著者
藤田 浩樹 山田 祐一郎
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

GLP-1とその分解酵素DPP-4の腎臓内シグナル伝達系とこれらをターゲットとした糖尿病性腎症に対する治療の可能性について検討した。進行性糖尿病性腎症マウスモデルKK/Ta-Akitaを用いた研究から、DPP-4阻害によりその基質の一つであるSDF-1αの発現が腎臓の糸球体上皮細胞と遠位ネフロンで増加すること、この発現増加は尿中ナトリウム排泄を促進し糸球体高血圧の改善をもたらすこと、SDF-1αからのシグナル遮断による腎保護効果の消失が示された。DPP-4阻害は腎臓内での活性型GLP-1のレベルを高めることに加え、SDF-1αの発現増加を惹起することで腎保護に貢献する可能性が示唆された。
著者
武田 篤
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学教育文化学部研究紀要. 教育科学 (ISSN:13485288)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.45-50, 2005-03-31

A questionnaire survey was conducted on 17 adults using cochlear implants and the following results were obtained. 1) Duration of use is whole day excluding those working in noisy workplaces. Place of use include homes, hospitals, banks, outdoors such as when walking on streets, workplaces, etc. 2) One to one dialogue can be conducted sufficiently with the use of lipreading, but there are limits to dialogue between multiple parties and the place of noise. 3) All replied that sound quality of cochlear implant differs from before deafness. Eleven replied that different from before deafness but no discomfort, while six replied considerably different from before deafness and discomfort. 4) Cochlear implant enables not only users to hear what other are saying, but also recognition of environment sounds such as cars driving and birds chirping, providing sense of security and enrich to users. 5) All users replied that they were glad they had undergone surgery for cochlear implant. Compared to before cochlear implant surgery, users participated in conversations more actively as well as in gatherings, enhancing the social activities and quality of life for users of cochlear implant.

1 0 0 0 漢末州牧考

著者
石井 仁
出版者
秋田大学
雑誌
秋大史学 (ISSN:0386894X)
巻号頁・発行日
no.38, pp.p1-28, 1992-03
著者
池本 敦
出版者
秋田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

必須脂肪酸にはリノール酸やアラキドン酸に代表されるn-6系列及びα-リノレン酸やEPA・DHAなどのn-3系列の2つが存在する。アラキドン酸からは様々な生理活性を持つホルモン様物質が産生されるが、その一つである2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)は、脳内でカンナビノイド受容体(CB1)を活性化する内在性リガンドであることが報告され、CB1を刺激すると食欲が亢進することが報告されていた。この過程に及ぼす食事必須脂肪酸バランスの影響を調べたところ、n-6/n-3比が高いと脳内2-AG含量が増加し、ラットの摂食行動が促進されることが分かった。2-AGの作用に対して拮抗抑制的に作用するCB1アンタゴニストであるSR141716Aを投与すると、摂食行動の亢進は抑制された。また、脂肪細胞の分化に及ぼす多価不飽和脂肪酸に影響を見たところ、飽和・一価不飽和脂肪酸及びn-6系列多価不飽和脂肪酸は分化を促進した。一方で、n-3系列多価不飽和脂肪酸のDHAは脂肪細胞の分化を顕著に抑制することが示された。マウスを用いた動物実験でも、飽和・一価不飽和脂肪酸やn-6系列多価不飽和脂肪酸を多く含有した動物性脂肪や植物油を摂取した場合と比較して、n-3系列多価不飽和脂肪酸であるDHAを豊富に含有する魚油を与えた場合には、脂肪組織の重量が低い値を示した。以上のように、n-3系列脂肪酸を多く摂取し、食事必須脂肪酸のn-6/n-3比を低下させると、食欲を抑制するのと同時に脂肪細胞の分化や脂肪蓄積を抑制することで、肥満症の予防に有効であることが分かった。このことは人を対象とした食事調査でも確認され、飽和・一価不飽和脂肪酸やn-6系列多価不飽和脂肪酸を多く含有した動物性脂肪・植物油や肉類を多く摂取する食習慣を持つ人は、魚介類を多く摂取する人と比較して肥満度が高い傾向が観察された。
著者
清水 徹男
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

