著者
澤田 幸平
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

パイルドラフト(PR)基礎は直接基礎の支持性能を活かしつつ、少数の摩擦杭により沈下の低減が見込める基礎形式である。従来の杭基礎の設計ではスラブ底面の支持力を無視し杭の支持力のみを考慮するため、PR基礎は合理的な基礎形式といえるが、ラフト-地盤-杭の相互作用が複雑であり未解明な点が多く残っている。特に地震時等、基礎に水平荷重が働く場合、この相互作用が水平変位により変化するため、基礎の挙動がより複雑になる。このため水平力に対してはラフト部のみで支持する簡便な設計方法が採用されることもある。また橋梁の基礎等の土木構造物は基礎幅に比べ重心位置が高いケースが多く、水平荷重を受けた際の水平変位に加え、基礎の回転が重要な問題となり相互作用が一層複雑となる。このため地盤工学の分野ではPR基礎の耐震設計法の確立には至っていない。地盤工学の分野では設計が性能設計に移行しつつあり、合理的な基礎形式であるPR基礎の耐震設計法の確立が強く望まれている。そこで本研究の目的は、PR基礎の合理的な耐震設計法の確立のために、PR基礎のラフト-地盤-杭の相互作用に関する詳細なメカニズムの把握である。具体的には相似則を考慮した遠心場で、PR基礎とその構成要素である、杭基礎、直接基礎の水平載荷実験を行った。これら3つの基礎形式の結果を比較することで、PR基礎のラフト-地盤-杭の相互作用を明確にする事が可能となる。またパイルドラフト基礎を実務に適用するためには、この複雑な相互作用のモデル化が必要となる。このため本研究ではPR基礎のモデル化に必要となるラフト、杭のバネ値である地盤反力係数について着目して結果の整理を行った。本研究の結果より、PR基礎の鉛直、水平、モーメント抵抗は杭基礎よりも大きくなることが確認できた。これらの結果はラフト部から抵抗が得られることに加え、ラフト底面の接地圧の増加により杭周面摩擦力、および押込み側の杭部の地盤反力係数が杭基礎に比べ増加しているためであることが確認できた。
著者
坂野 達郎
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、実空間で培われてきた討議型世論調査の技術をオンライン討議へ移転することを目的とし、日本初のオンラインDPの社会実験をおこなった。討議テーマは、高レベル放射性廃棄物処分方法とし、インターネット調査会社登録のモニターから性別、年齢、居住地を基準に層化抽出を行い,101人の参加者を得た。討議は、Web会議システムを使用した。実験の結果、①Web上においても、実空間上のDPとほぼ同様に、代表性のある参加者が確認できた。②討議参加による学習効果も、ほぼ実空間と同様に起きることが確認できた。③コストは、実空間上のDPにくらべおよそ3分の1から5分の1程度で実現できるめどがたった。
著者
菅野 了次 田村 和久 平山 雅章 鈴木 耕太 小林 玄器 森 大輔
出版者
東京工業大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-06-28

