著者
足立 里美 阿久澤 さゆり 玉木 有子 松森 慎悟 中村 雅英 澤山 茂
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.136, 2004 (Released:2005-04-02)

【目的】 わらび澱粉はわらびの地下茎から抽出され「わらび粉」として流通しており、わらび餅などに珍重されている。しかし、生産量が少なく高価なため、さつまいも澱粉が代替品として使用されている。演者らは、数種類の澱粉の理化学的性質およびレオロジー的性質について報告してきたが、わらび澱粉に関する報告はあまり見られない。そこで本研究では、わらび澱粉の糊化特性と糊液のレオロジー的性質を検討した結果を報告する。【方法】 わらび澱粉は、広八堂(鹿児島県)で製造された粗澱粉を、常法に従って精製して試料澱粉として用いた。対照としてさつまいも澱粉およびくず澱粉を用いた。アミロペクチンの鎖長分布はHPAEC-PAD法 (Dionex社製DX-500) で測定し、DSCにより糊化特性を測定した。また、SEC-MALLS (昭和電工社製:Wyatt Tecnology社製) により重量平均分子量および慣性半径を測定した。糊液の動的粘弾性測定はRheoStress1 (Haake社製) を用いた。【結果】 DSCによる糊化終了温度は、わらび澱粉が70.8℃と最も低く、次いでくず澱粉78.5℃、さつまいも澱粉83.8℃であり、アミロペクチンのDP6-12の短鎖長の割合が多いほど糊化ピーク温度が低い傾向であった。また、糊液を遠心分離後、上澄み中に溶解した糖量を比較すると、わらび>さつまいも>くずの順で糖量が多く、さらに溶液中の重量平均分子量および慣性半径を測定したところ、わらび澱粉糊液は著しく大きかった。動的粘弾性からみたゲル化濃度はわらび澱粉が最も低く、貯蔵弾性率の濃度依存性より3種のゲル構造の違いが示唆された。
著者
森 理恵
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.155-164, 2008

本報告では、第二次世界大戦期と戦後高度経済成長期にはさまれた時期の日本の衣生活について明らかにしようとするものである。敗戦後の衣服が欠乏した状態から、衣服が自由に手に入るようになるまでの過渡期の状態については、これまでじゅうぶんに明らかにされているとは言えない。そこで、1950年前後の、総合女性月刊誌「婦人朝日」の記事を分析することにより、当時の女性たちがどのようにして衣生活を再建していったかを明らかにした。女性たちはまず、洋裁学校や洋裁の本で洋裁技術を獲得し、古着や着物を更正して、洋服を作っていった。1950年以降は新しい生地が手に入るようになり、衣服の種類が増え、デザインの幅も広まった。一方、女性たちは、敗戦後の生活物資の不足による、家庭内や家庭外での多くの労働のなかで、和服生活から洋服生活へ移行しつつあったため、和服のよさを再認識しながら、独自に動きやすく働きやすいデザインを工夫していたことが明らかになった。
著者
角田 久美子 大久保 みたみ 山本 学
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.959-968, 1995

Nutritional survey was carried out for aged individuals who lived singly in Akishima City and received community meal service twice a week, and the results were compared with those of the individuals, who did not receive the meal service. Their food habits were correlated with their daily activities. Thus, the more active life they spent, the better food habits they had.<BR>Individuals, who received meal service, spent rather passive life and their food habits were poor and monotonous. On their nutrients intake, the estimated mean intake of protein was 41g/day and that of iron was 5.5 mg/day. These were significantly lower than those in the individuals who did not receivethe meal service (<I>p</I>< 0.01).<BR>With respect to service meals offered, these meals contained rich nutrients compared with the requirements of them. However, the evaluation of present meal service program revealed that twice service a week did not serve to improve their food habits, or to correct their nutrients intake.
著者
稲葉 ナミ 桑田 百代 三東 純子 湯本 和子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.185-187, 1966

