著者
津田 憂子
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

現行のロシア憲法制定過程で草案作成に関与した法律家、政府及び議会関係者に対するインタビューを現地で実施し、ソ連崩壊後のロシアでどのように制度が設計されてきたかに関する実証的研究を行った。実証的研究と並行して、制度設計に関する比較政治学の既存理論とロシアにおける理論研究を合わせた体系的な理論構築を行い、最終的には実証と理論という2つの視座から本研究の仮説を論証することを目指した。
著者
那須 壽 草柳 千早 土屋 淳二 榎本 環 河野 憲一 飯田 卓 木村 正人 大貫 恵佳 関水 徹平 大黒屋 貴稔
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

「知の在り方・有り様が変わりつつある」という日常的実感(仮説)を導きの糸として、25大学40年間の社会学関連シラバスに関する調査と、社会学の教育と研究に関する質問紙調査を立案・実施し、分析した。これら二つの調査研究は「知の社会学」の構想の一環であり、今日、多くの人びとによって実感されている(であろう)「知」の在り方・有り様の「変化」を見定める第一歩として、社会学知における変化をいくつかの側面から明らかにした。
著者
佐藤 健
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

密度汎関数理論(DFT)は分散力を記述できない。よく行われる経験的な分散力補正は新しい系への適用が難しい。そこで本研究では、電子密度応答関数に対する局所近似(Local Response)に基づいて分散力(Dispersion)を非経験的に算出するLRD法を考案し、弱い相互作用を高精度かつ効率的に記述できる新しい手法を開発した。LRD法は分子中の原子間分散力係数を基底状態電子密度の汎関数として与える。さらに、多中心相互作用への拡張や自己無撞着的解法の実装を行い、複雑な分子集合体の高精度量子化学計算を可能にした。
著者
正岡 寛司 藤見 純子 嶋崎 尚子 澤口 恵一 西野 理子 大久保 孝治 白井 千晶
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、19世紀・20世紀半ばまでの重量型資本主義の基盤を第一次エネルギー供給の面から下支えしてきた石炭鉱業の経済史的ならびに社会学的な意義と特殊性、そしてその発展と終焉過程とを緻密に記述することを目的としたものである。あわせて、それを比較歴史的な記録資料として利用可能な状態で保存する。具体的には以下の5点の作業をすすめ、成果をえた。(1)旧常磐炭砿株式会社磐城砿業所(福島県いわき市)で就労した労働者の職業キャリアの大規模なミクロ・データの構築。(2)入社から退社にいたるまでの個別砿員の職業を中心として各種キャリアの時系列データの分析。(3)磐城砿業所の閉山にともない解雇された労働者の炭砿での職業キャリアと閉山後に形成した職業キャリアとの連結と、その分析(非自発的職業中断の影響)。(4)炭砿で就労した経験をもち、かつそこを解雇された元炭砿労働者たちの職業生活から離脱過程のデータの構築と分析(解雇経験後の職業キャリアと引退後生活)。(5)以上の諸ミクロ・データをデジタル化したうえで、大規模ミクロ・データの公共利用。上記作業の結果、昭和30年代の「採解簿データ」(約80,000件)をデジタル化し、6,459名の入社から退職にいたる職業キャリアの大規模なミクロ・データを構築した。他方、4,209名の離職者の89%にあたる3,747名の追跡調査を終えた(調査終了1,427名(34%)、調査不能879名(21%)、死亡確認(34%)1,441名)。彼らの閉山後の職業キャリアデータと入社から退職までの職業キャリアデータとを連結し、生涯職業キャリアデータを構築した。これらの生涯職職業キャリアデータを用いて、非自発的職業中断の影響、解雇経験後職業キャリアと引退生活の分析をすすめ、その成果を報告書にまとめ刊行した。本研究で構築した大規模ミクロ・データについては、HP上でその一部を公開した。
著者
鎌野 邦樹 花房 博文 舟橋 哲 大木 満 大野 武 小西 飛鳥
