著者
島崎 由美 渡邊 好昭 関 昌子 松山 宏美 平沢 正
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.294-301, 2016-07-05 (Released:2016-07-26)
参考文献数
24
被引用文献数
3

水田で栽培されたコムギ (水田のコムギ) は,畑で栽培されたコムギ (畑のコムギ) に比べ製パン性が劣ることが知られている.その主な要因は,小麦粉のタンパク質含有率が畑のコムギに比べ水田のコムギで低いことにあると考えられている.小麦粉のタンパク質含有率は,開花期に窒素を追肥することで高められる.そこで本研究では,開花期窒素追肥により水田のコムギの小麦粉タンパク質含有率を高めることが,製パン性に及ぼす影響を調査した.その結果,開花期に窒素を8 g m-2追肥することで,水田のコムギの小麦粉タンパク質含有率を畑と同程度の13%にまで高めることができた.しかし,製パン性を評価するバロリメーターバリュー (VV) は,畑のコムギでは75以上あったのに対して水田のコムギでは60程度と低かった.水田のコムギは畑のコムギに比べて吸水率が高く,小麦粉タンパク質含有率が13%と高いときは,生地形成時間 (DT) が短かった.パンの柔らかさを示すコンプレッションは水田のコムギの方が畑より小さく,パンは柔らかかった.小麦粉タンパク質中のSDS可溶性モノマー画分 (EMP) に対するSDS不溶性ポリマー画分 (UPP) の比は,水田のコムギで畑より有意に小さかった.なお,水田のコムギは,開花期に窒素8 g m-2を追肥して子実タンパク質含有率を高めても,原粒灰分が高く,容積重が小さいために,ランク区分はBやCだった.一方,畑のコムギは開花期に窒素を追肥しなくてもランク区分はAであった.
著者
田村 充子
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.194-201, 2005-09-19

自己決定とは、過去、医学が優生思想に発する非人道的行為に利用されてきた歴史に対して、わたしたちの存在を真にまもろうとするなかで獲得されてきた原理である。この医療倫理の原則としての原理は、重要であると同時に、それを過度に強調することで多くの問題を生むものともいえる。自己決定の原理は、排除の論理として用いられたり、医師の責任放棄のために利用されたり、病者の過度に個我的な自己決定を補強するために用いられてはならない。マルティン・ブーバーは、人間は関係性のなかに生きる存在である、と論じている。関係に生きる私たち病者の固有の生が、医療の現場において真に守られるために、この自己決定の原理はどのように捉えられてゆくべきか。この問いに対し、本稿では、病む者の視点から、自律性と関係性に着眼しながら、医療の場における自己決定についての考察を試みた。
著者
石原 一彰
出版者
社団法人 有機合成化学協会
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.98-110, 2017-02-01 (Released:2017-04-06)
参考文献数
60
被引用文献数
1

The acid-base combination chemistry is one of the most reliable concepts for designing high performance catalysts. Acid-base combined catalysts can be classified into two types, ion pair catalysts (type A) and acid-base cooperative catalysts (type B). Type A can be subclassified into acidic/basic/neutral salt catalysts (types A1/A2/A3). Type B can be subclassified into conjugationally noninteractive/interactive acid-base catalysts (types B1/B2). Tailor-made multi-selective catalysts can also be designed based on the acid-base combination chemistry. Our recent progress has been described here.
著者
藤原 加歩
出版者
尾道市立大学日本文学会
雑誌
尾道市立大学日本文学論叢 (ISSN:21873569)
巻号頁・発行日
no.10, pp.197-210, 2014

注記:掲載画像の一部をマスキング加工しています。
著者
畑中 邦道
出版者
神奈川大学 国際経営研究所
雑誌
国際経営フォーラム (ISSN:09158235)
巻号頁・発行日
no.22, pp.19-58, 2011

