著者
倉賀野 妙子 北尾 敦子 和田 淑子 山田 光江
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.889-893, 1988

クッキーの甘味評価と硬さの関係を材料配合比の点から明確にするため, Scheffé の 3 成分系の単純格子計画法を用いて, 材料配合比の異なるクッキーを調製し, 甘味の官能検査を行い, 材料配合比および既報 で得た定速圧縮破断特性値と対応検討した.<BR>クッキーの甘味評価値とバター, 砂糖, 卵の材料配合比との間に, 小麦粉 40, 45, 50 % 水準とも 3 次の推定式ならびに推定曲線が得られた. 甘味は砂糖のほかに材料配合比による影響を受ける. 卵の存在は甘味の強さを弱める方向に働くことが示された. 生地の砂糖濃度が同じでも卵を多く加えるとみかけの破断応力が大きくなり, クッキーが硬くなることが原因の一つと考えられる.
著者
道本 徹
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.203-209, 2001

昨年都立病院で発生した女性患者が消毒液の注射により死亡した事件で, 死亡した患者の遺族が医療ミスとその隠蔽工作によって受けた精神的苦痛に対して提訴する考えであることが報じられており, これに対し病院側は医療事故対策を検討し再発防止のために「航空機の事故防止対策の手法を取り入れ, 事故報告をどんどん出すように奨励している」と述べている.また, 今年の5月の朝日新聞の記事では医療ミス防止に向けてNASA (航空宇宙局) 方式を導入する米国の復員軍人省の例が紹介されている.<BR>NASA方式というのは航空の自発的安全報告制度のことでFAA (米国連邦航空局) から委託を受けて第3者であるNASAが1976年から運用している制度であり, 人間はミスを犯す者であるとの認識から故意でない限り, 報告者を罰するより事故の再発防止の方を重要視する免責制度を基本とした安全報告制度である.この制度は航空機のパイロットや客室乗務員, 整備士, 航空管制官等が, 安全を脅かすようなミスを犯したり, いわゆるヒヤリ・ハット的な出来事を自発的に報告し, 事故となる前にプロアクティブに対策をとり事故を未然に防止するために活用されている.米国においてはこのような免責を基本とする安全報告制度は航空の世界だけでなく他の交通機関や医療の事故を未然に防ぐ対策を取るうえで有効とされている.<BR>最近の航空機事故の原因を分析するとヒューマンファクターに起因するものがほとんどであり, 事故後のパイロット, 整備士あるいは管制官の証言で「その問題は前から分かっていたんだよ」ということがしばしばある.GAINはこれら航空に携わる人々の自発的な安全情報を集め, 分析し, 事前に安全対策を取る世界的なネットワークを構築しようとするものである.本稿は航空の専門家でない利用される立場の皆様に航空界で現在進められている安全報告制度「GAIN」の活動についてご紹介すると共に, 「GAIN」のプロアクティブな事故防止の考え方はあらゆる方面での事故防止対策に応用され得るものであることをお伝えするものである.
著者
湯沢 雍彦 鈴木 敏子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.392-400, 1974

1. 安乗の母と子の意識は, 一致率が横浜市より5~30%低く, ズレが大きい.そのの上, 本調査では否定的回答の一致率が高い.<BR>2.母と子別の意識のズレ方では, 両地域の子が母より否定的回答に傾斜している点は同様であるが, 安乗において一層その傾向が著しい.<BR>3.母と子の意識のズレを大きくしている要因は, 4分の1の家族が父親出稼ぎ中であり, 母親の95%が一日平均8時間49分も家庭外労働に従事している.そのうえ親子が一緒に食事をする家族が少なく, 母子の話し合う時間は一日30分以下というのが62%もある。その他親子揃って外出する機会はまれで, 親の世代に比べ子どもは仕事の手伝いをしなくなったなど, これらが親子の接触を乏しいものにしていると考えられる.<BR>4.社会的経済的諸条件の変化が影響して, 漁業継承を期待, 希望する母子は2, 3例にすぎず, 漁業に代わる具体的な将来像や展望も見出していない.したがって, 漁業継承を前提としていた親子関係は動揺しており, それが母と子の意識のズレを大きくしているようである.
著者
久武 綾子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.281-286, 1961-08-15 (Released:2010-03-09)
参考文献数
13

