著者
野村 幸弘 佐藤 慎一 森 秀晴 遠藤 剛
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.106-116, 2008-06-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
24

イソシアナート末端ポリウレタンと2級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物 (シリル化剤) から, 新規なアルコキシシラン末端ポリウレタン (シリル化ポリウレタン) を合成した。シリル化剤は, 3-アミノプロピルトリアルコキシシランとアクリル酸エステルとの共役付加反応で合成した。得られたシリル化ポリウレタンの粘度は, アクリル酸エステルと反応させていない3-アミノプロピルトリアルコキシシランから誘導したシリル化ポリウレタンに対して低くなった。得られたシリル化ポリウレタンの硬化速度及び接着強さを比較したところ, シリル化剤のエステル部位のアルキル基が短いほど, 硬化が速いことが分かった。また, 引張せん断接着強さ及び接着性がシリル化率の影響を受け, シリル化率60%以上の条件では, シリル化率が低いほど接着性が高くなる傾向にあった。さらに, シリル化ポリウレタンの硬化触媒として, 三フッ化ホウ素-モノエチルアミン錯体 (BF3-MEA) とジブチルスズジメトキシド (DBTDM) の性能比較を行った。その結果, DBTDMに比較して, BF3-MEAは触媒活性が高いこと及びシリル化ポリウレタン硬化物の熱安定性を低下させないことが分かった。以上のことから, シリル化ポリウレタンは湿気硬化型接着剤のベースポリマーとして, またBF3-MEAはシリル化ポリウレタンの効果的な硬化触媒として利用できることが分かった。
著者
小須田 雅
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本年度は,q=1の場合のParty代数の既約表現の行列表示に関する論文をまとめて外国雑誌に投稿した。昨年以来試みてきたq変型については,共役関係,すなわち「対称群の生成元に対応する生成元で挟んだ場合に,『共役』な関係式が得られる」という性質を満たすものを構成することは出来なかったので,制限付きのParty代数(これらは複素鏡映群のテンソル積表現の中心可環に対応する)の既約表現の構成について考えた。こちらについては,スウェーデンで行われた「形式的巾級数と代数的組み合わせ論の研究集会(FPSAC03)」で,A.Ram氏と討論する予定であったが,Ram氏が欠席したため,思うような成果は得られなかった。Ram氏は複素鏡映群のテンソル積表現の中心可環の特別なタイプである,Partition代数と呼ばれる代数の既約表現の構成について講演する予定であったため,今後の研究についての重要な指針が得られる筈であった。しかしながら,同研究集会に出席していたP.Terwilliger氏との討論を通じて, Party代数の指標表の作成に関する研究について,いくつかのアイデアを得ることが出来た。また,Terwilliger氏はRam氏と同じ大学に所属しており,分野も近いことから,氏の研究についての情報も得ることが出来た。その後,制限付きのParty代数の既約表現の構成について自分なりに良いアイデアが得られたが,論文としてまとめるにはもう少しの進展が必要である。予定していたRam氏との討論が実現しなかったため,期間内に当初の研究計画すべてが実現できたわけではないが,予想された範囲内の進ちょくと言える。今後は「制限付きのParty代数の既約表現の構成」についての論文を仕上げ,Terwslliger, Ramの両氏と討論することで,新しい研究の方向を見極めたい。
著者
伊藤 正純
出版者
社会・経済システム学会
雑誌
社会・経済システム (ISSN:09135472)
巻号頁・発行日
no.11, pp.94-99, 1992-10-25

