著者
ノイマン フロリアン
出版者
香川大学
雑誌
香川大学生涯学習教育研究センター研究報告 (ISSN:13420534)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.15-39, 2008-03

本論文は今年ミュンヘン大学に提出予定の博士論文を要約したテキストの一部である。大正・昭和初期の東京帝国大学教授・右翼思想家上杉愼吉をテーマとし、特に第一次世界大戦後の大正デモクラシーに対する上杉の反発を詳しく分析している。上杉は1919年に東京帝国大学で結成された新人会に対抗して右翼学生団体興国同士会をつくり、パリ講和会議後の国際新秩序に対して激しく批判し、『國體精華發揚』と『暴風來』を執筆した。『國體精華乃發揚』で上杉は日本国家の大改造を呼びかけ、「思想の淘汰」、「国威の宣揚」、「挙国皆兵」、「経済の統一」、「民生の修固」、「政治の刷新」を要求した。上杉は社会的に無視された運命となった。
著者
石川 徹
出版者
香川大学
雑誌
香川大学教育学部研究報告. 第I部 (ISSN:04549309)
巻号頁・発行日
vol.122, pp.7-14, 2004

The chief objective of this paper is to examine Reid's theory of "passions". We use the word "passions" not only in Reid's way, but in common usage in 18th century, because we can best understand his theory in contrast with his contemporary philosophers, especially David Hume. First, we observe that Reid's conception of causation, that is, agent causation determines his general philosophical scheme and that human action is the most important subject of his inquiry. Secondly, we survey three kinds of action principles, mechanical principles, animal principles, and rational principles. In effect we find Reid thinks all of the principles are equally important for human existence and happiness. But these factors sometimes will be very violent and destroy the harmony in mind, so must be under control of reason and will. Finally, we evaluate the possibility of Reid's theory, in contrast with Hume's theory. They are very different in their conceptual scheme, but have much in common in weighing the value of our ordinary life. If Reid would pay attention to our particular passions, he could have developed a very interesting anthropology.
著者
谷岡 哲也 浦西 由美 山崎 里恵 松本 正子 倉橋 佳英 多田 敏子 眞野 元四郎 山崎 正雄 友竹 正人 松下 恭子 上野 修一 大森 美津子 大浦 智華
出版者
香川大学
雑誌
香川大学看護学雑誌 (ISSN:13498673)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.65-74, 2007-03
被引用文献数
1

スティグマと疎外が精神疾患の治療と精神障害者の社会復帰を妨げていることが,精神保健上の問題として明らかにされている.地域住民の精神障害者との出会いの経験と精神障害者に対するイメージについて明らかにする目的で,郵送法による質問紙調査を行った.その結果,20代と30代の回答者の約50%が,精神障害者を意識した時期が小学校から高校であったと回答した.その当時の精神障害者のイメージは,否定的イメージが多かった.またその内容は,「変わっている」「こわい」が上位にあり,「普通の人と変わらない」は1割以下であった.回答者らが,実際に会ったことのある精神障害者は認知症のみであった.精神保健福祉施策は入院医療から地域ケアへと移行している.したがって,精神障害者やその障害について地域住民が理解する機会を我々は増やしていかなければならない.今後は,さらに若い年代から病院や施設等で精神障害者と日常的に交流を持てるような,ふれあいの場を作ることが重要である.また若い年代に対する精神障害者や精神障害に対する固定観念やスティグマを緩和ないし減少させるためのさらなる啓発活動が求められることが示唆された.
著者
毛利 猛
出版者
香川大学
雑誌
香川大学教育実践総合研究 (ISSN:1345708X)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-6, 2007
被引用文献数
1