住所作業の代表として、物の水平移動と物をおし切る動作をとりあげ、エネルギー代謝と脈搏数を測定し、作業台の至適高を求め、身長比に換算した結果、次の結論を得た。2種の作業による至適面高は、各被検者とも身長の50~54%の範囲内にある。<BR>今後、さらに、筋電計を用いて、同様の実験を行ない、その上で最終的な結論を得たいと考えている。
著者
中嶋 朝子 中島 清子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.172-177, 1962

室内温湿度24.3~29.3℃、湿度57~80%において成人女子2名を被検者とし、四種の試験用マットレスを使用した場合即ちソフランマットレス・ハマフォームマットレス・わら布団・わら布団ともめん綿入り敷布団を重ねた場合について、その透湿性を知る為就床時の寝床内温湿度(上腹部・下肢側部)、マットレス内外面温湿度(上腹側部)などを測定した。温度測定は銅-コンスタンタン熱電対を用いて電位差計法により、湿度測定はミニマ鋭感湿度計を用いて行ない、両被検者とも各マットレス2回ずつ計16回測定した。その測定結果より次のことがわかった.<BR>(1) 寝床内温湿度・マットレス内外面温湿度の変化<BR>寝床内は就床により温度は上昇し湿度は低くなるが、温感が暑・蒸暑になると湿度は急に増加する。180分までの各マットレス内面及び外面の湿度増加を掛にタオル布団を用いた場合についてみると、ソフラン-内面6~2%・外面6.5%、ハマフォーム-内面3~21%・外面8~13%、わら-内面1.6~13.5%・外面0.8~2.5%、わら及びもめん-もめん内面3~23%・外面8~17%、わら内面9~15%・外面0.9~1.4%である。ソフラン・ハマフォーム・もめんの内外面湿度は増加しているが、わら外面は就床前と殆ど変化がない。<BR>(2) マットレスの透湿性<BR>就床前と180分後におけるマットレス内外面の温湿度から水蒸気張力を求め、その就床前よりの増加量を算出し、これらの内面増加量に対する外面の増加量をみると、ソフラン-0.43~0.53.ハマフォーム-0.30~0.62、わら-0.17~0.32わら及びもめん、-もめん綿0.67~1.00、わら-0.15~0.24で使用3時間における透湿度はソフランマットレス・ハマフォームマットレスは大体同じ程度であり、わら布団は透湿が最小であった。
著者
岡田 みゆき
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.3-15, 2003

The objective of this study is to clarify how the nature as well as the contents of a dinner time talk between parents and their children has changed over the years. The children under study are those in elementary school and junior high school. For this purpose, the junior high school students' perception of dinner conversation was surveyed and compared to the results obtained of elementary school children. The results are as follows : 1) Junior high school students have conversation with parents less frequently than when they were elementary school students. The percentage of the students who feel happy or useful about dinner conversation is becoming lower. 2) Overall, the conversation seems to be centered around their entrance examinations; more specifically, their academic achievement and future aspirations. The subjects such as their school life, episodes in their younger days, and political and economic issues are less frequently taken up. 3) Among those students who feel happy and useful about the dinner time talk with parents, the junior high school students would want to talk more about subjects such as their academic achievement in connection with their future, social issues, and things about their parents. 4) There is more significant relevance between the children's image of their parents and the contents of conversation than when they were elementary school students.
著者
長野 隆男
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.219, 2005 (Released:2005-12-08)

