著者
細野 敦之
出版者
福島県立医科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

プロポフォールの長期投与によりその麻酔・鎮静作用に対して耐性が生じると示唆されているが、その機序は明らかではない。カンナビノイド受容体はプロポフォールの麻酔・鎮静作用に対する耐性形成にもCB1受容体の変化が関与している可能性がある。本研究は、ラットを用いてプロポフォールの長時間投与によりCB1受容体のmRNA転写物量、タンパク発現量、ならびに受容体の細胞内局在が変化するか否かをそれぞれreal-time PCR法、ウェスタンブロット法、免疫染色法を用いて明らかにすることが目的である。これらによって、プロポフォールの麻酔・鎮静作用に対する耐性形成の機序を明らかにする。
著者
橋本 光広
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

小脳の変性を伴う疾患では、重篤な睡眠障害(不眠症・レム睡眠行動障害・睡眠時無呼吸症候群など)を伴うことが知られている。しかし、現在の基礎研究成果では、「なぜ、小脳が変性すると睡眠障害が起こるのか」を説明することができない。そこで、小脳と睡眠調節を関連付ける脳内の神経回路を解明することによって、小脳が変性すると睡眠障害が起こる神経基盤を明らかにする。このことは、今まで知られていない、小脳の新たな生理機能・神経システムを示すことである。
著者
川田 耕司
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、ガラクトース誘導亜急性老化モデルマウスおよびSAMP1老化モデルマウスにおいて、正常老化マウスで認められる各CD4+T細胞サブセットの割合、特に濾胞ヘルパーT細胞(Tfh)様の表現型を有する細胞の増加が認められた。このTfh様細胞増加は、抗生物質投与による腸内細菌叢の変化によって抑制され、抗生物質投与マウスにおいて腸内優占種となっていたLactobacillus murinusの経口投与によっても同様の抑制効果が認められた。これらの結果からL. murinusが老化に伴い増加するTfh様細胞の分化および数的調節に関与している可能性が示唆された。
著者
中山 祐次郎
出版者
福島県立医科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

日本において、胃癌・大腸癌にかかる患者さんの数は増え続けているが、治療薬の開発や手術方法の向上により、癌の治療後に長期にわたり生存するいわゆる「がんサバイバー」と呼ばれる人が増えている。なかでも就労可能な年齢であるとされる65歳以下のがんサバイバーが多く、癌治療が就労に及ぼす影響が大きな問題となっている。しかし、就労を阻害する因子はいまだ不明な点が多く、対策が十分でない。そこで本研究では、福島県の全てのがん診療連携拠点病院(9病院)の胃癌・大腸癌の患者さんを調査し、どんな因子が就労を阻害するのか、臨床医学的因子と社会的因子の双方について検討する。
著者
長総 義弘 紺野 慎一 菊地 臣一
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

セロトニンとセロトニン拮抗薬投与前後での神経根内血管と血流量の変化を検討した。方法:雑種成犬35頭。A群;非手術群、B群;バルーンのみを挿入したsham群、C群;馬尾に圧迫をかけ、解析時にバルーンを除去した群、D群、E群、F群、G群;馬尾に圧迫をかけ、解析時にバルーンを膨らませたままの群の7群を設定した。解析時にA, B, C, D群にはセロトニン0.5μM、E群、F群はセロトニン投与前にセロトニン受容体拮抗薬(0.5μg/ml、0.05μg/ml)、G群にはセロトニン投与後にセロトニン受容体拮抗薬(0.5μ9/ml)を投与した。デジタルハイスコープを用いて仙椎神経根の血管を記録し、血管径と血流量の計測を行なった。圧迫部位の神経根を採取し組織学的検討を行った。結果:[血管径]AとB群はセロトニン投与後、血管が拡張した。CとD群では、血管が収縮した。EとF群では、血管収縮が抑制された。G群では、血管が収縮は抑制されなかった。[血流量]AとB群でセロトニン投与後に血流量は減少しなかった。CとD群では血流量は減少した。E、F群およびG群では、血流量が増加した。電子顕微鏡学的検討では、馬尾圧迫下の神経根内血管のtight junctionが破壊されていた。考察:セロトニンは圧迫のない神経根内血管は拡張させ、慢性圧迫下の神経根内血管では血管収縮と血流量の減少を引き起こす。5-HT_<2A>受容体拮抗薬は、セロトニンによる慢性圧迫下での神経根内血管収縮反応と血流量の減少を抑制した。5-HT_<2A>受容体拮抗薬は、馬尾・神経根の血流低下により引き起こされる間欠跛行を改善させる可能性がある。今後、腰部脊柱管狭窄の保存療法の1手段として、有効性が期待できる。
著者
斎藤 清 森 努 岩味 健一郎
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