ゼミナールに関するFDは,ゼミのやり方を規格化しようとするものではない。それぞれの「教育する場」の条件によって,また,担当する教員の得手不得手によってゼミのやり方は違っていて当然である。ただし,いくらゼミのやり方が多様であることを認めるからといって,この多様性を隠れみのにして「手抜きのゼミ」が放置され,「低調なゼミ」が改善されないのは困ったことである。本研究では,ゼミ形式の授業に関するフォーマルおよびインフォーマルなFDの可能性と必要性について考察する。
著者
石川 徹
出版者
香川大学
雑誌
香川大学教育学部研究報告 第1部 (ISSN:04549309)
巻号頁・発行日
no.126, pp.61-68, 2006

The aim of this paper is to elucidate the relation of "reason" and "passion" in Hume's philosophy by examining his interpretation of the alleged "the combat of passion and reason" as conflict between "violent passions" and "calm passions". Firstly, we point out that the combat takes place only in some kinds of actions. Secondly, we examine Hume's position by interpreting his famous statement "Reason is the slave of passions". We find that Hume oversimplifies the relation between reason and passion and particularly he misconceives how reason could influence passions. We conclude that Hume's argument can and should be rebuilt by reconsidering the relation between reason and passion in human conduct.
著者
垂水 浩幸 林 敏浩 八重樫 理人
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

スポーツや音楽分野でのエンタテイナーの実演を遠隔の視聴者にインターネット中継で送れるようになったが、視聴者が現場に対して送ることのできる情報は現状では文字に限られている。本研究は主にスポーツの応援を遠隔から送り、選手に伝え、また選手から更に反応を返すことができるシステムを構築して実際のプロスポーツ公式戦で運用評価し、選手から高い評価を得ることができた。一方視聴者からの評価にはまだ課題が多く今後の課題である。
著者
渡辺 匡央 森 征洋
出版者
香川大学
雑誌
香川大学教育学部研究報告. 第II部 (ISSN:03893057)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.75-101, 2004-09-29
被引用文献数
1

女木島の東浦で発生する局地的強風「オトシ」の現地観測を2回の冬季に行った。「オトシ」は日本付近を低気圧が通過した後, 冬型の気圧配置が強まり, 瀬戸内海地域で西南西から西の風が卓越するときに発生する。「オトシ」の発現時間の長さは短いときで数時間, 長いときで約4日間続くことがあり, ほぼ冬型の気圧配置の持続時間と一致する。「オトシ」は, 南西から南にかけての強風で, これまでの観測で, 最大平均風速20.2m/s, 最大瞬間風速35.2m/s (2002年1月27日) を観測している。「オトシ」が吹くとき, 風向の変動は少ないが, 風速の変動は大きく, 突風率も大きい。「オトシ」の発生時における移動観測や目視による海面の観察からから, 西よりの季節風が卓越するとき, 女木島南端に吹き付けた気流が地形によって曲げられて, 島を回り込んで東浦に向かって進むことが分かった。しかし, 風下側で風が強化される原因や, 季節風に対して島影になると思われる地域で強風域が形成される原因については限られた観測データだけでは解明できない。今後, コンピュータを用いた数値シミュレーションなどによる検討が必要である。
著者
崔 康植
出版者
香川大学
雑誌
香川大学經濟論叢 (ISSN:03893030)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.191-205, 2004-09-01

事後的な交渉の非効率性に基づく取引費用の経済論のアプローチの観点から日本の音楽産業の実証研究を取り上げる.どのような要因で垂直的な統合を行い,企業の効率性を高めたかを調べる.その結果,日本楽器製造株式会社というヤマハの企業の事例分析の場合,伝統楽器から電子楽器への技術移行の過程には垂直的な統合が重要な役割を果たした.とりわけ,ヤマハは内製された半導体工場によって技術体系が成熟段階における既存の非効率性を回避してきた.したがって,技術の複雑性が増す新しい製品概念となるほど,その内製化された半導体工場を利用したのは,取引費用の経済論の不完備契約に対するアプローチを部分的に支持している.
著者
市村 穣
出版者
香川大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