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、民事上の日常的・基本的な紛争において、《より多くの国民が望み納得する解決》をアンケート調査等を通じて統計的に明らかにし、その結果を踏まえて、わが国の立法、判例、学説を検証することを目的とするものである。以下の1、2に記載の調査・研究を通じて、以下の3のような研究成果をあげた。1.アンケート調査項目の選定及びアンケートの実施 不動産の取引、不動産の利用、動産の取引及び不当利得に関する15項目の具体的紛争事例を設定して、千葉大学、早稲田大学、明治学院大学、白鴎大学、平成国際大学、明海大学において、約1500名の学生に対して、望ましい法的紛争解決についての意向・意識調査を実施した。2.アンケート調査項目に関する立法・判例・学説及び外国法の調査・研究 上記アンケート項目に関するわが国の立法の経緯、判例、学説等の状況及び外国(ドイツ、フランス、イギリス等)の立法・判例・学説等の状況について文献にて調査・研究をした。また、平成18年9月には、ドイツのベルリン大学及びゲッチンゲン大学にて、本研究に関連するテーマについて、ドイツの研究者及び実務家と意見交換をした。3.アンケート調査結果の分析と総合的考察 上記1のアンケート調査を集計・分析し、また、上記2の調査結果を踏まえて、各調査項目に係る法律紛争について、《より多くの国民が望み納得する解決》とは何かという観点から、わが国の立法、判例、学説を検証し、それらの問題点・課題を指摘し、今後のあるべき方向性を明らかにした。ただ、いくつかの点については、本研究の今後に残された課題とした。
著者
牧野 冬生 亘 純吉 菊地 靖 ヘルブリング ユルック ライスリス メリー
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、「都市貧困者と隣接性を伴う居住」、「都市における多元的帰属意識と場所性」、「『共通の枠組み』に関する理論と方法」の3つの問題系に関して、メトロマニラ貧困地域を中心に人類学的フィールドワークと建築学的実測調査を軸にした調査を実施した。過密な都市空間における生活者の生活形態及び共同体を分析し、多元性を有する特徴的な帰属形態の様相を明らかにすると共に、住民との相互批判的な対話を可能とする「共通の枠組み」として空間実践モデルを検討した。
著者
店田 廣文 小島 宏 村田 久 小島 宏 村田 久
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、従来のわれわれの調査成果をさらに補強する研究成果が得られ、滞日ムスリムは日本社会に適応し、生活満足度が比較的高く生活基盤も安定してきたこと、滞日ムスリム・コミュニティが成熟期に入りつつあると言うことが、改めて本研究によって明らかとなった。ムスリムの子ども教育調査や滞日経験を有するムスリム調査、モスク調査報告も貴重な成果であるが、日本初のモスク代表者会議を開催し、将来の滞日ムスリム・コミュニティと日本社会の関係形成に関する研究へと展望が開けたことが重要である。
著者
新田 恒雄 桂田 浩一 入部 百合絵 入部 百合絵
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

ビッグデータ中の音声ドキュメントから任意のキーワードを,実時間で検索する技術を開発した。研究実施にあたっては,(1)未知語を含む音声を高精度に音素列へ変換する技術,(2)曖昧性を含む音素列からキーワードを高速に検索する技術の二つに焦点をあてた。(1)では,双対空間で音素特徴を効率よく抽出すると共に,多層パーセプトロンで調音素性を抽出し,音素を高精度に識別する方式を開発した。(2)では,接尾辞配列に基づき反復深化探索を行う方式をベースに,調音素性間の距離計算を用いた連続DP,およびキーワード分割アルゴリズムを実装することで,検索精度,検索速度,記憶容量の三つの課題を同時に克服できることを示した。
著者
菊池 馨実 関 ふ佐子 石田 道彦 大原 利夫 尾形 健 石田 道彦 大原 利夫 尾形 健 関 ふ佐子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

