著者
市田 敏啓
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は多国籍企業がホスト国の消費者市場に参入を考える場合にいかなる参入形態選択すべきかを理論的に分析することを主眼としている。その際に主に2つの観点からの分析を行った。一つ目はブランドの差別化の度合いに応じて参入形態が変わるという考え方である。また、二つ目は流通チャネルコントロールの問題にマルチタスクのプリンシパル・エージェントモデルなどを応用することでメーカーと小売りの指向の違いが参入形態を変えるという考え方である。
著者
深谷 克巳 島 善高 紙屋 敦之 安在 邦夫 堀 新 村田 安穂
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

2001-03年度の研究期間に、伊予宇和島藩・土佐高知藩・阿波徳島藩・讃岐高松藩・讃岐多度津藩・讃岐丸亀藩・備前岡山藩・因幡鳥取藩・長門萩藩の史料調査を行った。調査地は、宇和島市の伊達文化保存会(宇和島藩伊達家文書)、高知の山内家宝物資料館(山内家文書)・安芸市立歴史民俗資料館(高知藩家老五藤家文書)、国立国文学研究資料館史料館所(蜂須賀家文書)・徳島城博物館・徳島県立文書館・徳島県立博物館、香川県歴史博物館(高松藩松平家文書、多度津藩の藩庁文書・大名家文書)、丸亀市立資料館(丸亀藩京極家関係文書)、岡山大学附属図書館・岡山県総務部総務学事課文書館整備推進班・岡山市立中央図書館・岡山県総合文化センター郷土資料室、鳥取県立博物館(鳥取藩政資料)、山口県文書館(毛利家文庫)などである。これらの調査と併行して、各藩に関する活字史料の収集を進めた。いずれも、朝鮮や琉球からの使節来訪や中国船などの漂着の取り扱いなど幕府の外交儀礼や外交問題、日光社参・参勤交代・勅使下向などの通行をめぐる作法、官位をめぐる藩と幕府との関係、幕府法と藩法の関係と裁許の実際、東照宮の祭礼、大名の本・分家関係や相続、藩世界における寺院の役割や宗教権威、在地秩序の内容とその形成、地域における政治思想・政治意識の形成などに関する史料を収集した。以上の収集史料を順次講読し、大名の類型や各藩領域の地理的・風土的差異に留意しつつ、幕府、朝廷、藩、寺社、民衆の相互の関係に重点を置き、その関係にどのような「権威」が存在し、あるいは創られるのかを検討した。その成果の一部を、近世誓詞の機能と意義(深谷克己)、元和二年幕府の対外政策に関する一考察(紙屋敦之)、史料翻刻・佐賀藩「律例」(島善高)、官位昇進運動の基礎的研究(堀新)、翻刻・香川県歴史博物館蔵『南木惣要』(若尾政希・小川和也)、寛永11年日光社参の一考察(泉正人)、大名家における「仮養子」史料(大森映子)、大名の「京都御使」について(久保貴子)、住持退院一件にみる村(斎藤悦正)、近世「大名預」考(佐藤宏之)として研究成果報告書(冊子)にまとめた。
著者
山本 恵子
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

2007年度には、ニーチェにおける初期・中期・後期の生理学的考察を概念史的に検討することによって、当時の生理学者との関係に関する研究の骨子を示した。その結果、ニーチェにおける生理学という概念装置の意味が著作時期によって大きく異なることが明らかとなった。2008年度には、「健康」や「無意識」等の諸概念に着目した。そこでは、健康を画一的なものと捉える見方が人間の平等というドグマに侵されたものとして積極的に否定されるニーチェの思索が確認された。
著者
大高 保二郎
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

わが国においてほとんど未開拓の分野であったイベリア半島の古代美術について、前3世紀末から見出される古代ローマの影響を境に、1.古代イベリア美術(広い意味において)、2.ギリシア・ローマ的美術、に大別される。前者は、土着のイベリア半島の風土にケルト、フェニキア(後にカルタゴ)の流入で緊密に融合して東方的な様式を形成する一方、後者はその伝統を断ち切り、古典的な美術様式を移植することになった。
著者
藤本 浩志 土井 幸輝 植松 美幸
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では高齢者・障害者配慮設計技術の開発の際に必要な触知覚特性(五感の1つ)のデータを収集することを目的として,図記号の識別容易性,指先の触覚の基本特性に着目して,それらと加齢の関係を調べた.その結果,図記号の識別容易性について図記号のサイズが小さい場合に加齢効果が見られることがわかった.指先の基本機能(空間分解能・触圧感度)に関しては,加齢効果が見られた.また,視覚障害者は日常的に触覚を活用していることが関係しているためか顕著な加齢効果は見られなかった.これらのデータは,今後触覚を活用した関連規格の作成の際に有用な知見となるであろう.
著者
國崎 彩
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

