著者
内貴 寛敬 小野 圭昭 小正 裕
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学 (ISSN:00306150)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.51-63, 2004-03-25 (Released:2017-05-15)
参考文献数
42
被引用文献数
2

本研究は鼻呼吸動態の計測を利用し,臨床に応用可能な嚥下運動の臨床的検査法を検討することを目的とするものである.正常被験者に対して差圧型気流量計を用いて鼻呼吸動態,オトガイ舌骨筋筋活動,喉頭運動ならびに胸郭・腹部運動を計測することによって嚥下時の鼻呼吸動態を明らかにし,従来の検査法と比較検討した.鼻呼吸停止時間とオトガイ舌骨節筋活動時間,喉頭運動時間,胸郭運動停止時間ならびに腹部運動停止時間とを比較した結果,鼻呼吸停止時間は他のパラメータよりもばらつきが小さく,鼻呼吸停止時点ならびに開始時点を明確に特定することが容易であった.また,水至適嚥下量(20mL)において,鼻呼吸はオトガイ舌骨節筋活動開始時点および喉頭運動開始時点よりも遅れて停止し,オトガイ舌骨筋筋活動終了時点よりも遅く,喉頭運動終了時点よりも早く開始していた.至適嚥下量範囲内の嚥下では鼻呼吸動態とオトガイ舌骨節筋活動ならびに喉頭運動との間に顕著な差は認められなかった.至適嚥下量を越えると,鼻呼吸はオトガイ舌骨筋筋活動開始時点よりも遅れるが喉頭運動開始時点よりも早く停止し,オトガイ舌骨筋筋活動終了時点および喉頭運動終了時点よりも遅れて開始することが明らかとなった.以上の結果よリ,嚥下運動を評価するにあたり,鼻呼吸動態を計測することは他のパラメータよりも正確,簡便であり,嚥下運動の臨床的検査法として有用であると考える.
著者
Honma Takeru
出版者
Tukuba English Linguistic Society
雑誌
Tsukuba English Studies (ISSN:09116184)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.159-178, 1989-08-31

0.Introduction. Although underspecified segments have been strongly motivated within autosegmental theory, the issue of which values of which features may be underspecified is not settled. ...
著者
佐野 誠
巻号頁・発行日
2001-04

平成11・12年度科学研究費補助金基盤研究(C)(2)課題番号11620006
著者
髙橋 勇太 植竹 香織 津田 広和 大山 紘平 佐々木 周作
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.12, no.Special_issue, pp.S9-S13, 2019 (Released:2020-03-17)
参考文献数
7

本稿では,日本の地方自治体へのナッジの実装を推進する横浜市行動デザインチーム(YBiT)について,体制構築及び普及戦略の観点から分析することで,地方自治体におけるナッジの展開方法への示唆を得る.まず,体制構築については,先行研究をベースに海外諸都市のナッジ・ユニットとの比較を行った上で,専門性や行政・政治からのサポートなどの必要要素について整理した.地方自治体では,専門的な人材全てを内製化することが困難であるため,外部の専門家との連携が必須であると考えられる.次に,普及戦略については,地方自治体内にナッジを普及させる上での課題とそれへの対策について,独自に検討した普及プロセスモデルに基づき整理した.今後はこれらの実践モデルが理論化され,国内地方自治体でのナッジの実装や,国内のエビデンスが蓄積され,政策効果及び効率が向上されることが期待される.
著者
高橋 賢一
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.41-55, 2016-11-30 (Released:2019-02-15)
参考文献数
36

本研究は,援助者が遭遇する困難やストレスを主体的な取り組みが含まれる「苦慮」という概念で捉え,成長に至る契機やプロセスを明らかにすることを目的とした.精神保健福祉士10名のライフストーリーをSCATによる質的分析を行った結果,援助者にとって苦慮を伴う体験が肯定的認識となり成長に寄与していることが示唆された.そのプロセスは,新人から現場の中核を担う過程において,ネガティブな状況にありながらもクライエントや職場スタッフとの関わりや支えられた体験を意味あるものとして自分のなかに落とし込めることにより新たな価値認識に至りポジティブな転換に移行していた.さらに,苦慮と対峙してきた経験が専門職としての意識や価値の形成,信念や持論など援助者としての自分を支える基盤に結びついていた.
著者
坂本 春生
出版者
社団法人 日本口腔外科学会
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.694-702, 2018-12-20 (Released:2019-02-22)
参考文献数
2

Guideline to prevent surgical site infection was published from Japanese society of surgical site infection and Japanese society of antibiotics chemotherapy in 2016. In the guideline, antibiotics prophylactic regimen has described in the all field of surgeries including oral surgery and dentistry. In 2018, Japanese society of cardiology published revised version of ‘Prevention and treatment of infective endocarditis (IE)’. In the guideline, antibiotics prophylaxis of IE in dentistry has described extensively. Since proper use of antibiotics for prevention of antimicrobial resistant bacteria production in oral surgeries has not been discussed sufficiently, we oral surgeons should understand the importance of proper antibiotics prophylaxis in oral surgery in accordance with these new guidelines.
著者
加藤 貴英 髙津 浩彰
出版者
独立行政法人 国立高等専門学校機構豊田工業高等専門学校
雑誌
豊田工業高等専門学校研究紀要 (ISSN:02862603)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.52-9, 2020 (Released:2020-02-25)

The aim of this study was to investigate the impact of victory or defeat on psychological state during competition in high school baseball player. To assess a psychological state during competition, we used the Diagnostic Inventory of Psychological State during Competition (DIPS-D.2). The DIPS-D.2 test was performed twice in the games won and lost in the official high school baseball game. Eleven baseball players of X high school who played in both games answered to DIPS-D.2 immediately after games. Compared to the winning game, the total score of DIPS-D.2 was significantly lower in the losing game (P<0.05). In particular, the scales of endurance and self-control were significantly lower in the losing game (P<0.05). The present results indicate that a psychological state during competition in high school baseball player goes down in the losing game than the winning game. Moreover, it is suggested that the abilities of endurance and self-control are main factors leading to the low psychological state.
著者
神戸 航介
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.212, pp.1-39, 2018-12-20

