著者
佐藤 忍
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

中東における建設ブームが生み出した海外雇用の機会は、資産形成の点でも、職業上の地位においても、魅力的な選択肢であり、国内における労働力利用率が3人に2人と低いフィリピンにとって、いわば千載一遇のチャンスであった。有力な後盾に恵まれた渡航チャンネルをもつ者のみが、この機会を享受しえた。1980年にはじまるフィリピン国内の経済危機は、海外雇用による外貨獲得を国際収支の救済策として浮上させた。すなわち、労働力輸出の開始である。1982年におけるフィリピン海外雇用庁創設は、その制度的な表現である。労働力輸出の本格化は、海外雇用の魅力が低下する過程でもあった。海外雇用は、生活維持のためのきわめて現実的な選択として一般化したのである。賃金水準は低下し、雇用期間は短縮した。73年時点で13万人にすぎなかった海外渡航者は、83年には40万人、91年には63万人へと雪だるま式に膨らんだ。渡航チャンネルをもたない者は、不正規のルートを開拓した。中東以外の渡航先として東、東南アジアの比重が高まった。同時に、海外雇用の女性化が進展した。海外雇用は、いまや2つのタイプに分極化している。船員、看護婦等の専門職種は、賃金水準や斡旋経費の負担といった点で、いまなお魅力を保持している。渡航者のおよそ3人に一人がこのタイプに属する。労働力輸出によって生み出された新型職種として、エンタテナ-やメイドといった不安定職種がある。渡航者の3人に一人を占めるまでになっている。不安定職種の危険性は、労働者保護への政策的な取り組みの緊要性をフィリピン政府に痛感させた。労働力輸出は、フィリピン経済の危機によって本格化し、海外雇用の変質と分極化とをもたらしたのである。
著者
別府 賢治
出版者
香川大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

スモモの自家和合性に関わるS遺伝子を特定するとともに、自家和合化のメカニズムを解明した。また、S遺伝子による自家和合性の遺伝を確認するとともに、自家和合性個体選抜のためのDNAマーカーを作出した。これにより、スモモの自家和合性品種の育種を効率的に行うことが可能となり、このことは園芸的意義の大きいものである。
著者
山本 融
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

精神神経疾患は誰もが罹患しうるコモンディジーズであり、その克服は重要な課題である。我々は膜タンパク質MDGAの欠失が、各種精神神経疾患に通底する分子病態であるシナプス形成バランス異常を引き起こすことを明らかにしている。本研究ではMDGAの高次脳機能統御における役割を明らかにするするとともに、こうした異常を改善する薬剤を探索することにより、精神神経疾患の新たな創薬シーズを獲得することを目的とする。
著者
中井 浩三
出版者
香川大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

表皮のフィラグリン発現低下による皮膚バリア機能障害はアトピー性皮膚炎の原因である。我々はフィラグリン発現が低下したアトピー性皮膚炎モデルマウスでは皮膚バリア機能に重要なEGFR、E-cadherin、Occludinの発現が低下していることを発見した。抗酸化剤であるNアセチルシステインを同マウスに投与したところ、一部改善された。さらに、Nアセチルシステインをヒトアトピー性皮膚炎患者に外用したところ皮膚バリア機能は改善した。以上のことから酸化ストレスが角化と皮膚のバリア機能を低下させていることが示唆された。
著者
葛城 浩一
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では,ボーダーフリー大学における学士課程教育の質保証の実現可能性について明らかにするために,学部長を対象としたアンケート調査に基づき,ボーダーフリー大学における教育の質保証の実態について明らかにした上で,その実現を促進あるいは阻害する要因についての検討を行った。また,その結果をふまえた上で,教員を対象としたアンケート調査に基づき,教育の質保証の実現を促進あるいは阻害する要因を手がかりに,ボーダーフリー大学及び当該大学教員の教育の質保証の実態について明らかにした。
著者
塩谷 剛
出版者
香川大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、「社内外のつながり」と一人の人間が多様な経験と幅広い知見を持つという「個人内多様性」に着目し、経営者(マネジャー)の社内外のつながりが強くなり、個人内多様性が高まるほど彼らの両利き性が高まり、両者は互いにその効果を高め合うという仮説を構築した。この仮説を検証するため、調査対象を戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)に採択されている中小企業の経営者とし、質問調査票及び送付リストを作成した。一方で、組織学会の学術企画に参画し、大企業のミドルマネジャーを対象にした質問票調査プロジェクトに携わり、上記仮説を検証するための質問項目を作成した。このように、本研究では、中小企業経営者と大企業のミドルマネジャーという2方向から仮説検証を行う。また、本研究の前段階として2016年度~2017年度に実施した農業経営者を対象とした質問票調査を用いた研究論文が『組織科学』に採択された。本論文では、企業パフォーマンスに対する経営者の探索2変数(新商品開発及び新市場開拓)と活用の交互作用について検討した。分析の結果、企業パフォーマンスを向上させるためには、経営者は両利きであることが望ましいが、それは探索の内容に左右されることが示された。また、知識源の多様性と異業種経験が探索・活用にもたらす影響についても検討した。知識源の多様化は、農業経営者の選択肢、知識の組み合わせを増大させるが、分析の結果、その効果は活用に限定されていることが示された。また、異業種経験は探索には影響を与えず、活用に対して負の影響を与えることが示された。
著者
中井 浩三
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

