著者
花村 克悟
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究において、熱エネルギーにより加熱されたタングステン製平滑面エミッター表面をGaSb製光電池に近づけることにより、通常の伝播光に比べて、エバネッセント波効果により、およそ4倍の発電密度となることが示された。さらに数値シミュレーションモデルを独自に開発し、対向するピラーアレイ構造表面において、ピラー間隙間の表面プラズモンがその深さ(ピラー高さ)により周波数制御できる(すなわちエバネッセント波の波長制御となる)ことを示した。
著者
花村 克悟
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は,加熱された表面近傍(光の波長程度)に生ずる近接場光をナノスケールの隙間(ナノギャップ)を介してGaSb系の熱光起電力電池(Thermophotovoltaic Cell : TPV Cell)へ導き電力を得る,ナノサイズ発電システムについて検討したものである.真空容器内にこの電池と鏡面研磨されたタングステンエミッター(放射体)を向い合わせ,両面をゴニオメーターで平行に保ちつつ,高精度マイクロメーターで接触するまで近づけた.8mm×2mmのエミッター面積に対して隙間が40μm以下となると,形態係数はほぼ1となり,隙間が10μm程度までは出力電力は一定となる.さらに隙間を狭くした場合,この領域では簡易マイクロスコープを用いて隙間を測定することができない.そこで,出力がゼロとなる接触した位置をゼロ点とすることを試みた.したがって,多少,この領域での隙間の精度が低い.出力がほぼゼロ,すなわちその位置において,外部負荷を変化させたときの電流-電圧特性曲線が得られない位置を隙間ゼロとすると,隙間が約2.5μmにおいて急激にエミッター温度が低下し,出力も低下した.さらに,隙間が1μmより小さくなるとエミッター温度が低下し続けるにもかかわらず,出力がいったん増大した.そこからわずかに近づけると出力は急激に低下し,そこでは外部負荷を変化させたときの電流-電圧特性曲線を得ることができなかった.これらのことから,隙間が2.5μm以下になると,電力には変換されない長波長域のふく射に対して近接場効果が顕著となり,熱移動が促進される.このため,加熱用のレーザー入力が一定条件では,エミッター温度が低下する.これに伴い,出力電力が低下する.隙間が1μmあるいは400〜500nm程度まで狭くなるとエミッター温度が低下するものの,電力に変換される波長のふく射の近接場効果が顕著となるため,出力が増大したものと考えられる.したがって,加熱面近傍に生ずる近接場光による,熱エネルギーから電力へのエネルギー変換の実現が示唆されたものと考えられる.
著者
花村 克悟 牧野 俊郎 宮崎 康次 高原 淳一 森本 賢一 若林 英信
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究において、ピラーアレイ構造表面を対向させることにより、ピラー間隙間の表面プラズモン共鳴より波長制御輸送が可能となること、およびピラートップ面においてs偏光波となる電磁波はピラー側面おいてp偏光波となることから、長波長成分のエネルギー輸送はむしろ平滑面に比べて抑制されることが示された。また、スプリットリング共鳴器アレイ構造を利用した白熱電球により、電気から可視光への変換効率が通常の2倍となることが示された。
著者
花村 克悟 伊原 学
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

