著者
菊池 結花
出版者
秋田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

モダフィニルに効果の性差とCOMTの遺伝子多型による差異に関する報告(Dauvillriers2001,2002)の追試を日本人に行っている。加えて治療のアルゴリズム上では第二選択薬であるリタインについても、同様の検討を行っている。約50例の症例について、遺伝子多型に関しては、COMT(158 Va1/Met)に加えて、orexin2 receptor(1246G>A), clock gene(3111 T>C),BDNF (66 val/met)を検討した。またナルコレプシーは特異的なHLA型を持つことが報告されているために、HLA遺伝子型のDRB1*1501、DQB1*0602の有無についても検討した。orexin2 receptor 1246G>Aについては、32例のうちでG/G,28/32,G/A,4/32であった。Clock 3111 T>Cについては、T/C,10/32,T/T,22/32であった。COMT 158については、Val/Met, 22/32, Va1/Va1, 9/32, Met/Met, 1/32であった。BDNF va166metについては、Val/Met, 23/32, Va1/Va1, 5/32, Met/Met, 4/32であった。HLA typingに関しては、脱力発作のあるナルコレプシーでは、95%の症例でHLA-DRB1*1501、HLA-DQB1*0602が陽性であったが、少数ではそれ以外の症例もみられた。また治療薬の違いについて、HLA typingとモダフィニルvsメチルフェニデートで比較したところ、HLA-DRB1*0901:メチルフェニデート処方患者が有意に多い(p〈0.05)、HLA-DQB1*0301:モダフィニル処方患者が有意に多い(p〈0.05)、HLA-DQB1*0303:メチルフェニデート処方患者が有意に多い(p<0.05)の結果が得られたので、今後は症例数を増やして検討を継続したい。今までのところ、COMT多型に関しては、診断名や処方薬に対する有意な影響は認められてない。
著者
溝井 和夫 笹嶋 寿郎
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

脳神経外科領域において、これまで手術ナビゲーションシステムは脳腫瘍摘出術、定位的脳手術、電極刺入術などに用いられて来たが、その応用範囲は限られている。本研究では、手術ナビゲーションシステムの応用範囲を脳血管外科の分野にも拡大することを目指した。まず、3次元CT血管撮影(3D-CTA)、3次元回転血管撮影(3D-RA)、3次元超音波血管撮影(3D-UA)などの3次元脳血管画像情報を手術ナビゲーションシステムに導入する基礎技術を開発し、ファントム実験や臨床例において位置表示の精度を3次元的に計測した。その結果、位置の誤差は1~2mmであり、十分に臨床使用が可能な精度と考えられた。更に3D-CTA、3D-RA、3D-UAを統合したリアルタイムアップデートの可能な3 次元脳血管画像誘導手術法を開発し、その精度評価を行った。その結果、位置の誤差は2mm程度であり、これも十分に臨床使用が可能な精度と考えられた。
著者
上田 晴彦 林 信太郎 林 良雄 林信 太郎 林良 雄
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

秋田大学教育文化学部内にウェブサーバーを設置し, バーチャル天文館を開設した。そしてその教育効果を調べるために, バーチャル天文館内のデジタルコンテンツを利用した教育実践を県内の小・中学校の教育現場でおこなった。その結果, バーチャル天文館内のデジタルコンテンツは教育的有効性があることが分かった。また特別な知識を持たなくても作成可能な本格的なデジタルコンテンツについての研究も, あわせておこなった。
著者
吉村 昇 長谷川 誠一 鈴木 雅史
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

有機系絶縁材料は,電気的・機械的特性が優れているため、無機系材料に代わって配電機器材として広く使用されている.しかし有機絶縁材料は,トラッキング劣化やトリ-イング劣化などの有機系材料特有の絶縁劣化と絶縁破壊現象を起こすことが知られている.特にトラッキング劣化は,有機絶縁材料の信頼性と寿命特性を検討する上で非常に重要である.一方で,環境問題として公害の悪化,汚染物質の長距離越境輸送などによる酸性雨問題が注目され,これが屋外で使用される有機絶縁材料に及ぼす影響が懸念されている.本研究では以上の点を考慮し,有機絶縁材料の耐トラッキング性に及ぼす酸性雨の影響,劣化過程を総合的に検討し,その劣化機構を解明することを目的とした.その結果,酸性雨は有機絶縁材料の耐トラッキング性を大きく低下させることを示し,酸性雨が汚染物質としての外的要因で作用する場合と,荷電時の電解液として作用する場合の双方の影響とその劣化過程を明らかにした.また,それぞれのパラメータの経時変化を実験的見地から検討し,それぞれの劣化機構を明らかにした.
著者
菅原 透 瀬戸 雅博
出版者
秋田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

