著者
西本 豊弘 藤尾 慎一郎 永嶋 正春 坂本 稔 広瀬 和雄 春成 秀樹 今村 峯雄 櫻井 敬久 宮本 一夫 中村 俊夫 松崎 浩之 小林 謙一 櫻井 敬久 光谷 拓実 設楽 博巳 小林 青樹 近藤 恵 三上 喜孝
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2004

弥生時代の開始が紀元前10世紀末であることが明らかとなった。その後、日本列島各地へは約500年かかってゆっくりと拡散していった。さらに青銅器・鉄器の渡来が弥生前期末以降であり、弥生文化の当初は石器のみの新石器文化であることが確実となった。
著者
小林 謙一
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.469-476, 2020-08-01 (Released:2021-08-01)
参考文献数
40

キノリン酸は,必須アミノ酸であるトリプトファンの中間代謝産物であり神経毒である.キノリン酸の脳内蓄積が,ハンチントン舞踏病などの神経変性疾患と関連するという「キノリン酸仮説」が提唱されてから40年が経つ.筆者らは,キノリン酸を体内に蓄積できる遺伝子改変マウスを用いた解析で,このマウスが腎線維化と腎性貧血様の症状を呈することを見いだした.これは,キノリン酸と慢性腎臓病とが関連するという第2の「キノリン酸仮説」といえる.本稿では,キノリン酸と慢性腎臓病とのかかわりについて解説するとともに,これらを踏まえて「腎」を守る機能性食品の創出が可能かどうかについて考えてみたい
著者
大久保 耕嗣 阿部 政典 小林 謙一 長井 一彦 長井 知子 樋口 多恵子 継田 雅美
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.290-294, 2008 (Released:2009-02-16)
参考文献数
19
被引用文献数
1

著者等は,新潟県内の医療施設に1988年,1994年および2007年にアンケートを取り,手指衛生の変遷について調査した.1988年に主流であったベイスン法は,現在では行われていない.1994年は,速乾性擦式アルコール製剤のラビング法と消毒薬を用いたスクラブ法が多く,2007年は,流水と石鹸,抗菌性石鹸および消毒薬を用いたスクラブ法が多かった.一方,日本環境感染学会において1992年から2007年までの手指衛生に関する全ての発表と論文を分析した.手指衛生についての発表および論文タイトルが,全体に占める割合は10%であった.学会発表は,2002年にCenters for Disease Control and Prevention (CDC)手指衛生のためのガイドラインが発表された翌年に,8.7%から15.3%と高くなった.このガイドラインは,水場のない場所での手指衛生を踏まえてアルコール含有のラビング法を推奨しているが,日常手洗いでは石鹸と抗菌性石鹸を用いたスクラブ法を推奨している.2007年の調査では,アルコール含有ラビング法が減少していた.各病院において基本である流水下で行う手洗いが実施されていることが示唆された.日常手洗いと衛生的手洗いが区別されて行われているのではないかと考えられた.
著者
中塚 武 木村 勝彦 箱崎 真隆 佐野 雅規 藤尾 慎一郎 小林 謙一 若林 邦彦
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2017-05-31

全国の埋蔵文化財調査機関と協力して、年輪酸素同位体比の標準年輪曲線の時空間的な拡張と気候変動の精密復元を行いながら、酸素同位体比年輪年代法による大量の出土材の年輪年代測定を進め、考古学の年代観の基本である土器編年に暦年代を導入して、気候変動との関係を中心に日本の先史時代像全体の再検討を行った。併せて、年輪酸素同位体比の標準年輪曲線(マスタ―クロノロジー)を国際的な学術データベースに公開すると共に、官民の関係者への酸素同位体比年輪年代法の技術一式の移転に取り組んだ。
著者
小林 謙一郎
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.348-353, 2015 (Released:2015-12-05)
参考文献数
13
被引用文献数
2 5