鏡面研磨されたニッケル金属表面に製作された0.5μm×0.5μm×0.5μmのマイクロキャビティにより、遠方で計測される伝播成分について、このキャビティサイズに相当する空洞共振波長(0.89μm)近傍において放射率は0.95と高く、また、カットオフ波長1μm より長い波長では、鏡面放射率に等しいおよそ0.2程度であることが示され、波長が制御できることが明らかとなった。さらに、このマイクロキャビティ内部からの放射を、マックスウェル方程式を解くことで、近接場成分がキャビティ外部まで達していることが明らかとなり、擬似的な近接場光として検出できること、さらに伝播成分と同様にこのキャビティにより波長制御が可能であることを示唆した。そこで、この擬似近接場光強度とその波長選択性を明らかにするために"真空型近接場光学顕微システム"装置を独自に開発した。一方、分子線エピタキシャル装置を用いて、波長1.8μmまでの赤外線を電気に変換できるアンドープGaSb電池を作製した。そして、黒体炉を用いた等強度半球入射光による発電効率測定装置を独自に開発し、伝播成分による発電効率を明確にできることを示した。さらに1000Kに加熱された放射面と電池を真空容器内で数百ナノまで近づけることにより、伝播成分に比べて、開放電圧1.4倍、短絡電流4倍の出力が得られることを明らかにした。
著者
花村 克悟 伊原 学
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、様々な熱源によって加熱された赤外線放射体表面近傍に生ずる近接場光領域に、真空ナノスケール隙間(ナノギャップ)を隔てて熱光起電力電池(Thermophotovoltaic Ce11;TPV Cell)を向かい合わせ設置し、その領域の高電界強度を利用することで高い発電密度を得ようとするものである娘まず、既存のTPV電池(フラウンホーファー研究所製)を用いて実験した。その表面には高ざ4μm、幅20岬の金電極が60μmのピッチで配置されている。そこで、接触を避けるためにタングステン放射体表面には溝が設けてある。長さ8mm、幅2mmの放射体表面を、高精度マイクロメーターにより近づけた場合、50μm以下の隙間では形態係数がほぼ1となり、それ以下に近づけても伝播成分の範囲では出力は増大しない。しかし、隙間が.1μm以下となると、短絡電流が4倍、開放電圧が1.4倍増大した。すなわち近接場効果により出力は5〜6倍に増大することが明確となった。さらに、この電極間隔を拡げる、あるいは、P型半導体内部に電極を埋め込んだ独自のGaSb系のTPV電池を、ロードロックチャンバーを接続した簡易薄膜装置により製作を試みた。n型GaSb系基盤上にp.型GaSb半導体をエピタキシャル成長させることに成功し、アンドープでありながら、p-n接合であることが確認でき、キャリア密度5.73×10^<17>cm^<-3>と.モビリティ1.35×10^2cm^2/Vsを得た。一方、GaSb系のTPV電池は、波長1.8μm以下の電磁波を電力に変換できるが、それより長い波長の電磁波を電力に変換できない。そこで、金属放射体表面にナノスケールのキャビテーを多数設け、光導波管の原理により放射光の波長選択を試みた。表面研磨されたNi表面の2mm×2mm'の領域に、縦横500nm四方、深さ500nmのキャビテーが幅250nmの壁を隔てて周期的的に作製されている表面を用意した。このサンプルを真空容器内に入れて裏面から炭酸ガスレーザーにより1052Kまで加熱した。分光測定の結果、波長が2μm以上ではNiの鏡面の放射率にほぼ等しく、それより波長が短くなると徐々に増大し、キャビテー幅が半波長に等しい波長1μmよりやや短い波長の放射率が0.95と極めて高くなることが明らかとなった。これらの組合せにより、選択波長近接場光を用いた新たなエネルギー変換が構築できることの手がかりを掴むことができた。
著者
鈴木 長寿
出版者
東京工業大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

有機合成の実験教材開発の基礎として、マグネチックスターラーを用いたポリスチレン微粒子合成において粒子径を制御するための諸条件を検討した。ポリスチレン微粒子は、窒素雰囲気にした反応容器内にペルオキソニ硫酸カリウム0.0620g、スチレンモノマー1.52gを含む溶液300mLを入れ、ホットマグネチックスターラーにより80℃で24時間撹拌しながら合成した。合成時の撹拌速度は50~1000rpmまで段階的に変えた。その結果、200~500rpmの範囲で200~250nmのほぼ均一な粒子径の微粒子が合成でき、粒子径は回転数に比例して小さくなることがわかった。100rpm以下の弱い撹拌では液面で膜状にポリスチレンが固化し、600rpm以上では溶液の回転の乱れが大きく粒子径が不均一になった。反応容器では、筒状のセパラブルフラスコより三角フラスコの方が安定的に粒子径を制御できた。また、筒状フラスコで合成した粒子は三角フラスコに比べ径が小さくなる傾向が見られた。撹拌子は、棒状のテーパー型以外の形状の異なるものも用いたが、粒子径の変化に大きな差は見られなかった。合成後、得られた白色のポリスチレン分散液から微粒子を遠心分離したものをガラスのプレート上に塗布し、乾燥後発色を確認した。また、走査型電子顕微鏡で形状と配列、粒子径を観察・測定した。今回、合成した粒子径の異なる微粒子を用いて、赤・黄・緑・青色の4色の構造色を呈するコロイドフォトニック結晶を作製できた。粒子の配列が充填構造でないものや粒子径が不揃いなものは構造色が発現せず白色のままであった。粒子径が均一な微粒子を充填構造な配列に塗布したガラスの反射光を紫外可視分光光度計で測定したところ、反射光を呈する結晶の粒子径と最大反射波長には比例関係が確認できた。将来的にはゲルや樹脂中への固定化も含めて生徒実験としても実施可能な教材を目指したい。
著者
広瀬 茂久
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012