1) 婚姻届出日より第一子出生日のへだたりの統計結果から、妻の妊娠又は出産を契機として入籍するという、事実婚より法律婚への転機の一原因が実証された。2) 1) の件数は戦前戦中は特に多く、戦後も25年位までは相当多い。3) 婚姻の届出が第一子出生後2週間以内でなされる件数は戦前戦中は特に多く14%位をしめ、戦後25年位までは13%であるがそれ以後は次第に減少する傾向がみられる。4) 2) の2週間以内というのは出生の届出の期限と一致し、これは内縁期間に出生した場合に非嫡出子として一旦、母の戸籍に入るのを未然に防ぐためと推察される。5) 婚姻成立後即ち、婚姻届出後9~10ヵ月で第一子の出生をみる傾向は最近になってようやくあらわれた。6) 古い時代には特に法制的には内縁期間中の懐胎が相当多い。これは挙式後婚姻の届出をすぐに行なわなかったためである。7) 挙式日と出生日のへだたりは時代の推移にかかわらず10ヵ月にピークがある。8) 子の出生日から逆算すると式以前の同棲期間中の懐胎件数は法制上の内縁期間中の懐胎にくらべると少ないことがわかった。9) 社会生活上、挙式そのものは重大な規範でありながら、その反面、制度としての婚姻の届出はおくれがちであることが判明した。10) 婚姻届出に関する社会的経済的背景としての職業は、俸給生活者はその届出が早く、その中、教員、公務員は届出は特に早い傾向がみられる。
著者
田結庄 順子 柳 昌子 吉原 崇恵 中屋 紀子 牧野 カツコ
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.951-959, 1992

This study aims to consider consumer education in school by the survey data of the pupils' parents as consumers.<BR>The results were summarized as follows : <BR>1) Mothers did not take consumer behavior considering the protection of environment.<BR>2) The parents have had a tendency to decide commodity buying by talking with door to door sales person. This fact suggests that the most parents' decision-making were influenced by sales persons. Therefore, consumer education for parents is required to keep up with the times.<BR>3) The parents considered that problems of consumptive behavior of children are due to their consumptive environment. The parents have had anxiety for children's future consumptive environment, particularly credit cards and commercial messages.<BR>4) The parents have considered that role differentiation between home and school in consumer education as follows : fundamental consumer behavior should be taught children in home life, while knowledge of commodity, quality labeling, safety commodity and marketing system should be taught them in school.
著者
佐藤 邦子 佐藤 孜郎
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.467-470, 1977-10-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
5

3種の調理条件, すなわち, 5分間水戻し (試料A), 5分間水戻し後15分間煮熟 (試料B), 5分間水戻し後5%酢酸溶液に15分間浸漬 (試料C), で処理したわかめの物理性状とアルギン酸の性状とを調べた.その結果, 以下の諸点が明らかになった.1) 破断力および硬さはBが最も低く, Cが最も高かった.2) 水溶性アルギン酸 (SA) 含量は煮汁中に溶出した部分を考慮すると, AとBはほぼ等しく, Cはそれらより低かった。不溶性アルギン酸 (IA) 含量はCが最も高く, AとBはだいたい等しくCより低かった.3) アルギン酸ナトリウム水溶液を沸とう水中15分間加熱すると著しく粘度が低下した.しかしながら, 食塩を添加したものでは加熱前後の粘度にあまり変化がみられなかった.DEAEセファデックスカラムクロマトグラムは3種の試料いずれも同一であった.4) 試料CのSA区分のナトリウムとカリウム含量, ならびに残渣中のカルシウムとマグネシウム含量はいずれも他の2試料の1/2ないし1/3であった.以上の結果から, 煮熟によるわかめの軟化は総アルギン酸含量の減少とアルギン酸分子の分散状態の変化がその大きな要因であろうと推測され, 酢酸処理による硬化は遊離アルギン酸の生成による不溶性アルギン酸の増加がその大きな要因と考えられる.
著者
伊藤 葉子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.189-196, 1986