アメリカ高齢者法を多角的に検討した共同研究を日米法学会総会で行うとともに、アメリカでの現地調査の概要を雑誌に連載する機会を得た。また各研究者が、個別に、日本社会保障法学会、日本成年後見法学会、全米ロースクール協会などでの学会報告で、高齢者の権利擁護、高齢者法などに係る研究発表を行った。このほか、各研究者が、自律の価値付け、アメリカ医療改革・所得保障制度などに係る比較研究、日米の福祉国家研究など、高齢者の法的保護に関わる多くの論文を発表した。
著者
森田 裕介
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,プログレスチャートシステムの構築,オンライン学習コースの作成とLMSへの実装,学習者特性の測定,ブレンディッド学習の実施と分析を行った.そして,WebベースPSIコースのようなブレンディッド学習において,効果的な学習支援の方法を検討した.MBTIを用いた学習者特性の調査から,Eタイプ,もしくはIタイプの場合,具体的にどのような支援をしたらよいか,その方法論に関する知見を示した.
著者
山岡 道男 浅野 忠克 阿部 信太郎 高橋 桂子 樋口 清秀 稲葉 敏夫 真野 芳樹 樋口 清秀 稲葉 敏夫 淺野 忠克 阿部 信太郎 高橋 桂子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

日本の高等学校の経済教育内容と大学のそれとの不連続の現状を明らかにし、大学生の経済学習を効果的かつ効率的に行わせるための課題を、日本の大学のカリキュラムに見られる特徴から指摘した。また高校生と大学生のパーソナル・ファイナンスに関する知識の程度を調査するためのテストを実施して結果を分析した。さらに大学生の経済リテラシーついて、日本・米国・韓国・フィリピン・ニュージーランドで共通問題を使ってテストを実施し、その結果の国際比較から日本の大学生の経済理解の実態を明らかにした。
著者
鈴木 利彦 水島 梨紗 辻 建一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

[I]英語母語話者が用いるスピーチアクト遂行のための語彙、文法、会話レベルの方策の研究を進め、[II]日本の英語教育に応用するための教材と教授法の研究・開発、そして本テーマに関する中高英語教員の現状と意識の調査を行い、[III]大学英語教材と既存の英語コーパスでのスピーチアクトの扱いに関して研究を実施し、[IV]日本人の英語(中間言語)スピーチアクト遂行能力の調査を[II]に付随する形で実施し、[V]日本語スピーチアクトに関してデータを収集し、その特徴を解明するための研究を行った。
著者
神津 武男 黒石 陽子 井上 勝志 久堀 裕朗 鈴木 博子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

江戸時代・近世期の「人形浄瑠璃文楽」(義太夫節成立以後の人形芝居)の上演記録は、『義太夫年表 近世篇』(八木書店。1979~1990年)の成果を最新とする。しかしその完結から20年余を経て、少なくとも四次の補正更新情報が別々に報告されている点が、利用上の障壁となりつつあった。本研究課題としては最も基本的な資料である「番付 ばんづけ」についてデータベース化を進め、一元的な情報検索を可能とすることに努めた。
著者
岩田 孝 桂 紹隆
出版者
早稲田大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1999