「大正期の寶塚少女歌劇團の舞踊活動の考察」(研究ノート);秦豊吉とも関連が深い、昭和期のレヴュー・ブームに先鞭をつけた寶塚少女歌劇團(以下「宝塚」と略称)の大正期に焦点を当て、当時展開していた舞踊思潮を、機関誌『歌劇』の舞踊記事調査・分析をおこなうことにより検証した。結果、宝塚では、独自の形式「歌劇」を模索する中で、小林一三、久松一聲、楳茂都陸平、坪内士行、岸田辰彌、ルイジンスキー等の舞踊作家達が、それぞれ、実際の上演/『歌劇』誌の両面において舞踊について模索していた。宝塚を現在から振り返って捉えなおしてみると、新舞踊、バレエ、モダン・ダンス、同時代の浅草オペラで上演されていたような舞踊など、あらゆる新しい舞踊の流れを柔軟に受容していた、一つの舞踊の拠点であったと再評価できた。また、こうした大正期の宝塚における充実した舞踊の展開は、宝塚において、昭和期以降のレヴュー・ブームを可能にした要因の一つとなったのではないかと推測できる。「秦豊吉の近代化意識と舞踊観について」(第58回舞踊学会大会発表);秦豊吉が企画した日劇ダンシング・チーム(以下、NDTと略称)の戦前・戦中期についての考察をさらに進める目的において、まず、一次資料であるプログラム、チラシの調査・収集、当時の出演者への聴き取り調査を積極的におこない、舞踊上演の実際を検証した。そして、秦豊吉がMITに結実させた「近代化」とはどのようなものだったのか、そこに「舞踊」はどのように関わり、どのように表象されていたのかということを論考した。NDTでは、「近代的」な「大衆娯楽」としての「ショウ」形式のなかで、国内外のあらゆる舞踊が受容され、戦中期には「日本民族舞踊」として、秦の「近代化」が複雑な形で表象されることとなっており、興味深い。今後、楽譜、音源、台本などの一次資料のさらなる調査を経て、さらに深化させた論考を改めておこないたい。
著者
永岡 慶三 竹谷 誠 北垣 郁雄 米澤 宣義 赤倉 貴子 植野 真臣
出版者
早稲田大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は,複数の人間により形成されるグループに対して「グループの学力」を定義し,その評価法を開発することにある.今後のネットワーク社会のさらなる進展を考えれば,社会の各分野においては個人的活動は限られ束面となり,ほとんどがプロジェクトなど複数の人間の協力する活動が多くを占めることになると思われる.そこでは,個人個人の能力の高さだけでなく,いかに複数のメンバーの協同によるグループとしての能力の高さが要求されるものと考えられる.その評価法の開発・実用は,特定の人材の集合からどのように効率的なプロジェクトメンバー構成をすればよいかという人材活用の方法論としての価値を持つものと考える.さてテストを科学的に、計量的に扱うもっとも根本的な主要概念は信頼性である.信頼性(の推定方法)は考え方により多くの定義があるが,理論的明快さや実用性など種々の利点から最も多く用いられるのはCronbachのα係数である.本研究においても信頼性といった場合,Cronbachのα係数をさすものとする.研究実績の成果は,これまでのテスト理論では扱われていなかった受検者側の内部一貫性の特性・概念を導入したことといえる.さて有力な応用目的として,たとえば,N人の受検者集団から構成員数2のグループを構成するとする.すなわち二人ずつのペアを組むとする.Guttmannスケールの項目群を仮定すれば,個別学力の大きい順に第1位から第N/2位までのN/2人を異なるグループに配すればよく,いささか自明解である.ここに受検者側に内部一貫性の特性を導入すれば,話は別で,グループ(ペア)内のθ値の大小だけでは決まらないのである.すなわちペアで考えれば,お互いがお互いの弱点を補い合うような組合せ,すなわちその2名の1,0得点パターンの排他的論理和が全体で最大化するような組合せを行うことで最大化が見込まれる.
著者
李 墨
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