目的)豆腐の製造において,異なる種類の凝固剤が使用される。本研究では,豆腐の凝固機構が異なる,塩化マグネシュウム(MgCl2)とグルコノデルタラクトン(GDL)を凝固剤に用いて豆腐を作製し,力学物性,保水性,ゲル構造について調べた。方法)一晩浸漬した大豆に蒸留水を加えて(豆に対して5倍量)ミキサーにかけ,生呉を絞り生豆乳を得た。生豆乳を,96℃,5分間加熱してすぐに室温まで冷却し,豆乳を得た。得られた豆乳に蒸留水を加えて,様々な濃度の豆乳を調製した。濃度を調製した豆乳に0.3%の凝固剤を加え,GDLを添加した豆乳は85℃,MgCl2を添加した豆乳は70℃で,それぞれ30分間加熱をおこない豆腐試料を得た。力学物性は破壊試験,保水性は遠心法,豆腐のゲル構造は共焦点レーザー走査顕微鏡による観察をおこなった。結果)豆乳固形分が,MgCl2塩添加豆腐では3.7%,GDL添加豆腐では10%以上の濃度で豆腐を形成するようになり,GDL添加豆腐の方が低い豆乳濃度で作製できた。MgCl2とGDL塩添加豆腐の両方とも,豆乳固形分の増加に伴い,力学物性値(破断応力,破断歪,ヤング率)と保水性は高くなり,タンパク質のネットワーク構造は密な構造となった。豆乳濃度が同一の条件でMgCl2とGDL添加豆腐を比べると,GDL添加豆腐の方が,力学物性値,保水性は高い結果となり,タンパク質の凝集物は小さくより均一なゲル構造であった。ゲル構造は,豆乳の濃度を低下させて豆腐を作製すると,より明らかになった。現在,豆腐の力学物性とゲル構造の関係を,詳しく解析しているところである。
著者
岡田 宣子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.37-44, 1992

自己の体つきの意識と体つきに配慮する生活行動とのかかわりを, 下着の衣生活を中心に検討するため, 質問紙調査に基づき数量化第III類を用い考察した.対象は20歳前後の女子400名とその母親366名である.調査は1985~1988年の5~6月に実施された.<BR>(1) 各解析項目の検討から, 体つきに配慮する生活行動を食生活やスポーツに求める人は, 娘, 母親ともに20%を占めている.これに対し, ブラジャーおよびガードルに整容効果を求める人は母親60%, 娘45%で, 体つきに配慮する生活行動を衣生活に頼っている現状が明らかになった.<BR>(2) 胸囲, 胴囲, 腰囲を大きいと意識する者は, 痩せるために食生活やスポーツにも体つきに配慮する生活行動を起こしている傾向がみられた.<BR>(3) 娘と母親とは胸囲に対する意識構造が異なり, ブラジャーの着用行動には明白な相違が認められた.<BR>(4) ガードルの着用行動には娘と母親はともに類似した傾向が認められた.<BR>(5) ファウンデーションの着用による弊害経験が, 実生活でブラジャーおよびガードルを着用しないとする行動とかかわっていることが明らかになった.このことは, 肌に密着したファウンデーションの生体に与える影響の大きいこと, ブラジャーおよびガードルの適正な活用のたいせつさを示唆しているものと思われる.
著者
大曲 希実 安田 みどり 日野 まど香 大渡 瞳
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.68, 2014 (Released:2014-07-10)

目的 一年草の水草であるヒシは、アジア地域に広く自生している。ヒシの実は、食用として食されるだけでなく、昔から婦人病などの民間薬や漢方薬としても用いられてきた。我々はヒシの実の外皮の有効利用を目的として、外皮に含まれるポリフェノール成分に注目し、その化学的特性や生理機能性について調べた。方法 乾燥、粉砕した佐賀県神埼市産のワビシ(Trapa japonica)の外皮を60%アセトンにて抽出し、カラムクロマトグラフィーにて分取し、ポリフェノール画分をさらにHPLCにより分取・精製を行った。得られたポリフェノールをLC/MSおよびNMRにて測定し、ポリフェノールを同定した。これらのポリフェノールについて、温度、pHに対する安定性を調べた。さらに、生理機能性として、抗酸化作用、糖質分解酵素の阻害作用について調べた。結果 ヒシ外皮のポリフェノールを分取・精製し、主要な3つのポリフェノールを得た。これらは、加水分解型のポリフェノールで、eugeniin、1,2,3,6-tetra-O-galloyl-β-D-glucopyranose、trapainと同定した。温度に対しては、trapainが熱に弱いことが明らかになったが、その他については熱に強いことが明らかになった。また、pHについては、pH8以上では、酸化されるため、不安定になることがわかった。さらに、3つのポリフェノールは、高い抗酸化性を有し、糖質分解酵素の阻害作用を示した。
著者
岡本 祐子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.923-932, 1995