エネルギーデバイスへ応用可能な新しいイオニクス材料の開発を行った。古典的な材料探索に加え、理論科学、情報科学との連携により、材料探索の新しい指針を検討した。新しいイオン導電種であるヒドリド導電体を開発し、全固体型のデバイス用電解質としての応用可能性を見出すことができた。量子ビームを使ったナノ界面解析では、数nmスケールの電気化学界面構造とデバイス性能との相関と制御指針を見出すことができた。既知構造を利用した探索により、リチウムイオン、酸化物イオンが拡散する固体電解質を開発した。さらに、情報科学の手法を用いて新組成、新構造を有する材料探索にも着手し、その課題と展開可能性を提示することができた。
著者
藤井 信生 金子 峰雄 高木 茂孝 西原 明法 高窪 かをり 石川 雅之 和田 和千
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究では,アナログ・ディジタル混載システムLSIの鍵を握るアナログ回路を,回路設計からレイアウト設計までを含めた総合設計システムの構築を目的としている.レイアウトの微細化とともに,アナログ回路も高速な動作が可能となるが,一方で素子の耐圧が下がるため,高速性を享受するためには,低電源電圧動作不可欠となる.そこで,電源電圧間にトランジスタを2個しか縦積みにしない基本機能回路ブロックを提案し,その応用として,A-D変換回路を提案の回路ブロックを用いて構成し,その動作を確認している.次に,スイッチトキャパシタ回路における最大の問題点であるクロックフィードスルーを取り除く手法について,増幅回路を例として説明し,その有効性を計算機シミュレーションにより確認している.必要な機能を自動的に合成し,アナログ回路設計者不足を補う目的から,遺伝的アルゴリズムに基づいたアナログ回路の自動合成手法も提案し,2乗回路や3乗回路,絶対値回路などの非線形演算回路を容易に合成することができたことを確認している.最後に,ディジタル回路から基板を介した雑音がアナログ回路の性能を劣化させる.そこで,ディジタル回路から基板を介した雑音を低減するための手法を提案し,その有効性を計算機シミュレーションにより,確認している.以上を要するに,本研究では,計算機によるアナログ回路の統合設計環境の構築を目指し,アナログ回路の基本機能ブロックやアナログ回路の自動合成手法について検討を行った.また,アナログ・ディジタル混載LSIを実現する際に,ディジタル回路からの雑音の低減手法も併せて示した.アナログ回路設計手法からレイアウト設計への橋渡しに関しては,十分な成果が得られなかったものの,アナログ回路で必要となる基本機能を低電源電圧の下で構成することができるようになり,その他必要な機能回路もある程度自動的に合成できる見通しが得られた.今後,レイアウト設計に関しても十分な検討を行い,これらを有機的に結びつけ,アナログ集積回路の総合設計システムを実際に構築することが課題である.
著者
中島 秀人 MORENO-PENARANDA Raquel MORENO-PENARANDA Raqouel
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

世界中の都市で人口が急増し、都市の面積が拡大している。都市外の生物多様性は犠牲となり、生物多様性の喪失や温室効果ガスの排出など、地球環境問題を悪化させている。食物を供給し、洪水やヒートアイランド効果を抑え、地域の福利に不可欠な物資やサービスを提供する、生態系の能力は見落とされている。近年になってようやく、ローカルおよびグローバルな観点から、地域の食システムを(再)構築する都市農業の潜在性が注目されるようになった。当研究は、日本の都市農業が持続性や福利にどの程度貢献しているかを検証し、また、都市農業と林業・漁業の繋がり、さらにはこれに対する地域、国、国際的ガバナンスの影響を検証した。日本は、都市圏で国内農業生産の1/4以上を供給する高度先進国であり、グローバルな持続可能性に貢献すると同時に、地域の農業の生態学的、社会経済的恩恵を得ている珍しい事例である。この研究では、持続可能な自然資源管理について、フィールド調査を中心として分析を加え、社会や生態系に関する学際的な理解を深めた。具体的には、生態系サービスと生物多様性を高める都市農業の生態系上の役割を調査し、それが都市のエコロジカルフットプリントをどの程度軽減するかを分析した。以上のコアプロジェクトに加えて、インドネシアにおけるバイオ燃料作物の持続可能性の研究、日本では、石川県金沢市の生物多様性について広範囲な調査を行い、沖縄では、沿岸地域の暮らしの影響評価にも関わった。具体的には、石油流出による沖縄の生物影響評価を利害関係者の認識の観点から調査し、インドネシアでは、パーム油拡大による生態学的、社会経済的影響についてのフィールド調査を実施した。
著者
小野 聡
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

