著者
桐渕 壽子 川嶋 かほる
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.38, no.10, pp.877-887, 1987-10-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
14
被引用文献数
3

1) 未加熱の調理においては, 一部の食品を除いては, 総アスコルビン酸量はほとんど変化がなかった.アスコルビン酸酸化酵素を有するものはただちにデヒドロアスコルビン酸に酸化されるが, それ以上変化することはなかった.2) 大根と人参の “もみじおろし” の場合も酸化型になってしまうが, 総アスコルビン酸量には変化はなかった.3) 馬鈴薯を加熱調理したさい, 高温急速加熱ではアスコルビン酸はほとんど変化せず残っていた.比較的低温で長時間 (140℃, 60分) かけて焼くと, 約60%は分解された. “ベークドポテト” は総アスコルビン酸は約50%残存し, 大きめの馬鈴薯 (約200g) を1個食べるとアスコルビン酸の1日の所要量をほぼ満たす.4) 馬鈴薯をゆでた場合, 馬鈴薯のほうには約50%残存し, ゆで汁への溶出は約10%で, 他の葉菜類に比べると溶出量は少ない.30~40%は分解されていた.5) キャベツやピーマンをゆでた場合, ゆで汁と合わせると, 総アスコルビン酸量はほとんど変化していなかった.また油いためも同様, 分解はみられなかった.6) 酸化型の生理学的効力もレアスコルビン酸と同等とみなすと, 総じて, 調理による損失はきわめて少ないといえる.
著者
島田 和子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.957-962, 2003-11-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
25

緑茶浸出液に含まれる茶葉サポニンの簡易定量法について検討した.(1) 緑茶浸出液中の茶葉サポニンをフェノール硫酸法にて測定すると, 共存するカテキン類も発色し, 大きな測定誤差が生じる.そこで, 緑茶浸出液の茶葉サポニンとカテキン類を固相抽出カラムで分離して, 茶葉サポニンを測定する方法を検討した.標準物質の EGCGを保持させた固相抽出カラムに20%メタノール水溶液15mlを通すと約95%のEGCGが溶出された. 一方, カラムに保持された茶葉サポニンは20%メタノール水溶液15mlを用いても3%以下しか溶出されず, 80%メタノール水溶液5mlで完全に溶出された.(2) 緑茶の主要カテキン類の中で, EGCG, EGCおよびECは20%メタノール水溶液15mlで95% 以上が溶出されたが, ECGは約30%が溶出されなかった.しかし, ECG はEGCG, EGC に比べて緑茶に含まれる量が少ないことから, また, 発色強度も茶葉サポニンの約1/6と低いことから, 茶葉サポニン画分にECG が混入しても大きな測定誤差にはならないと考えられる.(3) 以上の検討結果から, 緑茶浸出液の固相抽出カラムによる分画は次のとおりとした.緑茶浸出液 2ml を固相抽出カラムに注入し, さらに蒸留水8ml を流して水溶性ペクチン画分 (水溶性ペクチン定量試料) を回収した.次いで20%メタノール水溶液15ml をカラムに通してカテキン類を除去した後, 80% メタノール水溶液5ml を通して茶葉サポニン画分 (茶葉サポニン定量試料) を回収した.(4) 回収した画分を用いて, 各種緑茶浸出液中の茶葉サポニンをフェノール硫酸法で, 水溶性ペクチンをカルバゾール硫酸法で定量した.その結果, 通常の飲用条件では, 茶葉サポニンは玉露に多く, 次いで煎茶および抹茶, ほうじ茶, 番茶の順で多く含まれていた.水溶性ペクチンは玉露と抹茶すなわち覆下茶に多く含まれることが認められた.
著者
田附 きつ 塚中 和恵
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.93-101, 1985-02-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
12