2005年度に引き続き、本年度も北京と天津の実地調査を行った。調査は2005年12月11日から2006年1月3日まで集中的に行った。調査の実施については、景栄慶氏、王鳴仲氏、劉曽復氏、張宝華氏、蒋連啓氏への取材を重点的に行った。具体的な取材内容は、景栄慶氏より1930年代に創立された中国初の国立演劇学校である中華戯曲学校の演劇教育様子、尚小雲によって創立された栄春社の教育様子について詳しく語り、栄春社での修行期において範宝亭に伝授された「通天犀」を実演した。王鳴仲氏は楊小楼派の昆曲「夜奔」の演技について詳しい説明され、七段の昆曲及び全段の演技を実演した。劉曽復氏は嘗て程長庚より汪桂芬に伝わり、王鳳卿に継承された「文昭関」の唄を実演した。銭宝森に師事した張宝華氏は「金沙灘」の"下場"、「艶陽楼」の"下場"、「挑滑車」の"閙帳"を実演した。蒋連啓氏による歴代名優の着付けに関する工夫、氏の従祖父の侯喜瑞、祖父の蒋少奎の演技について詳しく紹介された。その他に、羅喜均氏による栄春社での修行期間の様子、張春華氏による葉盛章の芸、董文華氏による天津劇壇の様子などについても取材が出来た。しかし、今年度の取材対象となる名優茹元俊が10月に急死し、賀永華氏、侯少奎氏の健康状態が悪くなったため、その取材を断念した。調査成果としては、<I民国期の京劇俳優養成>に関しては清代に創立された三慶班の芸術的手法が本日の京劇舞台芸における本流たるものと判明し、<II民国期の京劇興行法>に関しては嘗ての国営演劇学校、旧式京劇教育機関の科班、劇団である"社"の運営法及び興行法について貴重な情報を得た。そして最重要な部分である<III舞台芸>に関しては名優達の協力を得て、失われつつある数々の名人芸を記録した。
著者
小林 哲則 藤江 真也 小川 哲司 高西 敦夫 松山 洋一 岩田 和彦
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

言語・パラ言語の生成・理解処理を高度化することで,複数の人間と自然なリズムで会話できるコミュニケーションロボットを実現した.また,このロボットを用いて,人同士の会話を活性化することを試みた.この目的のため,ロボットへの性格付与とパラ言語表現機能を考慮したロボットハードウェア,会話状況に沿うロボットの振る舞い,魅力ある会話の進行方式などを設計した.また,ロボットの聴覚機能および発話方式の高度化についても検討した.
著者
向後 千春
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では、オンライン大学に入学した社会人を対象として学習継続要因を調査した結果、以下のことが明らかになった。(1)ポジティブな要因としては、eラーニングでの受講形態、時間管理のスキル、学費の工面や家族の協力がある。ネガティブな要因としては、孤独な学習環境が心理的・物理的距離感に影響を及ぼす可能性が示唆された。(2)オンライン大学の学生は、学友とのつながりが、教員・教育コーチへのコミュニケーションに影響を与える要因となる。これらの結果は生涯学習のためのeラーニングシステムを構築するための示唆となるだろう。
著者
佐藤 正樹
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

