著者
下村 道子 島田 邦子 鈴木 多香枝 板橋 文代
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.516-523, 1973-11-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
10
被引用文献数
1

1) 官能検査においてしめさばとして好まれたものは塩じめ時間の短かいときは食塩量の多い方が, 塩じめ時間の長いときは食塩量の少ないものが好まれた.2) 塩じめによる食塩の魚肉への浸透は食塩量が多い場合に表面と内部ではかなりの濃度差を生ずるが, これを1時間酢じめにすることによって, 表面に近い部分の食塩は溶出し, 一部はさらに内部に浸透し, 全体で平均化してくる.官能検査の結果と比較してみると食塩濃度2.5%ぐらいのものが好まれている.3) 魚肉の塩じめによる硬さは, 食塩量と塩じめ時間によるものであり, 硬さの測定値は頭部, 尾部が高く, 胴部が低いが, これは生の状態で残っている部分が柔らかくこの影響によるものと考えられる.官能検査で好まれたものは, 表面がしまり, 内部が一部柔らかいもので, 柔らかすぎるもの, 硬すぎるものは好まれなかった.カードメーターによる硬さの測定値と塩じめによって変色した部分の割合との間に有意な相関関係がみられた.4) しめさばの重量は, 塩じめによって減少する.そして, 酢に浸漬することによって, 食塩の少ないものは重量が増加し, 食塩の多いものはさらに減少した.重量の増加するものは, 表面が柔らかく, 官能検査においても好まれなかった.
著者
浜島 教子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.241-245, 1981-04-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
5
著者
大塚 斌 藤田 真弓 近藤 四郎 菊田 文夫 高橋 周一
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.377-385, 1993-05-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
18

The foot projected contours from the right and left feet were taken with 149 male and 177 female Japanese adults. The samples were classified using two methods, especially focussing on the shapes of the forepart in the feet. One method is a classification using the foot length I and the foot length II. Comparing the foot length between I and II, the feet were divided into three types. The other method is a classification using the angles of the toe 1 and the toe 5. The feet were divided into four types, depending on whether the toe 1 was outward to the toe 5 or not, and whether the toe 5 was inward to the toe 1 or not.The results disclosed that the occurrence in type of A. 15 denoting the longer foot length I, the outward toe 1 to the toe 5 and the inward toe 5 to the toe 1, was the most frequent, amounting to ca. 44% in males and ca. 45% in females. It was, therefore, concluded that the shoes last fitting this type of A · 15 should be industrially produced most frequently.
著者
山本 昭子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.939-947, 1999-09-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
16

歩行に伴う足囲ボールおよび足先長の変化を定量的に把握するため, 22歳の女子3名を被験者として, 立脚期の歩行動作時の前足部を, 硬軟2種類の粘土上において, 石膏レプリカを採取する方法で検討した.結果をまとめると次のようになる.(1) 足囲ボールは, 歩行時, 軟粘土上ではほとんど変化しないが, 硬粘土上では, 蹴り出し時の爪先離地直前に, 片足直立時より2.7% (6.4mm) 減少する.立位静止時の足囲ボールに対しては約2.1% (5mm) の減少となる.硬粘土上での減少率を通常の歩行時のものと考えると, それらの変化量の把握は, 靴型の足囲寸法設計のための情報として有用である.(2) 足先長の足底側寸法は, 蹴り出し時の爪先離地直前に, 硬粘土上では, 片足直立時より13.4% (9.5mm), 軟粘土上では9.6% (6.9mm) 増加する.また, 足背側寸法は, 硬粘土上・軟粘土上共に約21~23% (13.5~15mm) 減少する.硬粘土上での足底側足先寸法の増加量 (9.5mm) は, 立位静止時の足長寸法の約4%に相当する.それらの変化量の把握は, 靴型の爪先余裕長の設計のための情報として有用である.
著者
稲葉 ナミ
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.32-38, 1959-04-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
2