ヤマノイモ3品種群, 4種類の長薯, いちょう薯, つくね薯(大和薯)およびつくね薯(市販・静岡産)を用いた饅頭の皮を調製した.上記のほかに, 対照としてつくね薯(市販・静岡産)を専門店で調製させた.各種ヤマノイモは卸し金法で卸し液を調製し, あらかじめ回転粘度計で粘度測定した.饅頭の皮はレオロメーターで硬さおよび付着性を測定し, 10℃, 108時間保存後の変化も測定した.また膨化率を測定した.最後に順位法により官能検査を実施した.これらから次の結果が得られた.1) 3品種群とも卸し液流動特性は降伏値をもつ擬塑性であった.粘度の大きさはつくね薯, いちょう薯および長薯の順で, つくね薯はワイセンベルグ効果を示した.2) 饅頭の皮のテクスチャーにおいて, 硬さはAがもっともやわらかく, 次いでE, D, BおよびCの順であった.付着性はAが非常に大きく, B~Eはほぼ同程度であった.3) 長薯使用の饅頭の皮は108時間の貯蔵後硬さが著増し, 付着性が激減して保存性がよくなかった.この饅頭の皮は官能検査ではやわらかで, 弾力性がよく, また経済性の点からも有利であるにもかかわらず市販に使用されていないのはこの保存性の不良によると考えられる.4) 饅頭の皮の膨化率はDがもっとも高く, 次いでC, B, EおよびAの順で, これは粘度の大きさの順と一致した.このうちDはワイセンベルグ効果を示したが, 従来饅頭の皮にDの品種, すなわちつくね薯がもっぱら用いられてきたことの一端が解明されたと考える.5) 饅頭の皮の官能検査は気泡, ふくれ, やわらかさ, 弾力性, しなやかさ, ねばっこさおよびおいしさの7 項目について順位法で行い, その結果をKramerの検定およびStudentのt検定にかけた.両検定は大筋では一致するが, 後者のほうがより細密な結果がえられた.試料Eは“気泡”の出方が有意に少なかったのは割れ止め処理をしてあったためである. “ふくれ” では試料Dが有意に膨脹の度合が大きく膨化率の結果と一致した.試料Bは“ばね状”は大きいが, “こわさ”があり, “ねばり”が少なく総評的に悪かった.
著者
藤井 一枝 花田 嘉代子 三平 和雄
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.37, no.9, pp.777-784, 1986

被服設計に役立つ資料を得ることを目的として, 熱的に重要な下半身のスカートに着目し, スカートの形態および丈を変化させた36種のスカートについて, 素材は薄布地のポリエステルデシンを用いて, 立位および椅坐位での局所別熱抵抗およびクロー値を求めた.結果は以下に示すとおりである.<BR>1) 立位では, 一般にスカートの形態に関係なく, スカート丈が長くなるにつれて大腿部の熱抵抗が増大する傾向をもつが, フレアーやギャザーをもつスカートは腹腰部にヒダを有するので, そこに下方から上昇した熱気流が停滞するため, 腹腰部と大腿部の熱抵抗の差はノーマル丈を境として大小関係が逆転する.その傾向はフレアー度やギャザー量が増すほど顕著であった.<BR>2) 椅坐位では, 腹腰部の熱抵抗は立位にくらべて大きくなり, 大腿前面で小さくなるため, 大腿前面と後面との差が立位にくらべて大きい.これは椅坐位により大腿前面の衣服間隙が小さくなるためと考えられた.<BR>3) 立位のクロー値はフレアースカートでは64°フレアーが最大となり, ギャザースカートではギャザー量1倍が最小のクロー値を示した.しかし, 椅坐位ではフレアー度, ギャザー量の増加とともにクロー値は大きくなる傾向がある.<BR>4) 立位と椅坐位のクロー値を比較すると, フレアー度およびギャザー量の小さいとき, 椅坐位のクロー値は立位にくらべて小さいが, フレアー度およびギャザー量を増すと増加する.また, 立位スカートのクロー値はフレアー度やギャザー量の相違よりもスカート丈の影響を強く受ける.しかし, この傾向は椅坐位では明らかではない.<BR>5) 同一被服材料のものでも, スカートの種類を形態別にしないと, クロー値と衣服重量との関係は直線的関係を示さないことがわかった.
著者
棚橋 亜矢子 デュアー 貴子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.215, 2014 (Released:2014-07-10)

