著者
野村 将春 藤村 政樹 松田 保 北川 正信
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.72-76, 1997-01-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
16

症例は75歳男性, 以前より風邪症状があると市販の総合感冒薬 (パブロンS®) を常用していた. 入院6日前より風邪症状を認め, パブロンS®を内服していたが, なくなったので, 新しい総合感冒薬 (パブロンゴールド®)を内服した. その翌日より呼吸困難出現, 近医にて胸部レントゲン写真上, 両側にびまん性陰影を認めたため, 精査目的で当科に紹介された. 胸部CTでは両側に間質性陰影が認められた. 気管支肺胞洗浄液中には好中球, リンパ球などの炎症細胞が認められた. 経気管支肺生検では肥厚した肺胞壁や間質への単核球の浸潤が認められた. 末梢血のリンパ球を用いた薬剤リンパ球刺激試験ではパブロンゴールド®が陽性であった. 以上よりパブロンゴールド®による薬剤性肺炎と診断した. 入院後, ステロイドを投与したところ症状は速やかに改善したが陰影は遷延した.
著者
堀尾 裕俊 野守 裕明 森永 正二郎 冬野 玄太郎 小林 龍一郎 伊賀 六一
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.439-443, 1996-04-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
8
被引用文献数
1

症例は51歳, 男性. 特発性間質性肺炎の経過観察中, 肺癌を発見された. 肺癌の病期および間質性肺炎の活動性や呼吸機能の結果より手術可能と判断し, 左上葉切除を施行した. 術後9日目に間質性肺炎の急性増悪を認めたが, 迅速な診断と早急なステロイド治療により救命し得た. 肺癌術後急性増悪例は致命的であり, その救命率はきわめてまれであるため報告した.
著者
磯部 宏 西村 正治 稲葉 秀一 山本 宏司 神島 薫 川上 義和
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.535-538, 1987-05-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
19

症例は28歳女性で, 咳嗽, 喘鳴を主訴に当科に入院した. 約5年前より上記症状を繰り返し, 気管支喘息として通院加療を受けていたが, コントロールは不十分であった. ペットとして猫を飼育している. アロテック吸入による1秒量の改善率は24.4%であり, 皮内テストでは猫毛, 犬毛, ハウスダストが陽性, IgE-RAST score は猫毛4, 犬毛3, ハウスダスト3であった. 猫毛抗原による吸入誘発試験を施行したところ二相性喘息反応を呈した. 以上より猫毛による気管支喘息と診断し, 猫を遠ざけた生活を指導し良好なコントロールが得られている. 我々の知る限りでは, 我が国での猫毛, 猫毛皮屑による気管支喘息の報告は少なく, また二相性喘息反応を呈した報告例は認めない. 猫毛による気管支喘息の臨床像とともに, 特に二相性喘息反応での臨床的, 肺生理学的変化について報告した.
著者
青木 昭子 萩原 恵里 白井 輝 石ケ坪 良明 谷 賢治 大久保 隆男 横田 俊平 清水 広子 松山 秀介
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.729-735, 1990-05-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
22

結核患者の高免疫グロブリン血症を血清クラス別に検討するとともに, BCG菌体成分を抗原としたELISA法にて特異的血清抗体を測定した. 成人患者では血清IgG, IgAの上昇は認められたが, IgMの上昇は認められなかった. 血清IgG型抗BCG抗体価は, 結核患者血清が健常人血清に比べて有意に高値を示した. 活動性患者ではとくに高値を示し, 治療によって抗体価の低下が見られた. この抗体価の測定は結核症の診断や経過観察に有用と考えた. ついで血清抗体の認識するBCG抗原分画をイムノブロット法にて解析した. 65KDa分画は健康人血清でも高頻度で認識され, 他の一般細菌抗原との交差反応性によると考えた. 65KDa蛋白による感作が感染症の病態や自己免疫反応に影響を与えている可能性について考察した. 血清抗体に認識されたBCG抗原分画の中で, 16KDa分画は結核患者に有意に高頻度で認識された. この分画が特異性, 感受性に優れた診断法やコンポーネント・ワクチンの開発に有用ではないかと考えた.
著者
岡野 弘 立花 昭生 谷本 普一 中田 紘一郎 中森 祥隆 蝶名林 直彦 中谷 龍生 吉村 邦彦 原 満
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.24, no.8, pp.858-864, 1986-08-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
22