In this study, as the core of imitative behavior, interest and curiosity were chosen. Behavior that were supported to express interest and curiosity were closely watched and they were studied in relation to development of imitative behavior. The followings are the results in summary of the observations of 12-24 months old children in a nursery.<BR>1) In the scene of playing with playmates and nurses, children over 18 months were more often seen to imitate than children under them, and in the same scene, children tended to imitate elder models' behaviors than themselves.<BR>2) In the scene that children were playing with their brothers and sisters, two types of behaviors which seemed to express their interest and curiosity were often seen : they are followings, the behavior which was not same but closely resemble to their brothers' and sisters', and the behavior that children tried to take or took actually what their brothers and sisters had. It seems that they could not imitate, but showed their interest and curiosity by these behaviors. From this I think that these behaviors are in the previous stage to imitative behavior.<BR>3) Common to the scene of playing with playmates and nurses, the scene of having meals and the scene of playing with brothers or sisters, before or after imitative behaviors were observed, children were attracted by models' behaviors and stared at them. This showed that before or after they imitated, behaviors that were supported to express interest and curiosity were seen.
著者
久保 妙子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.27-37, 2003

本研究では接地型の住宅地として, 一般的な戸建住宅地, 分譲テラスハウスおよび市営住宅を選び, 近隣コミュニケーションの現状と意識を, 居住者に対する質問紙調査をもとに考察したものである.結果を要約すると以下のとおりである.<BR>(1) 近隣コミュニケーションの第一歩と位置づけられる, 住戸外に出る回数は, テラスハウスで最も少なく, 戸建住宅では中間程度で, 市営住宅で最も多い.またこれらの接地型住宅地では, 住戸外に出る回数が高層集合住宅に比べて多い傾向がある.<BR>(2) 親しいつきあいをしている人がいる割合は, 男性では3~4割, 女性では6~7割で, とくに戸建住宅の女性で親しいつきあいが多い.<BR>(3) 立ち話をする人がいる割合は, 男性では7~8割, 女性では9割以上で, とくに戸建住宅で多い.それに対して挨拶する人数は, テラスハウスと市営住宅の方が戸建住宅より多い.戸数密度がやや高く, 範囲を認識しやすい特徴ある住宅形態が, ひとつのまとまりとして居住者に捉えられていると考えられる.<BR>(4) 近隣コミュニケーションのきっかけは, 家が近いことの他に, 子供や自治会の関係を通じてが多い.子供を通じては女性で多く, 自治会はどちらかというと男性で多く, きっかけの得にくい男性にとって自治会の果たす役割は大きいといえる.<BR>(5) 立ち話の場所は, 日常的に通る玄関前や街区内の道路が多く, コミュニティスペースとして設えられた公園等は少ない.さらにコミュニティスペースとして, 東屋や貸し菜園, ベンチ等の要求がみられる.<BR>(6) 向こう三軒両隣におけるつきあいの状態は, 「会えば挨拶する程度」「なかには立ち話する人もいる」「なかには親しい人もいる」が, 約3分の1ずつで, 必ずしも親しいつきあいがおこなわれているとは限らない.意識としては, 7~8割が向こう三軒両隣にこだわらず気の合った人とつきあいたいと考えている.<BR>(7) 近隣コミュニケーションとしておこなわれていることで多いものは, 「旅行等のお土産のやり取り」「宅配物の預け合い」「食料品などのおすそ分け」「留守にするときの声かけ」「慶弔時の手伝い」である.一緒に出掛けるような親密なつきあいは, 向こう三軒両隣に限られず離れた家との間にも生じている.「日用品の貸し借り」は高層集合住宅の方が多く, 「留守にするときの声かけ」は接地型住宅地の方が多い.<BR>(8) 近隣コミュニケーションについての意識は, つきあいの有無に関わらず, 近所づきあいをしたいという肯定的な意見と, したくないという否定的な意見が, 対象による差はあるものの全体としては約半数ずつで拮抗している.<BR>(9) 市営住宅において, 建設当初から住み続けている高齢男性の問に, 長い年月をかけて形成された親密なコミュニティの事例がみられる.<BR>以上のような接地型住宅地においては, 接地していることによって住戸外に出やすく, 近隣コミュニケーションも少なからずおこなわれている.しかし, かつては近隣の基本単位であった, 向こう三軒両隣におけるコミュニケーションは必ずしも親しいものではなく, 近隣のなかでも気の合った人と必要なときにコミュニケーションがとれる状態であることが求められているといえる.住戸のタイプごとの形態と密度, そして市営住宅の例にみられるように, 長く住み続けられるか否かが, 近隣コミュニケーションに影響を与えていることがうかがえた.また, 接地型住宅地においてはコミュニケーションのための空間が充実しているとはいえず, 日常的に使用しやすい簡易な休憩の場所等を含めた, 住環境の総合的な計画が必要とされていると考えられる.
著者
下坂 智恵 村木 路子 江原 貴子 下村 道子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.963-970, 1997

