著者
谷口 守 石田 東生 小川 博之 黒川 洸
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.443-451, 1995-08-31 (Released:2010-06-04)
参考文献数
7

自動車交通問題の解決のためには、個人の交通手段選択を自動車から公共交通などにシフトさせることの重要性が指摘されている。しかし、そのための基礎となる都市の特性と交通手段選択の関係に関する実証的研究は不十分である。本研究では、全国の131都市を対象に、1970、80、90年の国勢調査報告の通勤・通学利用交通手段のデータを用い、各都市の通勤・通学交通手段分担率の地域的・時間的変化を把握すると共に、その都市特性との関連を判別分析、正準相関分析を通じて明らかにした。この結果、モータリゼーション化のばらつき特性、分担率変化の特性を把握するとともに、都市構造にまで言及しない交通政策の限界を指摘した。
著者
里村 大樹 水谷 雅裕
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_145-I_150, 2014
被引用文献数
1

近年海上輸送・港湾分野において保安対策が強化されているが,一方で,国内主要港湾のコンテナターミナル周辺では国際海上コンテナ輸送車両の渋滞解消策が求められている.<br> 本研究では,現地調査による実態把握を行い,保安対策が強化された場合の待ち時間,待ち台数をシミュレーションにより計算した.横浜港本牧埠頭BCターミナルでは,最大のトラック待ち台数は午前のゲートオープン前の約300台で,待機列はゲートオープン後1時間程度で解消していた.保安対策が強化されてコンテナ搬入の処理時間が5分長くなる場合,現状設備ではオーバーフローするが,ゲート処理方法を変更することでその日のうちに処理できる結果となった.保安対策が強化された場合では,昼にゲートオープンするケースでも,現状設備ではオーバーフローする結果となった.
著者
小西 純一 西野 保行 淵上 龍雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.227-238, 1989-06-20 (Released:2010-06-15)
参考文献数
9

官設鉄道が標準桁として採用したクーパー型トラス桁は10種類で、そのうち100ft上路を除く9種類263連が1899年から1915年にかけて架設された。耐用年数は線区によりかなり異なるが、東海道本線で47年程度、中央本線で66年程度であり、経年88年で今なお使用中のものもある。現在使用中の桁は、転用桁を含めて合計72連となっている。クーパー型の採用はそれまでの英国系からの全くの方向転換であり、連続性はない。クーパー型を少し設計変更した100fしと300ftの国産桁が存在した、輸入ピン結合トラスの最後を飾るのは、阿賀野川釜ノ脇橋梁ほかのカンチレバー式架設工法によるトラスである。わが国の橋梁技術者たちは、米国流の進んだプラクティスを体得すると同時に、アイパーを主体のピン結合トラスの欠点を見抜き、リベット結合に改め、輸入から国産へと転換し・技術的な自立を一段と進めることになる。【明治期、鉄道橋、トラス桁】
著者
小西 純一 西野 保行 渕上 龍雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.207-214, 1985-06-25 (Released:2010-06-15)
参考文献数
15
被引用文献数
1

A historical sketch of railway truss girders constructed in Meiji era (1858-1912) is described. This is the first part dealing with the 200ft double Warren truss girders which is believed to be a representative of the British school of design. A total of 112 girders were imported from England and erected in 1886-1898, 22 of which were made of wrought iron and remainings were wrought iron and steel combined girders. In April 1985, 18 girders are still stand, most of them are in use, though 9 of them are shortened.
著者
岩崎 宏
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.151-162, 1990-06-25 (Released:2010-06-15)
参考文献数
34

