著者
菊池 豊 中川 郁夫 樋地 正浩 八代 一浩 林 英輔
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.1171-1177, 2002-11-15

地域間相互接続実験(RIBB)は,JGNにより地域網を互いに接続することにより,地域のインターネット活動への相乗的な効果を与えることを目的とした研究開発活動である.本稿ではRIBBの活動についてまずその概略を示す.そして,RIBBでの活動でも特に活発な,地域イベント動画像の全国配信の実証実験について述べる.さらに,これらを通して,JGNが地域インターネット活動に与えたインパクトについて解説する.
著者
平野 廣美 尾内 理紀夫
雑誌
研究報告グラフィクスとCAD(CG)
巻号頁・発行日
vol.2012-CG-146, no.19, pp.1-6, 2012-01-31

競馬中継または競馬動画中の特定の騎手を追跡する手法については,現在,ほとんど報告が無い.一般的なオブジェクト追跡については各種手法が報告されているが,競馬シーン独自の条件から,一般的なオブジェクト追跡手法を適用することには困難が伴う.本論文では,騎手のヘルメットおよび勝負服の色の組合せがユニークであることを利用して,数組の少数のパーティクルを用いる手法を報告する.パーティクルを用いることにおいては,対象のオブジェクト上に位置するように,背景差分の情報を用いて制限をかけている.これにより,パーティクル数を少数に抑えることができ,リアルタイムでの追跡も可能にしている.
著者
吉原 陽香 笹田 耕一 並木 美太郎
雑誌
研究報告システムソフトウェアと オペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2010-OS-114, no.4, pp.1-9, 2010-04-14

本研究では,Ruby で記述された OS である RubyOS の構成法の提案と,その実行基盤の試作を行った.また RubyOS の試作として,ポーリング方式でキーボードの入力を受け取り,画面にその文字を出力するプログラムを Ruby にて記述した.実行基盤については,既存の Ruby 処理系を OS を搭載していないハードウェア上で直接実行できるように移植した.OS を記述するために必要となる,実メモリアクセス・I/O ポートアクセスといった Ruby の言語仕様にない機能は,拡張ライブラリを自作して実装した.評価としていくつかのプログラムの実行時間の計測を行い,Ruby が OS を記述するのに十分な機能を持っているか検討した.
著者
白幡 晃一 佐藤 仁 鈴村 豊太郎 松岡 聡
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻号頁・発行日
vol.2011-HPC-130, no.14, pp.1-8, 2011-07-20

データ量の肥大化,ストレージの省コスト化,オンラインソーシャルネットワークの成功等に伴い大規模グラフ処理の重要性が高まっている.また,GPGPU と呼ばれる,GPU を汎用計算に応用する技術の研究・開発が進んでおり,GPU のスーパーコンピュータやクラウドへの導入が進みつつある.大規模グラフ処理ライブラリの一つに PEGASUS があり,MapReduce の反復処理によって計算することができる.GPU を利用した MapReduce 処理ライブラリの一つに Mars があるが,大規模グラフ処理に対して GPU を使用してどの程度高速化できるのか,またメモリあふれへの対処やマルチ GPU 化した場合のデータの割り振り方法は明らかではない.Mars 上にグラフ処理アプリケーション (PageRank,Random Walk with Restart,Connected Components) を実装し,PEGASUS との比較実験を行った結果,反復 1 回あたり PageRank で 2.17~9.53 倍,RWR で 2.18~5.47 倍,Connected Components で 2.41~8.46 倍の高速化がされることを確認した.
著者
青木 輝勝 安田 浩
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.109-120, 2011-01-15