1 家族数の少ない(2人家族)一般家庭の夫婦がひまで、家族数の多い(6人以上の家族)共稼ぎの夫婦が忙しいことは予想される通りであつた。2 夫の家事労働への協力をみると、平日は共稼ぎ家庭・一般家庭による差はほとんどあらわれず、休日には却つて一般家庭の夫が協力的である。共稼ぎ家庭の夫の家事労働は平日必要にせまられた半拘束的性格をおびるためであろうか。3 第1・2・3報を通して要約すると、何れの分類によつても、夫の生活時間構造には、共稼ぎ家庭・一般家庭による大きな差はないが、次の傾向がみられる。(1) 夫の家事労働については本要約2の傾向(2) 勤務時間が、共稼ぎ家庭の夫の方が長い傾向。たとえば、総平均においては17分の差であるが、子供のない家庭1時間20分、夫婦のみの家庭(家族の人数別では2人家族)1時間5分、子供がなくて家族と同居している家庭1時間56分、夫の年齢20歳代40分の差がある。これは、共稼ぎの夫は勤勉とみるべきか、家庭に帰つても妻は留守であつたり、家事労働に忙しかつたりで、家庭的くつろぎを感じることが少ないためとみるべきであろうか。(3) 共稼ぎ家庭は子供数が一般家庭の以下であり、したがつて家族数も少ない。(4) 共稼ぎの妻は平日、職業労働に家事労働が加わるので、最も忙しい生活を営み、夫達が十分の休養をとり余暇を楽しんでいる休日においても、家事労働のために相当の時間を費している。しかし、一般家庭の主婦に比べると、休日には稽々生活を楽しんでおることがうかがわれ、睡眠時間も生理的限界以下の妻はない。(5) 一般家庭の主婦は、休日のない家事労働のために平日休日共に労働時間が相当長く、夫との睡眠時間の差は共稼ぎ夫婦の差により多く、埼玉県下の共稼ぎ家庭の差に近い。このため生理的睡眠時間以下の主婦が6人以上の家族の家庭、夫が40歳代の家庭、主婦が30歳代の家庭にみられる。一般に労働時間が長くなれば、生活や生存にとつて重要度の少いものから時間が切つめられてくる.生物的生存にとつて最も重要なものは睡眠である。これが切つめられなければならないほど、労働時間が長いということは健康がおびやかされつつあることを意味する。忙しいはずの共稼ぎの妻の睡眠は生理的限界を保ち、むしろ一般家庭の主婦にこれをみたことは検討すべき問題である。ところが、内職時間をもつ一般家庭の主婦の労働時間をみると、家事労働時間が他の家庭に比べて短いことからも、主婦の家事労働に対する態度如何が、今後の問題として残されている。
著者
稲葉 ナミ 三東 純子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.212-217, 1963-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
3

共稼ぎ家庭と一般家庭の夫婦の生活時間調査を行ない5年前の同調査と比較して、次のような結論を得た。1 共稼ぎ家庭の夫婦の生活は、5年前より忙しくなったとみられるが、平日の夫のみ危険率1%で有意である。そのため、夫婦の生活時間構造は5年前より近似して夫も協力的になったと思われる。予想に反して、「家事労働時間」が夫婦ともに5年前より増加しているのは、家事手伝い人を得にくいためではないかと思われる。2 一般家庭の夫婦の場合は、夫は平日、5年前よりも忙しくなったようであるが有意差ではなく.休日には4者中最も休養的である。妻は予想通り「家事労働時間」が5年前より短縮し、経済も安定したためか、内職をするものは皆無で、そのため、主婦は5年前より「余暇時間」が増加したと、危険率5%でいえる。なお、「睡眠時間」は、平日の一般家庭の妻以外は減少しているにもかかわらず、平日には一般家庭の妻は僅かながらも増加していることからみても、主婦は十分に休養をとり、夫とともに余暇を楽しんでいるといえる。3 31年調査においては、夫達の生活には大差がなく、共稼ぎ家庭の負担は妻にかかると結論したが、本調査においては、共稼ぎ家庭は夫婦ともに休養率が低く、夫婦ともにオーバーワークである。4 平日は共稼ぎ家庭の妻・共稼ぎ家庭の夫・一般家庭の夫・一般家庭の妻の順に忙しく、各者間に有意差がある。休日は各々の妻はそれぞれの夫より忙しいといえるが、妻同志・夫同志の間には有意差はない。共稼ぎ家庭の夫婦の「全労働時間」の延長を何で補っているかをみると、「余暇時間」は案外減っておらず、「睡眠時間」を減らしている。これはラジオ・テレビなどの普及・レヂャーブームの影響によるものではないかと考えられるが、労働時間が長いにもかかわらず、「睡眠時間」か生理的時間以下であることは問題である。5 「勤務時間」が3者とも、前調査より増加の傾向にあることは研究すべき問題である。
著者
富山 貴子 桂木 奈巳 酒井 哲也 酒井 豊子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.749-755, 2003-09-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
11