肺アスペルギローマをもつ自験22例の免疫学的反応について検討した. A. fumigatus の皮内反応は―相性の即時型が特徴的であった. 症例の30%が血清IgE高値, A. fumigatus のIgE型特異抗体が陽性であり, IgE値が12,000IU/ml以上の症例も認めた. A. fumigatus の沈降抗体は症例の約70%が陽性であり, A. fumigatus によるリンパ球刺激試験は症例の50%が陽性であった. 本症例中には自験のアレルギー性気管支肺アスペルギルス症の免疫学的反応と差のない症例も認めた. 本症例の62%がツ反の陰性または偽陽性であり, 剖検肺で活動性結核性病巣を認めたツ反陰性の2例から本症治療上, 注意すべき点と考える. 本症の免疫学的反応は本症の診断. 治療, 病態を考える上に有用と考える.
著者
大石 修司 人見 秀昭 酒井 正雄 小林 英夫 永田 直一
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.33, no.12, pp.1401-1407, 1995-12-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
12

Swyer-James 症候群5例について臨床的に検討した. 平均年齢は41歳 (20歳から70歳), 全例が男性. 5例ともに胸部X線上左肺の透過性充進を認めたが, 精査の結果3例で病変が両側に存在し, 2例で病変の不均一性が認められた. 胸部CT検査が病変の分布および重症度をもっとも正確に検出した. 133Xe吸入シンチグラムでの洗い出し遅延は, 本症候群の特徴である air trapping を示す所見であり, 胸部X線上 air trapping が明らかでない症例には特に有用な検査であることが判明した. 本症候群の成因については気管支病因説が有力とされており, 自験例も画像的には後天性気管支病因説に合致するものと考えられた. しかしながら, 左肺に, しかも男性に多いという特徴を有し, さらに肺炎の既往の明らかでないものも多く, 先天素因の関与も否定できないと考えられた.
著者
高橋 亨 棟方 充 大塚 義紀 佐藤 敦子 本間 行彦 川上 義和
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.723-727, 1995-07-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
14

特発性間質性肺炎 (IIP) の急性増悪症例におけるウイルス感染の関与を血清抗体価・喀痰封入体検査から検討した. 当科に入院したIIP 105名のうち急性増悪(1ヵ月以内に自覚症状の増悪, PaO2 10 Torr以上の低下, 胸部レ線像の悪化のすべてを満たすもの) を呈した症例を対象とした. 経過中にウイルス抗体価の4倍以上変動を認めたか, 喀痰ウイルス封入体を証明したかの, いずれかの例をウイルス関与ありとした. これらの症例につき, 関与したウイルス, 臨床像などを検討した. 急性増悪例は全IIP患者の27% (28例) であった. ウイルス関与ありは増悪例の39% (11例) であった. 関与したウイルスは Influenza: 6例, Parainfluenza: 1例, Adeno:1 例, Herpes simplex: 1例, RS: 1例, Cytomegalo: 2例であった. ウイルス関与群は非関与群に比べ, 増悪前の血清IgA値が有意に低値であった (p<0.05). これらの結果から, 急性増悪では血清IgA低値と関連したウイルス感染の可能性がある.
著者
蝶名林 直彦 中森 祥隆 鈴木 幹三 立花 昭生 中田 紘一郎 岡野 弘 谷本 普一 松岡 ひろ子
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.89-96, 1982-01-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
20
被引用文献数
1

We examined the pathogens of 204 patients with acute pneumonia at our hospital between Jan. 1970 and Dec. 1979 to study the changes of the pathogens in community acquired acute pneumonias over a period of 10 years.The results were as follows:1) Of 204 cases, bacterial pathogens accounted for 53 cases (26.0%), mycoplasmas pneumoniae 35 cases (11.3%) and viral species 9 cases (4.4%). However, in the remaining 107 cases (52.4%) the pathogens could not be identified.2) Of bacterial pathogens, Streptococcus pneumoniae was the most frequegt etiologic agent (29.0%), Hemophilus influenzae was the second (22.6%), Pseudomonas aeruginosa the third (17.7%) and the majority of the pathogens were gram negative bacilli including E. coli, Klebsiella aerogenes and Serratia marcescens. Although lung abscess and empyema were included in this series, Staphylococcus aureus was the pathogen in only 3 cases.3) The study of the yearly incidence of each pathogen demonstrated that pneumonias due to Hemophilus influenzae increased since 1974, but the those of undetermined pathogens decreased.4) To study the relationship between the pneumonias and the underlying deseases, the pneumonias due to S. pneumoniae and H. influenzae occurred both in previously healthy patients and in those with underlying diseases. The pneumonias due to gram negative bacilli occurred in patients with underlying diseases, while mycoplasmal pneumonias primarily occurred in previously healthy patients.5) The age of the patients with bacterial pneumonias increased in recent years, however, the majority of mycoplasmal pneumonias still occurred in young or middle aged people.6) We have often used the transtracheal aspiration (TTA) technique to determine the pathogens of the pneumonias when the pathogens are not determined from the sputums. In this series, the pathogens were identified in 14 out of 42 cases examined with TTA. However in 12 out of 14 cases the pathogens could not be identified by examining sputums.
著者
足立 規子
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.433-440, 1994-05-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
20