歯科診療所における針刺し・切創の実態や,B型肝炎ワクチンの接種状況は明らかではない針刺し・切創を原因とする血液・体液媒介性感染症の予防を目的とし,実態を把握するためアンケート調査を行った.東京都墨田区内の歯科診療所に勤務する医療従事者(歯科医,歯科衛生士,歯科助手)を対象とした.墨田区内130施設中69施設よりアンケート調査票を回収し,計97名(歯科医師74名,歯科衛生士13名,歯科助手10名)の回答を得た.歯科医師の70.3%,歯科衛生士と歯科助手を合計した中の77.2%が針刺し・切創を経験していた.歯科医師は,診療中の麻酔用注射針による針刺しが多く,歯科衛生士や歯科助手では,針刺し・切創の原因器材や状況は様々であった.歯科診療所に勤務する医療従事者のB型肝炎ワクチン接種率は59.4%であった.歯科衛生士,歯科助手,50歳以上の歯科医師において特にB型肝炎ワクチンの接種率が低かった.また,針刺し・切創発生時に適切な対応(流水による創部の洗浄と病院の受診)を行ったものはわずか9%であった.歯科診療所では,多くの医療従事者が針刺し・切創を経験しているが,B型肝炎ワクチンの接種率や針刺し・切創発生時の対応は十分ではない.
著者
遠部 慎 宮田 佳樹 小林 謙一 松崎 浩之 田嶋 正憲
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.137, pp.339-364, 2007-03-30

岡山県岡山市(旧灘崎町)に所在する彦崎貝塚は,縄文時代早期から晩期まで各時期にわたる遺物が出土している。特に遺跡の西側に位置する9トレンチ,東側に位置する14トレンチは調査当初から重層的に遺物が出土し,重要な地点として注目を集めていた。彦崎貝塚では土器に付着した炭化物が極めて少ないが,多量の炭化材が発掘調査で回収されていた。そこで,炭化材を中心とする年代測定を実施し,炭化材と各層の遺物との対応関係を検討した。層の堆積過程については概ね整合的な結果を得たが,大きく年代値がはずれた試料が存在した。それらについての詳細な分析を行い,基礎情報の整理を行った。特に,異常値を示した試料については,再測定や樹種などの同定を行った。結果,異常値を示した試料の多くは,サンプリング時に問題がある場合が多いことが明らかになった。特に水洗サンプルに顕著で,混入の主な原因物質は現代のものと,上層の両者が考えられる。また,混入した微細なサンプルについても,樹種同定の結果,選別が可能と考えられた。これらの検討の結果,明らかな混入サンプルは,追試実験と,考古学的層位などから,除くことが出来た。また,9トレンチと14トレンチと2つのトレンチでは堆積速度に極端な差が存在するものの,相対的な層の推移は概ね彦崎Z1式層→彦崎Z2式層→中期層→彦崎K2式層→晩期ハイガイ層となることがわかった。今後,本遺跡でみられたコンタミネーションの出現率などに留意しつつ,年代測定試料を選別していく必要がある。そういった意味で本遺跡の事例は,サンプリングを考えるうえでの重要なモデルケースとなろう。
著者
春成 秀爾 小林 謙一 坂本 稔 今村 峯雄 尾嵜 大真 藤尾 慎一郎 西本 豊弘
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.163, pp.133-176, 2011-03

奈良県桜井市箸墓古墳・東田大塚・矢塚・纏向石塚および纏向遺跡群・大福遺跡・上ノ庄遺跡で出土した木材・種実・土器付着物を対象に,加速器質量分析法による炭素14年代測定を行い,それらを年輪年代が判明している日本産樹木の炭素14年代にもとづいて較正して得た古墳出現期の年代について考察した結果について報告する。その目的は,最古古墳,弥生墳丘墓および集落跡ならびに併行する時期の出土試料の炭素14年代に基づいて,これらの遺跡の年代を調べ,統合することで弥生後期から古墳時代にかけての年代を推定することである。基本的には桜井市纏向遺跡群などの測定結果を,日本産樹木年輪の炭素14年代に基づいた較正曲線と照合することによって個々の試料の年代を推定したが,その際に出土状況からみた遺構との関係(纏向石塚・東田大塚・箸墓古墳の築造中,直後,後)による先後関係によって検討を行った。そして土器型式および古墳の築造過程の年代を推定した。その結果,古墳出現期の箸墓古墳が築造された直後の年代を西暦240~260年と判断した。
著者
小林 謙一 坂本 稔
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.196, pp.23-52, 2015-12-25