高齢者の精神的充足感獲得の実態を調査し, それに関連する生活的・心理的要因を分析した.高齢期の精神的充足感形成に関連する要因として, (1) 高齢者をとりまく物理的・環境的状況に関する要因 : 家族構成において配偶者や孫と同居していること, 健康, 経済状態がよいことなど, (2) 自分の現状に対する高齢者自身の主観的評価に関する要因 : 他人や社会に対する貢献度, 家族との関係, 宗教・信仰などにおいて満足できていること, (3) 高齢期以前の要因 : 現役引退までの職業, (4) 人格的要因 : 主体的欲求をもっていること, の四つの側面が存在することが示唆された.高齢期の精神生活の質的向上のためには, これらの側面の状況の改善とともに, 高齢者の主体的欲求が実践できるような支援を行っていくことの必要性が考察された.
著者
塩田 芳之
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.208-211, 1972

1. 包装、内容量には数種類の形態があり、市場価格および使用説明にある砂糖等の割合は非常に異なる。<BR>2. 成分的にはタンパク質、繊維にかなり差が見られる。<BR>3. 白あん以外はすべて着色され、赤色 2、 3、 104号等が多く使われている。<BR>4. デンプンのα化度は 40~90% であった。<BR>5. あん粒子が壊れ、デンプンが外に出ているもの、種皮が多く含まれているもの等があった。<BR>6. デンプン粒子が多く出ているあんと正常な粒子が多いあんでは粘性に差がある。
著者
野崎 有以
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.117, 2015 (Released:2015-07-15)

目的 生活学は、考現学の創始者として知られ評論家的な立場から家政についても論じた今和次郎によって提唱されたとされている。生活学は今和次郎の家政論における大きな特徴のひとつとも言える。多くの先行研究では、今和次郎は1951年に生活学を提唱したとされているが、それ以前より生活学の構想について言及しており、生活学の提唱時期については先行研究によって大きな開きがある。生活学の成立時期のずれを探ることによって、生活の捉え方の変化について検討していくが本発表の目的である。方法 主に今和次郎の生活学や家政に関する著作や工学院大学図書館今和次郎コレクション所蔵資料などをもとに考察した。結果 生活学の成立時期のずれについてはいくつかの理由が考えられた。ひとつには今和次郎の生活学などを含む家政思想が、生活科学などの戦時期の思想と結びつくおそれがあったということが挙げられる。しかし、そうした否定的なものだけではないとも考えられた。祐成保志や山森芳郎らの先行研究やその他の資料から、今和次郎は娯楽や休養などの側面から生活を把握する独自の立場をとっていたため、生産優先の戦時的な生活研究と余暇と消費を重視する戦後的な生活研究が対比されるなかで、彼の生活学が「戦後的」なものであるとの判断が定着したことが要因のひとつであることや、戦後の家政学における政策的な面についての疑問から再度生活学を提唱する必要が生じた可能性が指摘された。
著者
久武 綾子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.188-191, 1966

