著者
芹田 敏夫 月岡 靖智 花枝 英樹
出版者
日本ファイナンス学会 MPTフォーラム
雑誌
現代ファイナンス (ISSN:24334464)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.57-93, 2022-02-15 (Released:2022-02-14)
参考文献数
30

本稿は,パッシブ型ファンドの持ち株比率と企業のガバナンスおよびパフォーマンスの間の関係を検証している.検証において,パッシブ型ファンドの持ち株比率が抱える内生性の問題に対処するため,日経平均採用企業であるかどうかを操作変数とする操作変数法を用いている.検証の結果,以下のことを発見している.(1)パッシブ型ファンドの持ち株比率が高い企業ほど,社外取締役比率の改善が促されている.(2)パッシブ型ファンドは業績の好調な企業の経営トップ選任議案に反対票を投じない傾向にあり,一方で業績が不調な企業の経営トップ選任議案には反対票を投じる傾向にある.また,パッシブ型ファンドは買収防衛策導入関連議案に反対票を投じる傾向にある.(3)パッシブ型ファンドの持ち株比率が高い企業ほど,株式投資収益率が高い.以上の結果は,日本でもパッシブ型ファンドが企業のガバナンスとパフォーマンスの改善に一定の役割を果たしていることを示している.
著者
葛 文綺
出版者
中部大学, 大学企画室高等教育推進部
雑誌
中部大学教育研究 (ISSN:13497316)
巻号頁・発行日
no.21, pp.1-11, 2021-12

新型コロナウイルスの流行によって人々の生活様式が大きく変わった。大学もその影響を受け、遠隔授業が導入され、教職員も学生も試行錯誤の日々を送っている。本稿ではこのような状況での教員と学生の関係構築について論じる。まず、大学でアカデミック・ハラスメントが起こりやすい背景、判断基準について述べる。また、それを踏まえたうえで、遠隔授業で起こりやすい3つの問題、1)オンライン授業時のカメラオンとオフの問題2)教職員と学生の連絡におけるすれ違いの問題3)人間関係の距離感の問題を取り上げ、その対応について説明する。ハラスメントにならない効果的な指導方法については、褒めて育てることと叱ることを取り上げ、具体的な褒め方と叱り方について解説する。そして、タイプ別のコミュニケーションについては、4つのタイプの強みと弱みを踏まえ、架空事例を用いてそれぞれのタイプの学生への対応について詳しく述べる。最後にストレスマネジメントの方法について紹介する。
著者
野口 映
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

セツキシマブはEGFRを標的とした抗体薬であるが、その作用機序は解明されているとは言い難い。本研究は、ジェネティクス、エピジェネティクス、immunologyといった多方面から解析する事で、セツキシマブの作用機序解明を試みた。次世代シークエンサーによる遺伝子変異解析では、対象とした細胞においてEGFRの有意な変異はなく、HRAS変異が一部の細胞でみられる程度であった。エピジェネティックな検討では、ある種のHDAC阻害剤との併用により、EGFRのmRNA値の上昇を認め、セツキシマブ感受性を獲得するものがみられた。特に影響の強くみられた細胞では、形態的に細胞間の結合性の低下がみられた。
著者
林 真理子 安原 ゆかり
出版者
日経BP社 ; 1985-
雑誌
日経マネー (ISSN:09119361)
巻号頁・発行日
no.360, pp.120-122, 2012-11

『「綺麗な人」と言われるようになったのは、四十歳を過ぎてからでした』というご自身の著作タイトル通り、年を重ねてキレイになった作家の林真理子さん。28歳で作家デビューしてから30年、初の写真集『桃栗三年 美女三十年』の冒頭には、中東の超高級ホテルで休日を過ごす優雅なカットが並ぶ。仕事も遊びも美容も、時代の最先端を追い続ける林さんにマネー哲学を聞いた。
著者
大塚 尚寛 小林 良二
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
日本鉱業会誌 (ISSN:03694194)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1127, pp.1-6, 1982-01-25 (Released:2011-07-13)
参考文献数
10