本稿は,縄紋後期の生業活動において,海洋資源がどの程度利用されていたのかを見積るため,炭素の安定同位体比(δ¹³C値)と炭素14年代をもとに,時期別・地域別の検討をおこなったものである。旧稿[小林2014]において,陸稲や水田稲作が出現する弥生移行期である縄紋晩期~弥生前期の土器付着物を検討した方法を継承して分析した。そのことによって,旧稿での縄紋晩期と弥生前期との違いの比較検討という目的にも資することができると考える。土器内面の焦げや外面の吹きこぼれなど,煮炊きに用いられた痕跡と考えられる土器付着物については,δ¹³C値が-24‰より大きなものに炭素14年代が古くなる試料が多く,海洋リザーバー効果の影響とみなされてきた。一方,-20‰より大きな土器付着物については,雑穀類を含むC₄植物の煮炊きの可能性が指摘されてきた。しかし,これらの結果について,考古学的な評価が十分になされてきたとはいえない。国立歴史民俗博物館年代研究グループが集成した,AMSによる縄紋時代後期(一部に中期末葉を含む)の炭素14年代の測定値を得ている256試料(汚染試料及び型式に問題ある試料を除く)を検討した。その結果,土器付着物のδ¹³C値が-24~-20‰の試料には炭素14年代で100 ¹⁴C yr以上古い試料が多く見られることが確認され,海産物に由来する焦げである可能性が,旧稿での縄紋晩期~弥生前期の土器付着物の場合と同様に指摘できた。北海道の縄紋時代後期には海産物に由来する土器付着物が多く,その調理が多く行われていた可能性が高いことがわかった。東日本では縄紋時代後期には一定の割合で海産物の影響が認められるが,西日本では近畿・中四国地方の一部の遺跡を除いてほとんど認められない。これらは川を遡上するサケ・マスの調理の結果である可能性がある。また,C₄植物の痕跡は各地域を通じて認められなかった。以上の分析の成果として,土器付着物のδ¹³C値は,縄紋時代後期の生業形態の一端を明らかにし得る指標となることが確認できた。
著者
横山 千鶴子 前田 雪恵 石川 幸枝 鈴木 司 小林 謙一 辻井 良政 髙野 克己 中川 徹 山本 祐司
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.89-95, 2017 (Released:2017-10-31)
参考文献数
24

Serum cholesterol level reduction is an important factor for preventing lifestyle-related disease. Together, search for food materials which reduces serum cholesterol level have come to people' s attention. In this study, we carried out a large-scale and a long-term study to evaluate the effect of brown rice on serum cholesterol level. In brief, we conducted this study using a cross-over design with 90 days of consuming pregelatinized brown rice against non-brown rice. The following results were obtained.1) There was a low drop-out rate: 2.5% (3 of 120 subjects), and many participants replied that this program was easy to join, because the preparing of brown rice was very easy and the contents of the program were very simple.2) Brown rice intake increased bowel movement and improved the participant' s physical condition.3) Serum cholesterol levels were significantly decreased in the subjects starting with abnormal value of serum cholesterol (over 221 mg/dL) by brown rice intake.4) Brown rice intake decreased serum LDL cholesterol in the subjects with initial level of high serum LDL cholesterol (over 140 mg/dL).5) However, serum HDL cholesterol level of brown rice intake group did not change in the subjects of low serum HDL cholesterol levels (under 40 mg/dL). These large-scale studies suggested brown rice has serum cholesterol decreasing effect in people with high cholesterol level.
著者
小林 謙一 春成 秀爾 坂本 稔 秋山 浩三
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.139, pp.17-51, 2008-03-31