肺の日和見感染症を疑った免疫不全患者41例から得られた気管支肺胞洗浄 (BAL) 液より, Polymerase chain reaction (PCR) 法を用いてニューモシスチス・カリニ (PC) 及びサイトメガロウイルス (CMV) DNAの検出を試みた. 41例中19例にPC-DNAの増幅を, 3例にCMV-DNAの増幅を認めた. このうち9例は従来の方法では診断できない症例だったが, 未治療の一例を除き, 全例でPC及びCMVに対する治療が奏効した. また, PC虫体を認めた検体については, 全例でPC-DNAの増幅を認めた. 免疫能が正常と考えられる患者16例から得られたBAL液を用いて同様の検討を行ったところ, PC及びCMV-DNAとも増幅を認めなかった. 以上より, PCR法はBAL液中のPC及びCMV-DNAの検出に極めて鋭敏であり, PC及びCMV肺炎の診断に対するBALの有用性を高めるものと思われた.
著者
工藤 翔二 植竹 健司 萩原 弘一 平山 雅清 許 栄宏 木村 仁 杉山 幸比古
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.632-642, 1987-06-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
44
被引用文献数
9

たまたま経験した1症例の経験にもとついて, DPBにたいするエリスロマイシン (erythromycin base, erythromicin ethylsuccinate, 以下EM) の少量 (600mg), 長期 (6ヵ月以上) 投与を試みた. 18例のDPB (H. influenzae 16例, P. aeruginosa 2例) について, 平均19.8ヵ月の投与で, 全例に症状, 検査所見の改善を認めた. 労作時息切れ, 動脈血ガスの改善と寒冷凝集素価, IgM値の低下が, 3ヵ月以降比較的早期にみられ, 体重, 呼吸機能, 胸部X線所見の改善がそれに続いた. これらの改善は投与期間中持続した. 菌交代は1例をのぞいて認めなかった. 副作用として, GOT, GPTの軽度上昇がみられた (5例, 28%) が一過性であった. 投与終了9例について, その後平均11.6ヵ月間観察し, 4例に再然傾向を認めたが, うち2例は再投与にて改善, 全体として最終観察時に有意の悪化はみられなかった.本療法は, DPBの治療上きわめて有用であり, DPBを下気道の持続感染による特異な組織反応と考える立場から, EMの作用機序について考察した.
著者
辻野 一三 別役 智子 稲葉 秀一 吉川 隆志 寺井 継男
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.30, no.10, pp.1864-1868, 1992-10-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
8

暴露試験により確定診断しえた加湿器による過敏性肺臓炎の1例を経験したので報告する. 症例は58歳女性, 主婦. 乾性咳嗽, 労作時呼吸困難を主訴に近医にて投薬を受けたが症状の改善を認めず当科を受診した. 胸部X線写真, 呼吸機能検査などから間質性肺炎が疑われ, 入院後施行したBAL, TBLBおよび自宅の加湿器を用いた暴露試験により加湿器による過敏性肺臓炎 (加湿器肺) と診断した. 加湿器の水と患者血清との補体結合反応, 沈降抗体反応が陽性であった. また既知の抗原としては, Hollister-Stier 社製 Pigeon droppings extract, thermoactinomyces vulgaris extract との間に沈降反応がみられたが, 加湿器の水から培養された Flavobacterium meningosepticum についても両反応共に陽性であり, 同グラム陰性桿菌と本症発症との関与も示唆させれた.
著者
石原 陽子 北村 諭 千治松 洋一 本間 日臣
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.22, no.12, pp.1122-1126, 1984-12-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
6