第二次世界大戦での敗戦後、復興を果たした日本の国際的な競争優位は、製造業における小集団活動を主体とした、絶え間ないカイゼンによる、高品質な製品輸出により支えられてきた。カイゼンは、日本特有な相互擦り合わせ思考をベースにして、JIT (ジャスト・イン・タイム)生産方式を生み出し、トヨタのカンバン方式のみならず、宅配やコンビニエンス業界の様なサービス産業にまでJITの経営思考は拡大した。その経営思考は、先端技術の開発にまで浸透している。一方、現在のグローバル環境をみると、日本国の失われた10年に続くデフレスパイラルと膨大な国債発行額、米国に端を発したサブプライム問題による世界的な金融危機、ヨーロッパにおける借金大国の崩壊懸念、アフリカと中東地域における政治不安、中国をはじめとするBRIC'sの台頭、等、どれをとっても、極めて世界連鎖性が強い、混沌とした状態下にある。この状況のなかで、2011年3月11日に大震災が東日本を襲った。この大災害は、製造に比較優位を維持してきた日本の製造業のサプライチェーンの連鎖を欠落させた。それに加え、福島第一原子力発電所の事故発生により、安全性懸念が全国規模で連鎖し、物造りに必須である電力供給に大幅な制約を与え、消費者マインドもさらに冷え込んだ。さまよい続ける日本政府への不信感もさらに増大し、日本のあらゆる分野で、産業のクラスターが崩壊する危機に直面している。この危機的状況から、日本が、いかに素早く抜け出せるか、停滞を余儀なくされるか、あるいは崩壊に至ってしまうか、世界が注目している。日本のJIT(ジャスト・イン・タイム)を創り出した「協働」については、日本の古代人を起点とするDNAを想定し、「元本保証」による連続的関連性をもって実現している「秩序ある小集団行動」と、どんな時代でも独自の先端技術を生み出してきた、「擦り合わせ」という相互関連性をもって実現する「多様性の創出」について論じる。災害からの復興については、世界連鎖性が強く出ている東日本の製造業を取り上げ、また、世界連鎖性の少ない農業、酪農、漁業については東日本の地域特性が強い漁業を取り上げ、「協働」とJIT(ジャスト・イン・タイム)による回復と再成長について論じる。災害を機に表に出てくる日本が持つ特有な問題については、ミクロの小集団活動による弱い力の総力が、マクロの覇権的強い力に、「協働」をもとにどの様に対抗しうるか論じる。特集/企業経営の協働のあり方 -震災後の日本企業復興に向けて-
著者
奥平 龍二
出版者
東南アジア学会
雑誌
東南アジア -歴史と文化- (ISSN:03869040)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.43, pp.69-86, 2014 (Released:2016-12-17)
参考文献数
42

Myanmar is a country where Theravāda Buddhism has been thriving since King Anawyahta, the founder of the Bagan unified dynasty introduced it from the Mon kingdom of Thaton in the latter part of the eleventh century. This Buddhism is generally known as the ‘monastic Buddhism’ which is principally focused on the monkhood. But it has also been permeating among the laity until the present day. We may regard the successive dynasties of Myanmar, which had introduced this Buddhism into the political sphere, as the ‘Theravāda Buddhist State’, which placed the dhamma (Law of Buddha) in the core position of the state structure. Therefore, the relationship between kingship or government (ānācakka) and religious authority (buddhacakka) has always been strained and the former has usually intervened and has been standing at predominance over the latter until today. Although the Theravāda Buddhist Polity collapsed with the fall of the Konbaung dynasty in the late nineteenth century due to the British colonial rule, it has been regenerated as a ‘sovereign independent state’ after independence under the Constitution of the Union of Myanma adopted in 1947. Even though once Myanmar inclined towards a ‘religious state’ during U Nu’s regime under the Constitution (Third Amendment) Act in 1961 because of his treatment of Buddhism as the state religion, the country was brought back to a secular state by its strict secularity under President U Ne Win’s policy of ‘the Burmese way to Socialism’ under the Constitution of the Socialist Republic of the Union of Burma (1974). It had principally continued until the end of the regimes of the military administration by both the Senior Generals Saw Maung and Than Shwe in March, 2011 when the new regime of President U Thein Sein began under the Constitution of the Republic of the Union of Myanmar (2008). This paper is an attempt to examine the characteristic of a modern Myanmar secular state, through further detailed analysis of its previous studies on the provisions of religious affairs and also a new approach to the preamble of the constitution (2008), comparing it with those of previous constitutions of 1947, its 1961 (Amendment) and 1974.
著者
Yusuke HIGUCHI Norio KONNO Iwao SATO Etsuo SEGAWA
出版者
東北大学大学院情報科学研究科ジャーナル編集委員会
雑誌
Interdisciplinary Information Sciences (ISSN:13409050)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.75-86, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
23
被引用文献数
1