近畿地方における弥生文化開始期の年代を考える上で,河内地域の弥生前期・中期遺跡群の年代を明らかにする必要性は高い。国立歴史民俗博物館を中心とした年代測定グループでは,大阪府文化財センターおよび東大阪市立埋蔵文化財センターの協力を得て,河内湖(潟)東・南部の遺跡群に関する炭素14年代測定研究を重ねてきた。東大阪市鬼塚遺跡の縄文晩期初めと推定される浅鉢例は前13世紀~11世紀,宮ノ下遺跡の船橋式の可能性がある深鉢例は前800年頃,水走遺跡の2例と宮ノ下遺跡例の長原式土器は前800~550年頃までに較正年代があたる。奈良県唐古・鍵遺跡の長原式または直後例は,いわゆる「2400年問題」の中にあるので絞りにくいが,前550年より新しい。弥生前期については,大阪府八尾市木の本遺跡のⅠ期古~中段階の土器2例,東大阪市瓜生堂遺跡(北東部地域)のⅠ期中段階の土器はすべて「2400年問題」の後半,即ち前550~400年の間に含まれる可能性がある。唐古・鍵遺跡の大和Ⅰ期の土器も同様の年代幅に含まれる。東大阪市水走遺跡および若江北遺跡のⅠ期古~中段階とされる甕の例のみが,「2400年問題」の前半,すなわち前550年よりも古い可能性を示している。河内地域の縄文晩期~弥生前・中期の実年代を暫定的に整理すると,以下の通りとなる。 縄文晩期(滋賀里Ⅱ式~口酒井式・長原式の一部)前13世紀~前8または前7世紀 弥生前期(河内Ⅰ期)前8~前7世紀(前600年代後半か)~前4世紀(前380~前350年頃) 弥生中期(河内Ⅱ~Ⅳ期)前4世紀(前380~前350年頃)~紀元前後頃すなわち,瀬戸内中部から河内地域における弥生前期の始まりは,前750年よりは新しく前550年よりは古い年代の中に求められ,河内地域は前650~前600年頃に若江北遺跡の最古段階の居住関係遺構や水走遺跡の遠賀川系土器が出現すると考えられ,讃良郡条里遺跡の遠賀川系土器はそれよりもやや古いとすれば前7世紀中頃までの可能性が考えられよう。縄文晩期土器とされる長原式・水走式土器は前8世紀から前5世紀にかけて存続していた可能性があり,河内地域では少なくとも弥生前期中頃までは長原式・水走式土器が弥生前期土器に共伴していた可能性が高い。
著者
大西 健児 小林 謙一郎 岩渕 千太郎 中村(内山) ふくみ
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.520-522, 2011-09-20 (Released:2017-08-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

Department of Infectious Diseases, Tokyo Metropolitan Bokutoh General Hospital A 18-year-old Japanese woman seen as an outpatient for refractory enterobiasis had been treated with pyrantel pamoate over 40 times since the age of 11. She washed her hands and cleaned house frequently, and all family members took pyrantel pamoate, but Enterobius vermicularis eggs remained. She was orally administered 400mg of albendazole 3 times inclinicvisits, after which eggs have not been seen for 1 year. Pyrantel pamoate isusedwidely against enterobiasis in Japan. Our case shows albendazole to also be effective against enterobiasis. Albendazole thus appears to be a useful anti-helminthic in enterobiasispatients in whom pyrantel pamoate is not effective. This is, to our knowledge, the first case of enterobiasis treated with albendazole in Japan.
著者
坂本 稔 小林 謙一 尾嵜 大真 中村 俊夫
出版者
名古屋大学年代測定資料研究センター
雑誌
名古屋大学加速器質量分析計業績報告書
巻号頁・発行日
no.16, pp.91-94, 2005-03

第17回名古屋大学タンデトロン加速器質量分析計シンポジウム平成16(2004)年度報告 Proceedings of the 17th symposiumon Researches Using the Tandetron AMS System at Nagoya University in 2004\日時:平成17 (2005)年1月24日(月)、25日(火) 会場:名古屋大学シンポジオン Date:January 24th and 25th, 2005 Place:Nagoya University Symposion Hall
著者
小林 謙一 國木田 大 遠部 慎 下釜 和也
出版者
中央大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2019-10-07