マグマの形成メカニズムの理解やガラス材料の製造工程を最適化する上で重要となる,リケイトメルトの熱力学的性質について調べた.本研究ではメルトの起電力を測定してNa2O成分の活量を算出し,SiO_2-Na_2O-CaOの3成分からなるメルトの高温下での熱力学的性質を明らかにした.シリケイトメルトの性質をより精密に理解するために,本研究で得られた熱力学量を化学結合力や原子の配置と関連づけて考察した.
著者
斉藤 崇 長谷川 仁志 鬼平 聡 阿部 豊彦
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1)ラットintermediate conductance型Ca-activated K channel(lmK)の構造配列決定と機能解析:BKチャネルとともに内皮依存性血管過分極因子の標的分子とされるlmKチャネルの心血管病態における発現修飾を検討するため、種々の心血管病態モデルの作成が容易な実験動物であるラットのlmKチャネルのcloningを行った(GenBankへ登録:AF149250)。本遺伝子のcoding regionは1278塩基対で、翻訳蛋白産物は425アミノ酸からなり、ヒトおよびマウスと塩基配列で88%、95%、アミノ酸配列で各々ほぼ98%の相同性を示した。6個の膜貫通部位を有し、S5とS6間には本チャネルの特異的阻害物質とされるcharybdotoxin感受性aspartate residueが、またcarboxy-terminal側には細胞内Ca sensorの役割を担うcalmodulin-binding domainおよびtyrosin phosphorylation consensus sequenceがあり、またpromotor領域にはNFkB、heat shock protein、AP2などでregulationされる部位が存在した。これらの事実から本チャネルの発現調節とその活性化が細胞増殖刺激と密接に関連することが確実となった。さらに、本遺伝子をHEK細胞に発現させ、その細胞電気生理学的特性を解析し、本チャネルは細胞内Ca濃度上昇により活性化され、charybdotoxinにより抑制されるなど、これまで生理学的に予測されていたlmKの特性が再現された。2)心血管病態におけるKCaチャネル発現の変化:ラット心筋梗塞モデルを用いて、KCaチャネルの分子種5種類(BK、lmK、SK1、SK2、SK3)のmessenger RNAの発現をRT-PCR法、RNase Protection Assay法により経時的に追跡し、BKおよびlmKの発現は梗塞後1〜3日をピークとする初期増強と7日以降再度upregulationを示す後期増強相からなる2峰性ピークを形成することを見いだした。また、in situ hybridizationおよびラットlmKに対する特異抗体を用いた免疫組織染色の結果、lmKはmRNAレベルのみならず、翻訳蛋白発現のレベルでもその発現が亢進することが確認された。さらに組織内局在について検討すると、lmKは対照時には主として血管内皮細胞および血管平滑筋に局在するが、梗塞心では単核白血球、繊維芽細胞などの浸潤細胞にも著明な発現が見られ、初期上昇相はこれら細胞浸潤により特徴づけられる炎症反応に、後期上昇相は梗塞巣内の血管リモデリングに一致することが明らかとなった。この所見は、これまで生理学的、薬理学的に示されてきた病態での過分極-弛緩連関の代償性増強現象をKCa発現修飾の面から説明するはじめての所見と考えられる。また、以上のlmK発現の増強は、アンギオテンシンllのl型受容体拮抗薬の投与によりほぼ完全に抑制されることなどが明らかとなり、lmK発現調節の細胞内情報伝達系にMEK/ERK系の関与が示唆された。さらに、NO生合成長期抑制モデルにおいても同様なlmK発現の増強を見いだしており、lmKは心血管病態時における血管リモデリングの共通なkey moleculeである可能性が高まってきた。これらの成果は、平成13年3月31日よりアメリカ合衆国フロリダ州オーランドで開催されるExperimental Biology 2001におけるアメリカ生理学会主催の血管系カリウムチャネルに関するシンポジウムにおいて招待講演として発表するとともに、Journal of Clinical and Experimental Pharmacology and Physiologyに公表予定である。
著者
阿部 豊彦 鬼平 聡 斉藤 崇 三浦 傅
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