神経線維腫症2型(NF2)は常染色体優性の遺伝性疾患で、神経系に多数の神経鞘腫や髄膜腫が発生するために長期予後も不良である。これまでの調査でも若年発症者では20年で約2/3が死亡しており、国内807名の臨床調査個人票解析で6割は経過が悪化していた。神経鞘腫と髄膜腫は代表的良性腫瘍であるにも関わらず、なぜNF2は予後不良なのか。TCGAデータベースを用いた解析では、核内レセプター、ミトコンドリアと酸化的リン酸化、翻訳制御など、機能予測からDNA修復に関わる癌抑制遺伝子の重要性が指摘されたが、NF2に伴う神経鞘腫と孤発例の神経鞘腫の比較では、遺伝子発現には有意な差はみられなかった。NF2に多発する髄膜腫については、再発例で高頻度にIGF2BP1遺伝子のメチル化が見られたことから、ヒト悪性髄膜腫由来のHKBMM細胞におけるIGF2BP1遺伝子の役割についてCRISPR-Cas9法を用いた遺伝子破壊による低下、PiggyBacトランスポゾン系にtetracycline依存的誘導エレメントを組み込んだ誘導性発現により解析した。IGF2BP1遺伝子破壊により発現が低下した細胞では強い接着を持つ形質が顕著に失われ、細胞の遊走性が増大した。HKBMM細胞はCadherin11(CDH11)を大量に発現し、IGF2BP1遺伝子破壊を行ったHKBMM細胞では細胞間でのCDH11の発現が低下していた。これらの結果より、IGF2BP1遺伝子がRNAのレベルで細胞接着を制御して、生体内での播種を抑制していることが示唆され、易再発性にはカドヘリン依存的な細胞接着を介したIGF2BP1のRNA安定化機構が関わる可能性が示唆された。引き続き、MTAを締結して入手した神経鞘腫細胞株SC4とHE1193と用いて、髄膜腫と同様の手法によりターゲット遺伝子発現を調整して神経鞘腫の分子機序解明を進める。
著者
福島 哲仁
出版者
福島県立医科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

中国北京にある中国予防医学科学院(現中国CDC)との共同研究は、フィールド予定地域において重症急性呼吸器症候群が流行したため、平成15年度から中断している。引き続き問題となった鳥インフルエンザなど新たな感染症発生にも影響を受けたため、中国予防医学科学院との共同研究は、中断のリスクが大きいと判断した。現在は、フィールド地を中国湖北省襄樊市及びその周辺に変更し、長期的に安定して共同研究が可能な武漢大学公衆衛生学院の譚 曉東教授との共同研究に切り替えた。今年度、新たなフィールド地域住民のナイアシン摂取状況とパーキンソン病発生状況に関する予備調査を開始し、襄樊市周辺の農村地域でトウモロコシ生産地域のパーキンソン病有病率が極めて低いという結果を得つつある。この結果をふまえ、現在、襄樊市及びその周辺地域において10万人規模の悉皆調査を計画中であり、ナイアシン低摂取地域において、本当にパーキンソン病有病率が低いのかどうか、さらに詳しい栄養調査によって、パーキンソン病発症に関連した環境要因について引き続き検討していく予定である。この疫学調査と並行して、仮説を裏付けるために実験室レベルの研究も進めており、これまでの疫学的分析と合わせて一定の到達点を整理しレビューとしてまとめた。この結果は、すでに雑誌に掲載されているが、体内に摂取されたナイアシンは、体内でNADH合成に使われるが、分解過程で脳を含め全身の組織でニコチンアミドが遊離し、メチル化が生じる。このメチル化されたニコチンアミドがミトコンドリアの呼吸鎖酵素複合体complex Iを直接的に、あるいはミトコンドリアDNA破壊を介して間接的に傷害し、神経細胞の脱落を招くのではないかと考えており、これを裏付ける結果を得つつある。実験室レベルの研究と中国における悉皆調査をさらに進め、表題にある仮説の検証を行っていきたいと考えている。
著者
小林 和人
出版者
福島県立医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、昆虫フェロモン受容体を利用して、特定のニューロンの活動を興奮性に制御する新規の遺伝学的技術の開発に取り組んだ。チロシン水酸化酵素遺伝子プロモーター制御下に、IR8a/IR84a遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを作成した。スライス電気生理、in vivo電気生理において、青斑核(LC)の活動はフェロモンの添加により亢進し、マイクロダイアリシスにおいて、大脳皮質ノルアドレナリン遊離レベルの増加が誘導された。LC活性化は、味覚嫌悪記憶の想起を増強した。以上の結果から、フェロモン依存性イオンチャネルの発現により、特定ニューロンの活動を興奮性に制御することが可能となった。
著者
中山 仁
出版者
福島県立医科大学
雑誌
福島県立医科大学看護学部紀要 (ISSN:13446975)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-9, 2010-03