ユーラシア各地の旧石器時代の終わり・土器の始まりから土器の普及まで約10,000年間を対象とし、土器型式による相対年代と多様な測定法によってきた自然科学的年代を整理し、不足部分を新たに測定して、実年代の枠組みを完成させる。朝鮮半島、中国東北部、シベリア東部、中近東など、年代測定を集積して時期区分を相互に比較できるよう対比年代を明確にし、土器の広がりが伝播か多元発生かを明らかにする。実年代でのユーラシア先史文化の枠組みを完成させ、環境変動と文化史的変化と検討する。同時に、炭素14年代・酸素同位体と年輪・貝輪年代など年代測定法の多様な方法論の相互検証と補完を重ね、新たな年代決定の方法を構築する。
著者
小林 謙一
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.7, no.10, pp.1-24, 2000-10-04 (Released:2009-02-16)
参考文献数
59

縄紋土器,特に関東地方縄紋時代中期の土器は,その多彩な文様装飾によって知られている。その中でも,端正な五領ケ台II式,立体的で様々な装飾を華美に重ねる勝坂3式土器,画一化し次第に装飾要素を失っていく加曽利E式土器など,様々な顔を持っている。それらの特徴を捉え型式内容を解明する努力は,土器文化の時空間的整理や系統性を理解する上でも,またそれらの物質文化を生み出した縄紋人の精神性,土器製作の技術,装飾に対する認知を探る上でも,興味深い題材を与えてくれるものであり,現に多くの研究が重ねられてきた。本稿では,土器装飾の施文過程を,文様のレイアウトを中心に,模式図的に整理する。特に,割付の施文過程の規則性と実際の施文実行結果の正確さ,または予定された区画数や割付位置との違いとして現れる「ゆらぎ」を,区画数,割付角度,口縁・胴部の一致の度合いなどをみることで検討する。その結果,時期ごとに主流となる区画数,割付タイプが存在し,各土器文化における基準が存在することが確認される。同時に,各時期に基準から若干はずれるような割付の狂った土器も製作されている。五領ケ台式土器~勝坂2式土器は,口縁・胴部文様がともに4単位で構成され,比較的正確な割付がなされる割付タイプaが多い。勝坂3式から加曽利E1式土器は,変則的な割付タイプbなどがめだち,区画も2~6区画と多様で,3単位や5単位といった複雑な構成でも比較的正確に割付されるものがある。加曽利E3・4式土器の胴部文様は,ほぼ等間隔に成り行きに施文される割付タイプdが大半を占めるようになり,胴部文様は7~10以上の柱状区画が連ねられる構成となる。割付ポイントの角度や区画の長さを測定した結果から,五領ケ台式,勝坂式土器ではトンボ状器具や縄などを用いて等角度に割付を行おうとしている傾向が認められる。勝坂3式の縦位区画土器や抽象文を配する土器では,結果としてはダイナミックな文様構成をとっているが,施文前に等角度に割付のマークを付けているものが認められる。加曽利E3・4式土器の胴部文様は,指にょる人体スケールなどを用いつつ,等間隔に施文していく施文過程が復元される。土器割付の検討によって,縄紋土器の施文過程や土器生産システムの復元へとつながるであろう。
著者
春成 秀爾 小林 謙一 坂本 稔 今村 峯雄 尾嵜 大真 藤尾 慎一郎 西本 豊弘
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.163, pp.133-176, 2011-03-31

奈良県桜井市箸墓古墳・東田大塚・矢塚・纏向石塚および纏向遺跡群・大福遺跡・上ノ庄遺跡で出土した木材・種実・土器付着物を対象に,加速器質量分析法による炭素14年代測定を行い,それらを年輪年代が判明している日本産樹木の炭素14年代にもとづいて較正して得た古墳出現期の年代について考察した結果について報告する。その目的は,最古古墳,弥生墳丘墓および集落跡ならびに併行する時期の出土試料の炭素14年代に基づいて,これらの遺跡の年代を調べ,統合することで弥生後期から古墳時代にかけての年代を推定することである。基本的には桜井市纏向遺跡群などの測定結果を,日本産樹木年輪の炭素14年代に基づいた較正曲線と照合することによって個々の試料の年代を推定したが,その際に出土状況からみた遺構との関係(纏向石塚・東田大塚・箸墓古墳の築造中,直後,後)による先後関係によって検討を行った。そして土器型式および古墳の築造過程の年代を推定した。その結果,古墳出現期の箸墓古墳が築造された直後の年代を西暦240~260年と判断した。