This paper discusses the relation of the vocational education for workers and social systems, and the author argues that this education may reform a social system. Fordism, which has promoted the mechanization of the way of production in the fixedly-divided work organization among workers, supervisors, and technicians, has taken no notice of the vocational education for workers. Yet the crisis of Fordish work organization has emerged as a result of the changing market structures and the resistance of workers during 1970s. Work-force versatility of workers by vocational education is foud in both Toyotism in Japan and Volvosism in Sweden. Yet there is a crucial difference in the level of compromise in the industrial relation. In Toyotism the trainers are large enterprises. Because most compromises which rested on company agreements are found in large enterprises. Therefore, these trainings for workers are inadeqate to the reform of a social system. In Volvoism as social democratic corporatism the trainers are the state and the enterprise.And trade unions influence them. Because negotiated involvement and compromise are accomplished on a social basis.In Kalmarism, one of the two kinds of Volvoism, the state educates workers for the progress of their vocational competence. In Uddevallism, the other kind of Volvoism, the enterprise does them.There is a possibility that these educations may bring about the reform of a social system.
著者
岡村 行信
出版者
日本活断層学会
雑誌
活断層研究 (ISSN:09181024)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.28, pp.31-39, 2008-03-31 (Released:2012-11-13)
参考文献数
36

Method and result of offshore active fault survey were reviewed. Acoustic and seismic waves are widely used for offshore topographic and geologic surveys. Higher frequency acoustic waves have high-resolution but attenuate rapidly in water or sediments, thus they are mainly used for seafloor topographic survey or shallow high-resolution seismic profiling survey. Multi-narrow beam sounding provided evolutionary detailed seafloor topographic maps that clearly show fault traces. Lower frequency seismic waves are widely used for survey of deep sea and deep subsurface geology, but their resolution is generally too low to evaluate the activity of faults in late Pleistocene or Holocene time. Multi-channel seismic profiling survey and digital signal processing technology tremendously improved quality of seismic profiles. Offshore active fault maps around Japan were published in 1980's and 1990's based mainly on analyses of single channel seismic profiles. The events of active fault have been identified only in shallow bay areas using high-resolution seismic profiles and sediment cores. In contrast, it is generally difficult to determine events in open sea areas, because of low quality of seismic profiles. Multi-channel seismic profiling system using a high-frequency sound source made it possible to obtain high quality seismic profiles in the open shallow sea area and showed an active fault in the source area of the 2007 Noto-Hanto earthquake. In the deep sea, low-frequency seismic profiling system generally show clear geologic structure including active faults, but it is difficult to determine their activity in the late Pleistocene and Holocene period. Analyses of turbidites and dive surveys using submersibles have been conducted to determine the ancient events of fault activity in the deep-sea area. There is no enough data of offshore active faults, especially in very shallow marine area along coast.
著者
後藤 和久
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.39-46, 2014-03-30

白亜紀/古第三紀境界の大量絶滅は、地球史の中でも有数規模であった。絶滅は、特に光合成生物とそれを直接的な基盤とする生食連鎖に属する生物について顕著であるのに対し、いわゆる腐食連鎖に属していたと考えられる生物は大きな被害を受けていない。また、石灰質の殻を持つ海洋生物の絶滅率が突出して高いという特徴がある。絶滅を引き起こした原因として、直径10kmの小惑星の地球への衝突が引き金となり、その後に発生した複合的な環境変動が考えられる。具体的には、太陽光の遮断による光合成の停止と寒冷化、酸性雨や有毒物質による陸上・海洋の汚染、そして輻射熱による地表面の高温化などが、大量絶滅パターンを説明できる環境変動として挙げられる。今後、生態学的研究により、観測されている絶滅パターンを再現するために必要な環境変動の規模や持続時間を解明することが望まれる。
著者
小泉 直子 藤田 大輔 二宮 ルリ子 中元 信之
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.107-112, 1998
参考文献数
12
被引用文献数
3 9

