著者
松石 昌典 加藤 綾子 石毛 教子 堀 剛久 石田 雄祐 金子 紗千 竹之中 優典 宮村 陽子 岩田 琢磨 沖谷 明紘
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.423-430, 2005-11-25
被引用文献数
2 13

名古屋コーチン肉を特徴づけているおいしさの要因を明らかにするため,ブロイラーと合鴨肉を比較対象として,官能評価と遊離アミノ酸などの分析を行い,以下の結果を得た.名古屋コーチンとブロイラーの加熱もも肉の2点嗜好試験では,味は両者間で差はなかったが,香り,食感および総合評価で前者が有意に好ましいと判定された.両者の2点識別試験では,うま味の強さは両者間で差がなかったが,品種特異臭と推定される名古屋コーチン臭と硬さが名古屋コーチンが有意に上位にあると判定された.両鶏のもも肉から調製したスープの2点識別試験では,うま味の強度はブロイラーが強い傾向にあった.コク味はブロイラーが有意に強かった.両スープにおける遊離アミノ酸の総モル数はブロイラーが多い傾向にあり,グリシン,ヒドロキシプロリン,セリン,アスパラギン,β-アラニン,アラニンおよびプロリンはブロイラーが有意に多かった.その他のアミノ酸は有意差がなかったが,ブロイラーが多い傾向にあった.名古屋コーチン加熱もも肉と合鴨加熱むね肉の2点識別試験では,うま味強度は名古屋コーチンが大きい傾向にあった.合鴨臭と硬さは合鴨が有意に上位にあると判定された.重量比でブロイラーもも挽肉8に合鴨むね挽肉2を混合したパティは,名古屋コーチンもも挽肉パティとは香りを根拠にした3点識別試験で識別できなかった.以上の結果より,名古屋コーチンと合鴨を特徴づけているおいしさの要因は,味ではなく,両者の互いに類似した特有香と豊かな噛みごたえであり,ブロイラーはうま味とコク味の強いスープを与える特性を有していると結論された.
著者
前原 正明 村澤 七月 中橋 良信 日高 智 加藤 貴之 口田 圭吾
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.507-513, 2008-11-25
被引用文献数
4 3

黒毛和種572頭のロース芯から得た脂肪交雑の脂肪酸組成をガスクロマトグラフィーにより分析した.ロース芯を画像解析した値と,各脂肪酸との関連性を調査した.モノ不飽和脂肪酸(MUFA)割合の平均値は57.0%(去勢 : 56.4%,メス : 58.3%),ロース芯脂肪割合の平均値は44.4%(去勢 : 45.6%,メス : 41.6%)であった.MUFA%は出荷月齢およびBFSナンバーと正の相関を示した(それぞれ0.27,0.25 : <I>P</I> < 0.01).BMSナンバーと有意な相関を示した脂肪酸はステアリン酸(-0.11 : <I>P</I> < 0.01)のみであった.MUFA%はあらさ指数(0.16)および最大あらさ指数(0.11)と正の,細かさ指数(-0.17)と負の相関係数を示した(<I>P</I> < 0.01)が,ロース脂肪割合(0.04)とはほぼ無関係であった.脂肪交雑の平均階調値はMUFA%と負(-0.38)の,パルミチン酸と正(0.43)の相関係数を示した(<I>P</I> < 0.01).
著者
神谷 誠
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.277-282, 1958

各種獣毛のアミノ酸組成をPaper chromatographyを用いて分析し,これを比較検討した結果は次のごとくである。<br>1) この分析においては,17種のアミノ酸が定量された。このほかにtryおよびlanthionineの存在が推定きれる。一般に多量に存在するアミノ酸はcys, glu,asp, leuおよびargであつて,hisはつねに少量であり,hyproは存在しない。<br>2) glu, lysおよびala以外のアミノ酸含量は,動物の種類により有意の差を示す。また酸分解により生じるアンモニア態窒素量の動物の種類による差異も有意である。<br>3) 各種獣毛について,cys対比アミノ酸組成の比較検討を行なつた。その組成において,コリデール種緬羊毛とアンゴラ種家兎毛,三毛猫毛と大黒鼠毛とはそれぞれ類似のアミノ酸組成をもつ。<br>4) 獣毛のアミノ酸組成からみると,cys, glu, asp,leuおよびargがその蛋白構成の共通的主要アミノ酸であつて,その他のアミノ酸をふくめて動物の種類により有意の差を示すのである。<br>5) アミノ酸組成の分析法として,緬羊毛について,Paper chromatographyによる方法を他の分析法と比較検討した結果,これが本研究の目的に使用し得ることを確認した。
著者
口田 圭吾 八巻 邦次 山岸 敏宏 水間 豊
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.121-128, 1992
被引用文献数
1 1