「十六世紀フランス語散文物語の文体論的研究」は、フランス語散文物語という当時生まれたばかりのジャンルの形成をマクロな観点から記述することを目標とした。十六世紀前半期の俗語散文物語は大きく二つのグループに分けられる。ひとつは騎士道物語に由来するいわゆる「ロマン」の流れを汲むのもで、もうひとつはボッカチオの『デカメロン』に由来する「ヌーヴェル」の系列である。「ロマン」の特徴は、伏線が絡まりあいながらどこまでも続く延長可能性にあり、作中人物は傑出した性質を帯びているのが普通である。主題的には、まず遠い「過去」の物語であること、作中人物の移動範囲が極めて大きいこと(「遍歴」の主題)、そして目くるめく超自然的な「驚異」が物語を進ませる原動力としてちりばめられていることが挙げられる。一方の「ヌーヴェル」の特徴は、物語が現実世界の断片として描かれるという点にある。したがって、物語に超自然的要素な要素は入り込まない。また、作中人物は傑出した性質を持つものとしては描かれず、出来事が淡々と描かれる。この書き方には年代記の影響があるかもしれない。さて、十六世紀を通じてより多く出版されたのは「ロマン」の流れを汲む作品のほうである。当時の読み手は、奇想天外でいつ果てるともない「ロマン」に、物語の醍醐味を感じていたのであろう。「ヌーヴェル」は、読者層にはそれほど浸透しなかったものの、「ロマン」の道具立ての陳腐化をいち早く感じ取り、俗語表現の可能性を追求しようとする一部の書き手に影響を与えた。「ロマン」と「ヌーヴェル」は、十六世紀にはまったく違うものとして生産・受容されていた可能性が高いが、ラブレーの作品はこの二つを意図的に混淆して作られているように見える。今後の研究では、特異なラブレーの創作プログラムを、「ロマン」と「ヌーヴェル」の緊張関係という観点からより明らかにしていきたい。
著者
中村 みどり
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

一次資料に基づき、外務省の東方文化事業に陶晶孫が関わってゆく過程、すなわち彼が日本留学時代に「特選留学生」に選抜されてから帰国後に上海自然科学研究所へ入所するまでのルートとその背景を明らかにすることができた。また戦前の中国人留学生たちの帰国後のネットワーク、およびその後の形跡を辿ることにより、陶が戦後国民政府から台湾帝国大学の接収に派遣されるまでの背景を考察し、陶晶孫研究に新たな視点を与えるに至った。
著者
長沢 和俊 趙 靜 張 樹春 劉 文鎖 王 宗磊 李 肖 王 炳華 杉本 良 昆 彭生 荒川 正晴 櫻井 清彦 大橋 一章 岡内 三真 WAN Zong Lei WAN Bin Hoa ZHANG Shu Chun ZHAO Jung 劉 文すお 趙 静 昆 彭夫 劉 玉生 柳 洪亮 小澤 正人 于 志勇 李 宵 夏 訓誠 昆 彰生
出版者
早稲田大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