骨つきのマアジをから揚げにしてマリネ処理するときの温度の違いによる魚の物性とくに骨の硬さと成分の変化について調べ, 以下の結果を得た.<BR>(1) 官能検査において, 浸漬時間による硬さの差は, 魚肉ではみられなかったが, 骨ではマリネ処理の時間の長い方がやわらかいと評価された.<BR>(2) マリネ処理した魚の骨の硬さは, 揚げた魚を高温で食酢に浸漬した方が低温にしてから食酢に浸漬したものよりも低下の程度が大きかった, <BR>(3) 高温浸漬による酢漬魚は, 低温浸漬によるものよりも重量増加が大きく, pHの低下, 食酢の浸透が速やかで浸透量が多いことが認められた.<BR>(4) 骨つきのマアジを油で揚げて後マリネにすると, カルシウムなどの無機成分が溶出して骨が軟化していることが示された.
著者
下坂 智恵 下村 道子 寺井 稔
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.1213-1218, 1996

近年, 日本では, 骨粗鬆症の原因ともなるカルシウムの摂取量の不足が問題となっている.日本人は, 昔から魚を多く摂取しており, 骨ごと食べられる小魚は, 重要なカルシウム供給源の一つといえる.そこで本研究では, 魚の骨を利用するための基礎的な研究として, 魚の骨を水中で加熱したときの物性および成分の変化について調べようとした.マアジの骨を, 水中で数時間加熱し, レオメーターを用いて破断強度を測定した.魚骨の無機成分は, 高周波誘導結合プラズマ (ICP) 発光分析法により測定した.マアジの骨の厚さの80%まで圧縮するのに要する最大荷重は, 30分間で急激に低下し, その後も加熱時間が長くなるにつれて徐々に低下した.加熱時間が長くなるとともに, 魚骨のタンパク質は減少し, 加熱液中のタンパク質は増加した.マアジの骨は, 加熱時間が長くなるとともに軟化したが, カルシウムの大部分は, 魚骨に残っていた.水中で加熱したマアジの骨が軟化したのは, 骨のタンパク質の一部が加熱液中に溶出し, 骨の構造が変化したことによるのではないかと考えられる.
著者
中浜 信子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.467-472, 1961-12-25 (Released:2010-03-09)
参考文献数
10
著者
和田 佳苗 佐藤 祐子 松井 友美 谷口(山田) 亜樹子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.72, 2014 (Released:2014-07-10)

目的 塩辛は魚介類の肉や内臓などに調味料を加え熟成させることで、自己消化作用により独特の旨味をもつ食品である。本研究では塩辛の中でも馴染みのあるイカの塩辛について、製造工程で加える副材料が内臓の消化酵素であるアミラーゼ、プロテアーゼ活性に及ぼす影響を検討した。方法 生食用スルメイカから取り出した肝臓に2倍量の生理食塩水を加えて3分間ホモジナイズした後、遠心分離(10000rpm,20分間)して得られた上澄みを試料液とした。この試料液についてpH、タンパク質量(Protein Assay Papid Kit,和光純薬)、α-アミラーゼおよびβ-アミラーゼ(α-,β-Amylase Assay Kit,Megazyme) 、プロテアーゼ活性(ヘモグロビン基質)を測定し、比活性を求めた。さらに試料液に塩辛製造に用いられる調味料(食塩・みりん・醤油・酒)を添加し同様に測定を行った。結果 スルメイカの肝臓から抽出した試料液中のpHは6.5、タンパク質量は約130mg/mLであった。またα-アミラーゼおよびβ-アミラーゼの比活性はそれぞれ約4.7×103units/mg、5.6×103units/mg、プロテアーゼの比活性は約3.6×10units/mgであった。プロテアーゼの比活性は調味料無添加を100としたとき、食塩、みりん、醤油添加で各々87、酒添加で92であった。α-アミラーゼおよびβ-アミラーゼについても同様に測定を行い比較検討した。
著者
菊地 篤子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.64, 2003 (Released:2004-05-25)