牛枝肉規格は,牛肉の価値を判断する上で重要な指標となるが,その判定は,スタンダードを基準にしているものの,肉眼的方法により行なわれている,また,脂肪交雑の粒子の大きさおよび形状なども,肉質の判定において重要な要因となっている.本研究では,それらの形質をコンピュータ画像解析により数値化する方法を検討した.また,1975年から1988年までの14年間に実施された,黒毛和種および日本短角種産肉能力間接検定時に撮影されたロース芯断面の写真に対して,開発した方法を適用し,得られた画像解析値に関する遺伝的パラメータを算出し,従来の格付による評価値と画像解析値との比較を行なった.遺伝的パラメータの推定にはHARVEYのLSMLMW(1986)を使用し,要因として年次-検定場,年次-検定場内種雄牛および検定開始時日齢への1次および2次の回帰をとりあげた.黒毛和種および日本短角種のロース芯断面内脂肪割合はそれぞれ7.88%,5.18%であり品種間の有意性が認められた.また,脂肪交雑粒子の大きさを示す面積値および形を表す形状値は両品種で有意差が認められなかった.画像解析で算出したロース芯断面内脂肪割合の遺伝率は黒毛和種が1.09,日本短角種が0.45であった.画像解析で算出した脂肪割合と格付による脂肪交雑評点との間の表型相関は,黒毛和種が0.63と比較的高かったものの,日本短角種では0.14と非常に低い値を示した.このことは,脂肪交雑程度が低い品種に対する肉眼による格付の難しさを示唆しているものと考えた.
著者
小澤 壯行 平井 智絵 Lopez-Villalobos Nicolas 西谷 次郎
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.199-205, 2010-05-25
参考文献数
22

近年,山羊飼養の見直しと飼養熱の高まりがわが国において着実に定着しつつある.しかし,山羊産品の商品化には隘路が多く消費者の受容性が高い産品が早期に求められている.そこでメキシコで広範に嗜好されている山羊ミルクジャムであるCajeta(カヘタ)を開発試作し,これと市販の牛ミルクジャムを用いて10代から60代の男女計394名に対して官能試験,市販価格の推定および製品栄養成分分析を実施することにより,当該製品の受容性を明らかにするとともにその将来性について考察を加えた.この結果,山羊ミルクジャムは色調では牛ミルクジャムと比べて評価が高いものの,かおり,味および総合的評価などでは有意に評価が劣った.しかし被験者の7割以上が山羊ミルクジャムの総合評価に対して「普通」以上の評価を下していることからも,今後,山羊臭の改善などを行うことにより,商品化および市場参入が十分可能であることが示唆された.
著者
Toshio TANAKA Tamiko WATANABE Yusuke EGUCHI Tadashi YOSHIMOTO
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.300-304, 2000-05-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
15
被引用文献数
6 8

In this study, an experiment was carried out to clarify the color perception in dogs. Two female Shiba breed dogs were trained using an operant conditioning method in which they pressed a switch with their muzzles in order to obtain some food, to discriminate between simultaneously presented colored and gray cards. The left and right positions of the two cards were shifted at random. After the dogs were fully trained, their color perception ability was tested on three primary colors, red, blue and green. The dogs were subjected daily to one or two sessions which consisted of 20 trials each.The criterion of successful discrimination was 3 consecutive sessions with more than 15 correct choices (P<0.05, Chi-square test). In the red vs. gray discrimination test, the dogs respectively took 3 and 12 sessions to reach the criterion. In the blue vs. gray and green vs. gray tests, both dogs were able to attain the criterion by the 13th session. The results of this study suggest that the color vision of dogs is relatively developed and dogs are able to discriminate between all three primary colors and gray.
著者
木村 誠 鈴木 護 荒木 誠一
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.770-772, 1995-09-25
被引用文献数
2

