著者
高木 正見
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.157-163, 1976-09-25
被引用文献数
1 8

アゲハ蛹期の天敵としてのアオムシコバチの働きを説明するため,野外調査といくつかの室内実験を行なった。野外調査は,福岡市東区箱崎にある温州ミカンほ場で,1972年と1974年に行なった。<br>1. アゲハの蛹化は毎年5月から11月にかけて連続的にみられ,アオムシコバチもこの期間中ずっと活動していた。アゲハ蛹密度は8月中旬以降急に高くなった。アオムシコバチは,少しの遅れはあったがこれにすぐ反応し,高い寄生率を示した。しかし,その後他の天敵による死亡が増加してアオムシコバチの寄生率は低下した。<br>2. このアオムシコバチの寄生率が低下した時期でも,アオムシコバチのアゲハ蛹攻撃率は低下しなかった。またこの時期には,アオムシコバチが攻撃した蛹から他の寄生者が脱出してきたり,その蛹がアリに捕食されるのを観察した。<br>3. 野外で採集したアゲハ蛹1頭から,平均156.2頭,最高337頭のアオムシコバチが羽化してきた。<br>4. 野外百葉箱でのアオムシコバチ雌成虫の寿命は,8, 9月に羽化したもので平均1ヵ月であった。10, 11月に羽化したものは,3ヵ月の寿命のものが多く,寄主体内で越冬したアオムシコバチが翌春羽化してきた時期まで生存していたものもあった。<br>5. 野外ではアゲハの5令幼虫や前蛹の上に乗っているアオムシコバチが観察されたが,アオムシコバチが寄生可能なアゲハのステージは蛹期のみで,5令幼虫期・前蛹期のアゲハには寄生不可能であった。<br>6. アゲハを寄主としたときのアオムシコバチの発育零点は12.2°Cで,卵から羽化までに要する有効積算温量は213.7°C日であった。この値をもとに計算した福岡地方でのアオムシコバチの年間世代数は9世代であった。<br>7. 卵巣成熟はsynovigenicな型を示し,給蜜することにより,平均約140の成熟卵を保有した。<br>8. 無給蜜の場合,1雌当り産仔数は平均189.3,最高311で,この資料をもとに計算したこの蜂の内的自然増加率は日当り0.28であった。<br>9. 以上の結果をもとに,アゲハ蛹期の天敵としてのアオムシコバチの働きについて考察した。
著者
村尾 真由子 松原 悠 洪 昇基 佐藤 良太 秋山 茉莉花 金 瑜眞 嶋田 晋 金井 雅仁 浜島 佑斗
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
no.101, pp.108-118, 2014-12

筑波大学附属図書館では,平成24年度から大学院生をラーニング・アドバイザー(以下,LA)として雇用し,学生サポートデスクにおいて本学学生に対する学習支援活動を行っている。学生サポートデスクの利用者は年々増加している。平成25年度は,LAからの要望で定期的にミーティングが開かれ,アイデアを出し合う機会が増えた。これが契機となってLAの活動が活発化し,前年度の活動に加え新たに6つの企画を実施した。今後は,学生のニーズや学生サポートデスクの認知度の調査のような現状を把握する取り組みや,LAの相談対応の質を向上させる取り組みが求められる。
出版者
中央大学学員会
巻号頁・発行日
vol.[大正12年], 1923
著者
相川 りゑ子 阿久澤 さゆり 永島 伸浩 川端 晶子
出版者
The Japanese Society of Applied Glycoscience
雑誌
澱粉科学 (ISSN:00215406)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.165-174, 1992-08-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
22
被引用文献数
3