本稿は日本古代国家の租税免除制度について、法制・実例の両面から検討することにより、律令国家の民衆支配の特質とその展開過程を明らかにすることを目指した。律令制において租税制度を定めた篇目である賦役令の租税免除規定は、(1)身分的特権、(2)特定役務に任じられた一般人民、(3)儒教思想に基づく免除、(4)民衆の再生産維持のための免除、の四種類に分類することが可能である。こうした構造は唐賦役令のそれを継受したものであるが、(1)は律令制以前の畿内豪族層の系譜を引く五位以上集団の特権という性格を持っていたこと、(2)は主として中央政府の把握のもとに置かれた雑任を対象とし、在地首長層の力役編成に依拠した地方の末端職員は対象とならなかったことなど、唐の制度を日本固有の事情により改変している。一方(3)(4)の免除は中国古来の家父長制的支配理念や祥瑞災異思想を背景とするもので、日本の古代国家はこうした思想を民衆支配に利用するため、租税免除規定もほぼそのまま継受した。六国史等における実際の租税免除記事を見ると、八世紀には(3)(4)の免除は即位や改元など王権側の事情、災異など民衆側の事情を契機とし、現行支配の正当性を主張するために国家主導で実施された。しかし九世紀になると、王権側の事情による租税免除は次第に頻度を減少させていくように、儒教的支配理念が民衆支配の思想としては機能しなくなる。災異の場合も王権主導の免除は減少し国司の申請による一国ごとの免除が主流になっていき、未進調庸の免除も制度的に確立するが、これは国司の部内支配強化に対応し国司を通じた地方支配体制の進展に対応するものであり、十世紀には受領に対する免除として再解釈されていた。ただし天皇による恩典としての租税免除の思想は院政期まで存在しつづけたのであり、ここに古代国家の最終的帰結を見いだすことも可能であろう。
著者
井手 次郎
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.1207, 1959 (Released:2014-08-29)

人工放射性同位元素の医学への應用は,1937年Lowrenceによつて放射性P32が慢性淋巴球性白血病の治療に始めて利用された.皮膚疾患に対する應用は,1941年Low-Beerによつて初めて使用された.その初期に於てはP33溶液を軟膏に混和し,或は脱脂綿又は綿布に浸込ませてこれを患部に貼付して治療を行つた.その後彼はP32溶液を濾紙に均等に浸込ませて乾燥したものを患部に密着貼付して表面照射を行う方法を考案し,これによつて皮膚癌,角化症,血管腫等の治療に應用した.その後,1952年Sinclairは赤燐を均等に含む柔軟性の合成樹脂板Polythensheetを直接原了濾内で放射性とし,これを病巣に貼付して皮膚癌,尋常性乾癖等の治療に應用した.本邦に於ては,昭和25年欧米より放射性同位元素の輸入が開始されるや,山下,大塚,小堀,中島等によつて血管腫,色素性母斑等の皮膚疾患の治療成績が報告された.その卓越せる効果が認識されるや,各医療機関に於て廣く利用されつゝある.しかし乍ら1面に於ては,X線の過照射による皮膚障碍発生と同様にP32の表面照射による障害発生も皆無ではなく,最近では明らかに過去に於ける過照射が原因と思われる皮膚障碍の例も報告され,その使用法についても警告がなされつつある現状である.著者は先人の業蹟を參考とし,更に将来の障碍発生予防という点を考慮して,昭和31年8月より昭和33年12月迄P32の表面照射によつて各種皮膚疾患390例に治療を行い,治療終了後6ヶ月以上の経過を観察し得た144例についてその成績を報告する.なお著者は実験的研究としてP32の線源を家兎の耳に一定時間貼付して表面照射を行い,肉眼的,組織学的変化を檢討し,さらにP32の組織内照射の1方法として,P32を含有する木綿糸を家兎の耳の皮下に一定時間埋没β線による組織内照射を試み,照射部が肉眼的及び組織学的に受ける影響を観察すべく実験的研究を行つたので,こゝに伴せて報告する.
著者
高橋 典明 佐藤 良博 清水 哲男 橋本 修
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.175-178, 2014-08-31 (Released:2015-11-13)
参考文献数
9

肺がんにおける緩和ケアは他のがんと基本的に同じである.ただし,肺がんはがんのなかでも予後が不良で,他のがんよりも疼痛ばかりでなく咳や呼吸困難などの呼吸器症状が伴いやすい.そのため病名告知されるだけでも精神的負担は特に強い.したがって,肺がんにおいて身体的,精神的,社会的およびスピリチュアルな苦痛に対する緩和ケアはきわめて重要であり,早期から緩和ケアを実施することは肺がん患者の延命にもつながる重要な要素である.肺がん終末期の身体的苦痛として呼吸困難の頻度は高く,臨床的に問題となることも多い.呼吸困難の治療は原因病態に対する治療が第一であるが,複数の原因が絡み合い難治性で不可逆的なことも多い.その呼吸困難に対する薬物治療としてモルヒネは第一選択とされ,日本緩和医療学会の「呼吸器症状の緩和に対するガイドライン」でも推奨されている.しかし,その有効性については一定の見解は得られていないのが実情である.そのことを踏まえて,肺がん終末期医療の実情について,呼吸困難に対するモルヒネ投与を例にとって検討し,さらに非がん性呼吸器疾患に対する終末期医療との比較についても述べる.