著者
渡辺 明照
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要. 課程資格教育センター (ISSN:09169741)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.48-56, 1992
著者
田中 彰吾
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要. 開発工学部 (ISSN:09177612)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.7-14, 2006-03-31

この論文は,近代科学という知の形式の問題性について考察し,オルタナティヴな知のありかを展望しようとするものである.考察の手がかりとして,E・フッサール,中村雄二郎という二人の哲学者の科学批判を取り上げる.両者の議論とも,近代科学の問題点を的確に指摘したものとして比較的よく知られている.中村は,科学という知の営みの特徴を,「普遍性・論理性・客観性」という三つの特徴が結合したことに見出している.近代科学は,観察者の主観から自然を切り離し,自然のうちに内在する因果関係を記述することで,ローカルな場所に限定されない普遍的な知識の体系を築き上げてきたという理解である.フッサールは,近代自然科学の知の典型的な起源をG・ガリレイに見出している.ガリレイの試みには,純粋な幾何学図形を適用して自然現象を測定し,物体の運動をはじめとする現象を代数的に表記したという特徴がある.近代科学の視線は,自然を客観的に測定する試みに始まって,逆に測定された姿(理念として把握された姿)こそ真の自然であるとする自然観をもたらしたとフッサールは指摘する.中村やフッサールの議論から明らかになるのは,近代科学の世界観が,世界を直接に経験している主体の場所を排除したということである.これは,身体によって世界のうちに根づいてい,という私たちの素朴な生の事実が,学問から捨象されてきたことを意味するだろう.「身体で分かる」という知のあり方のなかに,学問の主題として発掘すべき知の領域が広がっているのである.
著者
東 保男 野上 勝憲 大島 信男
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要. 工学部 (ISSN:05636787)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.153-160, 1993
被引用文献数
1

The monodispered ferric oxide (ferric oxyhydrate) particles were synthesized by the hydrolysis of ferric nitrate in an aqueous nitric acid solution at high temperature. The precipitated particles were examined by TEM, XRD, TG-DTA and S_BET. The ferric nitrate solutions of different concentration dissolved in 0.01 mol/l nitric acid were aged for 24hr at 95℃, and the morphologies of the precipitated particles were observed, and it was found that the shapes of the particles precipitated from 0.5,0.2,0.005∿0.1,0.003 and 0.001 mol/l of ferric nitrate solutions were cubic, ellipsodial, fine grain, spherical and irregular, respectively. The cubic particles (by-products : ellipsodial particles) precipitated from the 0.3 mol/l ferric nitrate solution containing 0.05 mol/l nitric acid were goethite, and the ellipsodial particles from 0.03 mol/l solution were hematite. The latter particles were porous, and its specific surface area was calculated as 52∿98m^2/g. The ferric ion concentration of 0.05 mol/l ferric nitrate solution was decreased at one step with aging time, but as for 0.3 mol/l solution the ferric ion concentration was decreased at two steps, and the pH values of the solutions were shifted to acidic. ⊿G_desovl. were calculated as 115 and 135 kJ/mol by Bourne's equation. When the concentration of ferric nitrate was high, the precursors of iron aquacomplex were formed, and then goethite was precipitated by the polymerization of precursors, but in the case of low concentration of ferric nitrate, hematite was obtained immediately.
著者
安森 偉郎
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

半導体デバイスの製作実習は、半導体製造装置やドラフトチャンバ等の設備が完備された環境でないと学生実験実習は困難となる。そこで、これらの半導体製造装置等をほとんど備えていなくても、通常の実験室のような環境において製作実習を実施する方法について研究してきた。その結果,半導体製造装置やフッ酸などを使わないシリコン太陽電池の製作方法を考案した。本研究では製作条件と太陽電池の性能との関係について調べ,最適な製作条件を見出す予定である。また、製作方法を改良し更に簡単にシリコン太陽電池が製作できる方法を確立する。
著者
榎本 知郎 花本 秀子 長戸 康和 松林 清明
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