健康成人29名に喫煙負荷実験を行った所, 1日当りの喫煙量と血中6-keto PGF1α, TxB2, 過酸化脂質量との間には相関はなかった. 喫煙者群では19例中11例で喫煙負荷後に過酸化脂質が増加する傾向を示したが非喫煙者群では一定傾向を示さなかった. また血漿中6-keto PGF1α値は, 非喫煙者群では1例を除く全例で喫煙負荷後上昇したが, 喫煙者群では一定傾向を示さなかった. 血漿TxB2値は, 非喫煙者群では喫煙負荷後に全例が上昇を示した. 一方, 喫煙者群のうち“shallow”群では喫煙負荷により9例中8例でTxB2値の上昇を認めたが,“deep”群では逆に低下した. 喫煙負荷前の血漿TxB2値は, 非喫煙者群に比し“deep”群で有意に高値を示した. 以上の実験成績より, 喫煙の急性効果として, 血中TxB2, 6-keto PGF1α, 過酸化脂質などの液性因子の変動が起ることが解明された.
著者
青木 隆幸 津田 富康 鬼塚 徹 水城 まさみ 吉松 哲之 岡嶋 透 葉玉 哲生 調 亟治
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.21, no.8, pp.770-774, 1983-08-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
10

31歳男. 中国のポーロンリ (7,292m) にアタック中, 高山病を発症. 下山途中 (5,300m), 痙攣ののち四肢麻痺が出現. 下山後 (700m) 左胸痛, 咳嗽, 血痰が出現. 当科入院後左下葉切除を行い, 背側下部の融解壊死, 組織学的には, 無気肺, 肺胞内出血, うっ血, 小肺動脈の血栓形成, 多数の梗塞巣を認めた. 頭部CT写真で両側頭頂部に梗塞巣を認めた.
著者
本村 文宏 棟方 充 土肥 勇 南須原 康行 川上 義和
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.455-460, 1997-04-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
12

症例は48歳の男性. ウサギ飼育6ヵ月後に気管支喘息を発症し, 症状が改善せず, 胸部X線写真にて浸潤影も出現したため, 精査のため入院となった. 末梢血好酸球は軽度増加していた. 入院時には陰影は消失していたが, ウサギ毛のスクラッチ抗原による吸入誘発試験で二相性喘息反応とともに胸部CTに浸潤影が出現し, 同部位からの気管支肺胞洗浄と経気管支肺生検で好酸球浸潤を認めたためウサギ毛によるPIE症候群 (pulmonary infiltration with eosinophilia) と診断確定し, ウサギ飼育の中止, 環境の改善およびステロイド薬により4年来再発をみていない.
著者
北原 多喜
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.166-172, 1979-02-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
11

A case of acute chlorine poisoning was reported. A 60 year-old engineer was exposed to chlorine gas when working with hydrochloric acid. On admission, his chest film revealed marked pulmonary edema and arterial gas examination showed hypoxemia. Immediately, he received oxygen inhalation and intravenous injection of a large dosage of hydrocortisone (Sorcortef 5g). On the seventh day of hospitalization, his condition improved as did radiologic findings. On the thirteenth day of hospitalization, transbronchial lung biopsy of the right lower bronchus showed peribronchial thickening and alveolar capillary dilatation. One month after exposure, symptoms of diffuse panbronchiolitis were recognized but they regressed by steroid treatment. Thereafter, chest film and pulmonary function returned to normal.It was suggested that large dose steroid treatment at an early stage would be effective to manage diffuse panbronchiolitis and pulmonary edema due to acute chlorine poisoning.
著者
金森 一紀 魚谷 浩平 高倉 文嗣 西岡 真二 越野 健 藤村 政樹 中積 泰人 岡藤 和博 松田 保 上尾 友美恵 柴山 正美 川井 清
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.24, no.9, pp.970-976, 1986-09-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
24

健常者および非発作期の気管支喘息患者を対象に深吸気の影響を検討した. Maximum expiratory flow-volume curve のV25をMEF25, これと同一肺気量における partial expiratory flow-volume curve のVをPEF25とし, Deep Inspimtion (DI) Index=(PEF25-MEF25)/PEF25を求めた. 健常者では若年者の DI Index は負となり深呼吸による気道拡張効果が認められたが, この効果は加齢とともに減弱し, 50歳以上では DI Index は正の値になった. 抗コリン剤吸入後には DI Index は有意に増加して正の値となり年齢差は認められなくなったことから, 若年者では迷走神経の緊張が強く気道の resting tone が収縮性に保たれていることが推測された. 気管支喘息のうち40歳未満で%FEV1.0≧70%の患者では DI Index は負となり, 抗コリン剤吸入後には有意に増加して年の値となったことから, 気管支喘息でも深呼吸の気道拡張効果は存在し迷走神経が関与していると考えられた.
著者
清水 孝一 塩田 智美 仲谷 善彰 坂本 匡一 岩瀬 彰彦 青木 茂行 松岡 緑郎 永山 剛久 河端 美則
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.35, no.10, pp.1099-1103, 1997-10-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
5
被引用文献数
1