カタクリ鱗茎から澱粉を調製し,対照として馬鈴薯および食用カンナ澱粉を用いて,理化学的性質を検討し,以下のような結果を得た. 1)カタクリ澱粉の平均粒径は24.3μmで,馬鈴薯,食用カソナ澱粉よりもやや小さかった.パンクレアチンによるカタクリ澱粉粒の分解性は馬鈴薯や食用カンナ澱粉粒に比べて高く,SEM像より,中心部から層状に穴のあく崩れ方が観察された. 2)電流滴定法によるアミロース含量はカタクリ澱粉が22.8%,馬鈴薯および食用カンナ澱粉が21.5および23.9%であった.澱粉をイソアミラーゼで枝切り後,生成物のゲル濾過分別を行った結果,アミロペクチンの枝切りされた直鎖部分と考えられるFr.IIとFr.IIIの数平均鎖長は,カタクリ澱粉は47.4と14.6で,馬鈴薯および食用カンナ澱粉に比べていずれもやや長く,また,カタクリ澱粉のFr.III/Fr.IIは2.0,馬鈴薯および食用カンナ澱粉は1.7および1.9であった. 3)糊化特性について,フォトペーストグラフィー,示差走査熱分析,ビスコグラフィーおよび動的粘弾性の測定を行い検討したところ,糊化開始温度ではビスコグラフィーによるものがいずれの澱粉でも数度高く,他の3種の機器による測定値は比較的近似しており,カタクリ澱粉は45~47℃と,低い値を示した.ビスコグラムの最高粘度は,馬鈴薯澱粉がもっとも高い値を示したが,冷却カーブはカタクリ澱粉と近似していた.動的粘弾性の最高ピーク時の貯蔵弾性率および損失弾性率は同様に馬鈴薯澱粉が最も高い値を示したが,tanδの経時変化では,カタクリ澱粉が最も低い値を示し,アミロースおよびアミロペクチンの微細構造の違いが示唆された.
著者
加藤 好博
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. V, 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.77-84, 1990-09

平成元年3月に発表された教員免許法の改正で,数学および理科の教員免許状取得に必要な専門教育科目においてコンピュータの活用が強調された。本学理学科では,昭和60年度,パーソナルコンピュータが教育現場へ急速に普及しつつある情勢を考慮して,至急に適切な対処をすべく「理学科情報教育検討委員会」が発足し,昭和61年度から理学科および第二部の学生に,パソコンによる情報教育を実施して多大の成果をあげ現在に至っている。今回の免許法の改正は,われわれの情報教育に対する取り組みが至当であったことを示すものである。これを機会に,その内容をさらに充実させるため今までの実状を振り返り,同時に大きく改編された本学の新しい体制下における今後の情報教育のあり方について提言する。In this paper a Fundamental Teaching Method of Information Science for the School Teacher Training Course in Science and the Night-Time Course of Elementary School Teacher Training is descrived,which has been carried out since 1986.From the experiences during the past few years,a lot of usefull information about the teaching method of information science has been obtained,on the basis of which effective approaches to teaching methods of information science in the fufure are discussed.
著者
松田 麗子 マツダ レイコ Matsuda Reiko 江尻 晴美 エジリ ハルミ Ejiri Harumi 中山 奈津紀 ナカヤマ ナツキ Nakayama Natsuki 梅田 奈歩 ウメダ ナオ Umeda Nao 牧野 典子 マキノ ツネコ Makino Tsuneko
出版者
中部大学生命健康科学研究所
雑誌
生命健康科学研究所紀要 (ISSN:18803040)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.42-48, 2016-03

本研究の目的は、術後患者の観察場面を設定したシミュレーション演習における学生の体験を構造化して特徴を明らかにし、教育への示唆を得ることである。対象は、看護系大学3・4年次生で、術後患者の観察が未経験の学生24名である。演習の課題は、術後患者の呼吸を観察して、その内容を教員に報告することである。演習終了後、1人20分程度の半構造的面接を1回行った。面接内容は対象者の承諾を得てICレコーダに録音し、逐語録を作成してテキストデータとした。テキストデータはテキストマイニングソフト「KH Coder」を使用し分析を行った。総抽出語数と文章数はそれぞれ288,65語、2,610文であった。頻出語分析、共起ネットワーク分析、階層的クラスター分析の結果「経験から体得する」「観察不足に自ら気づく」「念のために全部観察する」「他者の評価を気にして緊張する」「急性期看護学実習に備える」の5クラスターにまとめられた。内容を検討した結果、この演習は実際に体を使うことで身に付くという経験から体得する演習であったこと、急性期看護学臨地実習に備え必要な演習であったと価値を見出していた。今後の課題として、(1)学生自身が自らを振り返り、課題を見出すためのディスカッションができるデブリーフィングの充実、(2)学生が見出した課題を試す場を設定する必要性、(3)トレーニングを目的としたシミュレーションの演習では、学生が緊張しないための場の雰囲気作りをする必要性などが示唆された。