近年,インターネット上ではCGM(Consumer Generated Media)コンテンツが急増している.CGMはこれまで困難であったエンドユーザの発信を可能にするという特徴を持つが,もう1つの特徴として,個々のコンテンツ自体の価値に加え,その集合体または融合体としてのコンテンツ群の価値が高いことがあげられる.この集合体・融合体としての価値の高さは「共創効果」によってもたらされたものと広く考えられている.その反面,共創効果に関しては概念論のみが先行し,それを定量的に測定するための方法論や共創効果を高めるために情報通信システム・情報通信サービスが何を行うべきかについてはこれまで十分な議論が行われていない.本稿では,筆者らが開発したDMD2.0と呼ぶシステムを用いて開発したAnimepediaという複数ユーザによるCGMアニメ制作システムを基盤として,ツリー型CGM制作における共創効果の定量化を試みる.まず,共創曲線と呼ぶ概念モデルを仮定し,実験を通じてこの曲線の存在を実証する.続いて,この曲線を用いた共創効果の最適化方法について提案を行う.
著者
鈴木 茂哉 石原 知洋 ビルマニング 村井 純
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.385-402, 2012-01-15

携帯電話のような携帯デバイスは,インターネットへ接続する機能を持つが,デバイス間で直接通信するネットワーク機能をあわせて持つものもある.本論文ではデバイス間の直接通信によりその場で構成されるネットワーク部分をアドホックネットワークと呼ぶ.アドホックネットワークは,ファイル交換等に有用と考えられるが,アクセス制御のための認証操作が煩雑なため活用されていない.認証操作が煩雑なのは,アドホックネットワーク環境で相手を認証する際,信頼できる第三者を仮定できず,パス・キーの手入力等主たる通信路以外の通信路(アウトオブバンド通信)に頼る必要があるからである.本論文では,アドホックネットワークにおけるノード間認証方式として,アウトオブバンド通信に頼らない方式を提案する.提案方式では,本方式参加ノードそれぞれが,ノード自身の識別のために必要な公開鍵(NK)と公開鍵に至る信頼の連鎖(NKCT)を事前に用意する.検証者は,立証者と自身の持つNKCT双方を組み合わせることで,必要な信頼の連鎖を構成できる.信頼の連鎖の確保により,認証が可能となる.また,信頼の連鎖の確保にDNSSECリソースレコードを用い,運用性を高めた.本研究の評価では,検証ライブラリとともに,簡単なスマートフォンアプリケーションと,サーバ用認証モジュールを実装し,実験により本方式の効率性と有効性を示した.
著者
伊藤 毅志 小幡 拓弥 杉山 卓弥 保木 邦仁
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.3030-3037, 2011-11-15

本論文では,将棋プログラムの新たな並列処理手法を提案する.このアルゴリズムは,複数の思考プログラムの候補手の中から一つの手を選択する手法である.このアルゴリズムを合議アルゴリズムと呼ぶ.本論文では,将棋における合議手法の提案と評価を行い,また単一プログラムからでも乱数を用いた合議手法を提案しその有効性も示した.さらに,YSS,GPS将棋,Bonanza等の有名な強豪プログラムをこの合議アルゴリズムで組み合わせることで,その各々のプログラムよりも強くなることを示した.
著者
和田 祐介 日下部 茂
雑誌
ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.1-8, 2011-09-06

モデル開発においては VDM-SL や VDM++ といった形式的仕様記述言語を用いることで実行可能な仕様としてテストすることが可能となる.ここでのテストは,実装段階で行うテストと同じようにモデルへの信頼性を高めることが目的である.数学的な証明を用いない軽量な方法でテストを行う場合,テストに使用する入力データを増やし,大量のテストを行うことによって信頼性の向上につながることが期待できる.仕様に対する大量のテストを支援するために我々は MapReduce プログラミングモデルを採用した Hadoop と QuickCheck を用いたフレームワークを導入する.このフレームワークを用いたテストを行い,実行可能な仕様のカバレッジやテストの実行時間を観察する.
著者
中西 健一 高汐 一紀 徳田 英幸
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.9, pp.2260-2268, 2005-09-15