The protective effect of the oral administration of fermented egg white powder (FEWP) on experimental <i>Escherichia coli</i> infection was investigated in immunosuppressant-treated mice. After intravenous infection with <i>E. coli</i> (3.1×10<sup>6</sup> CFU), cyclophosphamide reduced the survival rate from 100% to 25%. When FEWP was given once daily for 4 days before infection, the survival rate increased to 70%. Cortisone acetate also reduced the survival rate from 100% to 30%, but when FEWP was given once daily for 4 days before infection the survival rate increased to 65%. These results show that FEWP markedly enhanced resistance to <i>E. coli</i> infection in cyclophosphamide- and cortisone-treated mice one day after completing FEWP pretreatment.
著者
賀来 康一
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.618-629, 1995-07-25
被引用文献数
14 2

畜産生産者の,現在設立の準備が進行している国内鶏卵•豚肉先物市場活用に関する検討を実施した.1993年現在,飼養頭羽数について採卵場の約60%,豚の約35%が農家以外の生産者によって飼養され,鶏卵•豚肉に関する生産主体は,農家から企業への移行過程にあり,生産者がヘッジャー(リスク削減の手段を取る人)として先物市場を活用する前提条件を満たしつつある.本稿ではまず,1983年から1993年までのシカゴ•マーカンタイル取引所(CME)上場畜産物先物3商品(Live Hog,Frozen Pork Bellies, Feeder Cattle)および1988年から1993年までの国内先物市場上場10商品(小豆,米国産大豆,トウモロコシ,粗糖,乾繭,生糸,金,銀,白金,ゴム),さらに「農村物価賃金統計」による国内豚肉(肥育豚生体10kg)•鶏卵(M1級,10kg)の値動きデータを使用して,期間1年,6ヵ月,1ヵ月の価格に関する変化率を比較した.その結果,鶏卵•豚肉の価格変化率は他の先物商品と比較して,ヘッジ(リスクを他へ移転すること)を必要とする水準にあることが明らかとなった.国内先物市場上場10商品の,順ザヤ(当限価格よりも期先価格が高い状態)または同ザヤ(当限価格と期先価格が等しい状態)期間の調査期間に占める比率と,発会ごとに売買最低単位である1枚を売り,納会ごとに売り契約を乗り換えるRoll hedge(生産者にとって,長期間にわたる大量の生産物の販売価格を,満期が個々に異なる一連の先物契約を利用してヘッジする方法)による損益の関係はr2=0.6200 (rは相関係数)であり,相関が有意に認められた(p<0.01).同様にCME畜産上場3商品のRoll hedgeとの関係もr2=0.9999となり有意な相関が認あられた(p<0.01).先物商品のうちStrorables(在庫可能商品)は順ザヤまたは同ザヤ期間が逆ザヤ(当限価格が期先価格よりも高い状態)期間よりも長い商品が多く,順ザヤまたは同ザヤ期間が長いほど売り方が有利であることが明らかとなった.また,国内先物市場10商品に関するRoll hedgeによる損益と実施年数から,Storablesに関する長期間のRoll hedgeは有利である傾向が示唆された.いっぽう,Nonstorables(在庫不能商品)は,逆ザヤ期間が長く,長期間のRoll hedgeは不利である傾向が示唆された.現在検討中の畜産物価格指数はNonstorablesと考えられるので,畜産生産者が先物市場を経営の安定化を目的として活用するには,売りヘッジを生産畜産物の範囲内にとどめ,ヘッジャーとして生産物の売却価格の将来的な固定を図るべきであり,オーバーヘッジ(生産者にとって,生産販売予定量以上を先物市場において売り約定すること)はリスクが大きい.いっぽう,畜産物先物市場を収益拡大の場として活用するにはストラドル(1つの先物契約を購入すると同時に,もう1つの先物契約を売却し,その価格の連関の変化から利益を得ようとする取引)等の技術が必要となる.
著者
ブンチャサック チャイヤプーン 田中 桂一 大谷 滋 コリアド クリスチーノM.
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.956-966, 1996-11-25
参考文献数
43
被引用文献数
6 2