これまで冠動脈の短時間閉塞・再灌流後に心臓交感神経に一過性機能障害を生じ、これにはadenosineなど虚血性代謝因子が重要であること、神経成長因子(NGF)や副腎皮質ホルモンが保護作用を有することを報告してきた。中枢神経系においてはtumor necrosis factor-α(TNF-α)の神経保護作用が報告されているが、心臓交感神経においては不明であり、本研究ではこの点に関して検討をおこなった。成犬を麻酔、開胸、両側迷走神経を切断、propranorolを投与。suction-cup式のDoppler probe装着により左前下降枝(LAD)と回旋枝の冠動脈血流速度を測定し、両側胸部交感神経を電気刺激時の交感神経性冠動脈収縮反応を冠動脈抵抗の変化率(%ΔCVR)を算出することにより評価した。LAD内に生食(対照群1、n=5)ないし抗TNF-α250pg/kg/min(TNF-α群、n=6)を投与下に15分同枝閉塞・再灌流を行った。また、生食(対照群2、n=5)ないしTNF-α抗体60nl/kg/min(抗TNF-α抗体群,n=6)を投与下に7分同枝閉塞・再灌流を施行した。再灌流前後のSS及びNE時%ΔCVRの推移を評価した。1) 対照群1ではLADの15分閉塞・再灌流後、同枝の%ΔCVRが有意に減弱したが、TNF-α群では保持された。2) 対照群2ではLADの7分閉塞・再灌流前後に%ΔCVRの変化を認めなかったが、抗TNF-α抗体群では有意に低下した。各群ともNEに対する%ΔCVRは不変だった。3) 左室壁長変化率(%SL)は15分冠閉塞中、両群とも同等に低下したが、再灌流後、TNF-α群で速やかな回復を示した。また、7分冠閉塞にて低下した%SLは対照群2に比し、抗TNF-α抗体群で遷延した。以上より、TNF-αは虚血性の心臓交感神経および心筋の機能障害に対して保護作用を有することが示された。
著者
佐藤 稔 日高 水穂
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学教育文化学部研究紀要. 人文科学・社会科学 (ISSN:1348527X)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.9-17, 1999-03

This is a preliminary report of the language change among the people in Ogata village in Akita prefecture.Ogata village was created by land reclamation in 1966 as a national project, and its residents were from all overJapan (About half are from Akita prefecture, and the other half are from other areas of Japan. ) Since the people of the second generation are now in the leading roles of the community, the community has developedtheir own variety of Japanese. In this short article, we present an outline of the community and report the resultsof the preliminary survey.
著者
吉岡 尚文 権守 邦夫
出版者
秋田大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

様々なアナフィラキシーショックのうち、抗原・抗体反応に起因するショックは例えば、IgA欠損症や他の血漿蛋白欠損患者への輸血でしばしば経験されることである。本研究はこれに類似するモデルをin vitroで作成し、肺動脈由来内皮細胞の挙動を検索することにより、その病態の解明と治療への応用を検討することを目的とした研究である。平成14年度の実験では、ヒト肺動脈由来の市販内皮細胞を培養し、コンフルエントになった時点で、抗ヒトハプトグロビン(Hp)を加えインキュベートし、次いで抗原液(ヒトHp)を添加後、細胞培養上清中に放出されると予想される様々な物質を経時的に測定した。その結果、ICAM-1とVCAM-1に放出量の変化が認められたことから、平成15年度は抗原や抗体の容量依存性の検討、さらに培養液中に白血球細胞やTNFαを加え、炎症反応を促進させる系を作成した。この系を用い、ICAM-1とVCAM-1の濃度を1時間ごとに6時間迄、12時間ごとに48時間迄経時的に測定し、抗原や抗体の量、白血球細胞や、TNFαの影響を検討したが、再現性のあるデーターは得られなかった。むしろ、細胞培養液に異物(ある種のヒト血清蛋白や抗体であるウサギ血清)を加えることで、細胞は刺激されてICAM-1とVCAM-1のような物資を放出したのではないかということが示唆される結果を得た。肺動脈の内皮細胞は何らかの物質を放出している可能性が示唆されたが、今回の研究からはアナフィラキシーショックと関連ある重要因子の特定や内皮細胞の確定的反応を確認することは困難であった。
著者
樋口 重和
出版者
秋田大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