2012年度は本研究計画の最終年度であり、研究計画で位置づけられるところの「事例研究」の取りまとめが行われた。これは、2011年度より行われていた、京都市などにおける再生可能エネルギー普及のための市民団体の役割分析、および埼玉県小川町における有機農業を中心とした民間主導のまちづくりの取り組みの分析を中心に行われたものである。また、掲載されるのは2013年度となってしまうが、研究計画1年目より推進してきた、愛知県日進市における調査結果を元に、環境基本計画の推進における市民ネットワークの機能分析についても取りまとめられた。京都市および神奈川県における研究では、再生可能エネルギーの普及促進に取り組む市民団体は、行政の掲げる政策方針に応じて活動内容や資源調達の方法を変化させていたが、その方法として共通しているのが政策提案のネットワークを自ら形成しているということであった。また、小川町における研究では、創成期に活動した1人の農家を中心として有機農業を支援するコミュニティの輪が広がっていったが、そこには有機農業支援の担い手教育のシステムが組み込まれていたことが確認された。そして、日進市における研究では、設立当初はごみ問題、流水域の緑地保全、農業問題などといった分野横断的に計画を総合的に推進してゆくことを目的としたNPO団体であったが、徐々に各分野内での事業連携を行う上での拠点へと機能が変容していったことが明らかになった。
著者
安井 伸太郎
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

今年度初旬に計画した通りに研究を進めてきた。まずはプロセスに関して、ローカルエピタキシャル成長のための(111)SrRuO_3/(111)Pt/(111)Si基板をスパッタリング法を用いて作製した。この基板を用いて、ローカルエピタキシャル成長させた一軸配向Bi系圧電体薄膜を堆積させた。強誘電体材料は高圧相材料であるBi(Mg_<1/2>Ti_<1/2>)O_3、およびその固溶体Bi(Zn_<1/2>Ti_<1/2>)O_3-Bi(Mn_<1/2>Ti_<1/2>)O_3-BiFeO_3を用いた。XRDθ-2θパターンおよびX線極点図の結果より、堆積されたこれらの薄膜材料は基板の方位に沿って(111)軸に配向しており、また面内方向はランダムであった。これは作製した薄膜がローカルエピタキシャル成長している結果である。作製したSi基板上のこれらの薄膜について、圧電応答顕微鏡(PFM)を用いて、基板垂直方向の圧電特性d_<33>を測定した。このPFM測定にはAFMのZ-piezo信号を用いた歪電界曲線を用いた。その結果、Bi(Mg_<1/2>Ti_<1/2>)O_3、およびその固溶体Bi(Zn_<1/2>Ti_<1/2>)O_3-Bi(Mn_<1/2>Ti_<1/2>)O_3-BiFeO_3において40pm/vおよび75pm/Vであった。後者の材料の圧電特性は(111)SrRuO_3//SrTiO_3基板上に作製されたエピタキシャル薄膜の場合で150pm/V程度の圧電性を示したが、ローカルエピタキシャル膜の場合は半分程度の値となった。この理由はモルフォトロピック相境界の組成領域が、成長させる基板で異なる可能性がある、言い換えると内部の残留歪に敏感であり、異なる組成域を示す可能性が考えられる。事実、高圧合成法で作製された粉末の結晶構造解析の結果より、薄膜におけるモルフォトロピック相境界と粉末におけるそれは、異なる組成を示した。今後、カンチレバーおよびSAWデバイス用に加工した基板を用いて、上記で調査した特性を基に必要な組成・方位の薄膜を作製する予定である。
著者
岡本 清美 利根川 孝 野村 清英 中野 博生
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

量子スピン鎖の相転移点を数値計算データから精密に決める解析方法として我々の開発したレベルスペクトロスコピー法がある.本課題ではこのレベルスペクトルスコピー法を種々のモデルに適用して,新奇相の発見,相図の精密化,などをおこなった.具体的には,異方的S=2スピン鎖については約20年前の提唱があったものの長い間存在が否定されていたintermediate-D相の存在をはじめて確認した.また,相互作用パラメーターに関する論争が長く続いていたアズライトの磁性に関し,論争に決着をつける結果を得た.
著者
時松 孝次 田村 修次 鈴木 比呂子
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

戸建て住宅の液状化被害予測・対策・修復技術の向上について検討し、(1)直接基礎建物の被害は、建物階数、接地圧、アスペクト比、地盤沈下量が大きいほど、また表層の非液状化層厚が薄いほど、大きくなること、(2)摩擦杭基礎の沈下挙動は、建物・地盤条件により、抜け上がり、共下がり、めり込み沈下に分類できること、支持杭の被害無被害に杭頭固定度、杭の変形性能と耐力が大きな影響を与えること、(3)液状化対策としてドレーンパイプを基礎外周に設置することが有効であること、(4)鉛直荷重と転倒モーメントに関する安全率により直接基礎の被害をある程度推定できることを示した。
著者
庄司 学
出版者
東京工業大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