髄液ヒスタミン値が過眠症状に依存性に低値であることが明らかになった。コントロ-ルに比べて、HLA-DR2陽性で脱力発作のあるオレキシンが低値のナルコレプシ-だけではなく、オレキシン値は正常である特発性過眠症、DR2 陰性や脱力発作のないナルコレプシ-でもヒスタミン値は有意に低値であった。しかしながら、リタリン等の中枢神経刺激薬を内服している症例では、対照群との有意差は認められなかった。ナルコレプシ-ではリタリンの内服の有無にて、オレキシン値に変化はないが、ヒスタミン値に関しては、高値になる傾向がみられた。ヒスタミン値は、睡眠時無呼吸症では対照群と同等な値であった。
著者
塚田 三香子
出版者
秋田大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

我々は長期間食餌を制限したマウスにおいては、体温の日周変動が見られるようになり、夜間から明け方にかけて体温が37℃から室温(23℃)付近にまで下降し、次の夕方までに再び37℃付近に上昇するという、いわゆる日周性仮性冬眠(daily forpor)状態にあることを見出した。これは十分にカロリーを与えられているマウスには決して見られない事象であり、エネルギー制限という環境下で自発的に獲得された適応形質であると考えられる。この適応形態を考える上で、初めに注目されるのは、低体温における膜電位の脱分極化による細胞内へのCa^<2+>流入の毒性制御の問題である。この機序を考える一端として我々はエネルギー制限マウスと非制限マウスにおける数種の臓器中におけるCa^<2+>-ATPaseの活性を測定し、次の知見を得た。実験にはコントロールマウスとして95kcal/週、エネルギー制限マウスとして48kcal/週の食餌を与えているマウスを用いた。脳・唾液腺でのCa^<2+>-ATPase活性はコントロールマウスに比し有意に低い。一方、肝臓、脾臓、腎臓におけるCa^<2+>-ATPase活性はコントロールマウス、エネルギー制限マウス間で有意差はなかった。このことから低体温下での細胞内Ca^<2+>濃度ホスメスタシス維持のために、Ca^<2+>-ATPase活性の上昇という機序は採用されていないということが明らかにされ、Ca^<2+>の膜透過性の変化、細胞内器官へのCa^<2+>蓄積の変化に今後、着目すべきことが示唆された。
著者
和田 千鶴 豊島 至
出版者
秋田大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

スギヒラタケ関連脳症は,スギヒラタケ摂食後意識障害,痙攣をきたし,脳画像所見で両側基底核病変を認める致死的な疾患である。これらは中国で流行したサトウキビカビ脳症にきわめて類似している。われわれはサトウキビカビ脳症の原因物質である3-ニトロプロピオン酸(3-NPA)のスギヒラタケ関連脳症への関与を検討した。その結果、患者血清,髄液,スギヒラタケに3-NPAの有意な高値を認めず,また,付着真菌のいずれも3-NPAを産生しなかった。両側基底核病変を起こす可能性のある毒素は3-NPAの他にも数多く存在し,いずれもミトコンドリア毒素であり,基底核の酸化ストレス脆弱性に関連すると考えられている。ヒトの中毒例がない物質でも,実験動物で両側基底核病変が証明されており,今後,原因物質として検討に値する。一方,スギヒラタケは従来無毒のキノコであり、スギヒラタケ関連脳症はサトウキビカビ脳症と比べると,摂食から神経症状出現までの潜伏期が日単位と長く,不定である。摂食したスギヒラタケの量と重症度が相関しない。サトウキビカビ脳症と異なり,発熱,髄液細胞数増多を伴う炎症反応が強い症例も多いなど従来の中毒疾患として説明できない事項が多い。また、脳症患者は腎不全を高率に合併した。腎不全には種々の代謝異常、易感染性・免疫異常が現れるとされている。これらの異常が脳症発症に関与した可能性が考えられる。しかし、スギヒラタケを摂食した腎不全患者のうち、脳症発症者は2〜3%に過ぎないという事実から、脳症発症者個体としての免疫応答の異常や毒性物質代謝酵素活性低下についての検討も必要と考える。
著者
和泉 浩
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学教育文化学部研究紀要. 人文科学・社会科学 (ISSN:1348527X)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.31-60, 2013-03-31