われわれは平成6年から同8年にかけて、トルファン地区の総合調査を実施した。調査はそれぞれ分担研究者の専門により、美術史学の大橋教授はベゼクリス、トスクチ仏洞を、故書学の荒川助教授はトルファン文書の研究を行なったが、とくに共通のフィールドとしては、交河故城西方の溝西墓の発掘調査に全力を傾注してきた。周知の通り交河故城は今から2200年前から広くこの地方を支配してきた車師前国の都城で、溝西墓にはその車師前国時代の墓と、5世紀の高昌国から唐代にかけて、この地方に進出した漢民族の古墓群があり、その総数は2000基以上もある。以下、溝西墓の発掘調査を中心に、3年間の研究実績を総括してみると、次の通りである。(1)平成6年度:初年度はまず全隊員により、トルファン地区のGeneral Surveyが行われた。即ち高昌故城、アスターナ、ベゼクリクチ仏洞、蘇交塔など、トルファンの主要史跡を踏査し、各遺跡の史的意義、トルファン文書との関連などを調べた。さらに共通のフィールドとしての交河故城西方の溝西墓については、頼るべき地図がないので、新疆測量部の協力により、溝西墓(東西約3km、南北約1km)全域の測量を開始した。この測量により平成6年度末までに全域の1/500地図が出来上った。また王炳華氏の選定により、溝西墓のほぼ中心部で4か所の高昌国時代の墓を試掘した。その際、田中地質コンサルタントKKの協力を得て、遺跡の電磁波探査、気球による航空測量などを行なった。こうした物理探査は中国とくに新疆では最初の試みで、多くの考古学関係者の関心を集めた。この年に発掘した第2号墓からは墓碑が出土し、この墓は某氏の妻氾氏の墓で、589年に没したことが確認された。これによって溝西墓は、交河城にいた高昌貴族(6〜8世紀)と唐人の墓であることが分り、今後発掘地域を拡大することにより、アスターナと同じようなミイラ、古文書、絹織物等、副葬品の出土が期待された。(2)平成7年度:2年目には西北部の高昌国の豪族、麹氏と張氏の螢城から2か所、中央部のマウンドのない墓(三年物理探査で発見)2か所、南部の唐代の墓と思われるもの5墓計9基の墓を発掘、2個の墓誌、未盗掘の墓1基を発掘した。発掘後、墓の中央にトレンチを入れ、墓の構造も検討した。また田中地質の気球により前年度失敗した溝西墓、交河故城の空中撮影に成功した。今年度は9基の墓を発掘したが、ここは盗墓が盛んでほとんど盗掘されており、かつ墓室内の湿度・気温が意外に高く、有機物やめぼしい遺物は、ほとんど出土しないことが明らかになった。(3)平成8年度:そこで今年度はまず次の基礎調査の達成をめざした。(1)遺跡全域の1/500地形図の作成。…これは平成6-7年度に完成した。(2)250m四方の遺跡地図の完成…本年度の夏、不足分を補って完成。(3)全古墓の実測(Numbering)とデータベース化…実測は今夏終り、現在早稲田大学電算室でデータベース化しつつある。ついで本年度の発掘調査は、遺物の出そうな高い地域の墓4か所で8基の墓を発掘した。しかしこれらの高い地区の墓はいずれもすっかり盗掘されていて、遺骨のほか何も残っていなかった。そこで発掘主任の岡内教授は発想の転換をはかり、車師前国期の墓を発見し、ここを発掘した。その結果、そこから黄金の王冠、黄金の指輪、ブロ-チ、南海産の貝符、星雲文鏡が出土し、近くの17号墓からは黄金の髪飾り、トルコ石の首飾り、黄金製のバックルや脚飾りなどが出土し、車師人の王侯・貴族の黄金装飾品がワンセットで出土し、併出した星雲文鏡や五銖銭から、時代も前一世紀と特定でき、王炳華所長も「これだけ金製品がまとまって出土したことは新疆はもとより全中国でも珍しく、おそらく今年度の中国考古学で最も重要な発掘の1つ」と評価された。これらの出土品のうち王冠は明らかにスキタイ・サウロマタイ風で、ブロ-チや指輪は、西アジア工芸品の影響をましており、バックルや足飾りはモンゴル高原から青銅の類似品が出ており、貝符は南海産、漢鏡と五銖銭は中国の影響をまし、当時のトルファンが東西文明の十字路にあったことを示している。又殉葬馬や鉄鏃、轡の出土は車師が騎馬民族であることを示している。
著者
高橋 博彰 立川 任典 湯沢 哲朗 伊藤 紘一 酒井 誠
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

フラビンモノヌクレオチド(FMN)の光化学:FMNのT_1状態、ラジカルアニオンおよびセミキノンラジカルの時間分解吸収と時間分解共鳴ラマンスペクトルを測定し、酸性溶液中でのセミキノンラジカルの生成がT_1状態から1電子還元によりラジカルアニオンを経由して起こることを明らかにした。ソラーレンおよびその誘導体の光化学:ソラーレン(PS)、5-メトキシソラーレン(5-MOP)、8-メトキシソラーレン(8-MOP)についてT_1状態およびラジカルアニオンの共鳴ラマンスペクトルおよび過渡吸収を測定した。8-MOPのT_1生成の収率がPSや5-MOPとて比べて異常に低いことを見つけた。このことは、8-MOPの光アレルギー性・光毒性がPSや5-MOPより小さいことと関係している可能性が高い。ビリルビンの光化学:308mnnの紫外光照射により、450nmと415nmに過渡吸収を観測した。450nmの過渡分子種は260nsの寿命をもち、酸素の影響を受けるから、T-1状態である。415mnの過渡分子種は17μsの寿命をもつことが分かったが、その正体については現在研究を続けている。この過渡種は480nm付近にも吸収をもつことが分かった。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)の光化学:光酸化反応は,(i)電子移動によるカチオンラジカルNADH^<+・>の生成,(ii)プロトン移動によるラジカルNAD^・の生成(iii),電子移動によるNAD^+の生成,の3段階の反応であることが明らかとなった.酵素反応においても酸化がこの3段階を経て起こっている可能性を示唆した.5-ジベンゾスベレンおよびその誘導体の光化学:S-1状態において振動冷却が約13psの時間で起こることが分った.S_1状態でのコンフォーメーション変化については明確な情報は得られなかったが,ピコ秒時間領域におけるラマンおよび吸収スペクトルの変化はS_1状態においてもOH基に関してpseudo-equatorialおよびpseudo-axialの2種の異性体が共存することを示唆している.オルトニトロベンジル化合物の光化学:この反応は,S_1状態においてオルトニトロ基がメチレン基のプロトンを引き抜いてアシ・ニトロ酸を生成することでスタートする.極性溶媒中ではアシ・ニトロ酸はアシ・ニトロアニオンとプロトンに解離し,このプロ卜ンが2-ピリジル基,4-ピリジル基,4-ニトロ基と結合して,それぞれ,オルト,パラN-Hキノイドおよびパラ・アシニトロ酸を生成することを明らかにした.
著者
晝間 文彦 池田 新介 須斎 正幸 高橋 泰城 筒井 義郎
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