法称(七世紀中葉)は、独自な論理系を導入して、陳那(六世紀前半)の論理学を説明しつつ、自らの論理系と、陳那のそれとの無矛盾性を多くの箇所で示している。本研究では、法称の論理系が陳那の独創である九句因説と矛盾しないことを論じた『知識論決択』の箇所を分析した。その結果、陳那には見られない法称の視点が浮き彫りになった。それは、推論の成立の主要な条件である論証因と所証との論理的関係を、陳那が「確定される」ものと見なしたのに対して、法称は確定できない場合も有るとし、「疑い」の視点を導入して論理的関係を再分類したという点である。「疑い」の概念の導入により、他者が日常的に認識できない不確定な事柄を証明する場合(例えば常住不変なる実我などの存在を証明しようとする場合に)これを批判することが可能になった。印度の論理学は実例に依存する為に帰納的であると言われている。実例に基づく為に生じる諸矛盾を回避する方法を検討することは、印度論理学の限界を示すという意味で重要である。本研究では、陳那の論理学での喩例の役割を分析した。更に、法称の『知識論決択』での疑似論証因の論述を調べ、実例に依らずに、論証因の成否を検討するという見方の萌芽が法称説に存することを指摘した。上記の推論説の文献学的研究は、仏教論理学の基礎論の研究である。以下の研究は、その応用部分に相当する。ものごとの認識を成立させる根拠を定め、その根拠に基づいて、何が妥当なものとして残るかをラディカルに追求した法称は、世尊自身についても、何ゆえに人々にとって信頼される拠り所(公準、量)になるのかを問題にし、これの証明を試みた。本研究では、この証明に関するプラジュニャーカラグプタ(八世紀後半)の解釈を分析し、世尊の量性の証明が、世俗的上での証明と、勝義上での証明に分類されることなどの特徴を指摘した。
著者
梅澤 俊浩
出版者
早稲田大学
雑誌
産業経営 (ISSN:02864428)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.37-51, 2003-12-15

本稿は,日本固有の決算発表の集中日周辺における投資家の意思決定に焦点を当てている。Schroder et al.(1967)の概念モデルに基づくと,決算発表の集中日には,情報のオーバーロードのため,投資家の意思決定は影響を受けると予測される。それゆえ,本稿は決算発表の集中化が取引量に及ぼす影響を実証している。その結果,その他の条件を一定としても,短期的には,集中日ダミーと取引量との関係は弱いながらも有意に負であった。この結果は,Schroder et al。(1967)の概念モデルと一致して,集中日の決算発表直後,投資家は認知限界のためすべての情報は認知できないが,時間をかけて認知できかなった情報を処理する,ことを示唆している。すなわち,集中化は,投資家の決算発表に対する速やかな反応を阻害していると考えられる。よって,よりいっそうの分散化が必要である。
著者
田中 妙子
出版者
早稲田大学
雑誌
早稲田大学日本語研究教育センター紀要 (ISSN:0915440X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.47-67, 1997-03-31

繰り返し表現(以下, 本稿の規定によるものを<くりかえし>と呼ぶ.)は, 会話の相手の発話を繰り返すことで, その発話に対する何らかの心的反応を示す会話特有の表現である.本稿は, <くりかえし>を・<くりかえし>の機能(会話の相手にどのような性質の働きかけを行っているか.)・会話の展開における<くりかえし>の効果(会話の流れの中で, 先行発話をどのように受け継ぎ, 次の発話者へどのように引き継いでいくか.)という二つの点から分析するという方法を採り, 会話において<くりかえし>表現が果たす役割を明らかにすることを目的とする.<くりかえし>の機能については, 相手の発話を受信・認識したという合図, 相手の発話のどの部分に注意を向けているかの表示という二つの基本的機能のほかに, 相手の発話への感想を表現する機能, 自分の思考・感情が相手と同じであることを示す機能, 相手が質問や共感要求をしてきた事柄について肯定する機能, からかい・ことば遊びの機能が認められる.<くりかえし>の効果については, 会話の展開上, 相手の発話方向を決める, 自分の発話を進めるという二点が指摘できる.後者の場合, <くりかえし>は相手から発話権を得る, 相手の発話を利用して自分の発話を補う, 相手の発話に自分の発話を合わせる, ということのために行われる.<くりかえし>は, それによって相手に事柄的な情報を提供することはできないが, 受け取った情報に対する様々な心的反応を相手に伝達するという機能を持つ.また, その機能を利用して, 会話を先へ進めようとする意識的な働きかけも見られる.