魚類の浮き袋のガス腺と対向流血管系に発現する乳酸輸送体を同定し,乳酸の回収とグルコースの送達が効率よく行われるための仕組みを解明した。さらに,ガス腺細胞に予想外の酵素(Fbp: Fructose bisphosphatase)が特異的に高発現していることから,代謝の空転サイクルが作動していることを明らかにした。解糖系の一部を空回りさせることによって熱を発生させ,浮き袋内にガスを閉じ込め易くしているという驚くべき仕組みを解明した。

2 0 0 0 冥王代地球

著者
丸山 茂徳 横山 哲也 澤木 佑介 大森 聡一 鳴海 一成 ドーム ジェームズ 丹下 慶範
出版者
東京工業大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-07-10

本計画研究班では、地球史研究から導かれる「生命誕生の器」としての原始地球表層環境を定量的に復元し、冥王代地球表層環境進化の過程を具体的に解明することを目的としている。H29年度の研究は主に5つのテーマで実施された。[1]生命誕生場と生命誕生のプロセスの解明:生命が誕生するためには、水があるだけでは不十分で、それ以外にも複数の環境条件が満たされることが必要である。そこで、諸条件の中から生命誕生場に必要な9つの条件を抽出してまとめた。[2]白馬地域の地質の継続調査と古環境の分類:冥王代類似環境としての白馬地域の特殊な水環境について比較分析し、水環境場を4つのタイプに分類した。白馬で特徴的な蛇紋岩熱水系温泉水は、高アルカリかつ水素ガスを大量に含んでおり、特に、H2を含むため貧酸素水であり、そのため冥王代型の微生物生態系が形成されていることが明らかになった。[3]オクロの自然原子炉の研究:ガボン国内の数地域で露頭周辺の調査を集中的に行い、最適と思われる掘削地点を三か所抽出した。[4]地球の起源と新たな太陽系惑星形成論の展開:太陽系進化の初期条件を決めるうえで、太陽系組成ガスから凝縮した最古の物質であるCAIの理解を深めることが重要である。そこで、始原的隕石ALLENDEに含まれる3種類のCAIに注目し、それらの核合成起源Sr同位体異常(μ84Sr)を高精度で測定した。その結果、μ84Sr値の大きさはFTA > Type B > FSの順であることが判明した。[5]継続的なブレインストーミングの実施:2件の国際ワークショップと4件の国内向けワークショップ実施した。
著者
濱田 有香
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2015-04-24