ヒトを含む霊長類における精子競争の様相を組織学的に探る試みを行った。ゴリラ(N=11)、チンパンジー(11)、オランウータン(6)、ヒト(6)の精巣標本を、オトナの死亡個体から採取した。HE、PAS-ヘマトキシリンで染色したほか、テストステロン免疫染色も行った。その結果、ゴリラは、(1)11個体中6個体で精子形成がみとめられないこと、(2)精子形成が認められる精巣でも、間質が非信に豊富であること、(3)いずれもテストステロン染色によく染まるライディヒ細胞が非常に多く認められた。チンパンジーでは(1)精上皮が非常に厚く、各段階の精子形成細胞が多数あり、成熟期の精子細胞も豊富で、精子形成が非常に活発であること、(2)間質は疎でライディヒ細胞が少ないこと、またオランウータンでは、(1)精子形成は比較的活発であること、(2)間質もかなり豊富であること、(3)精子細胞の先体が大きいこと、などが明らかになった。ゴリラ(N=11)、チンパンジー(N=5)、オランウータン(N=4)、ヒト(N=1)の精巣標本について、精子発生指数(SI)と:減数分裂指数(MI)を算定した。ゴリラ11頭の平均SIは、チンパンジー、オランウータンより有意に低かった(マン-ウィットニー検定)。また、ゴリラの平均MIは、チンパンジー、オランウータンより、有意に低い値を示した。ゴリラは、チンパンジーの40分の1、オランウータンの8分の1の精子しか産生しておらず、またヒトは、ゴリラの6倍、チンパンジーの7分の1の精子を産生していると推定された。
著者
田中 彰吾
出版者
東海大学
雑誌
総合教育センター紀要 (ISSN:13473727)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.1-14, 2008

バウムテストに代表される描画法心理テストでは,解釈のさいに空間象徴と呼ばれる仮説を適用する。この仮説は経験的にはきわめて有効であることが知られているが,その根拠は必ずしも明確にされていない。本稿は,現象学的方法に依拠しつつ,空間象徴を理論的に基礎づけようとするものである。現象学では,われわれが経験しているありのままの空間を「生きられた空間」と呼ぶ。生きられた空間は,身体の姿勢と構造に対応して,上下・前後・左右という三つの方向に分節されている。しかも,われわれは身体を通じて,上と下,前と後,右と左を,それぞれ対照的な意味合いとともに経験している。生きられた空間の意味と空間象徴モデルを照らし合わせると,空間象徴には一定の根拠があることが明らかとなる。とくに,モデルに示された上下の意味については,ほぼ全面的に信頼できる。左右の意味については,従来より限定的に解釈すべきだが,やはり一定の妥当性がある。
著者
富田 誠
出版者
東海大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、高度な専門性を持ち、専門領域を超えたコミュニケーションが難しい理系研究者を対象として、領域横断的な研究を進めるための視覚的対話のワークショップのプログラムを開発することを目的とする。このプログラムは、研究者自らが複雑な研究を図解し、図解されたものを用いて対話し、動かし合いを通して、創造的に連携点を見つけ出すことを特徴とする。研究の実施にあたっては、1.視覚的対話の手法の研究者に対する調査、2.WSの実施と分析による創造的連携の理論モデルの構築とツールの開発。3.プログラムの改善とツールと手法の公開 の3つを中心に進める。
著者
小熊 剛
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

真菌は難治性呼吸器感染症の原因となるが、時に全く病態・治療の異なるアレルギー性気管支肺真菌症などの難治性アレルギー疾患も引き起こす。その原因真菌はアスペルギルスの頻度が最も高いが、一方、真正担子菌でいわゆるキノコの一種であるスエヒロタケなども原因となる。本研究では、実際の疾患の患者喀痰などから培養された真菌を用いて、真菌が難治性アレルギー疾患を引き起こす機序を培養細胞やマウスモデル系を用いて解析する。さらに市販の1200種以上の薬剤セットのスクリーニングによる新規薬剤の創出(ドラックリポジショニング)、環境真菌の無毒化システムの構築、により新たな治療の構築を目指す。
著者
小野 政輝 安田 伸
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

樹脂配糖体は、糖部が部分的にアシル化されたオキシ脂肪酸のオリゴ配糖体で、ヒルガオ科植物に特徴的に含有される。本科植物の、サツマイモ、ハマヒルガオ、ハリアサガオ、ブラジルヤラッパ、ルコウアサガオ、マメアサガオおよびコヒルガオの7種を材料に、樹脂配糖体の研究を行った。その結果、36種の樹脂配糖体を得た。これらのうち、15種の新規樹脂配糖体を含む22種の構造を各種機器分析データならびに化学反応を用いて決定した。また、構造決定した化合物のうち、1種に抗単純ヘルペス1型活性、3種に白血病細胞株(HL-60)に対する細胞傷害活性を見出した。
著者
山口 勝 赤松 豊博 伊藤 達夫 田中 實 松山 登喜夫
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

