著者
田口 守一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

平成18年度においては、刑事手続関与者に関する資料収集およびドイツの現地調査による参審制度の研究、合意手続の研究あるいは私訴手続の研究を予定していた。しかし、これらの資文献料の解読を進めていくうちに、外国制度の調査に着手する以前に、訴訟手続に関与する市民の範囲が拡張していく現象に関する歴史的・理論的研究の必要を感ずるに至った。そのような基礎的な考察なくしてただやみくもに外国調査を行っても研究を深めることはできないと思われたからである。とくに、1990年代以降のわが国における刑事手続への国家機関以外の者の関与が増加ないし強化されている。例えば、犯罪被害者の手続関与、検察審査員の権限強化、捜査段階における弁護人関与事件の増加、裁判員制度の導入などである。このような時代にあっては、法律専門家と市民の双方を含む多様な手続関与者相互の関係を理論的に解明することは時代の課題といってよい。また、わが国の刑事訴訟の構造として当事者主義訴訟構造が指摘されて久しいが、当事者主義の中核を形成する当事者処分権主義の視点から被疑者・被告人の地位を改めて検討することも時代の課題といってよい。そこで、ドイツ法における訴訟主体論の変遷とわが国における訴訟主体論の変遷を対比しつつ、訴訟主体の拡大現象について考察することとし、その結果、訴訟主体論も訴訟構造論との理論的一体性を自覚して展開される必要があること、また、その訴訟構造論は訴訟目的論と不可分一体の関係にあることを確認する論文を執筆した(「刑事訴訟主体論序説」『鈴木茂嗣先生古稀祝賀論文集』(2007年発行予定)に収録)。今後は、このような基礎的視座から各訴訟主体の地位についての考察を進めていきたいと考えている。
著者
山崎 勝男
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

近年,情動-動機づけ処理の観点から,前部帯状回(anterior cingulated cortex: ACC)機能への関心が高まっている.本研究では,悪い結果を伝えたときに惹起されるACC由来の前頭内側陰性電位(medial frontal negativity: MFN)について,結果に対する期待の強さとの関連を検討した.最近の理論では,自分の期待に反して結果が悪い場合には,ドーパミン作動系の活動低下によってACCに脱抑制が生じ,MFNを惹起させるという.もしそうならば,フィードバック信号提示前の期待の強さに伴ってMFN振幅は増大することになる,そこで,フィードバック信号に対する期待の強さを反映する刺激前陰性電位(stimulus-preceding negativity: SPN)を側定し,MFNと期待との関連を調べた.実験には単純なギャンブル課題を用いた.画面上に提示される10円と50円の組み合わせから成る選択肢のいずれか一方を選択し,2.5秒後に選択側の視覚刺激が緑色になれば当該金額を受け取れるが,赤色になればその分減額されるという課題だった.実験の結果,50円獲得直後の試行では10円を選択するものの,50円損失後では50円を再び選択するというリスク選択行動が明らかになった.しかしながら,MFNとSPNはリスク選択行動とは合致せず,いずれも50円獲得直後に増大する結果となった.行動と脳活動との乖離は,リスクを選択させる動機づけ過程と,当該試行の結果に対する期待は異なっていたことを示唆している.一方,本研究の予想通り,MFNとSPNは同様の振る舞いを示し,フィードバック信号に関与する情動一動機づけ処理とACCとの関連性を明確にすることができた.
著者
黒川 洸 尾島 俊雄 高橋 信之 増田 幸宏 小澤 一郎
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