平成11年度には,免震橋の1/10模型を7体製作し,正負交番載荷実験およびハイブリッド地震応答実験によって免震支承〜RC橋脚系の耐震性能について検討した.免震橋では,免震支承のせん断変形に伴うエネルギー吸収性能によって,橋脚に作用する地震力を低減するものである.しかし,免震支承の大変形に伴い,免震支承に作用する水平力が橋脚の降伏耐力を越えると,橋脚の軸方向鉄筋が降伏し,橋脚は塑性化し始め,免震支承から橋脚に塑性化が移行する.このような免震支承から橋脚への塑性化の移行メカニズムを解析的にシュミレートすることは難しいため,ここでは,橋脚の降伏耐力を3通りに変化させ,降伏耐力が低く塑性化しやすい橋脚模型と降伏耐力が高く塑性化しにくい橋脚模型を製作し,これらにHDR型免震支承およびNR型免震支承を設置して,実験的な検討を行った.得られた知見は以下の通りである.1)降伏耐力の低い橋脚にHDR型免震支承を設置した供試体に対して正負交番載荷実験を行った.これより,免震支承の塑性化が進み,免震支承の変形がせん断ひずみ50%程度まで進むと,橋脚の軸方向鉄筋が降伏し始め,橋脚基部の損傷が進展し始めることが示された.一旦,橋脚が塑性化し始めると,橋脚の塑性化は免震支承の塑性化を卓越するレベルまで急激に進み,構造系として大変危険な状態になる.2)1)と同じ供試体に対して,入力地震動として神戸海洋気象台で観測された加速度記録を25%(神戸25%)と50%にしたもの(神戸50%)をそれぞれ作用させ,ハイブリッド地震応答実験を行った.これより,神戸25%を入力した場合には橋脚は塑性化せず,橋脚は,免震支承の1/4程度しか変形しないが,神戸50%を入力し,地震荷重が大きくなり,一旦,橋脚が塑性化し始めると,橋脚の変形は免震支承の変形の1/2程度まで大きくなり,橋脚の塑性化が急激に進むことが示された.
著者
山田 哲 吉敷 祥一 島田 侑子 石田 孝徳
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、大地震時に鉄骨造建物が倒壊に至るまでの3次元挙動を明らかにし、耐震設計における安全余裕度を明らかにすることである。そのためには、構成部材の現実的な挙動を反映した応答解析を行う必要があることから、主要部材であり耐震要素でもある柱と梁を対象に、地震時の現実的な条件を反映した実験を実施し、3次元応力下で部材が最大耐力に到達し、その後復元力を喪失するまでの挙動を把握した。そして、部材の挙動を反映した数値解析を行うための、解析プログラム作成に取り組んだ。
著者
伊藤 宏司 湯浅 秀男 淺間 一 新 誠一 上田 完次 藤田 博之
出版者
東京工業大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

1.機能モジュールの開発マイクロ技術を用いて多数の素子を製作し,それらが機能モジュールを構成できるような人工システムを開発した.2.機能モジュールの理論解析1)機能モジュール群の追加・削除及び結合形態とシステム全体の安定性との関係をH∞制御におけるLMI設計法を適用し解析した.2)機能モジュール群の相互作用を反応・拡散、分散・波動などの発展方程式により記述し,秩序形成を獲得する仕組みを明らかにした.3)動物のロコモーションや上肢動作の時空間パターンの創発機構とそのモデリングを理論・実験の両面から解析した.3.人間とロボットの行動創発1)免疫ネットワークの工学モデルを構築し、未知環境における自律移動ロボットの行動発現に適用した.2)概念の相違の定義並びにその検出法を与えるとともに、ヒューマンインタラクションにおける概念構造の発見や知的操作のプロセス創発と呼び、そのプロセスを決定木により可視化することを試みた.3)ロボットが共通の座標系を獲得する問題、衝突回避問題、長尺物運搬時の経路決定問題を理論的に解析し、多様な行動パターンを生成させた.4)ロボットと環境との局所的な情報交換に着目し、その通信手段として小型可搬のインテリジェントデータキャリア(IDC)を製作した.5)自律ロボットが他のロボットと競合を起こさない適切な行動戦略を自己組織化する手法を強化学習的なアプローチにより解析した.6)数10台のマイクロロボット群を製作し、個々のロボットの知能とマクロ的な群知能の関係を実験的に検証した.4.生物指向生産/経済システム1)個体の発生・成長および生物集団の進化・適応の特徴を取り入れた生物指向型生産システムのモデリングとプロトタイプの開発を行った.2)セルラ-・オートマタによる流行モデルを提案し、初期条件の微妙な違いによって消費者の行動パターンが全く異なってくることをシミュレーションにより示した.
著者
半田 宏 落合 孝広 青木 伊知男
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