Various kinds of periodical phenomena are observed in the natural world and in the social systems. Even in apparel fashion trends, people feel some periodical changes exist. This paper presented a trial to qualitatively characterize such a periodicity which appeared in apparel fashion trends. For this purpose, numerical data for the length of ladies jackets and skirts proposed in a popular fashion magazine published in Japan from 1960 to 1998 were used. Data were treated with some mathematical techniques including Fourier transformation analysis, self-correlation analysis and common statistical methods. Results obtained are as follows; 1) Comparing the distribution of length for clothes proposed in a given year with the length of the clothing selected by a person as being representative of the year, it was clarified that the length of the representative clothing selected by the person coincided with the mode value for the distribution. 2) Three major changes in the length of jackets and skirts were found over the years, the first change after a periodic time of 10 years, the second after 20 years and the third after 40 years. The change which occurred after 10 years periodicity was the most profound one. 3) The 10-year periodicity may be correlated with the period of use of apparel, while 20-year periodicity may be connected to the length of time which takes for women to develop a mature fashion sense. The 40-year periodicity remains unclear, but it covers two generations and, therefore, is long enough for the revival of an old fashion as a new fashion.
著者
多邊田 美香 深井 尚子 弦巻 和
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.92, 2004 (Released:2005-04-02)

【目的】家事実態については、いままで家事時間で比較されてきた。しかし、時間の長さだけでは家事実態は表しきれていないと思われる。そこで家事がどんな時間帯に実施されるのか「生活時間帯調査」を行い、現代の熟年・若年専業主婦の家事実態を明らかにした。【方法】1)インターネット調査:2003.6 2)郵送留め置き式アンケート:2003.7<首都圏在住・核家族 218人> (20_から_30代専業主婦131人、40_から_50代専業主婦87人 どちらも子供あり)【結果】40_から_50代の熟年世代は、洗濯・掃除・朝食の片付けなどの多くを午前10時頃迄に終えるのに対し、20_から_30代の若年世代では、昼ごろまでに終える傾向にあり、洗濯や掃除については夕方以降の実施もあるなど、家事時間帯に世代の違いがあることが分かった。このような違いは、家事意識の差から生じると考え、家事意識の視点から見ると、衣食住に関する基本意識(「食事はできるだけ手作りしたい」「汚れに気づいたら掃除したい」等)に大きな差は見られなかった。しかし「家で揚げ物をしたくない」「使う食器の枚数を減らしたい」等の省力化意識は、若年で強かった。さらに家事行動を詳細に見ると、熟年の洗濯には「汚れの前処理」「仕分け」など工夫があるが、若年は洗濯機まかせという家事の質の違いや、若年では実施頻度が低下している家事や「しない」家事があることが分かった。いわば熟年の家事は、意識も行動も[しなければならない(must)]であるが、若年の家事は、自分の価値優先[しなくてもよいものは省略・後回し(select)]ではないかと推測され、この家事に対する思いの差が、家事時間帯の違いとして現れたと考える。
著者
小谷 良子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.969-980, 2002-10-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
20

This study on housewives not employed full time reports on their self-recognition, practice and their effective results in the household work, in efforts to find causes as well as problems thereof. Some significant difference is found in their self-recognition, practice and its effective results in the household work in terms of age, wife-and-husband relationship, or seriousness of self-developmental attitudes. There are progressive, developmental steps distinctly observed deriving from the self-recognition of responsibility for the household work, the will of improving household work, the efforts directed to it, the self-esteem in the household work and the practicalization of their knowledge and skills thereof. Generally, the higher is their fundamental self-recognition maintained, the more effective is their will put to practice in progressive steps. In reality, however, the number of housewives not employed full time reaching the advanced steps decreases. The findings indicate the importance of recognition on the part of housewives that their vision of life should be managed practically and spontaneously in household work and that way should be devised to develop into practice their subjective decision of will, self-recognition of responsibility, and efforts directed toward it.
著者
大森 和子 加藤 悦 伊藤 セッ 大竹 美登利 好本 照子 阿部 和子 天野 寛子 宮崎 英子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.206-212, 1979-02-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
8