1) 名古屋市を、住宅、商工業、商業、工業地域にわけ各々代表区を選び、婚姻届によって結婚式直前の夫と妻の職業を調査し、その中、夫と妻が同業のものをさがし、その同業の率を求めた結果、職業的な一つの通婚圏の実態が把握された。<BR>2) 職業中分類の教員は、調査の初年(昭和25年)頃より夫と妻の同業率が高く、他の職業と異なり、その後の年次的変化はみられず、その約25~30%は同業であった。<BR>3) 一般事務徒事者は、中分類における同業の率は、年と共に高くなり、最近では30~35%位、妻も一般事務徒事者である。<BR>4) 技能工のうち、小分類、中分類内の同業の多い職種は、女子でも就業可能な紡績、織物、陶磁器、飲食料品製造徒事者などで、最近ではこの件数もかなり増えている。<BR>5) サービス職業従事者の中では理容師問、料理人と給仕人との婚姻のような職場を同じくする者の間の同業が多い。<BR>6) 職業小分類、中分類内の同業者の婚姻には、いわゆる職場結婚と推察される標本も少なくなく、それにより結婚形態の一つの近代化が認められます。
著者
地井 昭夫 永原 朗子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.599-610, 1996

以上の結果から, 金沢市における高齢者のいる家族の住生活の安定性について, 次のことが指摘できる.<BR>(1) 調査対象期間における住生活の安定性の変化について見ると, 結婚, 未婚, 転勤, 夫婦の高齢化, 就職, 離婚, 転居, 家族関係の不和, 就職・結婚, 子供なしや富山市で見られなかった配偶者の転勤, 高齢者の夫死亡, 子供の死亡, 養子縁組, 転勤・結婚等を契機とする居住地選択によって, 富山市と同様, 安定型, 準安定型, 準不安定型, 不安定型等の多様な住生活タイプを形成しており, 子供の結婚, 就職による他出が大きな転機となっている.<BR>(2) 将来も同居を継続, もしくはその可能性のある安定型の居住関係をとる家族は73家族 (64.6%) であるが, 残りの40家族 (35.4%) は子どもと離れて暮らす不安定型等 (準安定型, 準不安定型, 不安定型) の居住関係を形成しており, 富山市と同様, 安定型以外の居住関係をとる家族が約4割いる.<BR>(3) 今回のサンプル数からは断定出来ないが, 娘と近居にある家族は, 富山市は19家族 (17.1%) であったが金沢市は8家族 (7.1%) しかなく, 両市の家族関係意識の差異を表すものと考えられる.また, 借家, 公営, 社宅等に住む家族は, 富山市で安定型が1家族 (1.7%), 安定型以外が8家族 (15.4%) であったが, 金沢市は安定型が2家族 (2.9%), 安定型以外が1家族 (6.7%) であり, 富山市の場合ほど, 住生活の安定性と住宅事情の問の相関関係は顕著ではないと思われる.<BR>(4) 高齢者の就業は, 無職から有職に変化した人は1人いたが, 有職から無職に変化した48人を含めて現在, 85人 (75.2%) が無職である.しかし, 85人のうち5人は子供のいない高齢者であるため80人が子供から何らかの援助 (含・精神的) を受けていると思われる.なお, 将来において, 同居継続もしくは同居に変化する可能性のある73人は, 子供からの援助がより緊密になると思われる.<BR>以上見てきたことから, 金沢市における高齢者の住生活は, 現在および将来にわたって, 大局的には富山市と似た傾向を示しており, 特に, 将来, 安定型以外の居住関係をとる家族が, 両市共に約4割いることは注目される.<BR>したがって, 今後, 子供の数の減少や扶養意識の変容から, これらの家族に対する支援は不可欠となってくる.<BR>家族, 地域, 行政によるきめ細かな高齢者福祉対策や住宅対策が求められる.<BR>次報では, 一連の調査結果から富山市と金沢市の住生活を総括的に比較すると共に, 住生活の安定性から見た今後の課題を整理するため, 本調査と行政および民間の取組み状況や今後の取組みについて検討し, 第2報で報告した住生活の安定性のタイプと高齢者の心身の自立度レベルのクロスによる家族・地域ケア, 医療・福祉施策および求められる住宅タイプや施策に関する整理と提案を行いたい.
著者
津久井 亜紀夫 小林 恵子 斉藤 規夫
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.115-119, 1989