首都直下地震対策が緊急の課題である現在、世界に多大な影響力を持つ東京の企業の業務中枢機能を維持することが重要である。ミュンヘン再保険会社が発表した都市のリスク指数では、東京の危険度は710と他の都市の高くても100前後という値に比べて非常に高く、国際的に東京の危険性が危惧され、今後東京での国際的企業の経済活動が阻害される恐れがある。現在国際的に行政のみならず民間企業も地震リスクに対策を行うことが必要とされている。特に中央防災会議首都直下地震専門対策委員会においても、企業が災害時に重要業務を継続するためのBCP(事業継続計画)の策定を行うことが必要と報告されている。しかし日本の企業の地震リスク対策は不十分であり、ここ30年以内に起こる可能性の高い首都直下地震による多大な被害も懸念される。そこで企業が具体的にこれらの地震リスクを低減し事業継続を行なうための防災投資の提案を行う必要がある。都市の防災基盤整備としての安全街区構築のためのスキーム検討として、新たな保険制度の提案を目指して下記項目について検討を進めた。BCPのISO化や、企業統治の一環として企業の一層の危機管理が求められる中で、都市のライフラインや建築の設備系統を強固に整備して、特別に信頼性を高めた地域を、日本独自の「安全街区」として提案する。こうした「安全街区」が実現した場合の、安全街区内の高い仕様の建物について、地震利益保険や再保険市場での査定、あるいは不動産投資市場における評価への影響について調査を行った。また海外への研究発表に重点をおいて研究活動を進めた。また、環境と防災両面に資する「都市環境インフラ」の構築に向けての包括的な概念検討を継続して進めており、関連の実測調査や現地調査、文献調査を組み合わせ、今後の研究展開に資する基盤的な要素について幅広く検討を行い成果を得た。研究は、1.人工系都市基盤・都市インフラに関連する研究、2.都市内自然資本に関連する研究、3.各都市の基礎調査、4.安全・安心確保のための関連事例等の基礎調査に分類される。関連する社会的な要求を背景に、意義ある研究を行うことができた。研究助成に御礼申し上げる次第である。
著者
向後 恵里子
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、日露戦争(1904-05)の視覚イメージを、絵画作品や新聞・雑誌等を含む当時の多様なメディアを横断的・包括的に調査し、分析と考察を行うものである。従来未調査の部分が多く残されていた日露戦争と視覚文化のかかわりについて、基本的な見取図を描くことができた。また、戦争の表象をめぐる多様なあり方が明らかになるにつれ、日露戦争のイメージ形成の道筋が一つではなく多層的になされていること、戦争の推移に連れてその様相が移りかわってゆく様子をとらえることができた。こうした観察から、日露戦争の視覚イメージが、当時の社会状況と不可分であること、また「文明国」の「国民」を表象する傾向の多いことが明らかとなった。
著者
竹本 幹夫 山中 玲子 小林 健二 落合 博志 大谷 節子 石井 倫子 表 きよし 三宅 晶子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

本研究においては、現代の能楽研究における資料調査の実績を踏まえ、全国に散在する文庫・図書館・個人所蔵の謡本を博捜し、曲目索引を作成して『国書総目録』【能の本】以後に発見された謡曲作品・伝本を網羅的に補足することから出発し、上記500曲の各作品ごとに、伝存するテキストの系統関係を調査した上で、主要な系統の伝本を、一曲につき数本ずつ翻刻することを目指した。室町期成立の能のテキストを網羅的に翻刻・集成するような事業は今まで全く存在せず、本研究が能楽のみならず、近世・近代前期の文芸研究、および国語学に与える影響は、きわめて大きい。最終的な成果は、『謡曲大成』(仮称)の刊行を企図しているが、一曲ごとに数十本存在する伝本を書写・校合する作業が予想以上に難航し、このたびようやくア行74曲の系統付けが完了した。C-18として付属させた冊子がその成果内容である。これらの作業過程で、古写本・古版本の新出資料を複数調査することが出来た。その中には江戸時代版行番外謡本の系統研究に重要な位置を占める、伊藤正義氏蔵「寛永頃刊行観世流異書体小本」のような稀覯本も含んでいる。早稲田大学演劇博物館蔵「春藤流升形十番綴謡本」三百番のような、従来存在は知られていたが位置付けが不明であった本についても発見があった。この本は、観世流系ワキ方であった福王流の江戸後期の大規模な謡本集成に先駆けて行われた、金春流系ワキ方系の謡本集成としては比較的早い例に属することなどが明らかとなった。また謡本研究とは直接関連しないが、本研究費による謡本の所在調査の過程で、研究分担者や研究協力者による、曲ごとの作品研究が活性化した。さらには、本研究費による謡本調査の過程で、研究代表者の竹本による世阿弥能楽論書『三道』の最善本の発見なども行われた。いずれも本研究の特筆すべき副次的成果といえよう。
著者
澤田 敬司
出版者
早稲田大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2001