未知のサービスが我々の位置に即したサービスを自律的に提供するユビキタスコンピューティング環境の実現へ向け,近年,多様なロケーションアウェアサービスが実用化,商用化されている.しかし一方で,公開した位置情報を不当に扱われることに対する危機感も増加しており,プライバシに対する関心が高まっている.本研究では,公開した位置情報を悪用された場合に我々が被る損害を抑えることを目的としており,公開する位置情報にユーザの望む匿名性を付加するサービスフレームワークを提案する.本フレームワークは,ユーザの望む程度の匿名性を満たすよう,公開する位置情報の粒度を動的に変更する.設定された匿名性が高いほど,サービスによる位置情報の悪用は困難となるため,ユーザは自身の望む程度でプライバシを保護できる.結果,従来は「位置情報を公開するか否か」の二極でしか選択肢を持たなかったユーザが,「この程度の匿名性で位置情報を公開する」といった中間解を選択できるようになる.
著者
安蔵 靖志
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.98-99, 2012-01-15

俳優の細川茂樹氏の呼びかけによって,情報処理学会とのコラボレーションによるスマートフォンアプリ共同開発プロジェクトがスタートした.さまざまなアイデアを盛り込むことで技術的なチャレンジができることから,「家電製品の取扱説明書を手軽に集めて整理・閲覧できるアプリ」をテーマとして決定.お茶の水女子大学の大学院生2名がメンバーとして加わり,開発に携わることとなった.
著者
堀口 悟史 井垣 宏 井上 亮文 山田 誠 星 徹 岡田 謙一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.61-71, 2012-01-15

HTML講義資料を用いるプログラミング講義では受講生が講義資料に自由にアクセスできるため,講師の意図した順序やタイミングで資料を閲覧させることが困難である.講師の意図したとおりに資料を閲覧させることができなければ,結果として受講生の講義内容に対する理解が不足してしまう可能性がある.本稿では,受講生個別の講義資料へのアクセス状況を閲覧ログとして収集・分析する授業進捗管理システムを提案する.授業進捗管理システムは閲覧ログに基づいて受講生がどのような状態にあるかを分析し,講師に提示する.実際にプログラミング講義において我々のシステムを利用したところ,遅れているのべ73%の受講生を検出できることが確認できた.
著者
石井 茂如 滝沢 穂高
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.412-420, 2012-01-15

本研究の目的は胸部X線CT画像から肺結節(肺がんの候補)を検出するための計算機診断支援(CAD)システムを開発することである.我々のCADシステムの最も重要な構成要素の1つとして,結節と血管の3次元物体モデルを用いた結節認識手法であるモデルマッチング法を提案している.この手法は高い精度で結節を認識可能だが,いまだ十分ではない.そこで,本論文ではモデルマッチング法に以下の3つの改良を加える.第1に,肺野内血管の位置とサイズとの関係を表す統計的な分布モデルを構築する.これを事前知識として利用することによって,より信頼性の高い血管モデルを生成し,認識率を向上させる.第2に,血管に隣接する結節を認識するために結節モデルと血管モデルを組み合わせた新たなモデルを導入する.第3に,単円筒モデルを用いた新たなアルゴリズムを用いることで最適モデルの探索を高速化する.これらの改良を8mmスライス間隔のCT画像98例に適用したところ,TP率90%でのFP数を従来法の15.5[個/症例]から9.2[個/症例]に削減することができ,本手法の有効性が確認された.
著者
坂根 広史 伊豆 哲也 猪俣 敦夫
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.182-186, 2012-01-15
著者
寺門和哉 RaytchevBisser 玉木徹 金田和文
雑誌
画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2011)論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.753-756, 2011-07-20

本論文では新しいアピアランスベースの姿勢推定手法であるLocal Procrustes Regression (LPR)を提案する.LPRでは,全ての学習サンプルとその姿勢パラメータ空間とのマップを学習するのではなく,テストサンプル近傍の学習サンプル同士の距離関係を学習に利用し,テストサンプルの姿勢パラメータを推定する.このとき Procrustes Analysis を用いてテストサンプル近傍の学習サンプルの低次元空間と,それに対応する姿勢パラメータ空間との位置合わせを行う.物体ごとに2つの回転軸において5度ずつサンプリングされた703枚の画像データセット Object Pose Estimation Database (OPED) を用いて実験を行った結果,提案手法の姿勢推定精度は半数以上の物体でSupport Vector Regressionより優れていることが示された.
著者
近藤 奈々 中西 正和
雑誌
情報処理学会研究報告プログラミング(PRO)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.49(1992-PRO-065), pp.1-7, 1992-06-12