State-Trait Anxiety Inventory(STAI)の統計学的検査項目減数化によるスクリーニングテスト:小泉直子ほか.兵庫医科大学公衆衛生学-本研究の目的は, 定期健診で身体的健診と平行して簡便に行い得る精神面の健診方法を見つけ出すことである.阪神淡路大震災の復興事業に携わる建設業の男性労働者264名を対象に, 定期健診時に行われたSTAIの状態不安(A-State)20項目, 特性不安(A-Trait)20項目, 計40項目の検査データとSDS検査データを基に重回帰分析を行い, 簡易スクリーニングテストとして活用しうる5項目を抽出した.この5項目の総得点に対する説明率は, 状態不安90.0%, 特性不安88.5%であり, 推計値と実測値の相関は, 状態不安r=0.949(p<0.01), 特性不安r=0.940(p<0.01)であった.また, この5項目の構成概念妥当性および信頼性についてもそれぞれ一定の評価が得られたことより, 対象者の精神健康の概要を把握するための簡易検査法として有用であり, 事業所におけるメンタルヘルス対策に活用しうると考えられる.
著者
田中豊松 編
出版者
内外出版協会
巻号頁・発行日
1908
著者
金丸 敏幸
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は,英語スピーキングの自動評価を行うための評価指標の作成,および評価目的に応じた適切な評価指標の重みづけを目的とし,英語スピーキングにおける評価指標の整理,評価目的に応じた自動評価用の評価指標の設定,英語スピーキング試験のスコア別サンプルと自動評価用指標でのスコアづけ,評価目的に応じたスコア付けを出力するための各指標の重みづけの調整,を行う.計画初年度は,英語スピーキングの自動評価に向けた評価付きデータの作成に向けて,関連研究の収集およびデータ抽出を行い,外国語学習に関する評価と指標についての整理を行った.また,整理した結果に基づいた研究発表とシンポジウムでのパネリストとしての発表を行った.具体的には,これまで行われてきたスピーキング指導と評価に関する論文を収集し,それらの研究で使用されている評価の記述を抜き出し,項目,観点,レベル,評価の粒度といった分類軸ごとに整理を行った.これにより,現状のスピーキングにおける評価の特徴が明らかとなり,今後の発話データへの評価を行う下地を整えることができた.本年度の研究により,現在,大きな注目を集めている人工知能や機械学習によるスピーキング指導やスピーキングの自動評価についての動向を整理し,今後の展望を中心とした研究発表を行った.外国語教育メディア学会などでのシンポジウムや研究発表を通じて,自動評価や言語処理に関する意見交換や情報収集を積極的に行い,今後の研究活動の発展に向けた取り組みを進めることができた.さらに次年度の研究に必要となるデータ収集の計画を立案し,資料や環境の整備を行った.これにより,今後の研究をより円滑に実施できるものと見込んでいる.
著者
堤 良一 岡崎 友子 藤本 真理子 長谷川 哲子 松丸 真大
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、現代日本語の指示詞の現場指示の方言差を明らかにするとともに、各方言が採用する空間認知の分割方法と、それと連関するような文法現象を見極めることで、日本語の指示詞の現場指示の使用のされ方と、その他の言語現象との関わりを探ろうとするものである。今年度は、次年度以降に実施予定である本格的な実験に向けて、実験のデザインを行った。そして、そのデザインの妥当性を検討するために徳山大学(山口)、尾道市立大学(広島)、愛媛大学(愛媛)の3大学で実験を行った。収集したデータは方言帯ごとにグルーピングし、それぞれの差を見ることとなる。具体的な傾向としては、研究代表者と研究分担者(岡﨑友子氏)が、岡山方言について言及したことがあるように、話し手と聞き手との間程度の距離の対象についてアノで指示する話者が一定数存在し、それは瀬戸内海沿岸の地域の出身者に多いような傾向が見て取れる。しかしこれは今後継続的な実験を続け、データの数をある程度取らなければ断定的なことは言えないというような状況である。実際に実験を行いながら、実験の妥当性、公平性他、様々な点で問題点が見つかったが、その都度微調整を行いながらデータ収集を行った。現段階では、次年度に向けて均等な環境での実験が遂行できる準備が整いつつあると考えている。収集したデータについて、統計的な処理を施すことができるかどうかについて、平成30年3月24日(土)、東洋大学岡﨑友子(共同研究者)研究室にて、検討会を行った。統計学の専門家である小林雄一郎氏から有益なコメントをもらい、データベースの作り方等を今後さらにつめていく必要があることを確認した。