目的 コーヒーが初めて日本に入ってきた安政2年から159年後の今、コーヒーは世界中で市民権を得た飲物となってきている。しかし、コーヒー飲用には年齢によって差が見られ、コーヒーを苦手とする若者も多い。そこで、本調査においては、女子学生のコーヒー嗜好を官能評価によって調査すると共に、コーヒーの飲用実態についても調査することを目的とした。方法 女子学生400名を対象にコーヒー飲用に関するアンケート調査を行った。また女子学生20名を対象にクローズドパネル法にて官能評価を実施した。インスタントコーヒーと、これと同様の味わいに調整した豆からドリップ抽出したコーヒーの比較は3点識別嗜好試験、豆を浅煎、中煎、深煎してドリップ抽出したコーヒーの嗜好性は順位法によって判定した。データ処理にはSPSSを用い、コーヒー嗜好の比較及び3点識別嗜好試験はχ2検定、順位法はノンパラメトリック検定を行った。結果 女子学生の多くは日常、緑茶を好んで飲用し、コーヒーの嗜好性は低い現状であった。コーヒーが嫌いと回答する割合も24.1%であった。よく飲用するコーヒーは、インスタントコーヒー、外出時食後、缶コーヒーの順であり、54.3%がミルクと砂糖を入れたコーヒーを好む傾向であった。また、女子学生の90.5%がコーヒー摂取によって何らかの効能があると考えており、眠気解消やリラックスしたい時に意識的にコーヒーを飲用していた。嗜好としては深煎ドリップコーヒーを好む傾向がみられた。
著者
肥後 温子 野口 駿 島崎 通夫
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.251-257, 1983-05-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
22
被引用文献数
1

種々の脂質を添加したでんぷん・水系をマイクロ波加熱し, 伝熱加熱とは異なる次のような現象を認めた.1) でんぷん粒には添加した脂質の性質が顕著に認められ, 糊化形態に差を生じた.脂質が疎水性の場合にでんぷん粒はより小さく, 親水性の場合より大きくなった.2) 被包接性脂質のうち, 短鎖成分は “結合型” 脂質量を増大させ, 長鎖成分はでんぷん成分の溶出を効果的に抑制した.以上の現象は, 次の諸要因によってほぼ説明できる.1) マイクロ波加熱ではでんぷん・脂質複合体が生成しやすい.理由としてでんぶんがゲル化し脂質と接触しやすくなること, 脂質の変質や複合体の解離が少ないこと, また分散液においても包接化合物が生成しやすい効果があることがあげられる.2) マイクロ波の選択加熱効果が脂質の昇温をおさえ脂質の性質に従った水分布をつくる.3) マイクロ波では, 水と脂質との分布によって糊化促進的な側面と糊化抑制的な側面が別々に強調される.
著者
川染 節江 石間 紀男 吉川 誠次
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.41-47, 1971-02-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
8
被引用文献数
1

1) クッキーの味覚は、原料の配合比により影響されると思われるので、その関連を調べるために、単体格子方格に従って、実験回数が25のCubic Modelを採用し、官能テストとTexturometerによる硬さの測定を行なった。2) テスト方法は、毎回4個ずつ基準品と比較する方法をとり、外観、風味、甘味、硬さ、舌ざわり、総合評価の6項目とし、基準品の評価は、嗜好意欲尺度にもとついた。3) クッキーの嗜好を左右する官能的要因を検討するために、総合評価と各評価項目との関係について、単純相関係数と偏相関係数を求めた。その結果、総合評価に寄与する主な評価項目は、舌ざわり、甘味、風味であることが判明した。4) 反応曲面の係数を求めることにより、実験格子点以外の配合比による試料について、総合評価を推定することができた。それによれば、小麦粉、砂糖、卵が最小の割合 (35、15、10%) では、コーンスターチが少なくてバターが多いほどよく、もっともよい配合比は、小麦粉35%、コーンスターチ8.3%、砂糖18.3%、バター28.3%、卵10.1%であると解釈できる。硬さの測定値は25-36 (T.U.) が理想的であり、コーンスターチの適量の配合は、Texturometerの測定曲線から、「もろさ」をよくする傾向があることが判明した。5) クッキーは水分が少ない (2.3~2.5%) ので保存性に富み、デシケーターを利用すれば8週間経過したものでも食味に変化のないことを確認した。
著者
三友 晶子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.617-626, 2005-09-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
9