低タンパク質飼料にメチオニンとシスチン(Met+Cys)を添加することによって雌ブロイラーヒナ(0から21日齢)の成長と脂肪蓄積に及ぼす影響を検討した.17%タンパク質(CP)含量試料(CP;17%,代謝エネルギー(ME);3,017kcal/kg)にMet+Cysを0.64%,0.93%,1.25%あるいは1.50%を添加した.23%CP含量の飼料(CP;23%,ME;3,017kcal/kg)を対照区とした.飼料摂取及び飲水は自由にさせた.増体量は23%CP飼料区の方が17%CP飼料区より大きかった.しかしMet+Cys1.50%添加17%CP飼料区の増体量は23%CP飼料区の値に近づき統計的に有意な差は観察されなかった.飼料要求率は23%CP飼料区の方が良かった.しかしタンパク質効率,飼料及びエネルギー摂取量は17%CP飼料区と23%CP飼料区との間で統計的に有意な差は観察されなかった.腹腔内脂肪量17%CP飼料区の方が高かった.しかし17%CP飼料区間ではMet+Cysの添加量が大きいほど腹腔内脂肪量は減少した.肝臓におけるacetyl-CoA carboxylase活性は処理間で差が観察されなかったが,fatty acid synthetase活性は17%CP飼料区の方が高い値を示した.一般に,低タンパク質飼料を給与すると肝臓,血清及び胸筋中のトリグリセリド含量は高くなるが,Met+Cysを1.5%添加することによって肝臓中のトリグリセリド含量は高タンパク質飼料区の値に近づいた.血清及び胸筋中の遊離型コレステロール含量は飼料中タンパク質含量の影響を受けなかった.肝臓では17%CP飼料区より23%CP飼料区の方がむしろ高かった.肝臓中リン脂質含量は飼料中タンパク質レベルやMet+Cys添加量による影響は観察されなかったが,胸筋中リン脂質含量は17%CP飼料区へのMet+Cys添加量の増加に伴って高くなる傾向を示した.本実験の結果は17%CP飼料でも適切な量のMet+Cysを添加することによって21日齢までの成長中ブロイラーの成長を改善することができることを,また腹腔内脂肪量は,23%CP飼料区の値よりは大きかったが,17%CP飼料にMet+Cysを添加することによって減少させることができることを示唆した.
著者
栗原 光規 久米 新一 高橋 繁男 相井 孝允
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.375-382, 1991
被引用文献数
4 1

高温時における乾乳牛のエネルギー代謝に及ぼす給与粗飼料の影響を検討する目的で,ほぼ維持量のイタリアンライグラス乾草(IH区)あるいはトゥモロコシサイレージ(CS区:大豆粕150g追加)を各2頭のホルスタイン種乾乳牛に給与してエネルギー出納試験を行った.環境条件は,相対湿度を60%に保ち,環境温度を18,26および32°とした.その結果,1) 体温および呼吸数は,環境温度の上昇とともに有意に上昇,増加したが,飼料間に有意な差は認められなかった.2) 総エネルギー摂取量に対する熱発生量の割合は,32°で増加する傾向にあり,その増加量はIH区の方が高い傾向にあった.3) エネルギー蓄積量は,CS区と比べてIH区の方が有意に少なく,また,環境温度の上昇とともに減少する傾向を示した.4) 摂取代謝エネルギー量に対する熱増加量の割合は,IH区では環境温度の上昇にっれて,CS区では32°で増加する傾向を示した.5) 維持に要する代謝エネルギー量は,IH区では18°と比べて26および32°でそれぞれ約6および11%,CS区では18および26°と比べて32°で約10%増加した.
著者
古谷 修 梶 雄次 浅野 猛 村山 隆一
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.407-413, 1988
被引用文献数
1