26歳女性が感冒様症状に対して投薬された薬剤を内服後約1日の経過で呼吸困難を呈して来院した. 入院時の胸部レントゲン写真では両側上肺野を中心とした不規則な浸潤影を認め, 胸部CT写真でも汎小葉性の肺野濃度の上昇を認めた. BALより総細胞数の増加, 好酸球分画の著増を認めTBLBで胞隔の肥厚と間質への好酸球の浸潤が見られた. 前医で投与されたバッファリン®に対するリンパ球芽球化反応試験が陽性であったために本剤の投与が関与する薬剤誘起性肺障害と考えた. 薬剤の中止により自覚症状, 血液ガス所見, 胸部レントゲン写真は速やかに改善し, その経過は急性好酸球性肺炎様であった. 治療に際してステロイド剤の投与は不要であった.
著者
小野 貞文 小池 加保児 谷田 達男 久保 裕司 芦野 有悟 千田 雅之 鈴木 聡 磯上 勝彦 那須 元一 斎藤 秀行 相良 勇三 佐久間 勉 仲田 祐
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.27, no.8, pp.910-916, 1989-08-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
19

ヒトの肺循環系に於ける血小板活性化因子 (PAF) の果たす役割, 及び, その作用の発現に於ける血管内皮, cyclooxygenase 系の関与を明らかとすることを目的とし, 摘出ヒト肺動脈を用いて検討した. 内皮傷害の肺動脈では, 10-6MのPAFにて, 緩徐で弱い収縮作用が認められた例があったが, 他の肺動脈では, 内皮非傷害, 内皮傷害のもの共に収縮あるいは弛緩は認められなかった. 10-7MのPAF前投与により, 肺血管収縮物質である Histamine, Prostaglandin F2αの収縮は抑制された. この抑制作用は内皮依存性であり, cyclooxygenase 系は関与しなかった. ヒトにおいて, PAFは, 内皮細胞由来の血管弛緩物質 (EDRF) を介して作用を発現する可能性が示唆された.
著者
塩田 雄太郎 森 由弘 青山 重男 原田 淳一 瀬崎 達雄 長田 高寿 高橋 清 木村 郁郎
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.289-293, 1988-03-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
15

消化器並びに呼吸器症状を呈する19歳白人の膵嚢胞性線維症の1症例を報告する. 患者は生来健康であったが, 19歳より咳嗽, 喀痰, 下痢を繰返すようになった. なお患者の兄はすでに膵嚢胞性線維症と診断されている. 胸部X線写真ではびまん性の小結節状陰影があり, 両側肺野に気管支の走向に一致した線状陰影が認められた. 肺機能検査では軽度の閉塞性換気障害が認められた. 膵外分泌機能の低下があり, 腹部のCTでは膵の萎縮が認められた. 汗のナトリウム, クロールは高値を示した. また成人の膵嚢胞性線維症に多い合併症とされる鼻ポリープ, 耐糖能の低下も認められた. 本邦では本症の報告は少なく, また成人になって症状が出現するのは稀とされているが, 本症例においては全体に症状が軽いためにこのような経過をとった可能性が考えられた.
著者
坂下 泉 北村 諭
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.770-773, 1986-07-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
13

卵白アルブミン感作および非感作モルモットの血漿中ヒスタミン, セロトニン値の変動を迷走神経電気刺激前後で比較検討した. 迷走神経電気刺激前の血漿中ヒスタミン値は非感作群26.4±10.7ng/ml (n=20), 感作群29.2±9.4ng/ml (n=27) で有意差はなかった. 血漿中セロトニン値は非感作群245.1±80.3ng/ml (n=17), 感作群237.0±55.0ng/ml (n=24) で有意差はなかった. 刺激前後の paired t-test では感作群でヒスタミンが1分後および5分後, セロトニンが1分後に有意に高値を示した. これらの結果より迷走神経電気刺激がヒスタミン, セロトニン放出を直接促進する可能性が示唆された.