The white fur with black-spots in the paintings of the 17th-century Dutch painter Vermeer is often considered to be ermine, which has been regarded 'royal fur, ' though he depicted ordinary citizens in his works. Why do the citizens wear royal fur? Is the fur really ermine? It cannot be concluded that Vermeer depicted the fur as ermine in view of reality or representation. The fur in Vermeer's paintings is probably modeled after more available kinds of white fur such as squirrel, rabbit and cat, to which he intentionally added black spots on canvas. This case confirms that even paintings that are considered realistic and meaningful may include fictional expression of costumes, which casts doubt on whether they truly reflect what the people of the time wore or the feelings they had about dress. We should be extremely careful not to treat such fictional expression as real and to put it properly into the context of the history of costume.
著者
松元 文子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1-10, 1969-02-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
18
著者
加藤 寿美子 寺田 貴子 松生 勝
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.409-418, 1981-07-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
28

Several kinds of starch granules are heated in water at various temperatures. The process is observed mainly by the technique of small-angle light scattering, polarizing microscopy, and amylography. The Hv light scattering pattern becomes smaller with increasing the temperature and finally shows the “speckled” appearance.These results indicate that the increase of the degree of swelling of starch granules with increasing the temperature and an interspherulitic interference generated by the special configuration of starch granules due to the collapse at the higher temperature. The interspherulitic interference gives rise to predictable diffraction phenomena in the Hv scattering pattern due to the coherency of the beam at the higher temperature. Thus, the temperature dependence of the swelling and the collapse are found to be dependent upon a little the kinds of starch. These results are not contradictory of those obtained by the polarizing microscopy and the amylograph for the most part. Incidentally, the technique of light scattering has advantages for investigating the orientation disorder of scattering elements with respect to the radius within the spherulite as well as the collapse of the spherulites, which is not entirely possible by the polarizing microscopy.
著者
庄司 一郎 倉沢 文夫 安立 清一
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.30, no.8, pp.666-671, 1979-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
5

米菓を製造するときの蒸煮条件および冷却条件と米菓の品質や生地の糊化, 老化との関係をおもにアミログラム, 焼き上げ生地容積, 硬度等で検討し, 次の結果を得た.1) 焼き上げ生地の品質を容積, 硬度から検討した結果では, 蒸煮条件においては110℃蒸煮は99℃蒸煮よりも容積が大で, 軟らかな焼き上げ生地が得られた.また110℃に蒸煮した生地を冷却した場合では凍結, 流水中冷却の品質がよく, 室温, 冷蔵庫冷却はよくなかった.そして冷却時間では15分冷却がよく, 24時間冷却すると品質が低下した.2) 蒸煮および冷却後脱水乾燥生地のアミログラムからは蒸煮条件においては110℃, 10分以上蒸煮すると初発粘度が高い値を示し, 粘度上昇はみられず, たんに温度変化とともに粘度が多少変化するのみで未糊化生地と考えられるピークはみられず糊化されていることが明らかとなった.99℃は20分蒸煮しても初発粘度が低く, 未糊化生地と考えられるピークがみられ糊化は完全には行われていなかった.蒸煮後冷却条件を検討した結果, いずれの冷却方法においても110℃蒸煮にみられたような一直線の曲線はみられなかったが, 凍結, 流水中冷却は初発粘度が高い値を示し, 室温冷却は低い値を示した.冷却時間では15分に比して24時間はいずれの冷却方法とも各特性値が低い値を示す傾向がみられた.3) 以上のように米菓の品質は蒸煮条件では糊化が完全に行われた110℃蒸煮のほうが糊化が不十分な99℃蒸煮よりも品質がすぐれており, アミログラムとの関係では品質の良い生地は初発粘度が高く, 未糊化生地と考えられるピークはみられないが, 品質の良くない生地は初発粘度低く, 未糊化生地と考えられるピークがみられた.一方冷却条件では凍結, 流水中冷却の品質が良く, 室温, 冷蔵庫冷却は品質がよくなかった.そして品質の良い生地は初発粘度が高く, 良くない生地は逆に低い値を示した.最高粘度, 冷却最終粘度においてもだいたい同様な傾向を示した.
著者
香川 実恵子 松本 美鈴 畑江 敬子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.1245-1254, 1999-12-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
14
被引用文献数
1