得られた研究成果は次の通りである。1.空間次元1から5までにおける球内で定義された球対称な非線形自励型波動方程式が可算無限個の時間に関する周期解をもっことを示した。周期はすべて異なる周期で一次独立になっている。証明には、周期とラプラシアンの固有値に関する弱ポアンカレ型のmophantine条件が用いられた。このため、ベッセル関数の零点の漸近展開を行い零点の数論的性質が詳しく研究されている。また、周期を特定するために波動方程式に対応する非線形常微分方程式の解と周期が詳しく解析されている。また、ここで用いられた方法を適用して、空間1次元非線形Klein-Gordon方程式の境界値問題を考察し、可算無限個の時間に関する周期解をもつことを示した。2.吊り下げられた重い弦に、時間に関して準周期的に変化する外力が作用している場合の初期値境界値問題を研究した。空間主要部の微分作用素の固有値と外力の準周期に一般的なDiophantine条件を仮定したとき、すべての解が概周期関数になるというきわめて一般的な結果を得た。解の概周期構造も明らかにされている。Diophantine指数と外力項の微分可能性との関係も明らかにされた。また、上記の結果から境界値問題が外力項と同じ準周期をもつ準周期解をもつことも示された。この方程式に適合した新しい関数空間を設定し、これらの空間の中で固有値問題の解を求め、この解を用いてスペクトル理論を構成しこの問題を解いている。3.空間領域と波動方程式が空間について球対称な場合について、領域が時間について周期的に振動する場合に3次元非線形波動方程式の境界値問題の周期解が存在することを示した。4.多様体上の測地線に関する次の定理を証明した。「定理 Mを球面と同相な実解析的なリーマン計量を持つ多様体とする。もし、Mのガウス曲率がいたるところ正ならば、Mの各点の共役点のなす集合は、1点からなるかまたは、少なくとも4っのカスプをもつ。」
著者
中村 朗
出版者
東海大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

甲幅約210mm、甲長約180mmのタカアシガニ(雄ガニ2尾、雌ガニ3尾)5尾を用い、バイオテレメトリによって、前年度までの行動調査結果の確認と長時間の追跡による生態行動の解明と製作した機器類の性能検証を目的とした。実験は、通算30日にわたって行われた。前年度までの結果を含めて今年度についてまとめると1.移動は、絶え間無く続けられ移動方向は、沿岸に沿って沿岸線と平行しており、移動速度、移動方向はほぼ一定である。2.移動途中にタカアシガニが存在した水深は、70mから430mの範囲にあり、その大部分は、水深200mが中心であった。3.環境温度は、6℃から13℃の範囲であり、水温の変化が行動の変化に影響を与える関係は、見られなかった。4.移動中の環境照度は、0.1から0.01ルクスオーダーであり、水中照度の変化と行動と間に相関は認められなかった。5.移動速度に注目すると、雌雄ともに夕刻6時から朝6時にかけての移動速度が朝6時から夕刻6時までの移動速度に比較して大きく夜行性であることが示唆された。一方、雌雄で比較すると雌の移動速度が、雄の移動速度に比較して1.5から2倍程度大きく雌の移動速度の平均は、おおむね時速5-60mであった。6.タカアシガニを放流してからバイオテレメトリで位置を特定し、その後2週間経過してから移動速度ならびに移動方向を推定して探索すると再度推定位置付近で発見できることが多い。これらの結果は、漁業者の漁獲の際にカニ籠漁が行われると一方向に移動するタカアシガニが籠に捕獲されてしまい、移動方向の後方で操業される一方の底引き漁での漁獲がほとんど無くなる事実と符合する。さらに、漁業者の話によれば底引き漁では、海域によらず親ガニの漁獲の際に小ガニ、稚ガニが混獲される。一方、過去に調査に供したカニの中に抱卵した親ガニも数個体あったことから推定して移動が索餌と産卵を兼ねたものであると考えられた。
著者
田中 彰吾 宮原 克典 浅井 智久 今泉 修 村田 憲郎
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は「自己」について解明することを目的としている。脳神経科学の発展を受けて、2000年ごろから「自己」は科学的研究の対象になり、各種の知見が蓄積されてきた。ただし、従来の主要な研究は、行動実験と脳計測の組み合わせで、自己が成立する最小の条件を探求する「ミニマル・セルフ(最小の自己)」に焦点を当てたものだった。本研究では、実験科学的研究の地平をさらに拡大し、記憶・時間性・物語の次元を含む「ナラティヴ・セルフ(物語的自己)」を対象とする。実験心理学、哲学、精神病理学のアプローチを多角的に組み合わせ、物語的自己の理論モデルを構想する。