時間割引率は人々の現在と将来にかかわる意思決定を決める重要な要因で、時間割引率が高いほど現在を重視した(せっかちな)、低いほど将来を重視した(我慢強い)意思決定を意味する。この研究では、時間割引率がどのような要因に関係しているかをアンケートによって調べたが、時間割引率は自制力が高いほど、認知能力が高いほど、低いことが明らかとなった。これは時間割引率に対する教育の有効性を示唆するものである。
著者
大島 康行 角皆 静男 小川 利紘 内嶋 善兵衛 樋口 敬二 吉野 正敏
出版者
早稲田大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1990

国際学術連合は地球圏ー生物圏国際協同研究計画(IGBP)ー地球変化の研究ーを1990年から10年計画で実施することを決め,1990年9月パリで開かれた第二回IGBP科学諮問委員会で(1)The international Global Atomospheric Chemistry Project(IGAC),(2)Joint Global Ocean Flux Study(JGOFS),(3)Biospheric Aspects of the Hydrogical Cycle(BAHC),(4)Global Change and Terestsial Ecosystern(GCTE),(5)Past Global Change(PAGES)の5つの課題を実施することを決めた。わが国でもこれらの課題を考慮しつつ日本の研究課題を検討し,最終的に(1)大気微量成分の変動および生物圏との交換(2)海岸における物質循環と生物生産(3)陸上生物群集への気候変化の影響(4)大気圏・水圏・陸圏と生物圏の相互作用を考慮した気候解析とモデリング(5)環境変化のモニタリング(6)古環境の変遷,(7)地球環境と人間活動の相互作用の7研究領域で研究を進めることとし,研究内容とその組織について検討し,最終案を作成後,具体的に研究を進めることとなった。また,IGBPから送付された資料を印刷し,関係各方面に配布し,国際的な計画を衆知することに務めた。とくに本年度はReport9〜15までと資料が多く,そのため印刷費の支出が増大した。班員は国際的な課題ごとに積極的に交流をはかり,国際対応を今後積極的に行うための基礎づくりに努力した。また国際課題ごとに国内の対応小委員会を設ける努力も行なった。
著者
大島 康行 角皆 静男 小川 利紘 内嶋 善兵衛 樋口 敬二 根本 敬久
出版者
早稲田大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1989

国際学術連合は1990年から10年計画で“地球圏一生物圏国際協同研究計画"(IGBP)ー地球変化の研究ーを実施することを1986年のベルンの総会で決定した。この研究は生命をはぐくんでいるかけがえのない環境、全地球システムで起っている変化、さらに人間活動による影響の在り方を、全地球システムを調節している物理的、化学的、生物的過程の相互作用の面から記述し、理解することを目的としている。1986年以来IGBP特別委員会で精力的に研究計画が検討され、4つの研究領域とこの領域の研究を進めるための共通プログラムを設定した。さらにこれらを基礎に13のコアプロジェクト案が提出されている。本研究班は国際的に対応しつつ、日本における実施計画案を関係諸学会の意見を聞きつつ、また日本学術議のIGBP分科会(人間と環境特別委員会)と緊密な連絡をとりつつ日本における実施計画案の精細についてまとめ、また研究組織について検討した。検討の過程で(1)地球変化は地球の物理・化学・生物の諸過程の複雑な相互作用によっており、従来には例をみない多数の分野の研究者がそれぞれの課題ごとに密接な協力が必要であること。(2)国際研究計画に積極的な役割を果すため国際的、地域的協力のもとに独創的な研究を進めること。(3)日本の地理的条件と研究者層、研究の現況を考慮して研究対象地域を設定すること。を確認し、広義のモンス-ンアジア地域、西太平洋地域、極域を主たる研究地域に設定した。また次の6つの研究の柱をたて各課題を研究することとした。その柱は(1)大気微量成分の変質および生物圏との変遷、(2)海洋における物質循環と生物生産、(3)陸上生物群集への気候変化の影響、(4)気圏・水圏・陸圏と生物圏間の相互作用を考慮した気候解析とモデリング、5)環境変化のモニタリング、(6)古環境の変遷、である。
著者
大島 康行 内嶋 善兵衛 吉野 正敏 浦部 達夫 小野 勇一
出版者
早稲田大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1994