平成28年度は2つの研究を行った.研究1では,咀嚼および味覚に伴う口腔刺激が食事誘発性体熱産生(DIT)に与える影響を検討した.実験は2015年度に行い,データ解析を2016年度に行った.普通体重の健常成人男性に,200 mL(200 kcal)の飲料を一口20mLに分け,3通りの飲み方で5分間かけて摂取させた.すなわち,①対照試行:30秒毎に一気に嚥下する試行,②味覚試行:30秒間口に含んでから嚥下する試行(対照試行に味覚刺激が加わる),③咀嚼試行:1秒に1回の頻度で30秒間咀嚼してから嚥下する試行(対照試行に咀嚼と味覚の刺激が加わる)を行わせた.ガス分析装置にて酸素摂取量を食後90分まで測定し,食後90分間の累計のDITを算出した.味覚試行の累計のDITは対照試行と比べて有意に増大し,咀嚼試行の累計のDITはさらに増大した.咀嚼および味覚の両方の口腔刺激によって,DITが増大することが明らかになった.研究2では,食べる速さが食後長時間にわたるDITに及ぼす影響について検討した.実験は2016年度に行った.普通体重の健常成人男性に,734 kcalの食事(スパゲティ,ヨーグルト,オレンジジュース)をできるだけ速く(早食い試行)あるいはできるだけゆっくりよく噛んで(遅食い試行)摂取させた.ガス分析装置にて酸素摂取量を食後7時間まで測定した.遅食い試行のDITは早食い試行よりも食後2時間まで有意に増大した.食後7時間まで早食い試行と遅食い試行のDITの応答は逆転しないことが確認された.食後7時間の累計のDITは早食い試行よりも遅食い試行の方が有意に増大した.研究2の知見は,ゆっくりよく噛んで食べることが肥満を予防するよい習慣であることの裏づけとなろう.研究実施計画のとおりにおおむね順調に実施できた.今後,研究1および研究2について論文を執筆し,学術ジャーナルに投稿する。
著者
田中 善一郎
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

1947年から2009年までに実施された参議院選挙について、個々の選挙が実施された背景、各党の立候補者の数や選挙出場回数、当該選挙時の世論調査の状況と事前予測、選挙の投票率と都市部と農村部の投票率の違いについて分析を行った。さらに、選挙の結果については、各党の得票数、得票率、獲得議席数と議席率などについて、地方区(または選挙区)と全国区(比例区)とに分けて、特に前々回との比較や地域別傾向を分析した。参議院選挙は、衆議院選挙に比べて、第一党への集中度が大きくなく、その結果として、参議院は衆議院に対して、「抑制と均衡」の機能を果たしてきたことが明らかとなった。
著者
梶川 裕矢 森 純一郎 中村 裕子
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、パテントプールにおいて必須特許となる特許の特徴を分析した。必須特許が引用しているBackgroundの特許群(B)、ならびに、Backgroundの特許群を引用(Citing)している特許群(C)のデータベースを構築し、必須特許との特徴の差異を分析した。その結果、必須特許群(V)は特許群(C)よりも出願年が古く、先行技術の優位性が示された。しかし、(C)かつ(B)である特許群は、必須特許よりも前方引用が少なく、後方引用が多い、出願年が古いという特徴を有していることが分かった。すなわち、必須特許は先行する基本特許の上に、各規格や標準に合わせた改良を加えたものであると推察できる。
著者
高橋 幸雄 三好 直人 山田 孝子 藤本 衡
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

混雑システムを構成するインテリジェントな客の例として,本研究では最終的にa)交差点の歩行者,b)電車内の客,c)インターネットの利用者をとりあげ,それぞれについて,全くといってよいほど異なったアプローチからのモデル化およびシミュレーションプログラムの作成を行った.現在,それぞれ論文にとりまとめる作業を行っている.a)交差点の歩行者については,自分の速度によって決まる情報空間(視野)の中に入る対向者の速度と向きから,その対向者との衝突可能性を予測し,衝突を避けられる範囲で最も効用の高い速度と向きで歩く,という基本コンセプトでモデル化した.シミュレーションにより歩行者密度と平均歩行速度の関係を求めたところ,実際の歩行流に対して観測した従来の研究結果とよく合致することが確認された.b)電車内の客については,他人との近さおよび他人の視線を主に,他人から受ける影響をポテンシャル関数の形でとらえ,これに降りるときと乗るときのインセンティブを加え,各客が自分のポテンシャルを最小にするように振る舞うものとして,モデル化をし,シミュレーションプログラムを作成した.ここではa)のような行動予測は全く入っていない.このモデルにしたがって客の乗降に必要な時間を計測したところ,電車の混雑率と乗降客数によって.その時間が興味深い動きをすることが確認された.c)インターネット利用者については,http通信データをもとに,個人行動を考慮に入れたモデルを構築した.結果から見ると,ここでは個人の動向よりも,クライアントやサーバ側の事情というのが,ネットワークの混雑状況により大きく関係していることが観察された.
著者
太田口 和久
出版者
東京工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