SV40外殻タンパク質VP1の自己集合化能を利用して、試験管内でナノカプセルを形成し、ナノカプセルの中へ生理活性物質を導入し、さらにナノカプセル表面を修飾・改変する技術を開発した。また、形状や性状やサイズの異なる構造体をVP1五量体で被覆する技術を開発したので、VP1五量体被覆により形成されるナノカプセルの応用展開される分野を大幅に拡大することが可能になり、新規DDS用キャリアとして極めて有用な高機能性ナノカプセルの基盤となる技術開発に成功した。
著者
西迫 貴志
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,基板上に作製した微細な流路(マイクロ流路)の分岐構造を利用し,異形微粒子の作製に関する研究を行った.互いに混ざり合わない硬化性液体と非硬化性液体をマイクロ流路に送液し,サイズの均一な(単分散)多層構造のエマルション(多相エマルション)滴を生成した後,硬化処理によって,非硬化性液体を鋳型とした形状を有する異形ポリマー微粒子を生成することができた.さらに,微粒子の高機能化を目的とした各種ナノ・マイクロ粒子の複合化,および生産量をスケールアップさせるための装置について検討した.
著者
正田 誠 北 宜裕 北 宣裕
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1.殺菌剤(ネビジン)耐性菌を収得することに成功した。この菌のiturin生産性は安定していたが、surfactin生産性は低下した。2.この耐性菌を農地に用いて植物病抑制試験を行ったところ、育苗の段階で使用することが有効であることが判明した。3.農業モンカット耐性は元株RB14Cが保持していることが明らかになった。4.RB14Cとモンカットの併用試験をポットにより実施し、使用するモンカットの量を1/5に減らすことができることを証明した。5.トマトの苗立枯病に対する効果をテストした結果、菌体かん注あるいは発芽種子処理と農薬フルトラニルのかん注を組み合わせると高い効果がみられた。6.キュウリホモプシス根腐病の抑制テストを実施した。キュウリの菌を移植する時、RB14Cの菌体懸濁液を根に浸す処理によって顕著な病害抑制がみられた。7.キチナーゼ遺伝子をRB14Cおよび枯草菌M1113に導入し、キチナーゼを生産することを確認した。各種の病原菌とキチナーゼ遺伝子保育菌を混合すると病原菌の菌糸の成長が抑制されることが実証された。8.iturin生合成遺伝子のクローニングに成功した。iturin合成遺伝子は約30kbpからなる巨大分子であり、上流部分に側鎖である脂肪酸合成に関与すると考えられる遺伝子が思い出された。9.surfactin耐性遺伝子をクローニングし、その特性を明らかにした。今まで知られている多剤耐性遺伝子と相関性を示した。この遺伝子の増幅はsurfactinの生産性の向上にはつながらなかった。10.iturinおよびsurfactinの高生産条件元株によるiturinおよびsurfactinuの生産量は数100ppmであったが培地組成を検討した結果、surfactinでは20g/l、iturinは38/lまで生産量を向上させることに成功した。こうして生産性が向上した培養液による植物病抑制効果を検討し、その有効性が証明された。
著者
草間 博之
出版者
東京工業大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-04-01