燈台の建設で有名なスコットランドのスチブンソン家。そのなかでトマス・スティーヴンスン(1818-1887)は、港湾工学の分野でも実際の海の波についての優れた観察者の一人であった。今、海の波の発達、推算に関して対岸距離 “Fetch”という言葉が用いられているが、これはオックスフオード英語辞典によれば、エンサイクロペディア・ブリタニカ第九版のトマス・スティーヴンスンの解説を引用して初出文献としているのである。しかし、その後百年の間に、風速や吹続時間、風域などをあわせて考えるようになり、波の理論、波の観測、確率や統計的処理などの学問が進展してくると、初期の研究者の名も次第に忘れられてしまいそうである。また、トマス・スティーヴンスンは、わが国明治初年の洋式燈建設にとって忘れることのできない功績者である。即ち在英のまま日本政府の技術顧問となり、来日したブラントンをはじめとする技術者集団を指導し、バックアップした役割は高く評価されてよい。一方、トマス・スティーヴンスンの息子は文学に転向して、家業を継がなかったが、「宝島」や「ジキル博士とハイド氏」などの小説で有名になった作家のロバート・ルイ・スティーヴンスンである。エジンバラ大学で土木工学を専攻し、父に従って燈台や港湾の建設現場で波の観側をしていたことは、むしろ英文学研究者の方がよく知っている。本文は、スチブンソン家の人々を紹介すると同時にトマス・スティーヴンスンについて、その代表的著書「港湾の設計と建設」の中から二、三の話題をとりあげ、また息子ロバート・ルイ・スティーヴンスンのエッセイ「土木技術者トマス・スティーヴンスン」に触れたいと思う。
著者
山口 大介 新谷 洋二
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.293-300, 1999-05-01 (Released:2010-06-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1

城を構成するものには、天守・櫓・門・堀・土塁・石垣など様々なものがある。この中でも石垣は天守や櫓などの土台として、また城の防御の要として重要な役割を果たしてきた。石垣の施工上の留意点としては、安全性や耐久性、経済性などを十分に考慮しなければならない。また、使用される石材をみても一つとして同じ形状のものはなく、その材料をいかに組み合わせて堅固に築いていくかが重要である。本研究では、石垣を構成する石材の中でも築石に注目して、その形状や配置状況などについて、石垣の工事報告書などをもとに幾つかの城の石垣を例に取り、調査を行った。その結果、築石の配置状況はその加工の程度やその置き方によって左右されるのではないかと考察した。
著者
中瀬 浩太 林 英子
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海洋開発論文集 (ISSN:09127348)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.31-36, 2002 (Released:2011-06-27)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

Tokyo Port Wild Bird Park, which was originally a part of the reclaimed industrial area, was constructed in 1989 by the request of the local citizens. Since then, the seaside park that includes an artificial lagoon has provided precious opportunities of natural experience for the people in urbanized Tokyo-Bay Area.For the maintenance and management of the park, volunteer citizens groups have played a crucial role. Since the opening of the park, the highly motivated volunteer groups, in cooperation with members of Wild Bird Society of Japan, have continuously monitored the topographical change of the artificial lagoon and the situation of birds, benthos, and vegetation. In addition, the volunteer groups carriedout some field experiments. For example, they constructed an artificial creek and monitored the growth of thereed around it. They also constructed bamboo fences to check their anti-erosion effect at the shoreline and seabed. These continuous activities help to build better understanding of the environmental management in an artificial lagoon. The authors suggest the need of the involvement of more persons with biological knowledge, in addition to the volunteer group, in order to enhance the quality of the management method.
著者
横平 弘
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.207-214, 1995-06-09 (Released:2010-06-15)
参考文献数
32

JR釧網本線の施工困難な建設路線区間について比較線を選定して費用を試算し、現有の建設路線との比較の結果、比較線の方が約114万円低額で、平成4年の卸売物価スライドで11億余万円に相当し、建設費総額の13%を占める巨額となった。また、比較線の実現により、軟弱地盤地帯にある現有路線が地震の多発による列車の不通と路盤の点検などで余儀なくされている不便や労苦と多額な保線費もかなり解消されるため比較線のメリットは大きく、従って現有の建設路線の妥当性は不十分と見られる。
著者
馬場崎 正博 宗 琢万 河口 洋一 朴 埼燦 島谷 幸宏
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境システム研究論文集 (ISSN:13459597)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.97-103, 2006-10-10 (Released:2010-06-04)
参考文献数
31
被引用文献数
1