アオリイカ, スルメイカ, ヤリイカの生, 加熱肉より抽出したエキスを用いて, 官能検査とエキス分析を行い, 種類および鮮度による呈味の違いを検討した.3種類のエキスを比較したところ, アオリイカは遊離アミノ酸含量, 特に甘味を有するGlyが他に比べて有意に多く, 官能的にも甘味が強いと判定され, 呈味は最も好まれた.また, スルメイカは, グリシンベタインが多いものの, 苦味を有するHisや不味成分であるHxが多く, 好まれなかった.貯蔵による呈味の変化を検討したところ, 生イカでは24時間貯蔵によりアオリイカで有意に甘味とうま味が増して好ましくなり, 加熱イカではスルメイカで24時間貯蔵によりうま味が増した.
著者
菊池 裕子 齊藤 昌子 柏木 希介
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.33-38, 1987-01-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
10

Photo-deterioration of natural fibers (silk and cotton) at the early stage was surveyed with regard to the changes of physical properties and chemical structure of the fibers.Photo-deterioration at the initial stage brought about yellowing and lowering of elongation and strength for both fibers. The changes in elongation and strength of silk induced by UV light, xenon lamp, and sun light showed that the steep decrease occurred at the early stage, followed by the gradual decrease in both strength and elongation, the latter being more remarkable than the former. However, for cotton, the decrease in strength was more pronounced than that in elongation and both changes were smaller as compared with silk. Furthermore the changes in elongation and strength of cotton were simply proportional to exposure time.Regarding the changes in chemical structure, the formation of carbonyl groups by oxidation of cotton fibers was confirmed by copper number measurement. With silk the decrease of tyrosine and tryptophane was found and related to yellowing phenomena.
著者
福永 陽 柚本 玲 今井 綾乃 田中 辰明
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.238, 2004 (Released:2005-04-02)

<目的>衣類保管時に、市販防カビ・防虫剤を使用するが、それらの中にはシックハウスの原因の一つとされるパラジクロロベンゼンなどの化学物質が含まれているものも少なくない。一方、防カビ作用があるとされる天然物についての報告はあるが、居住環境中に見られる真菌に対する抗菌性の報告例は少ない。そこで本研究では衣類保管を想定し、衣類から分離した2種の真菌について、香味野菜の揮発成分による真菌の発育抑制効果を明らかにした。<方法>試料は香味野菜15種(ナガネギ・ショウガ・タマネギ・ニラ・セロリ・ミツバ・エシャロット・ローレル・サンショウ・カラシ・ワサビ・トウガラシ・シソ・パセリ・ローズマリー)。PDA培地にCladosporiumを三点培養したシャーレの蓋に、細かく砕いた試料を、培地に触れないように各1、3、5gずつ設置した。25℃で7日_から_30日間培養後、発育抑制効果により試料を以下のように分類した。_丸1_効果大;7日以上発育抑制。_丸2_効果小:7日未満で発育確認。<結果>ナガネギ・タマネギ・エシャロット・ワサビ・カラシの5種が効果大であった。今回、ニラを除くすべてのユリ科の試料で効果大となった。ニラに関しては、試料の腐敗によるコンタミが見られたので、効果が見られなかったと考えられる。
著者
木村 敬子 松野 裕子 上畑 智子 岸田 キクエ 梶田 武俊
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.55-58, 1980-01-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
10