今年度の研究成果は以下の通りである。1.SCOPE第8期は(1)持続可能な開発(2)生物地球化学的サイクル(3)地球規模の変化と生態系(4)健康と生物毒物学の4つのクラスターの下に19プロジェクトを進めている。これにどのようにアジアおよび日本が寄与していくかを検討するため現状を精査し、協力の在り方を検討した。2.これらの現状調査と協力体制の検討結果をふまえ、アジア地域で重要と思われるプロジェクトを想定し、SCOPE本部と連絡をとりつつ協力体制を確立した。3.日本とアジア地域で特有の研究課題候補を策定した。さらにアジア諸国と密接な連絡を取りつつ、検討を重ね1995年5月末、日本で開催される第9回総会に初日はアジアSCOPE分科会を開き、第9期にアジア地域から提案する新しいプロジェクトを検討し決定することが決まった。4.1995年5月29日〜6月3日に日本で開かれる第9回総会はアジア地域では初めてである。第9期以降アジア地域が組織的にSCOPEの活動に積極的に活動し、協力していくためには環境問題への日本の取り組みの現状を加盟各国と国際学術団体に衆知して貰うことが必要と考え、SCOPE理事会との合意を得て日本の環境科学研究の現状というテーマで半日のシンポジウムを決め、具体的な内容と演者を決定した。さらにアジア地域の組織的な今後の活動を進めるため、第9期のメインシンポジウムのテーマに「アジアにおける稲作」を取りあげ、アジア各国と協議しつつ、4つのサブテーマと演者を決定した。5.以上の作業を通じ、日本のSCOPEへの国際対応とその組織化を具体的に検討した。以上の成果を得るための全体会議4回、プログラム委員会3回、事務局会議を11回開催し、合わせてSCOPE本部と月2回連絡し、研究を遂行した。
著者
大島 康行 広瀬 忠樹 内嶋 善兵衛 小川 利紘 角皆 静男 吉野 正敏
出版者
早稲田大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1991

国際学術連合(ICSU)で計画された地球圏ー生物圏国際協同研究(IGBP)は検討を重ね1990年秋5つの課題について研究がまず始められた。日本も積極的にこの研究計画に参加協力するため,昨年学術会議,改租されたIGBP国内委員会と密接に連絡をとりつつ、本研究課題の研究を進めた。1.関連国内外の関係諸機関と連繋し,関係資料の収集整理を行なった。資料は大島,吉野で保管している。2.すでに実施している5つの課題については,各課題ごとに小委員会をつくり,日本の実施計画の検討と各国際SSCの連絡にあたっており,一部は研究が開始された。(旅費は主として各小委員会の開催に使用)3.日本の実施計画案の英文レポ-ト(JAPANーIGBP REPORT No1)をつくり,国際機関,国内機関,各国関係者に配布した。4.国内に広く情報を衆知させるため,IGBPニュ-スNo1,No2を作成し,関係各所に配布した。5.日本学術会議主催のIGBPシンポジウムの報告を英文で作成,近く出版の予定である。6.本研究班が中心になり,アジアーモンス-ン地域を中心としたIGBP国際シンボジウムを早稲田大学国際会議場で1992年3月27日〜29日開催する。全体会議は組織委員会を兼ねて行はれた。プロン-デングは本年秋出版の予定である。