腸内常在菌叢を構成する主要な菌種であるBacteroides thetaiotamicron (BT)は、Clostridium difficile (CD)の細胞毒性を抑制する。このメカニズムを明らかにするため、BTにおいてトランスポゾン(Tn4351)挿入変異ライブラリーのスクリーニングを行い、CDの細胞毒性に対する抑制作用を消失した変異株を検索した。その結果、莢膜多糖合成や糖加水分解酵素の遺伝子にトランスポゾンが挿入した変異株では抑制効果が消失することを明らかにした。この結果はBTの糖代謝産物がCDの細胞毒性に対する抑制作用に関与している可能性が考えられた。BTのCDの細胞毒性に対する抑制効果がin vivoでも認められるか否かを検討するため、無菌マウスの腸管にBTとCDを同時に定着させ、マウスの死亡率、盲腸内Toxin Bの定量、および盲腸内容物のグラム染色像を比較した。その結果、BTの野生株とCDを共感染させた群では80%が生存したのに対し、葵膜多糖PS-4の欠損株を投与した群の生存率は20%であり、BTのCDの細胞毒性に対する抑制効果がin vivoにおいても認められた。この結果は、また、莢膜多糖PS-4がこの抑制作用に関与していることを示している。これらの群において盲腸内でのToxin B量をELISA法により定量した結果、BTの野生株とCDを共感染させた群のToxin B量はPS-4欠損株とCDを共感染させた群と比較して有意に低かった。盲腸内のグラム染色像を比較すると、BTの野生株とCDを共感染させた場合、CDはグラム陽性に保たれる菌体が多く、PS-4欠損株と共感染させた場合にはCDの多くの菌体がグラム陰性に染色された。このことは、BTのPS-4がCDの自己融解を抑制することにより毒素の遊離を抑えていると考えられた。
著者
野崎 武司 飯村 敦子 細越 淳二 米村 耕平
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究の目的は、特別支援教育の知見を援用しながら、体育の学習集団論を再構築することにある。主な結果;①体育において「できる」「わかる」の系統性を教師が持つこと、習熟と認識の発展の節目で「わからせる」ための教材・教具を開発すること等、これまでの体育の学習集団論と授業のUD化との架橋による<授業のステップアップ化>が必要である。②子どもの認知特性等、子ども理解の診断的アプローチが必要である。③年間を通じて受容的・肯定的でかつ探究的な学級の風土を醸成することが必要である。若手教員には、多様な授業の考え方や、子どもを深く見取り、学級集団を組織していく教育技術とその習熟プログラムの開発が不可欠である。
著者
中村 律子 宮前 淳子
出版者
香川大学
雑誌
香川大学教育実践総合研究 (ISSN:1345708X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.157-168, 2008

本研究では,高齢者が自身の心身の健康をいかに認知しているかについて検討することを目的とした。Eriksonの心理社会的発達理論を参考に「健康生活認知尺度」を作成し,その尺度を用い,高齢者に半構造化面接法による調査を行った。その結果,高齢や身体的障害がそのまま主観的健康観に影響するのではないことが明らかとなった。また,高齢者の心理社会的発達を促すために,人生の振り返りを支援することの重要性が示唆された。
著者
岡田 知也 井上 智司
出版者
香川大学
雑誌
香川大学教育実践総合研究 (ISSN:1345708X)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.47-58, 2006-03

少子化の影響は,学校教育実践の場において様々な影響を及ぼしている。その一例が児童・生徒数の減少に起因した,課外活動に所属する児童・生徒数の減少である。中学校における吹奏楽部の部員数も例外ではなく,多くの吹奏楽部で部員が減少していった。部員数の減少という事象を受け,吹奏楽連盟各支部は主催するコンクールにおいて中学校部門,高等学校部門にそれぞれ小編成の部を新たに設けた。しかし当初は選曲や編曲,演奏表現において不自然な演奏が多く見てとれた。このことは同時に小編成に特化した指導法や演奏曲が未開発であったということを意味する。本研究は中学校における小編成の吹奏楽部において演奏される楽曲に注目して,小編成の吹奏楽の特性を生かした演奏曲を編曲により開発し,検証するものである。