フスマ,脱脂米ヌカ,ナタネ粕,グレインソルガム,ミートボーンミールおよびフェザーミールの豚小腸末端までのアミノ酸および粗蛋白質(CP)の真の消化率を,小腸末端にカニューレを装着した9頭の子豚(開始時体重約30kg)を用いて測定した.実験1では, トウモロコシとコーンスターチを主体とする基礎飼料(CP3.3%)およびそのコーンスターチをフスマあるいは脱脂米ヌカで代替した飼料の合計3種類の飼料を用い,1試験期間4日間として3期にわたって消化試験を実施した.各期では4頭の豚に3種類の飼料のいずれかを,1日目の午後5時から8時間間隔で1日3回,400g宛給与し,3,4およびつぎの試験期間の1日目にあたる5日目の午後1~3特に小腸内容物を採取して分析に供した.消化率は酸化クロム法によって求めた.実験2では,ナタネ粕,グレインソルガム,ミートボーンミールおよびフェザーミールを供試し,基礎飼料およびそのコーンスターチの全部あるいは一部を各飼料原料で代替した4種類の合計5種類の飼料,5頭の豚および5試験期間による5×5のラテン方格法によって実施した.その他の条件は実験1と同様であった.試験の結果はつぎの通りである.小腸末端までの真の全アミノ酸平均消化率は,フスマ,脱脂米ヌカ,ナタネ粕,グレインソルガム,ミートボーンミールおよびフェザーミールで,それぞれ,85.6,70.4,81.7,80.4.,73.1および76.6%であった.また,CPの真の消化率は,それぞれ,82.1,65.8,79.8,71.2,73.8および76.2%であった.必須アミノ酸のうちでもっとも制限となり易いリジンの小腸末端までの真の消化率は,それぞれ,85.6,70.9,77.3,82.6,74.0および66.5%であった.必須アミノ酸のうち,アルギニンの消化率が全飼料原料の平均で87.2%となりもっとも高く,トレオニンは72.4%で最低であった.
著者
鎌田 靖弘 大城 伸明 屋 宏典 本郷 富士弥 知念 功
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.121-130, 1997-02-25
参考文献数
17
被引用文献数
1

ギンネムには毒性物質ミモシンが存在するため,家畜に多量給与するとミモシン中毒症を引き起こすので,飼料としては制限給与している.このミモシン中毒症の治癒,解明を行うためには実験動物にその中毒症を誘発させる必要がある.そこでまずブロイラー雛にミモシン中毒症を迅速で簡易に誘発させる研究を行い,またその中毒時のミモシンの代謝についても調べた.まず,7日齢のブロイラー雄雛にギンネム種子を粉砕し20メッシュの篩を通した種子粉末(ミモシン含量6.55%)を,市販飼料に0,10,15,20添加し各々12日間自由給与した.その結果,各種子粉末飼料群では食欲不振,体重増加の減少がみられ,更に座り込み,足をけいれんさせる特異的な脚弱症状,および腎臓の肥大化がみられた.また各組織でミモシンが検出され,特に羽毛,皮膚および腎臓で高い値が得られた.更に1%粗ミモシン飼料を自由給与すると,15%種子粉末飼料給与時と全く同程度の中毒症が認められミモシン中毒症と断定された.次に粗ミモシンを250mg/日,経口投与しながら市販飼料を給与すると,食欲不振と体重増加の減少は緩和した.しかし,各組織中でのミモシン含量は15%種子粉末飼料給与と同様に存在した.次に加齢とミモシン中毒症との関係を調べた.1,2,3,4および5週齢で15%種子粉末飼料を12日間給与すると,食欲不振,体重増加の減少は加齢に関係なく見られたが,組織中のミモシン含量は加齢に伴って減少した.最後に,ミモシン中毒症の雛に市販飼料を20日間給与し4日ごとに屠殺し,体内でのミモシンの代謝を調べた.その結果,まず市販飼料を給与した初日から食欲が回復し,採食量は市販飼料給与後17日目で対照群と有意差が認められなくなった.それに伴って体重も増加した.また各組織のミモシン濃度は羽毛,甲状腺では20日目でもミモシンが認められた.それに対し腎臓,血清,肝臓は4日目から,総排泄物は8日目から検出されなくなった.皮膚,筋肉,冠,精巣は20日目でも極少量のミモシンが検出された.
著者
宮本 元 西川 義正
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.205-210, 1979