干潟の保全再生の取り組みが全国で始まっている.その際, 環境目標の設定が重要であるが過去の再現は困難なことが多い.福岡都市圏の今津干潟は古代から栄え, 貝塚を始め多くの歴史的資料が蓄積されている.本研究ではこれらの資料を分析し, 古代から昭和50年代までは干潟と人の係わりが密接であったこと, 地域では干潟環境の悪化は砂質干潟の泥質化が原因だとされていたが, 出土貝類の状況から泥干潟が古代から存在していたことなどを明らかにした.本研究のアプローチは各地の干潟再生に貴重な情報を提供すると考えられる.
著者
高久 寿夫 松岡 正幸 細田 道敏 千田 正裕 野本 雅昭
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
トンネル工学研究発表会論文・報告集 (ISSN:18849091)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.303-308, 2001

RINKAI Line HIGASHI-SHINAGAWA Tunnel (L=983.m) has been constructed by slurry shield tunnelling method. The distance between the parallel two tunnels are very close (Average = 2.8m, Minimum = 0.5m) and some important structures exist on the ground surface. Therefore, careful operation and management of the tunnelling works including detailed in-situ monitoring was carried out. As a result, settlement on the ground surface was very small.<BR>In this paper, shield excavation data and ground movements are discussed.
著者
佐々木 邦明 西山 明博
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_189-67_I_195, 2011

本研究は,交通環境の変化を個人の主観的指標によって計測可能であるかを実証するものである.今回は中山間地に位置する2つの集落を対象に2009年に意識調査を含む生活意識調査を行い,その約2年後に再度同様の生活意識調査を行った.この2年間で,一つの集落ではデマンドバスの走行が開始され,他方は食料品店が閉店するなどの生活・交通環境等の変化があった.結果からはデマンドバスが走行を始めた集落では有意に主観的な生活満足度が向上した.また,個人の交通環境により主観的評価である移動手段に対する不満や,生活行動の断念が多くなる傾向も明らかになった.ただし生活満足度は個人の変化による影響が小さいことも示され,生活満足度は個人の変化による影響の小さな評価指標として活用できる可能性が示された.
著者
黄 明霞 藤田 素弘
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集F3(土木情報学) (ISSN:21856591)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_70-I_78, 2014

本研究では,カウント表示式信号機下の車両挙動特性として,中国の冬季と夏季の8交差点の季節観測データを用いて,カウント表示有無などの条件が,青から赤への信号切り替わり時における,特に冬季(路面積雪時)の減速停止走行挙動に与える影響の比較評価を行った.最大減速度モデルの比較分析や冬季での停止確率分布の特性分析等の結果,冬と夏ともにカウント表示等は赤信号切替わり時に減速停止傾向を強めるが,冬季ではよりカウント表示の減速停止挙動への効果が高いことが分かった. 対象交差点特性として監視カメラによる赤信号無視の取締まり交差点が多いことや全赤時間が設定されていないこと及び,90m手前から情報板でカウント表示が確認できるという条件の下で,カウント表示式信号機の冬季における減速停止特性を確認できた.
著者
加藤 浩徳 家田 仁 小野田 惠一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.523-530, 2003-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
15

本論文では, 出発時刻選択モデルを用いて, 通勤者の交通行動を分析し, その結果から, 時間の差に対する意識限界を推定した. 出発時刻選択モデルを構築する上で, 通勤者の選択行動に影響を与える説明変数を検討し, 列車待ち時間・乗車希望列車スケジュール早着・同スケジュール遅延・最終不遅刻列車スケジュール早着の組み合わせが適切であることを示した. そのモデルを用いて, 鉄道利用者の通勤行動を分析した結果, 時間の差に対する意識限界は平均運行時隔にして約4分30秒-4分56秒であることが分かった.
著者
吉野 純 村上 智一 林 雅典 安田 孝志
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.1276-1280, 2006
被引用文献数
3