The purpose of this paper is to analyze the present state of the managerial housework on food, clothing, housing, and childcare, and to clarify wives overall evaluation of housework. The results of analysis were as follows : 1) 65% of wives went shopping for food everyday, because it is their daily routine.2) Husbands of most wives helped with some housework, like making the bed, shopping for food and so forth. Husbands of employed wives helped more then those of non-employed wives.3) Though many wives valued housework highly, they thought that employment and hobbies were also important. Wives who valued housework very highly believed that children under three years old should be brought up by their mothers.
著者
稲田 準子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.394-397, 1968-10-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
4

1. 家事労働に影響する要因の一つとして、主婦の家事労働についての態度を調査し、生活時間や疲労考察の基礎資料を得ることを目的とする。2. 主婦347人を対象とし、調査用紙により、参考項目を含め14項目に分類した家事労働について、5段階法で好みを調査した。3. 好きとやや好きを好反応群、嫌いとやや嫌いを嫌反応群とし、反応率に基づいて家事労働を分類し、上位群 (洗たく。料理、掃除、裁縫) と下位群 (食事のあとかたづけ、アイロンかけ、家計簿) とを比較すると、他の諸調査と類似の傾向を示し、労働強度における一般的差はあまりみられず、上位群における機械化傾向に対し下位群では機械化が少ない。なお、作業順序からみると、下位群では一般に後にくるものが多い。4. 項目間の関係を調べるために、好みについて、12項目66の絹関係数を求めた。最も相関が高い項目は、掃除と洗たくで、相関係数.594であり、つぎに、身の回りと外出、掃除とアイロンかけ、洗たくとアイロンかけ、料理と身の回りがつづいた。5. 4人家族 (夫婦と子ども2人) について、家事労働時問を好嫌反応群別に比較した。好反応群が時間が長いのは料理、裁縫であり、嫌反応群の方が時間が長いのは、食事のあとかたづけであった。6. 年令別に、35歳以下 (若年令群) と36歳以上 (中高年令群) の群に分けて比較すると、料理が若年令群に、裁縫が中高年令群により好まれていた。7. 年令を、20歳台、30歳台、40歳以上と3群に分けて、好き反応を比較すると、料理、裁縫には年令に伴う変化がみられ、料理は20歳台に、裁縫は40歳台により好まれるという相反する傾向を示した。掃除については2群比較では統計的に有意差がみられなかったが、3群比較において、裁縫と同様、年令の増加に伴い好き反応が増加する傾向を示した。家計簿については、3群間に統計的に有意な差はみられなかった。8. 家事労働についての好みと、家事労働の内容、家事労働時間との関連については、今後さらに検討報告したい。
著者
山田 光江
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.162-168, 1961-06-15 (Released:2010-03-09)

1. 「家庭生活の在る処家事労働あり」の立場で、大阪市内在住の夫・妻・就学子女から成る家庭を対象に家事労働の担当状態を調査した。2 併せて生活概況を調査し、女中のいる家庭といない家庭の生活程度の差を解析した。3. 分類の基準を設定し、95%信頼限界での本対象数の下限を算出して、集計結果を次の項目に分けた。(1-a) 主婦業務のMinimum Esseme(1-b) 女中に委せ得る家事内容(2) 家族の協力を得られる家事内容(3) 外部サービス機関に委託する家事内容(4) 生活条件によってあったりなかったりする家事内容4. 各分類項目毎に、共通の傾向を探り、そこに含まれる諸要素を考察した。5. 各生活部門別にみると、食生活部門は(1-b)、住生活部門は(1-b)と(2)、衣生活部門は(3)、雑部門は(1-a)に数多くのものが分類され、ここに家事労働の質的分類を、担当する側からと、各生活部門の側からと検討した。
著者
富安 郁子 浦上 智子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.451-457, 1977-10-20 (Released:2010-03-11)
参考文献数
18

