ずしで1.7×107/gであった。  2) 自家製かぶらずしおよび大根ずしの遊離アミノ酸総量は, いずれも同様の傾向をとり, 漬け込み直後は299.5~419.3mg/100g, 30日後には595.5~717.4mg/100gとなった。特に, 保存15日以後急激に増加が認められた。  3) 自家製かぶらずしおよび大根ずし共に, 保存にともなってGABA, アルギニン, アラニン, グルタミン酸の増加が顕著となり, 30日後にはGABA量は47.7~60.5mg/100gとなった。
著者
千原 理沙 角野 猛 山田 幸二
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.62-68, 2002-06-30 (Released:2011-01-31)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

ブドゥは, Stolenpkorus種の小鰯を砕いたものを塩漬けし, それにタマリンドを加え, 数ケ月間, 環境温度によって発酵させたマレーシアの魚醤油である.その諸成分と微生物について検討し, 次の知見を得た.1) Na量, K量, 食塩濃度及びNa/K比はそれぞれ, 平均13, 200mg/100g, 275mg/100g, 33.6%及び48.4で, 東南アジア各国で製造された魚の塩蔵発酵食品中最も高い食塩濃度を示す調味料であった.2) 遊離アミノ酸総量は平均5, 642mg/100であった.主な遊離アミノ酸は, グルタミン酸, ロイシン, リジン, アラニン及びアスパラギン酸であり, 遊離アミノ酸量の最も多い範疇に入る魚醤油であった.また, グルタミン酸量の割合は17.5%であった.3) 脂肪量は平均0.69%であった.主な脂肪酸は, C16:0, C18:0, C22: 6であり, 他の種類の魚醤油と類似していた.4) 一般生菌数は平均4.38 (log/g) であった.また, 腸内細菌科の細菌, 大腸菌群及び黄色ブドウ球菌は検出されず, 衛生細菌学的には不良な結果を得るものではなかった.5) 分離されたBacillus属細菌はB. lickeniformis, B. megaterium, B.pumilus, B.subtilisおよびB.cereusであった.これらの至適発育温度は30℃ -42℃, 塩化ナトリウム濃度15%以上で発育が阻止された.6) 分離された、Staphylococcus属細菌はS.xylosus及びS.cokniiでいずれも非病原性の細菌であった.

1 0 0 0 OA 野外給食

著者
上原 康忠
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.84-89, 1998-12-31 (Released:2011-01-31)
著者
小林 麻里子 奥脇 義行 川井 英雄
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 = Journal for the integrated study of dietary habits (ISSN:18812368)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.211-216, 2006-12-30
参考文献数
10
被引用文献数
1

&nbsp;&nbsp;<I>Staphylococcus</I>属菌及び<I>Streptococcus</I>属菌はPETボトル入り清涼飲料水中でも長時間の生存が可能な場合がある。そこで,これらの中で口腔内に常在していることの多い<I>S.aureus</I>と<I>S.pyogenes</I>の一定濃度の菌液を調製し, 菌数の変動を検討した。<BR>(1) <I>S.aureus</I>と<I>S.pyogenes</I>を接種した実験において, スポーツ飲料と乳酸菌飲料では<I>S.aureus</I>では菌数の変化が見られなかったが, <I>S.pyogenes</I>は5時間後までに死滅した。<BR>(2) むぎ茶飲料では<I>S.aureus</I>は増加し, <I>S.pyogenes</I>はわずかな減少を示した。<BR>(3) 紅茶飲料 (ミルクティ) は両菌種ともに増加した。<BR>(4) スポーツ飲料と乳酸菌飲料はpH3, むぎ茶飲料と紅茶飲料 (ミルクティ) はpH6程度であるため, 細菌の生存には成分も影響するが, pHの方がより強く影響することが示唆された。<BR>(5) むぎ茶飲料と紅茶飲料 (ミルクティ) との比較では, むぎ茶飲料はタンパク質, 脂質, 炭水化物を全く含まず, 原材料が麦の浸出液のみである。これに対し, 紅茶飲料 (ミルクティ) は乳成分 (牛乳, 脱脂粉乳など) や砂糖を含むため, 細菌の増殖に適した条件であると言える。<BR>(6) 黄色ブドウ球菌食中毒が発症するエンテロトキシン量は平均100~200ngとされる。これは, 食品中における<I>S.aureus</I>が10<sup>6</sup>cfu/g以上と同レベルの増殖である。本研究の紅茶飲料 (ミルクティ) では, 接種24時間後でもっとも増殖した試料でも10<sup>4</sup>cfu/mL程度である。このためエンテロトキシンが産生される条件に満たなかったと考えられた。
著者
横山 佳子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.21-27, 2013-06-30 (Released:2013-07-26)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究では, 野菜サラダの加工過程および冷蔵保存を含め, 大量調理施設衛生管理マニュアルに基づき7工程 (原材料, 水洗・下処理, 中性洗剤・すすぎ, 殺菌・すすぎ, 試料の切断・混合, 冷蔵保存10°C, 24時間後, 冷蔵保存10°C, 48時間後) を設定し, 一般細菌数と細菌叢の変化について検討した。特に野菜に多く分布しているNFGNBの消長について検討した。野菜を7つの全工程に従って処理した結果, 一般細菌数および細菌叢に大きな変化は認められなかった。野菜には多くのNFGNBに分類される菌種が分布していた。野菜サラダを作成し, 10°C, 48時間冷蔵保存をすると, 腸内細菌科の細菌割合が増加する傾向が見られた。全工程で検出回数が多かったのは, 芽胞形成・桿菌およびBurkholderia cepaciaであった。また検出された菌種の多くがNFGNBに属するものであった。NFGNBは一般的にヒトへの病原性は低いが易感染性宿主には重篤な感染症を起こし, また常用抗菌薬に対する耐性を有することが知られていることから, 易感染性宿主や在宅介護を受けている者に対しては, 野菜を加熱調理して提供することおよび生での提供が必要な場合は調理後速やかに食することでリスクが緩和されることが示唆された。
著者
湯川 晴美
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.100-103, 2005 (Released:2006-08-04)
参考文献数
6
被引用文献数
2 1 4