【目的】本研究では、子どもと関わる大人の中で頻繁に話題にあがる「第一反抗期」が、子どものいつ頃のどのような状態を指しているのかを確認し、第一反抗期の子育てにおける親の対応について、事例を通して検討する。【方法】認可外保育所の保育士と対象児の母親による、第一子R(男)の記録について、第一反抗期の子どもの姿や大人(特に親)の対応を分析する。なお今回用いる資料は、Rの反抗的態度が頻出し始めた1歳10カ月~認可外保育所保育終了時の3歳8カ月の1年10カ月間の記録である。【結果】第一反抗期とは、子どもの自己表現手段のひとつであり、その態度はきょうだいの有無などの外的因子と個々の気質などの内的因子の双方が影響し、多様であることが解った。その出現時期は、0歳児から既にみられる拒否や抵抗という態度から、2歳過ぎの不満や不安の表現まで、幅が広い。子どもの表現・態度を自己主張とするか、反抗的態度ととらえるかは、子の発達への理解度、子と離れる時間の有無、精神的ゆとりの有無などによって変容する親の主観に左右されると考えられ、また、子どもの反抗的態度の激しさと、親の子育てに関する悩みやストレスの多さとは、必ずしも一致しないことがいえた。次に、Rの記録を発達段階を追って(1)反抗の始まり、(2)弟の誕生と反抗の多様化、(3)自立の進行と反抗、の三段階に分けて検討した結果、次の実態が捉えられた。・弟の誕生の前後で、反抗の表れ方が顕著に異なる。・日本語の文章力がつくとともに反抗の仕方が複雑化する。・反抗する相手は、「甘え」が許されると自己判断した特定の大人である。今後の課題は、今回の対象児Rとともに弟の反抗的態度も合わせて追跡し、きょうだい関係と第一反抗期についての探求である。
著者
間瀬 清美 原田 妙子 小町谷 寿子 石原 久代
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.219-228, 2003

超高齢化社会に向かおうとしている今, 若年から高齢に至る男性の衣服着用の実態や習慣を理解しておくことは, 重要であると考える.男性の快適な衣生活に向けた基礎資料を得るため, 男性の衣服着用の現状についてアンケート調査を13歳~94歳の男性1,165名に対して実施し, 以下の結果を得た.<BR>(1) 着用衣服として下着類は, どの年代においてもブリーフよりトランクスを着用する人が多かったが, 若年層程トランクスの着用率が高かった.<BR>(2) 就寝時の服種は, 若年層はTシャツの着用が多いのに対して, 40~60歳以上では大半がパジャマの着用をしている.なお, 60歳以上では寝巻きを好む人も増え, 年層による差が大きい事が判明した.<BR>(3) 着用日数については, シャツ, ブリーフ, トランクス, ソックス類は, 夏季は殆どの人が1日, 冬季でも1日~2日で替えていたのに対し, パジャマの日数は, 1~3日の人が夏で83.2%を占め, 冬で64.4%と多く, 4日~1週間着用する人もかなり出現した.パジャマは1日の着用時間が比較的長いにも関わらず, 着用日数は長いことが判明した.<BR>(4) 衣服に対する意見として, 上着類は色, 柄, 形, ブランドなど人から見られるイメージを重視する意見が多かったのに対し, 下着類や就寝時の着衣に対しては, 着心地に対するこだわりが多かった.<BR>(5) 衣服選択については, 上着類は67.5%の人が自分で購入するのに対し, 下着類の購入は妻, あるいは女性の家族に任せる傾向が強かった.下着のコーディネートについても, 外出着, 普段着と比較して女性に任せる傾向があり, 年齢が上がるとともに多くなっている。また, 衣服の購入時に, 若年層は色・柄を重視し, 高齢者では, 着心地, 素材を重視していた.<BR>(6) トランクス着用者は上着類選びについて, 色・柄を最も重視するのに対して, ブリーフ着用者はサイズを最も重視している.また, 下着類はどちらもサイズを最も重視するが, その他の項目としてはブリーフ着用者が着心地, 素材と着装感を重視するのに対してトランクス着用者は色・柄を重視していることが判明した.
著者
長野 宏子 大森 正司 庄司 善哉 飯渕 貞明 荒井 基夫
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.219-226, 1994