本論では, 定義文などで用いられるNP is when/where 節(Frustration is when you can't find the car keys. など), および, 一部のNP is if 節の形式を取る表現(The only way she'd believe it is if she heard it from my lips. など) の用法と意味について, 特に語用論的な観点から考察する. 両者は主語NP と従属節が意味的に等価でないにもかかわらず,be動詞によって結び付けられ, 一見等価な関係を持った文として表わされているという点で共通している.これらの表現に対しては一部の文法家から標準的でないとの判断が下され, その意味で例外的なものと見なされてきた.ここでは, 最近の言語資料や辞書記述などを分析することによって, これらの表現が意外にも多く使用され, その使用には特有の効果があること,また,その解釈には語用論的な推論のプロセスが関与していることを明らかにする.
著者
池田 和彦 竹石 恭知 小川 一英
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

骨髄増殖性腫瘍(MPN)は真性多血症 、本態性血小板血症および原発性骨髄線維症(PMF)を含み、成熟した骨髄系細胞の増殖から骨髄線維化や急性白血病への進展を来すが、その進展機序の多くは不明である。今回の研究によって、MPNの中でも、HMGA2は特にPMFにおいて高発現していること、HMGA2高発現にはlet-7マイクロRNAの低下が関与していることが示唆された。一方、HMGA2発現はDNAメチル化などにも関与し、ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬によって制御されることも判明した。さらに、HMGA2発現が長期間持続することによって無効造血など病態の進展が見られることがマウスの検討で示された。
著者
笠原 諭
出版者
福島県立医科大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

○研究目的:トップレベルのラグビー選手が知能検査の積木課題(空間認識能力を反映する)で高得点を示すことが報告されている(2008.Kasahara)。そこで本研究ではトップレベルのラグビー選手に特徴的な認知能力の脳内基盤を解明する。また各種心理検査も行いアスリートの心理発達面についても調査する。○研究方法:対象はtop群(秋田ノーザンブレッツ選手)20名と、novice群(ラグビー未経験者)20名に対して、知能検査(WAIS-III)、MRI形態画像、fMRI機能画像検査(メンタルローテーション課題など、約3分のセッションを11通り)、心理検査(STAI, Self efficacy, EQ/SQ, NEO-FFI)を行った。○研究成果:多数の項目について検査を行ったため、解析が終了し空間認識能力と関連のある項目に焦点を絞り報告する。top群とnovice群において、知能指数、積木課題の得点、メンタルローテーション課題における正答率、反応時間いずれにおいても有意差は認められなかった。メンタルローテーション課題時の脳活動は、右上頭頂小葉、右背外側後頭皮質、左中側頭回においてtop>noviceで、右内側眼窩前頭皮質ではtop<noviceであった。これらの脳活動の差は、課題施行の方略の違いを反映している可能性があると考えられた。右背外側後頭~頭頂領域の脳活動がtop群で高いことから、top群はより俯瞰的かつ想像的に課題を遂行している可能性が示唆された。またメンタルローテーション課題における正答率と積木課題の得点は、top群、novice群いずれにおいても有意な正の相関を示した。
著者
立柳 聡 松本 誠一 土屋 久 對馬 秀子 松山 義夫 岡本 裕樹 大矢 枝里子 小田 和也
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

島嶼や山間の過疎地に所在する高齢化コミュニティに暮らす人々は、健康を維持、回復する上で、一定の不安や不便を認識しつつ、今なお住み慣れた土地と民俗に象徴される在地の文化に対する愛着、そして、長らく培われてきた人間関係を大切に生きようとする心意が強く、特に保健・医療・福祉の施策を有効に展開するには、在地の文化や人間関係の仕組みとの整合性を積極的に考慮して構想することが重要とみられることが判明した。
著者
丸山 育子 稲垣 美智子
出版者
福島県立医科大学
雑誌
福島県立医科大学看護学部紀要 (ISSN:13446975)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.47-55, 2014-03

本研究の目的は,2型糖尿病患者の療養生活における信頼とは何かを当事者の視点から明らかにすることである.2型糖尿病患者11名に半構成的面接と参加観察を行った.質的帰納的分析の結果,以下のことが明らかとなった.糖尿病患者は【得体の知れない糖尿病という病気】という感覚をもつ.それによって発する【糖尿病をもつ生活の不確さの自覚】をし,糖尿病をもつ生活の不確さに対応するために信頼するという行為をする.信頼する対象は3つで【自分の糖尿病をケアする自分】【療養行為が反応する糖尿病をもつ体】【糖尿病治療専門家で人である医師】である.【糖尿病の治療への構え】によって信頼する対象への信頼の比重が規定されている.そして,その時々の【自分の糖尿病をケアする自分】あるいは【療養行為が反応する糖尿病をもつ体】のとらえ方によって信頼する対象への信頼の比重が相対的に変化していた.
著者
中里 和彦 竹石 恭知 國井 浩行 坂本 信雄
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