マクロファージは自然免疫の中心となる細胞である。我々はアトピー性皮膚炎モデルマウスの皮膚のマクロファージの活性化を調べた。アトピー性皮膚炎モデルマウスの皮膚では通常マウスの皮膚と比べて異常なマクロファージの活性化がみられた。マウスのアトピー性皮膚炎の治療薬として、インターロイキン17Aの阻害薬を投与したところ、アトピー性皮膚炎モデルマウスの皮膚のマクロファージは通常皮膚のマクロファージとは違った活性化抑制がみられた。
著者
沖 公祐
出版者
香川大学
雑誌
香川大学経済論叢 (ISSN:03893030)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.701-735, 2007-03
著者
畦 五月 中田 理恵子
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

レクチンは主に生の食品から精製され、加熱して後、つまり食用の食品からのレクチンの精製やその生物学的性質の研究は管見の限りみられない。そこで、材料にキントキマメ、ナタマメ、サトイモを選択し、加熱後にも食品中に残存するレクチンを精製しその性質を、食品として摂取した場合に期待できるガン細胞抑制作用及び、免疫賦活作用の両側面から明らかにした。加熱したキントキマメとサトイモにはレクチンが失活せずに残存し、タンパク質分解酵素にも耐性を示した結果から、人体に取り込まれた場合の機能性を検討した。その結果、一部のガン細胞に対する増殖抑制作用並びに、免疫賦活作用を有することが明らかになった。
著者
柴田 慶一郎
出版者
香川大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2018-04-25

本研究は,3つの目的で構成されている.第一に,魚骨由来のヒドロキシアパタイト(以降FbA(Fishbone Absorber))がどのような物質,特に環境中で有害とされる物質に対して高い吸着特性を持つのかを実験的検討により明らかにすること,第二に,分子動力学シミュレーションを用いた数値解析によって吸着構造・メカニズム等を明らかにすること,第三に,他の吸着材料,あるいは他の吸着材料とのハイブリッドの可能性を検討し,吸着性能について検証を行うことである.第1年度目では,主に第一の目的と第三の目的を達成するために研究を遂行した.重金属に対する吸着特性を,FbAと新たな吸着材料として選択したもみ殻のそれぞれに対して実験により明らかにし,その成果を国際学会でポスター発表した後に,Journal に投稿した.現在は,重金属以外の有害物質に対する吸着特性の解明と,両材料をベースにした新規のハイブリッド材料を開発中である.また,本研究では,セシウム,ストロンチウムのような放射性物質の環境中からの除去もあわせて行っており,森林斜面の表土に沈着したセシウム,あるいはフレコンバッグに封入されたセシウムを含む汚染土壌に対する除去・回収手法を提案した.森林斜面の汚染土壌に対しては,傾斜を利用して流水によってセシウムを除去した上で,回収した汚染水に含まれるセシウムをゼオライトによって吸着した.フレコンバッグ中の汚染土壌に対しては,電気泳動とゼオライトを組み合わせることで土壌中のセシウム濃度を低減した.これらの成果は,前者に対しては国際学会でポスター発表後,Journalへ投稿し,後者については国内学会で口頭発表を行った.フレコンバッグ中の汚染土壌からのセシウム抽出と吸着に関する研究については,研究内容とプレゼンテーションのクオリティが認められ,地盤工学会より優秀論文発表者賞を頂戴した.
著者
小野 智史
出版者
香川大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2019