中国等の多くの国の小麦粉発酵食品は自然発酵によっているところが多い.タイやインドネシアの伝統的な小麦粉発酵食品に関与している微生物の検索を行い, ガス発生する微生物を分離・同定し, その性質を明らかにした.パームジュースをスターターとする蒸し菓子 (khanom taan) のドウから<I>Enterobacter cloacae</I>を単離した.揚げパン (paathong koo) のドウからは, <I>Klebsiella planticola</I>および<I>Proteus mirabilis</I>を単離した.発酵性細菌の安全性は既に確認されている.単離した細菌である<I>E.cloacae, K.planticola</I>を用いて饅頭を製造した結果, 良好な膨化を示し, 十分にスターターとしての働きをもつものであった.
著者
定森 許江
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.371-373, 1967

1 家鴨卵白の起泡力は、砂糖添加によって低下し、添加量80%以上においては、特に著しかった。<BR>2 砂糖を添加起泡した家鴨卵白泡は、安定度を増し添加量の増加は、安定度を高めた。<BR>3 酒石酸水素カリウムの添加は、家鴨卵白の起泡力を増し、1.5%で最大であった。<BR>4 酒石酸水素カリウムを添加起泡した家鴨卵白泡は安定度が低下したが、添加量2%においては、無添加泡と大差を認めなかった。<BR>5 家鴨卵白を用いたエンゼルケーキは質が粗、かつもろいが、砂糖と酒石酸水素カリウムの添加量を増すことによって、良質のものが得られた。
著者
吉岡 慶子 福地 乃理子 横山 次郎 戸渡 資英
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.157, 2005 (Released:2005-12-08)

【目的】スポンジケーキの膨化は生地の中に混ぜ込まれた卵泡が包含する空気の熱膨張や水蒸気の蒸気圧によってスポンジ状の骨格が形成され、固定されるもので、ケーキの性状を左右する。本研究では、2種類の鶏卵を用い、スポンジケーキを調製(共立て法、別立て法)し、スポンジの膨化や物性測定、気孔構造の観察および官能評価を行い、食味に及ぼす影響について検討した。【実験材料および方法】使用卵はヨード強化鶏卵(A)と白色レグホーン鶏卵(B)で、産卵後2、3日経過、卵黄係数:0.49-0.50、濃厚卵白率:74.16-62.71%、卵白のpH8.8-8.9、卵黄のpH5.9の新鮮卵であった。ケーキの材料配合は小麦粉:砂糖:卵=100:100:100の同割合とし、共立て法(A1、B1)は全卵に砂糖を加え、ハンドミキサー(MK-H3)で泡立て、小麦粉を加えて混ぜて生地を調製した。別立て法(A2、B2)は卵白を泡立て、別に、卵黄に砂糖を混ぜて合わせ、小麦粉を加えて混ぜ生地を調製した。170℃、27分間焼成した。ケーキの表皮、内相の測色、膨化率、物性値測定およびSEMによる気孔構造を観察した。ケーキの食味は外観、風味・味、口ざわり、きめ、硬さ、弾力、口溶けのよさおよび総合評価の項目について5段階評点尺度法で官能検査を行った。【結果および考察】スポンジケーキの膨化率は共立て法(A1、B1)325、310%であり、別立て法(A2、B2)では300、311%であった。テクスチャー測定による硬さは共立てではA1、別立てではB2が若干高値を示した。ケーキの気孔構造の形成は、共立てでは、球状の気孔が連続し、気泡が合一して破泡せずに膨張したスポンジ状構造が観察され、気孔壁には小孔が認められた。別立てでは全体的に気孔が小球化し、一部には気孔層の崩壊もみられた。官能検査では、表皮の焼き色、内相の色でA1とB1がよいとされ(p<0.05)、また、A1、B1間では卵のよい風味・味があるとA1が評価された(p<0.05)。総合評価ではA1、A2、B1、B2の順に評価された(p<0.05)。よって、Aの鶏卵が比較的良好な食味評価を得たことはケーキの物性値や気孔構造の所見を反映するものであった。