急性冠症候群の早期診断に役立つ可能性のあるバイオマーカーとして、ネオプテリン、レクチン様酸化LDL受容体-1(LOX-1)、テネイシンC、COヘモグロビン、アクロレイン、RAGE(receptor for AGE: advanced glycation end products)およびHMGB-1(high mobility group box 1)について、その血中濃度を急性冠症候群患者の採血サンプルと安定狭心症患者のものを比較することで検討した。このうち、LOX-1およびテネイシンCの血中濃度は急性冠症候群患者で有意に上昇しており、その早期診断に役立つ可能性が示された。
著者
坂本 祐子
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,術後せん妄を予測する尺度を開発した。この尺度は,睡眠 2 項目,基本属性 5 項目からなる.尺度項目は,術後患者の睡眠測定と看護師を対象とした質問紙調査から作成した。睡眠に関する項目は「日中の熟睡」「夜間覚醒」,基本属性に関する項目は「脳血管障害の既往」「睡眠剤服用」「向精神薬服用」「介護保険施設入所」「通所サービスに利用」であった.評価は,各項目を「有:1 点」「無:0 点」で行う.我々の評価では,基本属性 1 点以上かつ睡眠項目が 1 点以上になった場合に,せん妄を発症する可能性が高いとみなすことができた.
著者
片山 規央
出版者
福島県立医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

(1)今回の研究では、ラットが社会的活動をしている時の前頭前皮質、視床背内側核の単一ニューロン活動を初めて記録した。更に、フェンサイクリジンがそれらの神経活動を変化させることを示した。(2)腹側被蓋野ニューロンについては、社会的行動と報酬課題をしている時の神経活動を初めて記録し、フェンサイクリジンが社会的活動や報酬課題による神経活動を抑制することを示した。これらの結果から、今回の記録部位の神経活動が変化することが統合失調症の症状発現に関与していることが示唆された。
著者
穴澤 貴行
出版者
福島県立医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

膵島移植において、高い細胞収量と分離過程の細胞障害回避の両立は重要な課題である。ClassI/II比を最適化したcollagenaseにneutral proteaseを併用すると、従来法であるThermolysinの併用より高い収量が得られることが明らかにされた。また、膵島分離過程にClイオン阻害剤の添加、Clイオンフリーとした細胞外溶液の使用を導入して、膵島分離収量やViabilityはClイオンの制御により改善されることが明らかとなった。さらに、本邦での臨床背景にそって、心停止ドナーモデルを構築し、心停止モデルでも同様の結果が得られることを明らかにした。
著者
増田 元香 松田 ひとみ 橋爪 祐美
出版者
福島県立医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、高齢者の睡眠覚醒障害に対する生活方法の提案を意図し、看護の観点である生活リズムの調整、すなわち活動と休息の適正化を目指した看護介入プログラムの開発である。前年度までに、地域在住の活動的な高齢者の日常生活の特徴として、定期的な運動習慣を有するものが多く、日常生活行動は自立し趣味や菜園作りなど活発に活動していること、そのような高齢者の夜間の睡眠の特徴としては、夜間の覚醒回数が1回以上の人がほとんどであったこと、再入眠の状況については個人差がわかった。また飲酒習慣がある高齢者では飲酒量と入眠までの時間と睡眠の質を示す睡眠効率との間に関連があることがわかった。また日内活動の調整の観点から日中の活動状況を分析すると、昼寝習慣の有無や所用時間に個人差がみられた。昼寝時間が夜間の睡眠の質に関連していると考え調べたところ、夜間のトイレ回数が多い人は少ない人に比べ有意に昼寝時間が長いことが明らかになった。これらの成果をふまえて高齢者の睡眠の質を高めるための看護を検討した。そのためには、日中の活動内容を十分に把握し、どのような活動の特徴を持っているか、夜間の睡眠の質に関係する夜間排尿の状況と再入眠の状態、飲酒習慣とその量や主睡眠までの状態を評価することが重要である。さらに昼寝習慣のみならず、昼寝時間の長さ、および夜間の覚醒回数を関連して観察し、さらに夜間の覚醒している理由について、排尿なのか、それ以外なのかを把握し看護する必要があると考えられた。しかしながら、高齢者の睡眠の質に関連する生活習慣や要因の出現には個人差が大きいため、一律化することよりむしろ、個別性の高いケアの必要性が高く、その充実を図ること、すなわちアセスメント項目や生活リズムの調整方法の選択肢の充実のが看護プログラムを開発する上で重要性であると示唆された。