冬季に日照量の少ない東北地方の積雪は光の反射や拡散機能を持っており,それによる光曝露量の増加は,冬季の生体リズムの遅れを改善する効果が期待できる.本研究は冬季の積雪の前後で,朝の光曝露量と生体リズムの位相の変化を調べることを目的とした.実験は日照量が少ないことで知られる秋田県で実施し,被験者はインフォームドコンセントを得た大学生13名(22.3±1.3歳)であった.積雪前の実験は平成16年12月に実施した.被験者は連続する17日間,光曝露量を含むアクチグラフの記録を行い,10日目と17日目に人工気象室で生体リズムの位相を調べるための実験に参加した.生体リズムの指標には,暗条件下でメラトニンの分泌が始まる時刻とした.実験期間中,被験者は普段の睡眠覚醒習慣に従って規則的な生活をおくり,午前9時までに通学するように指示が与えられた.積雪後の実験は平成17年1月に実施し,積雪前と同じ実験手順で行った.目に入ってくる明るさ(目の位置での鉛直面照度)が積雪によってどの程度違うかを同じ天候状態で比較したところ,積雪無しに比べて積雪有りでは約2倍の明るさになることが分かった.被験者が実際に早朝に曝露された明るさも積雪前よりも積雪後に有意に高かった.しかし,生体リズムの指標であるメラトニンの分泌開始時刻には積雪の前後で有意な差は認められなかった.本研究より,積雪後は光の反射や拡散によって光曝露量が増加することが明らかとなったが,今回用いた実験条件では,積雪による光曝露量の増加は生体リズムに影響を及ぼさなかった.この原因として,被験者が自然光に曝露される時間が通学時に限られており,曝露時間が短かったことがあげられる.今後,長い時間を屋外で過ごすような条件を想定して検討する必要があると思われる.
著者
西沢 理 菅谷 公男 能登 宏光
出版者
秋田大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

脊髄損傷群での膀胱重量と体重の変動についてみると,24頭の対象として,生後10週に胸腰椎移行部での脊髄損傷を作成し,その後1週毎に,4週間の生後14週までの11,12,13,14週で,各々,5,6,9,4頭において測定した膀胱重量と体重は,それぞれ153.7±51.7,241.2±112.7,176.6±136.6,544.0±213.3mgと133.3±7.5,140.0±8.2,158.9±16.6,125.0±16.6gであり,膀胱重量の増加は著明であった。コントロ-ル群での膀胱重量と体重の変動についてみると,50頭を対象として,10週から,1週毎に,4週間の14週まで各10頭において測定した膀胱重量と体重はそれぞれ,60.6±5.6,43.9±6.2,42.2±6.0,41.5±6.5,40.5±5.9mgと160.0±4.5,162.0±7.5,166.0±8.0,161.0±9.4,171.0±7.0gであり,膀胱重量には変化がなかった。膀胱NGFの変動についてみると,コントロ-ル群では生後11,12,13,14週で,それぞれ,326.9,478.5,85.5,65.7ng/g組織重量であり,脊髄損傷群では脊髄損傷作成後1,2,3,4週で,それぞれ,292.5,392.4,280.3,708.2ng/g組織重量であった。脊損後には脊髄ショックに続発した尿閉となるが,排尿が自立する1週間後以降から膀胱からのNGFが増加することを予期したが,コントロ-ル群と比較して,脊損群のNGF値に変化が生じたと断定することはできなかった。膀胱重量は尿道閉塞ラットと同様に脊損後に増加したが,膀胱NGFには変化がないことから,脊損と尿道閉塞とでは異なる機序で,膀胱重量の増加が起こるものと思われた。脊損時には,損傷部位のレベルにより,仙髄排尿反射中枢の活動が亢進する場合と低下する場合があり,胸腰椎移行部での脊髄横断では仙髄排尿中枢自体が損傷を受け,その活動性が低下していた可能性も高い。
著者
藤 千恵
出版者
秋田大学
雑誌
秋大地理 (ISSN:02865785)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.33-36, 2004-03-23
著者
宮腰 宏 今井 忠男 佐々木 久郎
出版者
秋田大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