日豪の演劇比較に関し、日豪演劇の違い、特に「ナショナル」なイメージが演劇にどのような形で反映されるか、を具体的に検証するため、日豪の演劇実践者に協力を仰ぎ、実験的なパフオーマンスを行った。それがオーストラリア先住民戯曲を研究代表者が日本語訳、そして日本の演出家、および俳優がリーディング上演を行うという試みだった。そこで得られた全く新しい知見は、一部国立民族学博物館の研究部会で報告したほか、日本人演出家和田喜夫、来日し当該パフォーマンスにも参加してくれたオーストラリア先住民の劇作家・演出家ウェスリー・イノックに対して行ったインタビューを材料に近く論文にまとめ、日豪いずれかの学会誌に投稿する予定でいる。資料収集・整理については、オーストラリアへの資料収集の時期は予定より遅れたが、収集された文献資料をデータベース化するためのフォーマット作りを、まず完成させた。その他、日豪比較演劇関連の研究成果としては、日本の天皇の戦争責任をあつかったオーストラリア劇作家テレーズ・ラディックをインタビューし、オーストラリアの日本観、天皇観、戦争観、国家観、現代史観などを掘り起こすと共に、日本演劇との交流の可能性についての指摘を行った論文『テレーズ・ラディック:オーストラリアから見た天皇制』が発表された。また、現代を代表するオーストラリア女性作家ジョアンナ・マレースミスの代表作『オナー』の日本語版の舞台を、日本の演劇実践者(演劇集団円)と議論しながら製作した。このテクストを用いての議論の過程で日豪演劇の相違が浮き彫りになり、その成果は実際の舞台となって表れている。また、このパフォーマンスについても、日本人の観客のリアクションも含めて、オーストラリアの演劇研究学術誌に報告の論文を投稿する計画がある。
著者
岩崎 秀雄
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

シアノバクテリアの概日リズム,とくに転写翻訳に依存しない翻訳後振動子によるゲノムワイドな転写制御に関する解析を行った。連続明ではゲノム上の約1/3-1/2の遺伝子群に顕著な転写レベルの蓄積リズムが観られ,その位相分布,kai 依存性などを解析した。また,連続明では殆どの遺伝子の転写が劇的に低下し,プロテオームとトランスクリプトームの相関性に著しい乖離が生じること,ごく一部の遺伝子発現は暗期に活性化され,その多くはkai依存性がみられることなどを明らかにした。これらは,あらゆる生物種において,新規の概日遺伝子発現を欠く条件での初めての概日時計依存的転写調節の観察例である。
著者
寒川 恒夫 石井 浩一 安冨 俊雄 瀬戸口 照夫 宇佐美 隆憲
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究では,(1)日本の民族スポーツの実施状況を地方誌など主に文献資料によって把握し,次にその基礎の上に(2)47都道府県について各1〜2事例を選んで現地フィールドワーク(参与観察と聞き取り調査)をおこない,個々の事例の変容過程を明らかにした上で,変容の諸傾向を抽出することに目的が置かれた。研究目的の(1)については,対象事例が年中行事化しているものに限ったが,(a)実施頻度に地域差がみられること,(b)日本列島全体に実施が及ぶ種目と特定地域に実施が限定される種目があり,種目間に分布差がみられることが明らかにされた。研究目的の(2)については,観光化変容,行政公共化変容,簡素化変容,競技化変容の諸傾向が抽出された。観光化変容とは,民族スポーツが地域の経済振興のための観光資源としてその内容を変化させられてゆく現象という。行政公共化変容は,従来特定の集団に伝承されてきた民族スポーツが諸種の理由から主催権を市町村など行政当局に委譲したことによる変容を指している。簡素化変容は,人口減や経済的負担の増加などの理由から,主催集団が民族スポーツの規模や内容を簡略化する現象をいう。競技化変容は,それまで競争の形式をとっていなかった民俗行事が競技の体裁を取ってゆく現象をいう。これら4つの傾向は,それぞれを独自に生起する場合もあれば,その中のいくつかが複合する場合もある。
著者
松嶋 敏泰 平澤 茂一 平澤 茂一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では, センサネットワークを含むネットワーク分散処理の問題に対して, 多端子情報理論と統計的決定理論に基づいた基礎モデルを構築し, 構築したモデル上での最適解の導出及び最適解またはその近似解を実現するアルゴリズムを設計した.
著者
柴山 知也 三上 貴仁
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