遷移金属触媒によるアルキンの求電子的活性化を基盤とする同一時空間集積化反応に関するこれまでの検討により、o-アルキニルアニリンから調製したイミンに対してビニルエーテル類の存在下で塩化白金触媒を作用させると、金属含有アゾメチンイリドの生成を経てピロロ[1,2-a]インドール骨格を一挙に構築できることを明らかとしている。この反応は様々に官能基化された基質に適用可能な優れた手法である。本年度は、この反応を利用してインドールアルカロイドの一種であるyuremamineの全合成研究を行った。上述の金属含有アゾメチンイリドの付加環化反応によりyuremamineの基本骨格を構築した後、水酸基ならびにレゾルシノール基の立体選択的導入を経て効率良くyuremamineの提案構造を構築することに成功した。上記の反応とは異なり、アルキン部位をプロパルギルエーテル誘導体とし、求核部位をアミンとした基質を用いると、これまで報告例のほとんどない触媒的なα,β-不飽和カルベン錯体中間体の発生が可能であることを見いだした。すなわち、プロパルギルメチルエーテルに対し、電子豊富ジエンの存在下で適切な白金触媒を作用させると、アルキン部位へのアミンの付加とメタノールの脱離によりα,β-不飽和カルベン錯体中間体が生成し、これが電子豊富ジエンと[3+4]型の付加環化を起こすことで7員環の縮環した三環性インドールを一挙に与える。この反応はこれまでに合成例のないambiguine類の合成に有効と期待し、モデル化合物を用いたambiguine骨格の構築を試みた。その結果、シクロヘキセン部位をもつシロキシジエンを基質とすることで、四環性インドールを一挙に構築することに成功した。本研究で開発した同一時空間集積化による多環性インドール骨格構築法は、より多様な生物活性物質の高効率合成に適用可能と考えられる。
著者
菅野 了次 園山 範之 米村 雅雄 田村 和久 山田 淳夫 鳥飼 直也 小林 弘典 山田 淳夫 小林 弘典 鳥飼 直也
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究課題では,新規なイオニクスデバイスの開発を目的として,新規材料開発と新規反応開拓を目指した.全くのブラックボックスである電気化学界面での反応挙動の解明のためにモデル電極を開発し,電気化学界面での反応の詳細が明らかにできるようにしたことが,本研究の大きな成果である.また,最高のイオン導電特性を示す固体電解質材料にたいする純理学的な知見は,今後の材料開発の指針を示すものである.
著者
岸本 健雄 佐方 功幸 稲垣 昌樹 竹内 隆 浅島 誠 山本 雅 正井 久雄
出版者
東京工業大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