In this paper we discuss the periodicity of the evolution matrix of Szegedy walk, which is a special type of quantum walk induced by the classical simple random walk, on a finite graph. We completely characterize the periods of Szegedy walks for complete graphs, compete bipartite graphs and strongly regular graphs. In addition, we discuss the periods of Szegedy walk induced by a non-reversible random walk on a cycle.
著者
Takako ENDO Hikari KAWAI Norio KONNO
出版者
東北大学大学院情報科学研究科ジャーナル編集委員会
雑誌
Interdisciplinary Information Sciences (ISSN:13409050)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.57-64, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
22
被引用文献数
2

This study is motivated by the previous work [14]. We treat 3 types of the one-dimensional quantum walks (QWs), whose time evolutions are described by diagonal unitary matrices except at one defected point. In this paper, we call the QW defined by diagonal unitary matrices, ``the diagonal QW'', and we consider the stationary distributions of general 2-state diagonal QW with one defect, 3-state space-homogeneous diagonal QW, and 3-state diagonal QW with one defect. One of the purposes of our study is to characterize the QWs by the stationary measure, which may lead to answer the basic and natural question, ``What are stationary measures for one-dimensional QWs?''. In order to analyze the stationary distribution, we focus on the corresponding eigenvalue problems and the definition of the stationary measure.
出版者
日経BP社
雑誌
日経レストラン (ISSN:09147845)
巻号頁・発行日
no.439, pp.20-24, 2011-05

月曜日と水曜日は赤・白それぞれ1種類のワインが1000円で5時間飲み放題──。そんな"無謀"な飲み放題プランで平日夜の集客に成功しているのが、ワインと洋食の店「楽市酒肴 洋食屋」だ。 飲み放題を始めたのは、2008年の夏。そして現在は、席数36で月商は190万円と、飲み放題を始める前の月商を10%ほど上回る。
著者
池田 正明
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.319-326, 2015 (Released:2016-02-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1

地球は24 時間で自転し,その自転が24 時間周期の明暗サイクルを地表に作り出している.地球上の生物は進化の過程で,この24 時間周期の光環境の変動を生体内に取り入れ,概日リズムという自律的なリズムを獲得し,概日リズムの獲得に成功した生命体のみが地球上で生存に有利に働き,それが地球上の生物の現在の繁栄につながったと考えられる. ヒトにも概日リズムがあること,概日リズムの周期はおよそ25 時間であることが,1960 年代にアショッフ教授によって証明され,光環境を厳密にコントロールした実験によって現在ではその周期が24 時間10 分であることも明らかになっている.1990 年後半に,ヒトを始めとする哺乳類や,ショウジョウバエなどの昆虫,アカパンカビ,シロイヌナズナなどの植物,シアノバクテリアに至るまで,概日リズムの約24 時間周期を作り出す時計遺伝子が相次いで発見され,その機能が明らかになってきた.ヒトの主な時計遺伝子として,Clock, Bmal1, Per, Cry があり,全て転写に関わる因子である.これら遺伝子は,その遺伝子産物や発現調節部位からなる転写・翻訳機構の中に,ネガティブフィードバックループを形成し,転写を約24 時間周期で増減させており,この転写翻訳システムが約24 時間のリズム発振の本体に当ると考えられている.また,時計遺伝子は人体のほぼ全ての細胞に発現しリズムを刻んでおり,しかも臓器ごとに固有の頂点位相をもったリズムを示す.さらに時計遺伝子はリズムを刻むばかりでなく,生体内のさまざまな因子のリズム発現に直接あるいは間接的に関与しており,一日のプログラムタイマーのように,一日の中で,遺伝子のオン・オフを制御して,環境変化に合わせた生体活動を制御し,効率的な体内環境を作り出している.例えば,ヒトは昼間に活動するとともに食物を摂取し,夜間は睡眠をとっている.ヒトの睡眠・行動や摂食のリズムは一見人々の習慣のように見えるが,これは昼行性動物の典型的なリズムパターンであり,体内時計によって制御されている.昼間摂取した食物からの栄養分は,吸収されて肝臓に送られ,肝臓は,夜間になると栄養分を代謝し貯蔵するプログラムの活動性を高めている.この代謝開始指令のタイミングを決め,しかも代謝そのものを駆動させているのが時計遺伝子であることも明らかになってきている.本稿では,時計遺伝子の役割を中心に概日リズム研究,特に疾患との関連についての進歩にいて概説したい.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1120, pp.6-8, 2001-12-10

特殊法人改革で改めて問題となった公共事業のムダや非効率。道路やダムと違って国民の目に直接触れないため実情が分かりにくいものの、見逃してはならない官のムダがほかにもある。政府による物品やサービスの購入、いわゆる政府調達である。