地下空間は,地上の空間に比較し,その潜在的特性である恒温性,放射線遮断性,耐振動性などの特徴を有する。しかしながら,地上との換気経路が限定されるため,その閉鎖性が欠点として挙げられ,災害や火災などの事故対策の十分な検討を行う必要がある。これらのことから,地下空間の通気および換気状況の把握は,安全工学上重要と考えられ,地下空間の形状・容積等と換気係数との関係は空間の基礎設計資料となりうるものであり,数値計算による予測解析における妥当性の判定資料としても必要である。本研究においては,地下風道ネットワークに接して配置され,片側換気状態にある地下空間の漏洩ガスの対流拡散状況をモデル実験によって明らかにし,数値差分法による予測解析モデルの妥当性を調べた。その結果,換気流と密度の異なったメタンなどの可燃性ガスあるいは有害ガスが漏洩した状況下での,空間の形状,容積を種々に変化させ,総合的な地下空間内のレイヤ形成,3次元ガス対流拡散現象および換気特性を実験的に明らかにした。また,地下空間内の換気流量,換気回数,換気流の特性,ガス濃度の変動・周波数特性,非定常的なガスの漏洩に対する応答特性を調べ,地下空間の換気制御に必要なデータを総合的に示した。また、差分法による漏洩ガス対流拡散の数値シミュレーションを実施し,実験値との比較検討を行った結果,正方形に近い空間形状は比較的実験に近い結果となるが,浅い場合や深い空間形状の複雑なガス対流拡散状況に対しての相違が大きいことがわかった。
著者
赤星 軌征
出版者
秋田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

硫黄を含むメチオニンをシステインに代謝する経路の2酵素Cystathionine β-synthase (CBS)とcystathionine γ-lyase (CSE)の欠損は,前者は重篤な病態だが,後者は顕著な症状はない。マウスでは両酵素は肝臓や腎近位尿細管に強く発現するが,本件は不明点の多い腎での生理的役割を探索した。CBS欠損マウスでは毒性の高いメチオニンの尿中排泄の効率が低いのに対し,CSE欠損マウスではCBSによる代謝物の排泄効率が高く,両者の病態差に関わると考えられた。また一見正常なCSE欠損マウスでも妊娠高血圧腎症様の病態があった。両酵素は血管弛緩因子の硫化水素を産生するが,腎内の硫化水素は両酵素の発現部位に高濃度に存在しており,病態への関与が考えられた。
著者
本橋 豊 金子 善博 三好 美生 佐々木 久長
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

秋田県H町に在住する30歳以上の地域住民2287名を対象に、基本的属性、抑うつ度(自己評価うつ病尺度)、家族や地域の支援度、家族に関連する精神的ストレス、ストレス対処行動、心身の自覚的健康度、メンタルヘルスリテラシー(うつ病のモデル的症例を呈示し、病気の知識と対処方法を尋ねる)、医療への近接度、閉じこもり傾向、死にたいと思った経験の有無、自殺に関する態度、周囲の自殺者の有無、心の健康づくりに関する要望等からなる包括的な質問票を無記名・自記式にて実施した。うつ病について的確な知識を持っている人の割合は若い人ほど高く、60歳を境にその割合が低下することが示された。以上より、メンタルヘルスリテラシーが不足しているのは、中高年であり、中高年に対するメンタルヘルスに関する健康教育に必要性が明らかになった。住民のメンタルヘルスデータをもとに、秋田県H町のメンタルヘルスの状態を地理情報システムを用いて解析し、抑うつ尺度得点やその関連要因の地理的分布を示した。抑うつ尺度得点やストレス度には地理的格差が認められ、地域保健対策を立案する上での優先順因の決定に地理情報の提供が効果的であった。地域保健担当者はこのような地理情報をもとに効果的な健康教育を推進することが可能になると考えられた。また、平成18年度より自殺予防の地域介入を開始する予定の能代市の地域自殺リスクを地理情報システムを用いて事前評価した。地域の自殺予防対策の介入を行う際に、どの地区に重点的な対策を講じるべきかを地理情報システムを活用した事前リスク評価により科学的に考慮することができることが判明した。本研究により、地域のメンタルヘルスリテラシーを測定するための標準化された手法が得られ、さらに地理情報システムを利用した統合的な地域診断システムが確立した。本研究の成果は地域の健康政策への応用が期待される。
著者
成田 雅樹 大熊 徹 長崎 秀昭 藤井 知弘
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