2010年のチリ地震津波、同年のスマトラ島沖地震津波(メンタワイ諸島)、2012年のハリケーン・サンディー高潮(米国ニューヨーク)、2013年の台風ヨランダ高潮(フィリピン国レイテ島)などの海外で発生した沿岸域災害の調査を実施し、被災機構を解明した。近年の沿岸域土地利用の高密度化と輻輳化、さらに高潮の場合には地球気候の変動による台風の巨大化が大きな被害をもたらしていることが解った。高潮、高波被害の将来予測を行うために、気候モデルに基づいた高潮・高波数値モデルを開発し、インド洋、北太平洋などに適用した。温暖化後の変化について検討し、高潮の規模が拡大する可能性が高いことを指摘した。
著者
秋葉 弘哉 飯田 幸裕 北村 能寛
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

内容 本研究は、通貨危機後の為替レート制度としては、一国の経済厚生から見てどのような制度が「最適」であるかを理論的に分析した研究である。通貨危機が固定制と変動制の間の中間的な制度を採用していた国々に発生した事実を受けて、いわゆる二極化が起こると言われたが、Fear of Floating(変動に対する恐れ)とFear of Pegging(固定に対する恐れ)も指摘され、最適な為替レート制度の選択は難しいことを念頭に置いて、モデル分析を試みた。モデルではde factoとde jureの制度を峻別し、それらの組み合わせも考慮した厚生の比較を行った。意義 モデルは変動性を考慮するために、必然的に3国モデルになる。厚生面から接近するために、小国の損失関数を大国の損失関数と類似のものと仮定し、失業とインフレからの損失を政府・中央銀行が最小化するようなモデルを構築し、変動レート制度、固定レート制度、中間的制度の3つの制度下の厚生水準を比較検討した。中間的な制度における政府の為替介入をいかにモデル化するかに腐心した。重要性 構築したモデルに基づいた分析から、以下のようないくつかの重要な結論が導出された。(1)変動レート制は中間的制度よりも厚生上優位にある。(2)de factoの中間的制度では、de jureの中間的制度の厚生が、de jureの変動制よりも高いことがある。(3)de factoおよびde jureの中間的制度と固定レート制の厚生では、中間的制度の厚生水準の方が高い。(4)de factoおよびde jureの変動制と固定制の厚生では、変動レート制の方が高い。(5)de jureの変動制でも、de factoで変動制の方が、de factoで中間敵な制度のときよりも厚生水準は高い。(6)de factoとde jureの固定制と、de jureで変動制でありde factoで中間敵な制度では、後者の制度の厚生水準の方が高い。その他いくつかの結論が得られた。
著者
金岡 恒治
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、様々なスポーツ選手の腰痛発症率や腰椎椎間板変性率を調査し、腰部障害発生リスクの高い競技に対して動作解析や筋電図解析を行い、各競技での腰部障害発生要因を検討した。さらに、近年腰痛の運動療法として注目されている腰部安定化トレーニングや骨盤傾斜運動時の体幹深部筋(ローカル筋)活動をワイヤ電極により測定し、腰部障害発生を予防するために有効な運動療法を検証した。
著者
池岡 義孝 木戸 功 松木 洋人 松木 洋人
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、戦後日本の家族社会学の成立と展開を詳しく検討することである。それを、文献研究と年配の先生方へのインタビューを通じて行い、所期の目的を達成することができた。とくに、家族社会学の主流だけでなく、家族問題研究のグループ、マルクス主義家族社会学のグループ、女性学・フェミニズム研究のグループなど多様な研究の流れを明らかにすることができたことが大きな成果であった。このことで、戦後家族社会学の展開を多元的に理解する視座をえることができた。
著者
一之瀬 貴
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