本研究では, 台風0416号によって瀬戸内海に発生した広域高潮の再現実験を行い, 高潮計算精度に及ぼす入力気象場の再現性の影響について検討した. パラメトリックな2次元台風モデルを入力値として海洋モデルを駆動させる従来型の手法と比較して, 近年急速に発展しているメソ気象モデルを入力値とする手法は, 極めて高い精度で潮位変動を予測できることが明らかとなった. 日本に接近・上陸する台風の多くは, 中心から遠く離れた場所であっても発達したアウターレインバンド (外縁部降雨帯) を伴うことがあり, 中心付近の壁雲に匹敵するほどの強風ピークを形成することがある. このような複雑な台風気象場を再現できるメソ気象モデルの適用は, 高精度な高潮予測を行う上で不可欠となる.
著者
松村 博
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.201-208, 1999

橋のような公共構造物は、時の政治権力によってつくられ、軍事的、政治的な理由によってその建設がコントロールされていたと考えられがちであるが、そうではなく社会経済的な条件やその時の技術水準によってその存立が規定されたと考えるべきである。<BR>日本の橋の歴史を概観してみると、その発展史は、橋は常に民間が必要日本の橋の歴史を概観してみると、その発展史は、橋は常に民間が必要とし、その時代の経済力に応じて支えられてきたこと、また橋の技術は特定の集団に秘蔵されていたのではなく、多くの人々に開かれたものであったという二つの視座を措定することによって説明できると考えられる。<BR>このテーマを説明するために、古代から現代までの橋の歴史の流れを示すとともに、官と民が主導的に行った橋の整備事業の特性を分類、整理した。この視点を深めることによって交通インフラ整備における政治優先説や技術機密説などの誤りを正すことができると考える。そして今後のインフラ整備のあり方を歴史から学ぶことができるものと思われる。
著者
井上 英彦 奥村 誠 塚井 誠人
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.843-848, 2003

本州四国連絡橋は、平日においては日常交通に利用されるのための生活橋として、休日においては広域的な周遊などに利用される観光橋としての役割の増加が期待されている。この役割の変化の分析にはアンケート調査が適しているが、費用などの問題がある。一方、本四架橋内の交通量は日ごとに計測されているものの、有効に活用されているとはいえない。<BR>本論文では、本四架橋の日交通量を分析することで交通量および架橋同士の相互作用の変化を明らかにすることを目的とした。その結果、交通量はカレンダー情報により大きく影響を受け、また架橋間には特に東西間をまたぐような周遊行動が発生していることが明らかとなった。さらに、これらの特徴は経年的に変化していることが明らかとなった。
著者
稲本 健太朗 岡田 昌彰
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境システム研究論文集 (ISSN:13459597)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.47-52, 2007-10-13 (Released:2010-06-04)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

本研究では, 月刊雑誌や観光ガイドブックにおける記述内容をもとに, 京都タワーの社会的イメージの変遷を解明した. 設立当初より建設反対論に並行して, 京都タワーは意外性とともに外観の美が認識され, さらに京都のシンボルあるいは地元の風景といった京都自体とのイメージ的結びつきも発現している. また, 1990年代前半まで漸増していた高さ認識に伴うランドマーク性は1997年の新京都駅ビル完成後に割合が減少していく.いっぽう, 当初設計におけるモチーフとして「蝋燭」なる通説が定着する現象が明らかとなった. このことは塔のイメージと形態ならびに立地地区の地理的条件, 及び社会的背景との関係性を示唆している. 設立40周年を迎えた近年においては京都タワーの歴史的系譜そのものに対する関心も生じてきていることがわかった.
著者
安達 實 北浦 勝 上田 信二
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.637-644, 1996-06-05 (Released:2010-06-15)
参考文献数
19

富山県は、南に日本アルプスをひかえ、東や西も山に囲まれ、これらの山々から流出する土砂の堆積により、富山平野や砺波平野の扇状地が出来た。しかし多量の雨と雪は、洪水となって平野を奔流し、氾濫による災害が多く、富山県の歴史は河川との闘いの歴史でもあった。なかでも大雨ごとに災害を受ける庄川は、早くから治水ぶ始まった。庄川の河道の変遷、災害、松川除を中心とした藩政期の治水への取り組みと、明治維新から昭和初めまでの治水について述べる。