°C付近通過の冷却速度が,牛精液の過冷却の程度におよぼす影響,ならびにその過冷却の程度が,牛の凍結•融解精子の生存性におよぼす影響について検討し,つぎの知見をえた.1. 最終グリセリン濃度が7%(v/v)になるように,卵黄クエン酸ソーダ液で希釈した1mlの精液をビニール製ストローに注入し,0°C付近を毎分0.5~109.8°Cの速度で通過冷却すると,過冷却点(過冷却が破れて氷晶の成長が始まる温度)は-4.0~-13.8°Cの範囲にあった.1mlの精液をガラスアンプルに注入し,0°C付近を毎分0.6~21°Cの速度で通過冷却すると,過冷却点は-3.0~-9.2°Cの範囲にあった.2.過冷却が破れ凍結現象が始まった後の冷却速度が同じであれば,希釈精液の過冷却の程度は,-196°Cに凍結した後の牛精子の生存性に影響をおよぼさなかった.3. 希釈精液の過冷却が自然に破れても,植氷によって破れても,凍結•融解牛精子の生存性に差は見られなかった.
著者
小松 正憲 西尾 元秀 佐藤 正寛 千田 雅之 広岡 博之
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.157-169, 2009-05-25
参考文献数
35
被引用文献数
1 2

黒毛和種繁殖肥育一貫経営農家経営において,BMSナンバーや枝肉重量(CW)に関与するQTLアリル型情報はどの程度収益上昇に活用できるかを,初期QTLアリル頻度 (<I>p</I>),計画年数 (<I>T</I>),DNAタイピング料金(<I>C<SUB>TYP</SUB></I>),使用する精液差額(<I>SEM</I>),種雄牛と繁殖雌牛の割合(<I>R (s/d)</I>)を変化させて検討した.その結果,BMSナンバーに関わる<I>Q</I>アリルを1個持つことで得られるBMSランク上昇分(Δ<I>BMS<SUB>QTL</SUB></I>)を1.0,BMSナンバー1ランク上昇分の枝肉単価(<I>CWP<SUB>BMS</SUB></I>)を150円/kg, <I>CW</I>を440 kg, CWに関わる<I>Q</I>アリルを1個持つことで得られる枝肉重量上昇分(Δ<I>C<SUB>WQTL</SUB></I>)を20 kg, 黒毛和種去勢枝肉単価(<I>CW<SUB>PU</SUB></I>)を1,900円/kgとした場合,QTLアリル型情報は,黒毛和種繁殖肥育一貫経営農家の経営に充分活用できると考えられた.また,以下のことが明らかになった.QTLアリル型情報を経営に活用する際,集団における<I>p</I>の頻度,<I>SEM</I>および<I>T</I>数が重要であり,<I>C<SUB>TYP</SUB></I>と<I>R (s/d)</I> の重要性は低かった.<I>C<SUB>TYP</SUB></I>が5千円/頭,<I>SEM</I>が1万円程度以下で,1頭当たり1万円程度の収益上昇を確保するためには,<I>p</I>の頻度は,BMSナンバーでは0.6~0.7以下,CWでは0.4~0.5以下であることが示唆された.繁殖雌牛集団のQTLアリル型情報は,<I>p</I>の頻度が0.5~0.7程度の範囲内,<I>T</I>数がBMSナンバーで6年以上,CWで8年以上であれば,収益上昇に貢献できることが明らかになった.
著者
林田 重幸 山内 忠平
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.183-189, 1956

トカラ馬は,生物統計学上,体型的に済州島馬,宮古馬,八重山馬,海南島馬及び四川馬に近似性を示し,御崎馬木曽馬,北海道和種,満州馬及び蒙古馬とは近似度が低い。<br>東亜の在来馬を南方小形馬と北方中形馬に分けることが出来る。南方小形馬に属するものは,済州島馬,南鮮馬,宮古馬,八重山馬,海南島馬,四川馬,雲南馬,貴州馬,トンキ馬,アンナン馬,東インド諸島及フイリピンの在来馬である。その典型的なものは四川馬の名で知られる四川,雲南,貴州の山岳地帯に飼養される矮馬であり,その体高100~120cmの矮小馬である。トカラ馬は南方小形馬に属す。東インド諸島及びブイリピンの馬はその基礎は小形馬であると考えられるが,アラブ系統馬によつて,やや貴化と大格化をみる。北方中形馬に属するものは,北鮮,満州,蒙古,伊犁,ハイラル,サンペースの馬である。その典型的な在来馬は,内外蒙古に飼養される蒙古馬であると考えられ,その体123~136cm平均131.4cm程度のものであろう。伊犁及びサンペース馬は蒙古馬にアラブの血液の注入されたものである。本邦在来馬である御崎馬,木曽馬及び北海道和種は大さの点で北方中形馬に入る。<br>南方小形馬と北方中形馬の分布は図のようである。
著者
カジャラン J. カジャラン S. シリノンコート S. 取出 恭彦
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.754-759, 1998