The purpose of this paper is to consider the relations between the reproduction of modern rationalized social system and its resistant, differentiating or dissimilating components through two famous authors' two famous works of the same period. Michel de Certeau's L'invention du quotidian: Arts de faire (published in 1980, English title: "the Practice of Everyday Life") and Paul Willis's Learning to Labour: How Working Class Kids get Working Class Jobs (published in 1977). In L'invention du quotidian de Certeau tries to delineate the 'creativity' of 'users' or consumers in everyday practice, who are 'commonly assumed to be passive and guided by established rules.' According to de Certeau, 'users' not only consume various products – from commodity to urban space – of modern rationalized and expansionistic technocracy and capitalism, but also bricolent(bricolage) those products in their practices of everyday life where users dissimilate or transgress the control, 'discipline' and plans of producers and technocrats, in which de Certeau finds out the 'creativity' of 'users' and the resistant moments with in the existing systems of dominance relationships of 'elite' and 'popular culture.' In Learning to Labour , Willis tries to identify the resistant moments in working class culture, especially 'failed' working class kids and their counter-school culture which oppose to authorities of school, teachers and academic carrier-based pseudo egalitarian institutions and society. He expounds on the reproductive processes of 'working class kids get working class jobs, because of various 'limitations' which distort the 'penetrations' of working class culture which are, he thinks, 'potential materials…for a thoroughly critical analysis of society and political action for the creation of alternatives.' Willis situates 'creativity' of working class culture in their collective level of the 'penetrations' which exist like Freudian 'unconsciousness' and cannot be seized in utterance or conscious level of working class people, while de Certeau finds the creativity of resistance in everyday surface level practices like speaking, walking, cooking. This paper has scrutinized the differences between de Certeau,'s and Willis's ideas of resistant alternative 'creativity' in everyday practices and popular culture, and their positions within the 'reproduction' of modern capitalist class society.
著者
高村 竜平
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本年度は、1940年代の調査対象地域に関する文献調査を中心に行った。とくに朝鮮大学校図書館に所蔵されている、「布施辰治弁護関係資料」から、大館市周辺で在日朝鮮人が密造酒にかかわり起訴された裁判の弁護記録を入手し、現在解読中である。本資料には取り調べや裁判のやりとりだけでなく、来日した経緯や生活の状況に関する聞き取り調査の記録もあり、多方面から分析可能なものであることが確認できた。また、在日朝鮮人にかぎらず戦後のこの地域の歴史をとくに鉱山業の興廃を通じて調査し、そのうち小坂町の事例を中心として2月に発行した中田英樹との共編著『復興に抗する』(有志舎)のなかの第5章「被災地ならざる被災地」として収録し、総合研究大学院大学の公開講演会での発表もおこなった。さらに、大館市の事例を中心とした論考は現在印刷中であり、平成30年度内に発行される予定である。ただし、筆者自身の体調不良や、調査対象者の体調不良などが重なり、インタビュー調査はうまくいっていない。来年度以降の研究計画の変更が必要な状態で、文献調査を中心とした研究とする予定である。
著者
長澤 光雄
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学教育文化学部教育実践研究紀要 (ISSN:13449214)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.43-51, 2002-03

スポーツや体育関連資料をもとにして,体育の学習内容としてのターゲット型ボールゲームに関し検討をした.そして,ボールゲームを適切に4類型化すると,ゴール型,ネット型,ベース型, ターゲット型となった.ターゲット型のゲーム理念を考察すると,自己決定の重要性,ボ-ル等を送り出す正確性,そして数を競うことと考えられる. このボールゲームの特性には,比較的軽運動であり,結果に対する洞察力が必要とされ,セルフジャッジが可能で,安全性が高いことがあげられる.このように4類型化した場合,体育の学習内容には,ターゲット型ボ-ルゲームが含まれていないことになる.ターゲット型のゲーム理念と運動特性を踏まえると,学習内容として価値があることが明らかとなった.ただし,比較的軽い運動が主体であることから,体力向上効果は直接には期待できない.
著者
伊藤 慎吾 高崎 裕治
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学教育文化学部研究紀要. 人文科学・社会科学自然科学 (ISSN:1348527X)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.83-87, 2015-03-01