フィリピン酸紫ヤム塊根粉末中のアントシアニン色素の安定性に関する研究の一環として, 蝶豆花アントシアニン色素とpH, 温度, 紫外線ならびに窒素ガス中での貯蔵における影響について検討し, 下記の結果が得られた.<BR>1) UBEおよびPAのANの23日後の色素残存率は, それぞれ 30℃ で 97% と 77%, 60℃ で 61% と 30%であった. 90℃ では4~5日でほとんど分解された.<BR>2) UBEおよびPAのANをアンプル管に入れ, 60℃で23日間加熱した.空気中での色素残存率はUBEが62%, PAが30%であったが, 窒素中では, それぞれ約85%で安定であった.<BR>3) UBEおよびPAのAN溶液に殺菌灯を直接照射した場合は6時間後約20~30%の色素残存率であったが, アンプル管中のPAの色素残存率は100%, UBEが約95%で安定であった.また屋外に放置した場合は両ANとも1日間で分解退色した.<BR>4) PAのAN溶液に各種添加物を添加し, 加熱した結果, とくにレアスコルビン酸および過酸化水素水によって, 分解退色した.<BR>以上の結果, UBEのANは, ANの中では温度には比較的安定で紫外線照射さえ避ければ十分に加工食品への利用が可能であると考える.
著者
三井 隆弘 重松 公司
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.147-150, 2012

The joule (J) has been the only scientific unit of energy included in the International System of Units(SI) since the 1950s; nevertheless, the calorie (cal) is still commonly used as a unit of energy in the field of nutrition and related areas. The unit used in any particular academic paper depends on the editorial policy of the publishing journal, so there is a great deal of inconsistency among academic papers in this field. We investigated in the present study the policy on energy units in 20 noted international journals and consider the reasons for each journal's policy. We identified five types of journal policy after contacting the journals and looking up 'energy intake' in PubMed. Two journals have exclusively adopted kJ (MJ), three require kJ but also permit authors to provide kcal in parentheses where appropriate, one allows the use of kcal but also requires kJ in parentheses when kcal is used, twelve allow both kcal and kJ, and two have exclusively adopted kcal. Despite the general prevalence of using SI units in the modern world, kcal remains widely recognized as a unit of energy in the field of nutrition. We suggest four possible reasons for this. First, J did not originally refer to heat or potential energy. Second, the potential energy of food is measured by burning it and measuring the resulting increase in the temperature of water in a process directly related to the definition of cal. Third, cal is easy for the general public to understand. Fourth, cal is the unit most commonly used by the general public in daily life, and therefore must be adopted in field studies.
著者
久保 加織 玉記 加奈子 堀越 昌子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.21, 2006 (Released:2008-02-28)

【目的】ふなずしは塩漬けの後、飯とともに長期間熟成させ、製造されるが、食されるのは魚体であり、漬け床である飯はほとんど利用されない。しかし、この飯には魚から溶け出した成分の存在が考えられる。本研究では、飯の食品材料としての価値を検証し、洋菓子への添加について検討した。【方法】ふなずし飯は大津市内のふなずし専門店から漬け込み期間の異なる2種類を供与されて用いた。ふなずし飯およびそれから調製した菓子の成分として、水分、灰分、およびカルシウム、鉄を常法通りに、塩分をモール法により測定した。脂質をBright and Dyer法により抽出し、メチル化後にガスクロマトグラフィーに導入することにより脂肪酸組成を調べた。菓子の嗜好性については官能検査により判定した。官能検査は、外観、香り、食感、味、総合評価の5項目について5段階評価法で行った。【結果】 ふなずし飯には、魚由来と考えられるカルシウム、鉄、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イコサペンタエン酸(IPA)が豊富に含まれていた。飯を水中で撹拌、ろ過することによって塩分は4.5%から0.7%にまで減少し、これを脱塩飯として用いた。なお、pHは脱塩前後でほとんど変化せず3.8であった。飯を添加した菓子として、クッキー、チーズクッキー、バターケーキ、チーズケーキを調製して官能検査を行った結果、最も評価が高かったのはクッキーであリ、飯の含有率では20%が最も好まれた。飯の漬け期間の長さは官能評価にほとんど影響しなかった。脱塩飯を添加したクッキーは、カルシウム含量を98mg%と通常のクッキーの約5倍量含み、DHAやIPAも微量ではあるが含んでいた。
著者
武田 紀久子 大久保 みたみ 高崎 禎子 唐沢 恵子 石川 尚子 大関 政康 大竹 美登利 川端 博子 斉藤 浩子 林 隆子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.3-13, 1992