極度に加熱した油とその揮発生成物中に毒性物質が存在するという最近の報告より, 揮発生成物の分析によって天ぷら油の安全使用の指標を得ることができるか試みた.大豆油を継続的に180℃で30時間加熱し, その間にじゃがいも, 鶏肉, 豆腐, 鯨肉, 鯖, ピーマンと水を添加した綿球 (対照) をおのおののたねものからでる水分量を一定になるように調節しながらフライした.このように調整した試料油の揮発物を直接に二硫化炭素中へ導く窒素気流で蒸留し, その濃縮物をガスクロマトグラフィー (GC) とガスクロトグラフィー-質量分析計 (GC-MS) で分析した.GCによるピーク数および相対的量には試料油間にはっきりした違いはなかった.低沸点部ではアルカナール, カプロン酸1-オクテン-3-オールが, 高沸点部ではデカナール, デカジエナール, 7-フェニールヘプタノイック酸が検出された.7-フェニールヘプタノイック酸は毒性があると考えられる.加熱時間が増加するに従い低沸点部は減少し高沸点部は増加の傾向を示した.揮発物のTLC分析 (ベンゼン, ヘキサン, 酢酸, 70 : 30 : 2) の結果3つのスポットを得たが, Rf値0.4のスポットは上に述べたフェニール化合物を含み278nmに強い吸収を示すことがわかった.
著者
小林 由実 内方 文朗 上田 善博 加藤 邦人 小川 宣子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.207, 2014 (Released:2014-07-10)

目的 おいしい天ぷらとは素材のうまみが保持され、さくさくとした衣に覆われているものと評価できる。天ぷらに使用する食材は、澱粉性食品のさつまいも、タンパク質食品の魚介類、野菜類など多種にわたるため、それぞれの素材のうまみが生かすための揚げ方について温度や時間などから検討されている。一方、家庭では、温度計に頼らず、視覚的に判断を行っている。そこで本研究では、160℃,180℃,200℃と異なる温度で食材を揚げ、その時の油の表面の様子を定量化するとともに、揚げ終わった時の衣の評価を水分含量、物性、画像処理から測定し、調理中の様子から天ぷらの出来上がりを推定することとした。 方法 1)試料:さつまいもを用い、衣(薄力粉:卵水=30:50g)をつけ、油(160℃,180℃,200℃)で4分(加熱2分後裏返す)加熱した。2)測定項目①調理中の変化:油面の様子を高速度カメラで撮影し、調理中に発生した気泡や波によるゆらぎをcontrastの時系列変化から調べた。②調理後の変化:衣の水分含量、物性を破断解析、凹凸の程度を画像処理によるcontrastから評価した。 結果 ①調理中の変化:160℃で調理した場合は油面のゆらぎは少なく、180℃は投入直後と20秒後で大きくゆらぎ、200℃は投入直後から非常に大きかった。②調理後の変化:油の温度が高くなるにつれ水分含量は少なく、破断応力は大きく、衣の凹凸は160℃は少なく平坦であり、180℃は全体に存在し、200℃はむらがあった。調理中の油面の様子が衣の形状に影響を与えると考える。
著者
松元 文子 林 恵美子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.68-70, 1958-04-05 (Released:2010-03-09)
参考文献数
8
被引用文献数
1

天ぷらの味のうち、特に衣のおいしさについて実験した結果、次のことが明らかになつた。1. 小麦粉は上質薄力粉を用い、副材料として卵を用いれば、小麦粉だけを用いた衣よりも水分少く、口ざわりがよい。重曹を用いると衣の水分が一層少く仕上り、且つ衣の表面の吸湿は極めておそいので、これらの点に於いては卵に優るが口触りが硬すぎる。卵と重曹を併用すれば両者の長所を採り入れることが出来るであろう。2. 天ぷらの衣に於ける水分と油の含有量は副材料の種類によつて互に消長するもので水分多ければ油少く、水分少ければ油が多く衣の口ざわり(歯もろさ)は、水分と反比例的である。従つて、おいしい天ぷらの条件としての“油じみていない”ということは、必ずしも吸油量が少いという事ではなく、付着油即ち油切れの問題であろう。(この点については次報で述べたい。)3. 揚げたての天ぷらがおいしい理由は、喫食時の温度にあるのはいうまでもないが、衣に卵を用いた場合は、表面の水分の増加以前を尊重するためと考えられる。
著者
小林 由実 上田 善博 加藤 邦人 小川 宣子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.17, 2015 (Released:2015-07-15)