大規模プラント排ガス中のCO_2を除去する技術のうちモノエタノ-ルアミン化学吸収法は、吸収能力および経済性および経済性などの点で高く評価されている。この方法では、CO_2吸収後のモノエタノ-ルアミンは水蒸気の作用によりCO_2を分離し再生される。しかし、長期間に亘る反復使用の後に劣化物を含んだ吸収液のCO_2吸収能力は低下し、吸収液は廃棄されている。本研究では、そのような使用済みモノエタノ-ルアミンを大腸菌Escherichia coli K12株を用いて生分解し、有価物の酢酸へと変換するバイオリアクタ-を考案し、培養条件が生物反応に及ぼす効果について検討した。培地成分について吟味した結果、モノエタノ-ルアミンはE.coliの生育のための窒素源となるが、効率良い増殖を望むためにはグリセロ-ルまたはグルコ-スなどの炭素源が不可欠であることがわかった。モノエタノ-ルアミンを分解するエタノ-ルアミンアンモニアリア-ゼは、その生合成および機能発現のためにビタミンB_<12>を必要とした。この酵素は、反応生成物のアセトアルデヒドにより不活性化したが、培養液中のアセトアルデヒドの蓄積を抑えるためにはアセトアルデヒドを酢酸へと変換するアルデヒドデヒドロゲナ-ゼの活性を高めることが大切であることがわかった。酢液は、これらの酵素の活性を低下させ、また細胞の増殖を抑制したためpH制御が生分解反応を促すことを演繹した。モノエタノ-ルアミン自身をpH制御用のアルカリ溶液とする新しい培養方法を考案し最適pH値を求めた。モノエタノ-ルアミンの処理産および酢液の生成量はpHが7.5の時に最大となり、処理量1g/(l・h)および酢液生産性0.9g/(l.h)が得られた。
著者
西崎 真也
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

平成14年度においては、次のような事項について研究を推進した。《先進的な型推論アルゴリズムの調査・分析》近年提唱された先進的な型推論アルゴリズムについて、網羅的に調査をおこない、デバッグ作業の支援という観点から検討・分析に取り組んだ。とくに、コンカレント・プログラミングのための型推論や、セキュア・プログラミングのための型推論などを中心にすえた。《デバッグ作業を支援するための型推論の拡張》前項で調査した「先進的な型推論アルゴリズム」に対する検討を基にして、平成13年度の「デバッグ作業を支援するための型推論の開発」の成果の拡張に取り組んだ。《プロトタイプシステムの実装》平成13年度の「デバッグ作業を支援するための型推論の開発」で得られた理論的成果、および、前項により得られた成果について、プロトタイプシステムを実装することを通して、実際的な観点から、有用性について評価をおこない、従来の言語処理系における型推論との比較検討をおこなった。
著者
亀田 幸成
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

分子超励起状態、特に多電子励起状態は、Born-Oppenheimer近似と一電子平均場近似の2つが同時に成り立ちにくくなるという点で、非常に興味深いが、これまで実験によりこの電子状態からの反応を調べた例はほとんどない。本研究課題の可視・紫外蛍光放出断面積測定は、イオン化反応によって埋もれて見えなりやすい超励起状態経由の反応を捉える上で有利な方法である。本年度は、メタン分子について、これまでの測定法をさらに改良することにより、解離断片からの蛍光の放出断面積を相対値で無く絶対値として得ることを可能とした。これにより、超励起状態の電子状態による解離過程の違いについて、定量的に議論することが可能になった。すなわち超励起状態からの中性解離において、低励起エネルギー側に現れた1電子励起状態に比べて、より高い励起エネルギーで見られた2電子励起状態からの解離過程が、多電子励起状態の生成断面積から考えていた以上の寄与を示すことを、Balmer-β蛍光の放出断面積スペクトルのエネルギー依存性から示した。この成果は、J.Phys.B誌に投稿した。このような多電子励起状態の寄与が他の分子においても見られるか興味深い。本年度はさらに、メタンと同じ10電子系列分子としてアンモニアおよび水について、超励起状態経由の中性解離過程を、蛍光断面積測定法により測定した。それぞれの分子の個性を反映して、メタンと全く同じ傾向ではないが、いずれの分子でも多電子励起の寄与が見出された。アンモニアでは、励起エネルギー20-40eVにおいて測定したBalmer-β蛍光の放出断面積スペクトル中に、2つの2電子励起状態由来のピークを観測した。これらの結果は、国内および国際学会において発表された。
著者
木本 忠昭 雀部 晶 山崎 正勝 日野川 静枝 慈道 裕治 加藤 邦興
出版者
東京工業大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1993