We conducted an 8-year longitudinal study to investigate aging-related changes in food and nutrient intake in a cohort of elderly subjects living in an urban community, and attempted to relate food intake with vital prognosis. The first (baseline) nutrition survey was conducted in 1991 on 161 subjects (72 males and 89 females; aged 65 to 79) living in Koganei City. The second nutrition survey was conducted 8 years later in 1999. Excluding death or illness, 98 subjects (86%) were available for follow-up. Nutrition survey was conducted by a three-day dietary record method with daily home visits by dieticians. Aging-related changes in physical attributes, food intake, nutrient intake, and intake adequacy were analyzed. The relationship between nutritional intake and mortality was analyzed by Cox proportional hazard model. In the present cohort, although nutrient and food intake changes with aging, nutrient intake was higher than the recommended dietary allowances. These results show that a “diet for healthy longevity” is achieved by continuing to maintain the recommended dietary allowances despite age advancement.
著者
冨田 圭子 饗庭 照美 康 薔薇 大谷 貴美子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.230-241, 2005 (Released:2006-08-04)
参考文献数
12
被引用文献数
1

The effects of estimating their father's character on their sense of eating with the family was investigated by questionnaire studies for junior and senior high school and university students who were in the psychologically weaning stage.Although male students showed the tendency to accept the dignity for their father as a good characteristic according to their development, female students showed the tendency to regard it as an unfavorable characteristic. In the case of female students, their sense of eating with the family was shown to be more influenced by more complicated factors than the male students, i.e., pleasant memories with father, frequency of eating alone through their daily life and evaluation of their father's life. Althought male students had many pleasant memories with their father qualitatively, female students made much of it not only qualitatively but quantitatively.The most important factor that influences their sense of eating with families was thought to be the affirmative sense for their father through respect and friendliness.The frequency of eating alone was correlated with unpleasant memories with families and with a sense of solitary in the family.
著者
穴井 美恵 高橋 徹 森田 一三 丸山 智美
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.114-117, 2013-09-30 (Released:2013-11-02)
参考文献数
24

Background and objectives : To elucidate modulators of rapid eating behaviors, behaviors in elderly residents in a nursing home were observed using a video recording methods. Methods : Participants of 17 elderly residents were employed. Durations and numbers of chewing of diets with and without soup were measured. Subjects were divided into the fast-eating group and slow-eating group based on duration of chewing. Relationship between duration of chewing of diets with soup and duration of chewing of diets without soup was analyzed by linear regression. Results : Proportion of duration and numbers of chewing in diets with soup to those of diets without soup in the fast-eating group was lower than those of the slow-eating group. Both of duration and numbers of chewing of diets without soup depended on those of diets with soup (p=0.001) . Conclusions : Modulators of rapid eating behaviors in elderly residents might be lower duration and numbers of chewing of diets with soup.
著者
古橋 優子 八木 明彦 酒井 映子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.130-140, 2006 (Released:2006-11-14)
参考文献数
43
被引用文献数
4 2

女子学生の食生活の諸問題を明らかにし, セルフケア行動ができる食教育のあり方を検討するために, 1~2年生577名を対象として料理レベルからみた食事形態と食生活状況に関する調査を行った。1. 栄養素等摂取状況は, カルシウム, 鉄, 食物繊維などが著しい不足傾向にある一方で, 脂質は過剰摂取となっていた。2. 食品群別摂取状況は, 砂糖類, 菓子類, 油脂類, 卵類, 肉類を除く全ての食品類が著しく不足していた。3. 主食・主菜・副菜料理ともに揃っている食事の割合は, 朝食, 昼食, 夕食ともに低い状況であった。4. 料理の組み合わせから評価した食事形態が良好な者は, 栄養素等摂取状況や食品群別摂取状況が良いことを認めた。また, 食行動や健康状態も良好であった。5. 女子学生の食生活状況の構造は, 「栄養や食事への関心度」要因と「自己管理能力」要因に位置づけられることが示された。  以上のことから, 料理レベルの評価法である食事形態と食生活関連要因を連動させた実践学習, セルフ・コントロールやセルフ・モニタリング能力を高める食教育を通して食行動の変容をはかることが効果的であると考えられる。