【研究の目的】ファットローディング法は高脂肪を摂取して筋内に脂肪を貯蔵し、その脂肪を運動時のエネルギーとして有効利用する方法である。筋内への脂肪の貯蔵には筋のリポプロテインリパーゼが重要な役割を担っており、その活性は運動後に高まるが、糖質の摂取によって低下することが知られている。一方、スポーツの現揚では運動中に使われたグリコーゲンを速やかに回復することが重要なので、運動直後に糖質を摂取することは不可欠である。本研究では運動直後に糖質を摂取する条件の下、どのようなタイミングで高脂肪を摂取すれば運動時の脂質利用を効果的に高めることができるのかを検証した。【研究の方法】6名の若年成人男性を対象として、運動と食事を2日間統制した後、3日目に自転車エルゴメータを用いて運動試験を行い、疲労困憊までの運動時間と糖質・脂質の酸化量を評価した。食事統制は無作為な順序で、1週間以上間を空けて3回行った:1)運動直後に糖質を中心とした基本食のみを摂取する、2)運動直後に基本食と高脂肪食を同時に摂取する、および3)運動直後に基本食を摂取して、3時間後に高脂肪食を摂取する。運動後以外の食事は全て同じとした。【研究の成果】疲労困憊までの運動時間は基本食と比較して高脂肪食を摂取した場合に延長した。疲労困憊までの脂質酸化量は基本食より高脂肪食を摂取したときに高かったが、糖質酸化量は同じであった。したがって、高脂肪食摂取による運動時間の延長は脂質利用の増加による糖質利用の節約に起因したと推察される。一方、運動時の脂質酸化量は運動直後または運動3時間後に高脂肪食を摂取した揚合で同じであった。以上の結果から、運動後の食事では糖質だけでなく、高脂肪を積極的に摂取することの重要性が示唆された。また、運動後3時間以内の高脂肪摂取による脂質酸化量の増加は、糖質摂取の影響の変動に関係がないことが明らかになった。
著者
蘆田 孝昭 土田 健次郎 神田 信夫 町田 三郎 興膳 宏 福井 文雅
出版者
早稲田大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1990

近世産出の漢籍は,それ以前のものの復刻再刻等を含めれば膨大な漢籍世界の殆どでカバ-する。本研究はこれらの全体象把握の必要性を認識する各国の研究者と一堂に会し分担研究の成果を発表討議し研究法の交流を可能ならしめる国際会議開催を準備することが主目的であった。そのため既海外出張者の報告・問題提起が当年度前半での眼目となった。研究の結果,海外主要収蔵国への漢籍流入過程の探求が以上の目的を充足させる中心テ-マと認識され,そのため見識ある研究者として,英:ホリウエル・仏:シツペ-ル・伊:ベルトッチオリ・中:路土氏らが招軸人物に一応凝定された。その基底には,福井・蘆田・岡崎らの夫々バチカン・牛津大・北京図書館探訪での成果があることはむろん,国内的には,坂田。蓬左文庫,土田の米沢図書館,福井の妙法院文庫,蘆田の天理等各図書館採訪に,興膳・前田・山田・山本(達)各氏の探訪・協力が与る所大であった。これら国内探求の段階的進展に応じ,年度後半では準備会で仮説の検討,研究会で成果の発表と交流を行いつつ,国内収蔵本の称相把握と研究の深化がはかられたが,論文掲載も期間の短かさに比すれば可成りの量・質を示して開催の有意義性が予想され,更に年末,町田の尽力による域外漢籍国際会議東京開催の申入れがあり,また星島大・韓国建国大・香港大等に類似の企画が現出しつつあるのは本テ-マの重要性が国際的認識となりつつあることの証左とみられ、本会議以前のデモンストレ-ションの必要を各自認識した結果開かれたのが双柿舎漢籍会議で興膳:留学僧将来漢籍・山本明:清末白話小説に見了新成標点・岡崎:北京図書館の漢籍コンピュ-タ-処理等のほか枠例からも立正大:岡田袈裟男:江戸期白話受容・明星大・井上英明:国際会議に見る異文化現象等も加わり,通訳や選営面への協力の内諾が桜美林大植田渥雄氏らと共に得られたのは特記すべき成果であったと言えよう。
著者
嶋崎 尚子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では1980年前後から職業生活を開始したサラリーマン男女101名分の職業キャリアを中心としたライフコースデータを収集し、職業キャリアに生じた構造的変化を個人水準で観察した。本研究をとおして、サラリーマン男女の働き方が、企業社会における終身雇用制・年功序列制のゆらぎ、男女雇用機会均等法施行、転職労働市場の成立、育児介護休業法等、所属企業の慣行や職場環境、夫婦の働き方や勢力構造、サポートネットワーク、個人の人間行為力Human agencyなど、多元的なコンテクストの影響を受ける動態が明らかとなった。
著者
弦間 正彦
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