中学生の読解力(リーディングスキル)の現状を把握し, 中学校社会科における「リーディングスキルテスト(RST)作りに取り組んだ。公立中学校と附属中学校2校でサンプルデータを得, リーディングスキルの違いを数値で明らかにした。また, 本県の学習診断テスト社会科問題過去5年分(香川県進路指導研究部提供)の中から, 「イメージ同定」, 「具体例同定(辞書)」を分類し, 社会科特有の問題を分類, 整理した。そして社会科独自の読解力や思考力を問う問題を作成した。
著者
金子 之史 末廣 喜代一 森 征洋 松村 雅文 西原 浩 高木 由美子 川勝 博 北林 雅洋 林 俊夫 高橋 尚志 佐々木 信行 稗田 美嘉 高橋 智香 大浦 みゆき 野崎 美紀 大西 千尋
出版者
香川大学
雑誌
香川大学教育実践総合研究 (ISSN:1345708X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.37-48, 2004-03

教科書がより使いやすくまた学問的にも正しく改善されるために,現在発行されている小学校「理科」教科書(6社)に関する問題点を,物理,化学,生物,地学,および理科教育の立場で検討しそのとりまとめをおこなった。使用した教科書は,学校図書,教育出版,啓林館,信濃教育会出版部,大日本図書,東京書籍であり,本稿では3・4学年を扱った。
著者
森 征洋 松村 雅文 末廣 喜代一 金子 之史 高橋 尚志 林 俊夫 佐々木 信行 西原 浩 高木 由美子 川勝 博 北林 雅洋 高橋 智香 大浦 みゆき 大西 千尋 野崎 美紀 稗田 美嘉
出版者
香川大学
雑誌
香川大学教育実践総合研究 (ISSN:1345708X)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.99-110, 2005-03

1998年の学習指導要領の改訂により新たに編集された新教科書について比較検討を行った。新教科書は全体としそは,図版が多く取り入れられており,よく工夫されている。しかしながら,学習指導要領の制約により基本的な事項が削減されるなど疑問な点も見みられた。また,学習指導要領の記載の順に単元が構成されている教科書が多く,それが場合によって合理性を欠くことになっているケースが見られた。
著者
金子 之史 末廣 喜代一 森 征洋 松村 雅文 西原 浩 高木 由美子 川勝 博 北林 雅洋 林 俊夫 高橋 尚志 佐々木 信行 稗田 美嘉 高橋 智香 大浦 みゆき 野崎 美紀 大西 千尋
出版者
香川大学
雑誌
香川大学教育実践総合研究 (ISSN:1345708X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.49-61, 2004-03

教科書がより使いやすくまた学問的にも正しく改善されるために,現在発行されている小学校「理科」教科書(6社)に関する問題点を,物理,化学,生物,地学,および理科教育の立場で検討しそのとりまとめをおこなった。使用した教科書は,学校図書,教育出版,啓林館,信濃教育会出版部,大日本図書,東京書籍であり,本稿では5・6学年を取り扱った。
著者
森 征洋 松村 雅文 谷山 穣 西原 浩 佐々木 信行 高木 由美子 林 俊夫 高橋 尚志 金子 之史 末廣 喜代一 川勝 博 北林 雅洋 高橋 智香 野崎 美紀 大西 千尋 稗田 美嘉 大浦 みゆき
出版者
香川大学
雑誌
香川大学教育実践総合研究 (ISSN:1345708X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.135-146, 2004-03
被引用文献数
1

教科専門科目「初等理科」の授業方法・内容の改善を図るために,受講生の授業内容の受け止め方などをアンケートで調べた。「初等理科」を実験形式の授業で行っていることについて90%以上の学生がよいと評価し,70%以上の学生が将来小学校で教える場合に役立つ授業であったと受け止めている。各課題の理解度を向上させるために,限られた授業時間内に説明の時間と実験の時間をどのように調和させるかが今後の課題となる。
著者
高橋 尚志 礒田 誠 大浦 みゆき 西原 浩 高木 由美子 佐々木 信行 藤原 佳代子 高橋 智香 金子 之史 末廣 喜代一 松本 一範 稗田 美嘉 森 征洋 松村 雅文 寺尾 徹 川勝 博 北林 雅洋 笠 潤平 福家 弘康 西川 健男 高橋 正人 久利 知光 林 雄二 東条 直樹 横川 勝正 上村 和則 武藤 成継 石川 恭広 長谷川 忍
出版者
香川大学
雑誌
香川大学教育実践総合研究 (ISSN:1345708X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.35-43, 2008

学部の理科教員全員によるチームティーチングを実施している「理科授業研究I」の内容を,附属学校教員の立場から評価した。その観点は教育現場での実験教材としての有効性と教育実習の事前の指導としての意義であり,本報告は授業の概要の紹介を行った後に考察結果と今後の課題をまとめたものである。