従来のウインドウ環境におけるインタフェースにおいて、1つの処理を始めるとそれが終わるまで、他のイベントを受け付けないので、ユーザを待たせる原因となっている。これはインタフェースを記述するプログラムが並列性を持っていないためである。本稿では、Xウインドウシステムインタフェースを記述する言語に並列性を導入し、Xサーバと通信機能をもつ並列 lisp 処理系 Momolisp について報告する。Momolisp は Unix 上の1つのプロセスの中で動作し、その中で複数のスレッドを実行させる。
著者
櫻井 保志
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.755-761, 2006-07-15

ユビキタスコンピューティングという言葉があるように,今後センサの小型化や低価格化によって,大規模なセンサネットワークがさまざまなところで構築されるようになると考えられる.その際に,大量のセンサから送られてくる時系列データ,すなわちデータストリームを高速に分析するストリームマイニング技術は非常に重要になってくる.ストリームマイニングの研究には,探索,トレンド検出,予測などさまざまな取り組みがあるが,本稿では,各々の取り組みから代表的な技術を紹介する.さらに,最新の取り組みとして,ストリームからの遅延相関検出技術を紹介する.この技術によって,たとえば類似したトレンドのストリームを出力するセンサ群をリアルタイムに検出したり,あるいは故障によって異常値を出力するセンサを即座に発見することが可能になる.
著者
Harumasa Tada Nobutoshi Todoroki Kazufumi Fukui Masahiro Higuchi
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.2328-2338, 2001-09-15

Hierarchical naming has been used in file systems for the last several decades.As the number of files stored in file systems increases the weakness of hierarchical naming is getting recognized.Some researchers have proposed hybrid naming schemes whichintroduce attribute-based naming into hierarchical naming.However they are unsatisfactory or too complicated.In this paper we propose a hybrid naming scheme called HK (Hierarchical-Keyword-based) naming.In HK naming a file is named by a set of keywords and keywords are organized hierarchically.It integrated hierarchical naming and attribute-based naming in a simple way.To show the practicality of our naming scheme we implemented the prototype of the filename management system on UNIX file systems.
著者
高橋 直久 小野 諭
雑誌
情報処理学会研究報告プログラミング(PRO)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.71(1989-PRO-030), pp.31-40, 1989-09-08

宣言的デバッグシステムDDS(Declarative Debugging System)では、プログラマはプログラムに期待する実行結果や途中結果を与え(宣言的に定義し)、それに基づいてシステムがプログラムのテキストと実行履歴を解析しバグ探索空間を絞り込む。本稿では、DDSの設計課題を考察し、実現上重要な3つの機構、すなわち、バグ発生源の判定機構、プログラムの部分実行機構、プログラムの診断機構について議論する。被デバッグプログラムに対して診断に不要な部分の実行を抑止する“計算の凍結”機能が重要であることを示し、その実現法とデバッグへの適用法を明らかにする。さらに、プログラム構造の静的な解析とバグ検出のヒューリスティクスを用いてプログラマの宣言と部分実行結果を解析する手法を提示する。最後に、VAX/VMS上に作成したDDSのプロトタイプを用いたデバッグ例を示し、関数型プログラムのデバッグにDDSが有効であることを示す。
著者
田中 朋之 渦原 茂
雑誌
情報処理学会研究報告プログラミング(PRO)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.50(1991-PRO-060), pp.1-10, 1991-06-21

多くの共有メモリ型の並列Lispでは並列性の記述にfuture式を用いている。本稿ではCommon Lispの多値機能にfutureを導入した場合の問題について考える。futureと多値機能を共存させるためには1つのfutureオブジェクトに複数の値を格納できるようにする必要がある。ところがそのままこの方法を用いると、プログラムにfutureを挿入した場合としなかった場合とで返す値の数が異なってしまう場合があり、Common Lispで定義される多値の意味を変えてしまう。この問題を解決するためにmv?context法とmv?pフラグ法の2つの方法を提案する。この2つの方法はマルチプロセッサ・ワークステーションTOP?1上の並列Lisp、TOP?1 Common Lispにおいて実現した。