In order to determine the fracture toughness of various rocks, the splitting tests under the stiff-load are undertaken on eight kinds of rocks, namely OGINO tuff, KIMACHI sandstone, IZUMI sandstone, EMOCHI andesite, INADA granite, fine grained AKIYOSHI marble, medium grained AKIYOSHI marble and TOHOKU marble.The rock specimens (200mm×150mm×20mm) in which have a slot are prepared in this test. The crack initiation and the process of crack propagation are studied by the measurement of splitting load, crack opening displacement and crack length. The values of fracture toughness KIC of various rock specimens are determined with the compliance method, and the relationships between fracture toughness and mechanical properties are investigated.The main results obtained in this studies are as follows;(1) As a result in this test, it is seen that the fracture behaviours of rock specimens are divided into two groups. That is, the fracture crack of rock specimens of one group initiates after the maximum load point in the splitting load-crack opening displacement curve and propagates in a straight line, as OGINO tuff, KIMACHI sandstone, IZUMI sandstone, EMOCHI andesite and INADA granite. The fracture crack of rock specimens of other group initiates at the boundary of grains in rock before the maximum load point and the fracture crack in rock specimens propagateslowly along the boundary, as medium grained AKIYOSHI marble and TOHOKU marble.(2) From the relationship between fracture toughness and mechanical properties of various rocks, it becomes clear that fracture toughness of rocks increases in proportion to compressive strength, tensile strength and shear strength, and that fracture toughness decreases with the porosity of rocks increas.
著者
AKIKO EDAGAWA NORIHIRO MATSUDA TORU OGURA KENICHI UEZONO SHINJI IZUMIYAMA AKIRA FUJII
出版者
The Society for Antibacterial and Antifungal Agents, Japan
雑誌
Biocontrol Science (ISSN:13424815)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.187-192, 2021 (Released:2022-01-08)
参考文献数
15

Microbiological contamination inside rubber ducks floating in the bathtub at a "duck bath" of a bathing facility was analyzed by examining bacterial and amoebic counts. The results of microbial tests, such as standard plate count, heterotrophic plate count and Legionella-LAMP (Loopmediated isothermal amplification) , showed that microbial contamination increased in the rubber ducks over time. When the ducks were washed with sodium hypochlorite, those microbial contaminations were not detected; but when the ducks were washed with an electrolyzed water, the standard plate counts and the heterotrophic plate counts were detected in the amount of 103 per duck in the wipe samples. Without proper washing of rubber ducks, bacteria and free-living amoeba can grow and colonize biofilms, and can thereby cause infection in humans. Also, microbial contamination inside ducks may reduce chlorination of the entire bathtub and cause bacterial infection such as Legionellosis from the bathtub water.
著者
田中 貢 藤井 清一
出版者
大同特殊鋼株式会社
雑誌
電気製鋼 (ISSN:00118389)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.107-113, 1958-03-30 (Released:2009-05-25)
被引用文献数
1 1
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.840, pp.163-167, 2003-02-03

先月に引き続き,今回もLAN関連の技術について解説する。前回はTCP/IPのパケットについて解説した。今回はIP通信を支えるIPアドレス自体のしくみや実際にIPパケットを相手まで送り届けるルーターの役割や動作原理をみていこう。 IP通信を学ぶにはIPアドレスを理解しないことには始まらない。
著者
川名 敬
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.251, 2015

子宮頸癌は30歳代に罹患ピークがあり,年間約7000人が発症し,約3000人が死亡する癌である.ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因であることは周知であり,HPVを標的とした癌免疫療法が期待されてきた.20年以上の開発の歴史の中で製剤化されたものはない.我々は,粘膜免疫を誘導する免疫療法を開発し,子宮頸癌前癌病変(CIN3)を対象とした臨床試験を実施した.HPV癌蛋白質E7を表出した乳酸菌をCIN3患者に経口投与し,HPV特異的細胞性免疫を腸管粘膜に誘導し,腸管粘膜由来のintegrin beta7陽性リンパ球を子宮頸部病変に見出した.そのうち,HPVE7特異的IFNgamma産生リンパ球の子宮頸部粘膜の集積と臨床的病変退縮は相関した.この臨床試験のデータをもとに,E7表出乳酸菌を改良し,現在第二世代乳酸菌ワクチンを製剤化している.一方,integrin beta7陽性リンパ球が子宮頸部粘膜上皮にホーミングし,かつ集積することがCIN3病変を排除することに寄与することを見出したので,細胞療法として,これらの細胞に山中因子を導入するT-iPS技術を応用することをめざしている.本講演では,これまでの粘膜免疫を介した新しい免疫療法の臨床成果と今後の新技術(特に再生医療)との複合について紹介したい.
著者
青木 賢人
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.249, 2009