<i>Brevibacterium lactofermentum</i>より調製された酵素処理菌体末(DBCP)経口投与の初産母豚および哺乳子豚に対する影響について研究した.DBCPを妊娠期に投与する事により,出生時の一腹あたりの子豚数が増加した.DBCPの投与により,糞中の<i>Escheyichia coli</i>数が減少し,また母豚初乳中の全タンパク質,β-ラクトグロブリン,γ-ラクトグロブリンの量が増加する傾向がみられた.これらのDBCPの効果はDBCPに含まれるペプチドグリカンの免疫賦活効果によるものと考えられた.DBCPを妊娠16日から,授乳期まで投与し,更に,哺乳期に哺乳期用飼料添加により投与した場合が離乳時の一腹あたり子豚数および体重において最も良い成績が得られた.
著者
上坂 章次 堀 力
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.153-158, 1950

カゼインの高周波乾燥について予備的な試験を行い次の如き成績を得た。<br>1 平板極板を用いても金網極板を用いても生カゼインの乾燥效果には大差ないようである。<br>2 極板距離の小なる場合即ち電界強度の大なる場合程温度の上昇も速く,乾燥速度も速い。<br>3 生カゼインの厚みが薄い程温度上昇は早く,乾燥時間は短かくてすむ。<br>4 カゼインの乾燥に高周波を応用することは普通の方法では乾燥温度が余りに高くなるために品質を惡化する。<br>5 この乾燥温度をなるべく少くするために出力を落として照射したが乾燥時間が徒らに長くなり,かつ温度も相当高くなつて目的を達しなかつた。また扇風機を用いて送風しながら乾繰したが温度の上昇はまぬがれなかつた。
著者
西松 一郎 粂野 文雄
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.25-31, 1966

初生子牛による大豆蛋白質の消化率およびその利用性を知るために本研究を行つた。<br>1) 脱脂粉乳,乳糖,大豆油などを含む基礎飼料に大豆粕または妙つた大豆粉(キナ甥)を各々22.4%,27.8%混ぜ,ホルスタイン種雄初生子牛4頭を用い,生後10日令から39日令までを3期にわけ代謝試験を行い次の結果を得た.飼料の糧蛋白質の消化率は第1期(15~19日)大豆粕区46.4%,キナ粉区53.0%,第3期(35~39日)大豆粕区69.2%,キナ粉区76.4%でキナ粉区が若干よかつた.また,体重当りの1日窒素蓄積量およびみかけの生物価は第1期(15~29日)大豆粕区0.03g,10.8%,キナ粉区0.13g,31.7%,第3期(35~39日)大豆粕区0.11g,29.6%,キナ粉区0.26g,50.4%でキナ粉区がよかった.基礎飼料の粗蛋白質の消化率を用いて,大豆粕とキナ粉の粗蛋白質の消化率を求めると,第1期(15~19日)大豆粕0%,キナ粉10.9%,第3期(35~39日)大豆粕43.2%,キナ粉54.5%となる.第3期は第1期に比し消化率が高くなつた.<br>2) 全乳を基礎飼料とし,ホルスタイン種雄初生子牛4頭を用い10日令から41日令までを4期にわけ,4種の飼料A:大豆粕100g/day,B:大豆粕20g/day,C:キナ粉100g/day,D:キナ粉200g/dayを与えて,ラテン方格法で代謝試験を行い,次の結果を得た,牛乳+飼料の組蛋白質の消化率,体重当りの1日窒素蓄積量およびみかけの生物価は各々平A:91.7%,0.23g,47.3%,B:87.0%,0.28g,46.9%,C:91.1%,0.25g,51,3%,D:88.2%,9.29g,52.5%で各飼料間に有意差はなかつた.牛乳の粗蛋白質の消化率を用いて大豆粕とキナ粉の粗蛋白質の消化率を計算すると,各々平均79.7%,78.2%となった.<br>3) 大豆蛋白質の消化率,体重当りの1日窒素蓄積量およびみかけの生物価は,基礎飼料が全乳の場合は脱脂粉乳の場合に比し著しく高くなつた.
著者
古川 徳 高橋 強 山中 良忠
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.153-159, 1996-02-25
被引用文献数
1