戦後の日本科学技術政策は、科学技術庁や科学技術会議などの機関があるものの一貫した整合性ある政策が形成され、もしくは施行されてきたとはいえない。通産省や文部省、あるいは農水省などの各省庁から出されてくる諸政策の集合体が、様々な科学・技術の発展過程に関与してきたにすぎない。当然ながら、それらの省庁間の諸政策には摩擦があり、ある意味での「力」の論理が現実を左右してきた。こうした政策のうち技術にもっとも密接に関与してきたのは通産省であったことは言うまでもない。通産省の技術関連政策は、技術導入や日本企業の国際的競争力の強化において極めて強力で企業を強く保護するものであったことは大方の指摘してきたことではある。集積回路やコンピュータを始め、電子工業に関する技術発展の重要な局面にはこの保護政策が強く作用した。この通産政策はしかし、国際市場における日本製品の競争力強化という点においては有効ではあったものの、技術を原理的に転換したり、あるいは人間社会の基盤的技術としての方向性を独自に作り出す方向には、有効に働いてはこなかった。この政策は、競争力強化という面においてさへ、コンピュータに新技術開発においても有効に作用しないばかりか、ハイビジョン・テレビのように根本的発展を無視した方向に機能し、むしろ問題になってきている。また、先の「もんじゅ」高速増殖炉事故の際問題となった「町工場」(下請け)と先端企業(本社)とを結ぶ社会的技術分業体制の転換・崩壊に見られるような生産体系の社会的構造の変化に対応する形で問題を把握することすら行い得ない現状を生んでいる。公害・環境問題に見られるように科学・技術の発展が社会的問題を惹起するように、しかも社会的弱者の土台の上に展開する構造すら見られる。人間社会が科学技術の発展に寄せる期待は、そのようなものではなかった。科学技術政策として重要な視点は、技術論的技術史的論理を踏まえた政策立案であるべきである。
著者
山崎 正勝
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

この研究の発端となったのは,1994年放映のNHKの番組,「原発導入のシナリオ〜冷戦下の対日原子力戦略〜」である.原子力問題に関する柴田秀利(『戦後マスコミ回遊記』)の役割を,その番組ではじめて知ることができた.初年度は,アイゼンハワー図書館の資料を調査整理することに費やされた.同図書館で得られた重要な資料は,国家安全保障会議の原子力関係文書である.翌年,国立公文書館で国務省関係の資料を収集した.これらの資料から,アメリカ政府はビキニ事件の直後から,日本への原子力の平和利用計画を積極的に展開しようとしていたことを理解することができた.目的は,ビキニ事件で日本国内の反米,原水爆禁止活動を相殺することだった.柴田秀利の活動は,このアメリカの戦略に助けられたのではないかというのが,その時の感想だった.第3年度には,柴田秀利氏が残した文書の調査を行った,日米の資料をつき合わせることで,柴田秀利の活動の背後に,アメリカ政府の対日政策が存在していた事実をあらためて実証的に確認できた.また,柴田の『戦後マスコミ回遊記』で,柴田とアメリカとの橋渡しをしたとされているダニエル・スタンレー・ワトソン氏が,当時,国連軍の指揮官の任務に就いていたジョン・ハルの部下であった事実も明らかにできた.この関連で,柴田秀利氏の手紙から,氏の「毒をもって毒を制する」(原子力{平和利用}という毒によって日本国内の原水爆禁止運動と反米感情という毒を牽制するという意味)発言の時期が,1954年12月末であったことがほぼ確定できた.