To assess physical load of doubles soft tennis match, heart rate was measured in male college students. Sixteen softtennis players belonging to the college sports club, aged 19 to 22 years, took part in the measurement. They were at a levelof competing for the top of local tournaments. A bracelet type receiver was mounted on the wrist of the subject and theheart rate sensor was attached to the chest using the strap as a transmitter. A total of 13 matches were held in the outdoorcourt through September to October. As a result, exercise intensity during the doubles soft tennis match was between 140and 150 beats/min with an average heart rate, corresponding to approximately 60% of Vo2max. Soft tennis was consideredto be a little stronger in exercise intensity than tennis played with a hard ball. Multiple times of the matches showed thatthere was no difference in exercise intensity between forward and back players. Comparing service and return games, it wasfound that significantly higher heart rate values during service than in return games, especially the trend was clear in backplayers. Heart rate during tennis match would be also somewhat influenced by other conditions such as competition level,tactics, sex, and age.
著者
工藤 卓哉
出版者
秋田大学
雑誌
秋田医学 (ISSN:03866106)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.25-36, 2001
参考文献数
25
被引用文献数
1
著者
渡部 育子 坪野谷 和樹 三森 朋恵
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学教育文化学部教育実践研究紀要 (ISSN:13449214)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.99-108, 2009-05-30

本稿は歴史における体験学習をめぐる考察と,中学校社会科の歴史分野における教材開発について述べるものである.歴史の体験では,過去の時代を体験するという,現実には不可能なことを"体験"することになる.不可能を可能にするためには,その時代に関する総合的な知識を習得していることが不可欠の要素となる.また,体験学習では,農山漁村体験や社会体験のように,場の設定が必要である.歴史における体験学習の場としては遺跡があげられる.本稿で紹介する教材では,秋田県大仙市の払田柵跡を体験学習の場に設定した.地域学習の意義と体験学習の意義を高めるために,ゲーミング・シミュレーションの手法を用いた.わが国の律令国家が成熟する9世紀初頭の時期の時代の全体像を見据えながら,秋田という日本列島を構成する一地域の人々の生活について,ゲームの世界で体験させる試みである.
著者
長岡 真希子 山路 真佐子 小笠原 サキ子 宮越 不二子 池田 信子 柳屋 道子
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13478664)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.37-47, 2004-03-31
被引用文献数
1

ヒューマン・サービスに携わる初年次学生の体験学習として,本看護学専攻1年次70名(女子62名,男子8名)に対象に,入学して6ヶ月経過後の9月に,身体障害及び知的障害者施設で3日間の障害者福祉援助実習を行った.本研究では,この実習前後において障害者に対して持っている印象と実習を通しての学びを明らかにすることを目的に,学生に対し実習前と実習後の印象,実習に対する期待とその学びについて質問紙調査を行った.その結果,実習前にもっていた障害者に対する印象のほとんどは否定的な印象であったが,障害者援助の見学と実践という障害者との接触体験を持ったことによって,実習後の印象は肯定的なものが多くなったと考えられる.実習に対する期待としては,記述数は少なかったものの,コミュニケーションと接し方,援助方法,障害者の生活実態などが挙げられ,これらは障害者の関わりによって概ね学ぶことができていた.また,実習の学びに対する記述内容が多岐に渡っていることから,期待していたことに留まらずそれ以上に学びを深め,自ら広がりを持たせることができたと考えられる.
著者
前田 紀子 工藤 俊輔 Krishna Pyari NAKARMI
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻紀要 (ISSN:18840167)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.77-85, 2013-03-31