パイェル板細胞と胸腺細胞および脾臓細胞との相互関係を明らかにするため,ケフィール粒から分離した菌体区分(KGM),多糖区分(KGP)およびタンパク質区分(KGPP)を添加してin vitroで培養したパイエル板細胞の培養上澄液(PPS)が胸腺細胞ならびに脾臓細胞のマイドジェン応答性に及ぼす影響を検討した.<br>正常C3H/HeJマウスから得た胸腺細胞の増殖は,KGMおよびKGPPを添加して培養した正常C57BL/6マウスならびにLewis担癌C57BL/6マウスのPPSの添加によっても影響されなかった.KGPを添加して培養したバイエル板細胞から得たPPSの添加は,胸腺細胞に対するフィトヘマグルチニンーP(PHA-P)のマイトジェン活性を高めた.この傾向は,正常C57BL/6マウスのPPSに比べてLewis担癌C57BL/6マウスのPPSで高い傾向を認めた.また,胸腺細胞に対するPHA-Pのマイトジェン活性は,KGPPを添加して培養したLewis担癌C57BL/6マウスのPPSの添加によっても促進された.しかしながら,これらのPPSの添加は,胸腺細胞に対するコンカナバリンA(Con A)およびリポポリサッカライド(LPS)のマイトジェン活性に影響しなかった.<br>正常C57BL/6マウスから得た脾臓細胞の増殖ならびにCon A, LPSおよびPHA-Pに対するマイトジェン応答は,KGM, KGPおよびKGPPを添加して培養した正常C57BL/6マウスPPSの添加によって影響されなかった.いっぽう,Lewis担癌C57BL/6マウスのパイェル板細胞にKGPおよびKGPPを添加して培養し,分離したPPSは,正常C57BL/6マウスから得た脾臓細胞の増殖と脾臓細胞に対するCon Aのマイトジェン活性を高めた.さらに,KGPを添加して培養したLewis担C57BL/6マウスのPPSは,脾臓細胞に対するLPSおよびPHA-Pのマイトジェン活性をも高めた.
著者
内田 宏 山岸 敏宏
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.819-825, 1993
被引用文献数
1

黒毛和種の子牛市場成績,繁殖雌牛の体型,肥育成績などの経済形質に対して近親交配がどのような影響をもたらすかを調べた.材料牛は宮城県内の市場に上場された15,142頭の子牛,県内の11の改良組合の改良基礎雌牛(3歳以上)1,042頭および986頭の去勢肥育牛である.子牛では叔姪交配(近交係数6.25%以上)による近親交配が全子牛の16.4%を占めている.また,繁殖雌牛および肥育牛では,近交係数が6.5%以上のものが,それぞれ13.3%と13.4%を占めている.子牛の日齢体重は,近交度が上昇するにつれて小さくなっており,子牛市場上場時の発育形質に,近交退化が認められた.繁殖雌牛における近交係数に対する体測定値の一次回帰係数は,体高を除いた部位がすべて負となり,近交係数の高いものほど体測定値は小さくなる傾向にあったが,かん幅の体高比を除いて有意性は認められなかった.肥育牛の近交係数に対する発育形質の一次回帰係数はすべて負で有意となり,近交度の上昇にともない発育が低下しており,肥育牛の発育形質においても近交退化が認められた.一方,脂肪交雑の近交係数に対する一次回帰係数は正で有意であったが,種雄牛と一次回帰との間に交互作用が見られ,脂肪交雑に及ぼす近交の影響が種雄牛によって異なることが分った.