東京多摩西部地区 (青梅市) の高齢者の総合生活調査の一環として食生活調査を行い, 次の結果を得た.<BR>(1) 大部分の人が1日3回の食事と, 1~2回の間食をとっていた.主食としては米飯が最も多かったが, 30%の人は夕食に麺類を摂取していた.また, 1日の平均汁物摂取は, 1.9杯であった.<BR>(2) 緑黄色野菜, 淡色野菜, 果物, 大豆製品, 卵は毎日, 魚, いもなどは週3~4回以上摂取している人が多く, 食品のバランスとしてはほぼ良好であった.酒・牛乳以外のほとんどの食品類において, 女性の摂取頻度は男性よりも高率であった.また, 男女とも自分が食事作りをする人はしない人に比べ, 毎日の摂取頻度が高い食品類が多かった。摂取頻度の高い調理法は, 魚では, 焼き魚, 煮魚, 野菜では煮物, 妙め物であった.<BR>(3) 主食となる料理では, うどん, 寿司, 赤飯が好まれた.主菜は, 男性には刺身, すき焼き等の馳走が, 女性には焼き魚, 卵焼き等の惣菜料理が好まれた.また, 女性は主菜よりも野菜中心の副菜を好む率が高かった.<BR>(4) 自分で調理を担当するのは, 女性は約50%, 男性は約10%であった.<BR>(5) 外食の頻度は月1回以上が46%を占めた.市販のおかずの利用頻度は週1回以上が約60%であり, 利用理由として男性は食品の多様性, 女性は簡便性を挙げていた.<BR>(6) 食事の満足度は97%と高率であった.<BR>(7) 子供と同隣居の高齢者は, 別居の場合よりも, 間食回数, 汁物の摂取量が多く, また, 米飯の摂取頻度や市販のおかず・外食の利用頻度も高かった.<BR>(8) 子供と別居している女性は, 98%が食事作りを担当しているが, 食品の摂取頻度は高く, 市販のおかずや外食の利用頻度は低いなど, 日頃から自分の食生活に留意しているようすがみられた.
著者
森 理恵
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.197-212, 2015

The purpose of this study was to clarify how the term <i>kimono</i> became popular as a way of referring to Japanese traditional clothing. <br>  We collected articles from the <i>Yomiuri</i> and <i>Asahi newspapers</i> in which the term <i>kimono</i> in <i>kanji</i>, <i>katakana</i>, and <i>hiragana</i> were used by searching those words on their online databases, and analyzed them in order to find out the meaning of the word, as well as the sex and the nationality of the people who wore or possessed <i>kimono</i> in the articles. <br>  We found the following: Firstly, <i>kimono</i> once referred to clothing in general or <i>nagagi</i> (long garment), regardless of which sex it was meant for. Secondly, <i>kimono</i> came to mean Japanese traditional clothing in the 1900s after the word "kimono" was established in Western languages. Thirdly, the word "kimono" tended to be used for women while <i>wafuku</i> and <i>nihonfuku</i> were gender-neutral words. In addition, it became increasingly common to write <i>kimono</i> in hiragana in the 1960s, during which time the main consumers of <i>kimono</i> were women, who preferred that it be written that way.