I 金沢大学における自然災害対応の枠組み演者の所属する金沢大学では常設の災害対応組織が構築されていない状況下で,2007年3月25日に能登半島地震が発生し,県下の災害に対し全学的な対応を求められることになった.発災当日より,本学のいくつかの災害調査関連の教員グループが自発的に現地調査を開始したが,大学としての正式な組織の発足以前から当該教員間では相互に連絡が取られ,動向が相互に把握されている「緩やかな連携」が成立していた.これは,能登半島地震が発生する以前の2005年より,金沢大学の理学系・工学系・文系教員のうち,災害関連調査を行う教員によって「白山火山勉強会」が設立され,定期的な情報交換が行われていたためである.本学教員による能登半島地震関連調査は,大学の正式組織に整理統合されていくが,通常時の「緩やかな連携」が発災時において重要な役割を果たしたことは,他大学における防災体制構築のヒントにもなるのではないだろうか.II「白山火山勉強会」の設立と展開白山は金沢市の南方約45kmに位置する活火山である.1659年の噴火記録を最後に比較的静穏な状況にあるが,本学名誉教授(元文学部地理学教室)で火山地形学の守屋以智夫氏による一連の研究(守屋,1984など)によって,最近数千年間は100~150年程度の静穏期と300年程度の活動期を繰り返しており,近々活動期に入ることが予想されている.しかし,白山の噴火を前提とした産官学の連携や,発災時の連絡・協力体制,ハザードマップの作製などの事前対策は十分に構築されていない状態であった.そうした中,2005年に白山山頂直下で顕著な群発地震が観測され,噴火の可能性が危惧された.この活動を受け,群発地震の観測成果を速やかに共有することに加え,発災時の協力体制を事前に構築することを目的に,前述の守屋以智夫氏と,自然科学研究科助教授で実際に地震観測を行っていた平松良浩氏を中心に,文系学部(文学部・教育学部)を含む学内の関連教員および,石川県・白山市などの自治体職員,金沢地方気象台,建設コンサルティング会社による「白山火山勉強会(以下,勉強会)」が設立され,演者も早い段階から参加することとなった.III 2007年能登半島地震発生時の災害対応体制2007年能登半島地震は3月25日という,春季休業中の日曜日に発生したこともあり,教員・学生とも多くが大学を不在にしていた.演者も金沢を離れており,直接的な対応をとることが難しかった.こうした状況下で,文・理・工の各領域の災害調査関連教員の所在確認と調査動向の相互把握が勉強会のネットワークを通じて行われ,スムースに情報交換が進んだ.演者が金沢を離れている間にも,勉強会参加教員の調査状況や成果はもちろん,それ以外の教員らによる成果が勉強会のネットワークを通じて提供され,その後の調査計画の立案に大いに役立った.その後,各教員の調査・研究は4月5日に発足した学長直轄の組織である「金沢大学2007年能登半島地震学術調査部会(以下,調査部会)」に集約されるが,この12日間の初動時に,特に文・理をまたぐ情報交換に勉強会が果たした役割は大きかった.また,勉強会として文・理の協働が既に取られていたことが,正式な組織立ち上げの素地となったともいえる.調査部会の発足後は,情報交換,成果の共有・発信,自治体との連携などが調査部会を核として行われている.また,自治体,消防,自主防災組織,一般市民に対する情報提供・防災教育などが,調査部会に参加した各教員によって行われている.IV「緩やかな連携」が果たした役割現在,勉強会は地震調査から離れ,本来の火山を中心とした防災に関する勉強会として調査部会とは独立に活動を継続している.能登半島地震の発生に際して,勉強会が果たした役割を再整理すると,災害発生以前から「学内にいる災害調査関連教員の把握(人材の発掘)とFace to Faceの関係構築が,教員個人レベルにおいてボトムアップ的になされていた」ということを挙げられる.一方,大学の組織である調査部会は,予算措置(とオブリゲーション)を伴うトップダウン型の組織であり,形骸的である側面も否めない.また,正式な組織は公的である反面,その設置までのステップや,多くの教員や様々な学外組織が参加するためには制約も多く,ハードルが高い.発災時において,混乱した状況下で調査組織を立ち上げ,効果的に運用するためには事前の準備が不可欠である.本学のように公的な組織が未整備な大学にあっては,その組織の発足までに多くの時間が費やされ,最も重要である初動時の調査が混乱の元で進められる可能性があった.その意味で,勉強会を通じて「緩やかな連携」が構築されていたことは重要であったといえよう.