活用型授業を「既習事項明示型」「活用状況設定型」「活用場面付加型」「授業内活用確認型」「関連学習型」の5類型に整理して実践事例を分析した結果、活用実行型が多く活用想定型が少ないことを明らかにした。既習事項明示型とは当該単元または当該授業の学習において活用される既習事項を学習者に提示して行うものである。活用状況設定型とは実際には活用まで行わないが仮に当該の学習内容を活用するとしたらどのような状況が考えられるか学習者に提示するものである。活用場面付加型とは実際に単元の終末の時間に学習内容を活用する活動を行うものである。これを単位時間内に行うものが授業内活用確認型である。関連学習型はたとえば読解学習で習得した文章構成に関する知識を自らの表現活動で使用すると言った「読み書き関連学習」などである。さて、分析の結果他にも教科内活用型が多く、他教科活用型や実生活活用型が少ないことが明らかになった。さらに、技能活用型が単元をまたぐ長いスパンに見られ、内容活用型が単元内などの短いスパンに見られることも明らかにした。これは、いわゆる活用型授業を実践する際の現場の指針になる基礎情報であり、言語活動の充実のあり方に対する示唆でもある。
著者
工藤 俊輔 高橋 恵一 那波 美穂子 安田 智子
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13478664)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.1-8, 2008-10

本研究の目的は, A養護学校における理学療法士・作業療法士(以下PT・OT と略) 導入の効果を明らかにし, 今後の連携を円滑に進めるための要因を探ることである. 53人の教員を対象にアンケートによる意識調査を行い, 著者等の実践に基づく考察を加えた. 52人(回収率98%) の教員から回答があり, (1) PT・OT に対する期待としてポジショニング指導と摂食指導についてのニードが最も多かった. (2) 教職員の役割については, 自立活動の取り組みが1位を占めていた. (3) 養護学校の課題としては表現できる力を養うという項目が1位を占めていた. (4) PT・OT が4月より導入され, 役だったかどうかという設問に対しては49人(94%) が役立ったという評価をしていた. しかも39人(75%) からのコメントがあった. 結論としてPT・OT と教員間の連携が促され, この12ヶ月間の活動は全体として一定の評価ができるものと考えた.
著者
南條 博 小林実 貴夫 高橋 正人 増田 弘毅 川村 公一 高橋 正人
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

骨髄より動員された内皮幹細胞と樹状突起細胞が、全身諸臓器の血管の活性化に直接関与することを成体で明らかにする目的で、本研究を遂行した。骨髄キメラマウス4ヶ月のトレッドミル負荷1週-4週後の全身諸臓器を詳細に観察した。得られた主な知見は以下の通りである。1)骨髄由来樹状突起細胞が多く出現している部位とまったく見られない部位に分かれているのが特徴で、一様の分布ではない。2)骨髄由来樹状細胞は肋間動脈開口部で多く見られる。3)骨髄由来樹状細胞の出現頻度はトレーニングマウスとトレーニングしないマウスで有意な差はみられない。4)骨髄由来樹状細胞の出現頻度はトレーニング1~4週で差はみられない。5)骨髄由来内皮細胞は上行大動脈起始部にみられる。6)心臓毛細血管では多数の骨髄由来内皮細胞がみられる。7)全身諸臓器の動脈、静脈、リンパ管に骨髄由来内皮細胞がみられる。さらに、週齢による骨髄由来内皮幹細胞と樹状突起細胞の動態を検討し、以下のことが判明した。8)骨髄由来樹状細胞は週齢とともに増加し、大動脈弓から下行胸部大動脈、72週では腹部大動脈に至る大動脈ほぼ全体に分布する。最終的に動脈硬化のない老齢マウスにおいて、骨髄由来樹状細胞が大動脈内膜全体に分布するという世界で初の知見を病理形態学的に証明した。