ネパールにおいて, 障がい児(者) とその家族の生活の実態は充分把握されていない. 障がい児(者) とその家族の現状を知ることを目的に, カトマンドゥ郊外の郡内3市において, アンケート調査を聞き取り法にて行った. 調査は障がい児(者) ID (Identity Document) カード{障がい児(者) 証明書} 取得者で重度の障がい認定された児(者) とその家族を対象に実施した. 調査結果から, 障がい児(者)・家族が抱える問題解決には経済的支援としての手当てだけでなく, 介護支援・教育の機会・健康管理・地域とかかわりを持った活動・雇用へ繋げるための生活支援の必要性が示唆された. 加えて, 障がい当事者とその家族らがお互いの情報や現状を共有できる場をもつことや, 地域住民ともつながりを持ち, 相互理解を深めることは, 生活改善の方策として重要であることが同様に示唆された.さらに現在ある障がい児(者) ID カード制度の充実や普及による国の政策改善が望まれることを指摘した.Not enough is understood about the lives of Persons With Disabilities (PWDs) and their families in Nepal. A questionnaire survey was carried out in three cities in the suburbs of Kathmandu to know the situation of PWDs and their families. The targets of the survey were PWDs holding ID cards identified as having the most serious disabilities, and their families. As a result, it is found that not only financial support but also assistance with care, education opportunities, health management, social activities and employment are needed in order to improve the life of PWDs. In addition, it was found that there needs to be a platform for exchange and sharing idea or information with each PWD and their family, to connect with the local community to improve mutual understanding each other. The use of ID cards will increase and the system will improve. A change of local and national policy is clearly necessary.
著者
森田 紗也子 中野 良樹
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学教育文化学部研究紀要. 人文科学・社会科学 (ISSN:1348527X)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.9-16, 2013-03-31

The purpose of this study is to investigate whether the familiarity of a face affects on recognition of emotion which expressed by face and voice. In the experiment, participants observed a video image of one woman who has selected among four women, the two were known for the participant and the others were not. The woman expressed one of four emotion, happiness, surprise, sad and disgust, via face and voice. In these stimuli half of them expressed the same emotion from the face and the voice, while the other half expressed the different emotion between the two modalities. The observers were required to assess how much they felt the four emotions from the expression of that woman. Results suggested that the participant predominantly recognized surprise and disgust that were typical expression among the four emotions when they observed a familiar woman. Furthermore, the familiarity let an observer to proceed information and predominant modality, when the participants recognized happiness and sadness that were involved surprise and disgust respectively.
著者
方 銘 石川 三佐男
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学教育文化学部教育実践研究紀要 (ISSN:13449214)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.153-169, 2008-05