特定領域研究「細胞周期フロンティア-増殖と分化相関」(細胞増殖制御)は、平成19年度から5ヶ年計画で発足し、平成23年度末で終了を迎えた。本研究では、この特定領域研究の総括班業務を引き継ぎ、以下のように、領域終了にあたって領域としての研究成果をとりまとめ、その公開をはかった。(1)「研究成果報告書」を、全班員(前期あるいは後期だけの公募班員や途中辞退者も含む、総計91名)をカバーした冊子体で作成した。本報告書は8章からなり、領域としての研究成果の概要だけでなく、各班員毎の研究成果の概要も掲載し、総頁数456頁の冊子となった。班員、関連研究者、文科省等に配付した。(2)公開の領域終了シンポジウム「細胞増殖制御」を、平成24年8月30、31の両日、東京工業大学・蔵前会館(目黒区大岡山)で開催した。領域メンバーのうち、前後両期の参画者を中心として31名が講演発表した。参加者総数は約100名で、評価委員も出席した。領域としての主な研究成果を、概観できるシンポジウムとなった。(3)領域の終了に伴う事後評価のためのヒアリングを、平成24年9月12日に文部科学省で受けた。後日、評価結果は「A」(研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの成果があった)であるとの通知が届いた。(4)領域ホームページで、上記の公開シンポジウムもアナウンスし、領域としての成果を発信した。これらにより、本領域の設定によって得られた研究成果を周知するとともに、領域メンバー間の有機的な連携を再確認し、細胞周期制御関連分野の研究の今後の発展に資することができた。
著者
二宮 祥一 楠岡 成雄
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、拡散過程X(t)のと関数fが与えられた時に期待値E[f(X(T))]の値を数値的に求める問題(弱近似問題)を、楠岡近似と呼ばれる新しい近似手法によって解決する方法を確立することであった。楠岡の研究により楠岡近似は既存の近似手法である、Euler-丸山近似に比して非常に少ない次元の数値積分によって近似を実現することが可能であることが示されていた。積分次元はMonte Carlo法を用いる限りにおいては、計算量に対して中立的であるので劇的な高速化は期待出来ない。しかし、quasi-Monte Carlo法は積分次元が小さくなると非常に高速になることが知られている。これらの事実から楠岡近似をquasi-Monte Carlo法と組み合わせることにより計算の高速化が期待されるが、現実の問題に適用する為には以下の様な未解決の問題が在った。1.汎用的な楠岡近似オペレータの構成の困難2.楠岡近似にquasi-Monte Carlo法を適用する方法の確立3.現実の問題に適用しての実証例の不在本研究は全ての問題を解決することに成功した。1.に関しては、本研究の開始時点に於いては計算機による記号計算によりオペレータを記号的に求めてそれを計算機上のプログラムに変換するというアプローチを考えていたが本研究で記号計算を経ずに常微分方程式の数値解法を用いる方法が発見された。これにより、非常に汎用性の高いプログラムライブラリが可能となるので、楠岡近似の実用化については決定的な成果であると考えられる。更にこの方法は、高次元正規分布とBernoulli列によって実現されるのでquasi-Monte Carlo法が自然に適用可能である為、2.も同時に解決している。3.については、この新しいアルゴリズムをファイナンスの問題に適用し、800倍という驚異的な高速化を実現した。
著者
田中 秀数 上田 寛 金道 浩一 太田 仁 宮下 精二 利根川 孝 内野倉 國光 本河 光博
出版者
東京工業大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

本研究において,我々は種々の空間構造をもち,スピンの大きさがS=1/2と小さく,量子効果が顕著な量子磁性体を精力的に開拓し,それらが強磁場中で示す新奇な磁気現象を多角的に研究した。以下に代表的な結果をあげる。スピンの対(ダイマー)が構成単位である,S=1/2のスピンダイマー系は磁場中で新奇な量子相転移を起こす。これらの磁性体の基底状態は,有限の励起ギャップをもった非磁性の1重項状態となる。強磁場中では,磁化をもつダイマーの3重項状態が重要になる。ダイマーの3重項はダイマー間の交換相互作用の横成分のために隣の位置に次々と移ってゆき,あたかも粒子のように振る舞う。この準粒子はボース粒子の性格をもちマグノン或いはトリプロンとよばれる。このとき磁場はマグノンの化学ポテンシャルとして,新しい役割を担う。我々はSrCu_2(BO_3)_2を初めとして種々の量子磁性体で,磁化曲線に磁場方向に依らない平坦領域(磁化プラトー)を発見した。磁化プラトーはマグノンの並進運動が抑制されるためにマグノンが周期的に配列するために起こる,量子多体効果である。磁化プラトーではマグノンのウィグナー結晶が形成されていると考えられる。我々はSrCu_2(BO_3)_2のNMR実験によって,実際にマグノンのウィグナー結晶を実証した。これに対して,磁場誘起反強磁性相転移はマグノンの並進運動が優先されるために起こるマグノンのボース・アインシュタイン凝縮(略してボース凝縮)と捉えることができる。これはマグノンの運動量空間での凝縮である。我々はTlCuCl_3の磁場誘起反強磁性相転移を種々の実験で詳細に調べ,理論解析と合わせて,これがマグノンのボース凝縮であることを実証した。本特定領域研究によって,磁性体は強磁場中で「量子力学的粒子の集団」としての性質を強く示す場合があることが明らかになった。これは磁性体の新概念をつくるものである。我々はまた,平成13年度から15年度にかけて国外研究者を交えた公開シンポジウムを3回開催し,平成16年に国際会議「International Symposium on Quantum Spin Systems」を開催した。更に3回の国際会議を協賛した。