目的 天ぷらの「おいしさ」は素材の旨味が保持され、さくさくした衣に覆われたものと評価できる。この「おいしさ」の評価を調理過程の指標から推定できる可能性を澱粉性食品のさつまいもから検討した1)。その結果、調理過程での水分蒸発量が天ぷらの出来上がりに影響を及ぼすことを明らかにした。そこで、本研究は調理過程における素材と衣の性状から調理過程中の水分挙動について検討を行った。 方法 天ぷらはさつまいも(直径46mm、厚さ8mm)に衣4.6g(薄力粉30g:卵水50g)をつけ、180℃の油(日清キャノーラ油)1300gで表裏それぞれ2分揚げて作成した。調理過程の水分蒸発は、油表面の泡の発生状況を高速度カメラで撮影し、油のゆらぎによる画像処理のcontrast値と秤の上で天ぷらを揚げた時の重量減少量の両者から経時的に調べた。あわせて、さつまいもと衣の調理過程中の性状変化を水分量、グルコアミラーゼ法による糊化度、走査電子顕微鏡像から調べた。結果 油面の泡の発生量はさつまいも投入1秒後と17秒後に多くみられ、これは水分蒸発量ともほぼ一致していた。さつまいも投入1秒後は主として衣から水分が蒸発し、17秒後は衣からさつまいもへの水分移動が見られ、合わせてさつまいもの細胞破壊が見られたことから、この時間は糊化が始まる時ではないかと推定した。[文献]1)小林他:日本家政学会第66回大会研究発表要旨集、p70(2014)
著者
坂田 由紀子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.637-645, 1990-07-05 (Released:2010-03-10)
参考文献数
13

(1) 京都市内の女子大学生235名について, 箸の持ち方の調査を行ったが, 伝統的な持ち方をしているものは235名中108名で全体の46%であった.また, 左手で箸を持っているものは, 4.3%であり, 左利きでありながら箸だけは右手に持ち換える者が全体の2.1%あり, これは左利きのなかの53.4%にあたった.(2) 箸の持ち方による機能性の差をみるため, 伝統的な持ち方と, そうでない持ち方について, 作業量を測定したが, 大豆, 寒天を試料とした場合の作業量の差はみられなかったが, 作業のしにくい試料 (紙) については, 伝統的な箸使いをしている者の作業量が有意に多かった.(3) 箸の持ち方には生活環境等も関連し, 伝統的な持ち方をしているものは家庭で両親から繰り返し箸の持ち方を教育されたものであった.また, 家族構成とは関連がみられなかった.また, 伝統的でない持ち方をしているものは, 自分でも箸が使いにくい, 人と比べて持ち方がおかしいと感じているが, とくに積極的に矯正しようという態度はみられなかった.
著者
向井 由紀子 橋本 慶子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.32, no.8, pp.622-627, 1981-09-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
3
被引用文献数
1

1) 伝統的なA型の持ち方は, 対象物がこわれやすい場合や, 2種の試料を交互に運ぶような複雑な作業の場合に, 失敗が少なく作業能率もよいこと, また焼魚の肉をわけるなどのように箸もひらいて用いる場合も鉛筆式の持ち方であるB型よりも早くできることがわかった.2) 自然に箸を持った位置とひらく作業後の箸を持った位置をみると, A型では指先の移動が少なかった.このことよりB型は作業時に箸を持ちかえるのに対し, A型はそのようなごとが少なく安定した持ち方といえるのではないかと考えられた.3) 箸先をひらく作業では測定筋のうちで背側骨間筋の筋活動度が大きく箸先をひらいて用いる場合の特徴と思われた.4) 伝統的な箸の持ち方では鉛筆式の持ち方に比べて短母指外転筋の活動度が大きいが, これは第一指で一方の箸を固定すると同時にもう一方の箸を動かすためと考えられ, 伝統的な持ち方の特徴であると思われた.