中東欧諸国の農業部門においては、個別の取組みをCAPに従ったものへと集約して行く一方で、競争力を持つ農業と活動力に富む農村を築くための特色を持った独自の政策や制度の確立も同時に求められている。本研究では、中東欧諸国の農業分野に焦点を絞り、生産・流通組織の構造変化、生産性、効率性の変化を比較分析・理解し、その結果をもとに政策分析を行い、この地域の農業・農村部門が持続可能な経済成長をとげるための政策や制度に関する包括的な政策的含意の導入を図った。
著者
増田 千利 吉田 誠
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

特性の優れたカーボンナノチューブ(CNT)などカーボン(CF)系短繊維強化アルミ基複合材料を放電焼結法で製造し、強度特性、熱伝導特性、界面組織を検討した。CNTとAl液滴との接触角は174°でほとんど、濡れることがなかった。CNT表面にAl, Mg金属をコーティングすることに成功した。またAL, Mg金属粉末にCNTを成長させることに成功した。これにより凝集したCNTを金属粉と均一に分散させる困難さを克服できる可能性を見出すことができたといえる。
著者
有馬 哲夫
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

日本の戦後放送体制成立に関する従来の研究は、SCAPの民間通信局(CCS)と民間情報教育局(CIE)が、日本の放送機関をどのように改造し、戦後の放送体制を規定した放送法の制定にどのように関わったのかについては論じてきが、それがアメリカ合衆国政府の政策、とりわけトルーマン政権の反共産主義政策(対日占領政策を含む)とどのように関係しているのか、連動しているのかについては考察してこなかった。そこで、本研究ではとくに一九四七年八月二七日に日本側に示されたハウギー・メモと一〇月一六日に日本側に渡されたファイスナー・メモのあいだに起こった変化、つまり、日本放送協会独占体制から公共放送・民間放送並立体制への変化に焦点をあて、アメリカの反共産主義政策(対日占領政策を含む)が、戦後の日本の放送体制の形成にどのように影響したのかを検証した。その結果、1)マッカーサーによる早期占領終結の準備(一九四八年大統領選出馬のため)、2)国際放送開始のための準備、3)のちに米対日協議会を結成するジャパンロビーのメンバーと国防次官ウィリアム・H・ドレイパーによる、いわゆる占領政策「逆コース」、の三つが複合してこの変化を生んだことがわかった。この放送立法の「逆コース」から、公共放送・民間放送並立体制、それに続く民間放送設立ラッシュ、小電力他局化政策、日本テレビ放送網を中心とするテレビ導入の動きは生まれたのだと結論づけた。本研究ではとくに一九四七年八月二七日に日本側に示されたハウギー・メモと一〇月一六日に日本側に渡されたファイスナー・メモのあいだに起こった変化、つまり、日本放送協会独占体制から公共放送・民間放送並立体制への変化に焦点をあて、アメリカの反共産主義政策(対日占領政策を含む)が、戦後の日本の放送体制の形成にどのように影響したのかを検証した。