1) 大豆もやし発芽中のVCの変化を子葉とそれ以外の生育部に分けて, DNP法とDNP反応液をTLCにより展開後比色するTLC法の両定量法により測定した.2) 原料大豆にはほとんど含まれていないVCが発芽に伴って生成され, その量は8日目にピークに達しその後減少した.とくに子葉における減少が著しかった.また生育部は子葉に比し酸化型Cの割合が高かった.3) 市販されるころの大豆もやしのVC含有量は, 多い場合で10mg%程度であり, 子葉には茎部と同量あるいはそれ以上のVCが残存していた.4) DNP法とTLC法の測定値間にはかなり開きがありいずれの部位についてもDNP法によるほうが高い値を示した.試料液のDNP反応液をTLCにかけるとAA以外に数個の褐色, 色のスポットが見られ, こらの呈色物質がDNP法による定量値を妨害したものと考えられる.TLG法は測定に時間を要する難点はあるがVCの真値を測定するには適当な方法であると思われる.
著者
渋川 祥子 杉山 久仁子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.1013-1018, 1992-10-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
7
被引用文献数
2

食品表面の着色に放射伝熱が有効であることの理由を明らかにするために, 食品と金属の受熱速度の比較を行った.本研究では, クッキーと鉄板を二通りの加熱方法 (放射伝熱 (RAD) と対流伝熱 (CON)) を用いて200度で加熱した.受熱速度を計算するために, クッキーでは水分蒸発を, 鉄板では表面温度を測定した.その結果放射伝熱で加熱したクッキーの受熱速度は, 対流伝熱で加熱したクッキーやそれぞれの方法で加熱した鉄板の受熱速度より速かった.この現象を説明するために, クッキー表面の放射率の測定を行った.放射率は, クッキーの加熱時間と共に増加することはなく, 放射率が放射伝熱方式の有効性の原因ではなかった.
著者
越智 知子 土屋 京子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.38, no.12, pp.1063-1067, 1987-12-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
10

バターと卵の配合比率が異なるスポンジケーキのレオロジー的性質を測定し, あわせて官能検査を行い検討した.材料配合比率は全量に対して小麦粉20%, 砂糖25%と一定にし, パターと卵の比率をAは3%と52%, Bは7%と48%, Cは14%と42%, Dは19%と36%の4段階に設定し試料とした.1) 静的粘弾性測定装置により, クリープ曲線を得, 粘弾性解析を行った.スポンジケーキはフックの弾性体, ニュートン粘性体および3組のフォークト体から成る, 8要素のフォークト型粘弾性模型で示された.弾性率 (E0, E1, E2, E3) は104~105dyn/cm2, ) 粘性率 (η1, η2, η3, ηN) は105~108Pであった.A, B, C, Dの順に各要素の粘弾性率は増加し, DはAの4~5倍に増加した.遅延時間に顕著な差はなかった.2) テクスチャー特性値測定では A, B, C, Dの順に硬さが増加したが, 弾力性, 凝集性は漸減した.3) 官能検査の結果, 手で圧したときの硬さの順位は客観測定の弾性率, 粘性率, テクスチャー特性値の硬さとよく対応したが, 食べたときの硬さの順位は客観測定の弾性率, 粘性率, テクスチャー特性値の硬さと反対で, 口どけの順位とよく一致し, 食べたときの硬さの感覚は口どけの影響を強く受けたと考えられる。比容積はA, B, C, Dの順に減少した.4) 品質のよいスポンジケーキを作るための, バターと卵の最適配合比率は, 本実験における諸特性値の総合的物断によれば19%と36% (D), および13%と42% (C) であった.