近年の中国古代文学研究は出土文献の大量発見と相侯って、学説の見直しや再検討が必要であるなど、大きな変革期を迎えている。こうした変革期にあって被招聘人・方銘氏と招聘人・石川三佐男は十年余に渉って学術交流を行ってきた。このたび当該の問題について共同研究を行う運びとなった。方銘氏招聘に際しては共同研究(日中共同日本アジア文化研究‐近年の出土文献と戦国文学‐を推進する)を目的とし、身分は特別公開講演会講師(秋田大学を会場に学生・教職員・一般市民を対象とする特別公開講演会を行う)とした。招聘費用は招聘人の研究経費を充てることとした。平成十九年十二月十五日、秋田大学を会場に「中国文化と日本文化への誘い」と題する中国甘粛省・秋田県・中国出土資料学会・秋田大学特別連携講演会が開催され、方銘氏の「近年の出土文献と戦国文学」と題する講演が行われた。他には甘粛省考古文物研究所副研究員・趙建龍氏の「シルクロード周辺の歴史と文化」と題する講演と東京大学東洋文化研究所教授・平勢隆郎氏の『亀趺と茨城の文化および秋田のことなど」と題する講演も行われた。聴講者は百七十余名に及び、得難い知見や感動を共有し合うことができた。本研究は方氏の講演内容を基調とし、これに東京大学及び大阪大学での資料調査や学術交流による共同研究の成果を加筆・増補して成っている。要点の第一は、出土文献と孔子の地位の再確認。ここでは近年の出土文献の中に『易伝』『魯穆公問子思』『窮達以時』『五行』『唐虞之道』『忠信之道』『成之間之』『尊徳義』『性自命出』『六徳』『上海博物館蔵戦国楚竹書』『孔子詩論』『論語』等々、孔子の歴史的地位を示す重要資料が含まれていることから、戦国文学を研究するには孔子から着手しなければならない。孔子は春秋末期の人だが春秋以前の中国文化集大成者であり、戦国文化の創始者である。戦国文学は孔子と切り離すことができない、と指摘している。第二は、出土文献と孔子の大同理想と公羊三世の学説との関係。ここでは孔子は『礼記』礼運篇の中で「大同」の理想を説いている。大同は万民がすべて平等で民主政治が行われることを指していう。孔子が尭と舜と禹の聖治をほめたたえたのは彼らの統治が民に奉仕することを賞賛するためである。現代人は孔子が「周礼」を回復しようとしたと強調するが、周礼の特徴は「小康」の政治であり、これは民主政治に反するものである。孔子の最終理想は大同を実現することにある。彼は礼楽を破壊した政治環境の中で「周礼」の回復を図ることを通じて大同の理想を実現する基礎を積み上げようとしたのである。孔子の立場から言えば先に大同があり、その次に小康、その次に乱世、これは社会が自覚的に体験する退化の必然である。乱世から直接太平を実現することはあり得ない。変化の過程を経過する必要がある。そこで孔子は社会の退化を救うためにはまず小康をめざし、それが実現すれば太平が可能になると考えた。孔子の乱世から小康へ、小康から大同へという考え方は一種の科学的思考であり、人類の内心にも合って近代的人文精神が目指す社会発展の理想にも合致している。その意味では孔子は人類の本当の人権、平等、自由、博愛、独立を実現することを希求した偉大な学者である、という。第三は、出土文献と孔子の完全無欠な審美思想についての新見解。ここでは孔子の視点からすると審美追究は人類究極の理想と合致し、また「六経」(易経・書経・詩経・春秋・礼記・楽経)は普遍的人文精神を貫徹している。聖人を尊び六経を学ぶのは一種積極的な価値がある。そのため戦国時代に醸成された征聖宗経の出発点は人を慈しむことに発し、その客観的効果は文芸作品に人道的配慮を持つようにさせたのである。その意味でも審美追究の出発点と客観的効果には積極的意義がある、と指摘している。第四は、出土文献の中には山東臨沂銀雀山漢墓出土『晏子』、長沙馬王堆漢墓出土『黄帝四経』、同『老子』甲・乙本等々、戦国諸子の文献がたくさん含まれている。いっぽう『漢書』芸文志は『黄帝四経』『荘子』『道徳経』等をすべて道家に組み入れている。しかし出土文献に照らして考えると老子の学説は干渉主義と自由主義を兼ねているのに対し、荘子の学説は干渉主義を除けばむしろ自由主義を容認している。黄老学説の趣旨は指導者に無為の方法を用いて民を統治することを教えるが、荘子は民に無為の方法を用いて指導者の統治から逃れることを教えた。人民本位の視点からすれば、荘子と孔子及び儒家の立場は一致し、老子と法家は一致する、と述べている。第五は、出土文献と賦の内包と外延。戦国時代の「賦」の作家では宋玉が有名である。一九七二年、山東省臨沂銀雀山漢墓から「唐革」と題する竹簡二十篇二百字余りが発見された。「革」は「勒」と意味が通じる。唐革はつまり「唐勒」である。「唐革」はあるいは「唐勒賦」の逸篇であるかも知れない。「唐革」の賦篇は欠落があるが、対句や形容の修辞から見ると散句に属し、屈原の作品や荀子の賦にいう助字「兮」の用法とも異なっている。形式の特徴から見ると『文選』や『古文苑』に収録されている宋玉の諸作とよく似ている。これは宋玉の時代に「高唐賦」や「女神賦」のような優れた作品を創作する環境が整っていたことを示している。同時に「賦興楚盛漢」(賦は楚の国で興って漢代に盛んになった)という伝承の正当性を示している。その意味でも「唐勒賦」の発見は中国文学史上の「賦」に関する研究に重要な意味を投げかけている、と述べている(この指摘は「上海博物館蔵戦国楚竹書」にはある植物をテーマに据えた「賦篇」が含まれていると伝えられることからも看過できないものがある。「賦篇」の早期公開を切望してやまない)。