著者
川口 輝太 井上 裁都 長田 誠也 山下 達雄
出版者
人工知能学会
雑誌
2019年度 人工知能学会全国大会(第33回)
巻号頁・発行日
2019-04-08

本研究では,実際のユーザの行動データを使って,各地域と観光要素の紐付けを行い,地域ごとの観光要素のクラスタを抽出することを目的とする.分析対象として,ニュースサイト「Yahoo!ニュース」を用いた.Yahoo!ニュースの閲覧者は,興味のある地域や娯楽のテーマをフォローすることで,そのテーマが紐付けられた記事を優先的に閲覧できる.そこで,ニュース閲覧者の興味対象のテーマと実際の記事に付与されているテーマを併用した,観光要素別の地域ランキングと地域別観光要素ランキングの作成手法を提案する.
著者
太田 真人 花房 諒 岡留 剛
出版者
人工知能学会
雑誌
2019年度 人工知能学会全国大会(第33回)
巻号頁・発行日
2019-04-08

低精度センサーが多数配置され,高精度センサーが少数(またはゼロ)配置されている複数の地理的領域における物理量の空間分布の推定手法を提案する.本研究は,ドリフトを含む低精度センサーの観測値は誤差が大きく,疑似教師データとし,正確な物理量の空間分布は未知なため教師なし学習になる.提案手法により,高精度センサーを少数有する領域に対して,高精度センサーの観測値に基づき,領域内に配置された低精度センサーのバイアスを補正し,物理量の空間分布を推定する.また,高精度センサーが存在しない領域は,同じクラスタ内の情報を共有するマルチタスク学習方法により,領域内の物理量の空間分布を高精度に推定する.いくつかの実験で,提案手法が物理量の空間分布を正確に推定することを示す.
著者
園田 潤 木本 智幸
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

海水は導電率が高く一般的に電波は伝搬しないとされており,現在では海水中では主に超音波が利用されている.我々は東日本大震災の津波災害による海底の行方不明者やがれきを探索するために,数百MHz帯の地中レーダを用いた海底探査を試みている.本稿では,宮城県閖上広浦湾と山元町磯浜漁港および坂元沖における地中レーダによる海底探査実験について,TDR (Time Domain Reflectometry) による海水の複素比誘電率の周波数特性と,CTD (Conductivity Temperature Depth profiler) による深さ方向の導電率分布の測定結果とともに,実際の地中レーダ画像からの海底物体探査について述べ,350 MHzの地中レーダで深さ10 m程度の海底物体の反射波が受信できたことを明らかにする.また,GPUを用いたFDTD法による海水中の電波伝搬解析を行い,実験結果の妥当性を示す.
著者
尾西 恭亮
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

橋梁床版は,土砂化等の発生により,急速に劣化が進行することが知られている。点検サイクル内に抜け落ちにまで発展する事例が発生し,目視点検以外の事前検知手法の開発が望まれている。地中レーダは,地下空洞探査などに広く用いられており,有効な探査手法のひとつと考えられている。しかし,地中レーダで橋梁床版の損傷域を特定するのは困難な場合が多い。この理由のひとつは,探査対象深度が浅いことにある。橋梁床版の損傷は上面から進行することが多い。橋梁床版の上面深度は舗装厚により決定される。舗装厚は5~10cm程度の範囲に入っている場合が多い。深度5~10cmという範囲は,一般的な地中レーダの記録では,空中を伝播する光速度の直接波と,地表を伝播する地盤速度の直達波が同じ走時域に混在するため,イメージングが困難となる場合が多い。そこで,橋梁床版モデルを作成し,種類の異なる地中レーダで探査を行ったので,探査記録を比較した結果を示す。床版モデルは,アスファルト舗装の着脱が容易な設計となっており,損傷域の状態を簡単に変更できる特徴を有する。この結果,損傷域の誘電特性が周囲より十分異なれば,比較的に容易に異常信号を検知できることがわかった。しかし,検知された異常信号を用いても,表面からの深さ,粒径,水分状態などの異常の状態を特定するには困難であるため,床版モデルや数値計算等の解析を進め,信号特性を把握した上で,実際の床版の記録を解釈することが重要となる。
著者
水野 晃子 石坂 丞二
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-05-17

デジタルカメラデータのRGB表色系値を用いた、光合成生物と環境条件の調査方法は、この20年間で様々な研究がなされてきた。例えば、海域ではスマートフォンカメラを用いた水質の推定(Leeuw and Boss 2018)や、航空写真からの海草植生の検出とクロロフィルa濃度の推定(Goddijn and White 2006)などがあるが、海洋域だけでなく陸域などさまざまな地域で調査のために活用される背景には、デジタルカメラの携帯性と利便性、低価格であることがあげられる。また、観測可能性が天候によって左右されることがないため、衛星観測に対する補助的、追加的な調査としてデジタルカメラの有用性は大きいと言える。本研究では、伊勢三河湾において撮影されたデジタルカメラ写真のRGB表色系値を解析することによって、クロロフィルa濃度の推定方法の構築を試みた。伊勢三河湾ではSeaWiFSおよびMODISデータを用いたクロロフィルa濃度の推定方法がHayashiら(2015)によってなされているが、デジタルカメラデータによる方法は構築されていない。 我々は、伊勢三河湾の観測航海によってクロロフィルa濃度、海表面、18%グレー版および天空のデジタルカメラ撮影写真、連続スペクトル分光放射計(RAMSES/TriOS)による海表面輝度および天空照度のスペクトルデータを採集した。デジタルカメラ写真によるクロロフィルa推定の誤差は、海面反射、波長数の少なさ、データ圧縮やデジタル化による情報劣化など様々な要因によって生じると考えられる。本研究では海面反射について考察するため、分光放射計による海面輝度データは、海面反射の影響を最小に抑えることができるドーム法(Tanaka et al 2006)と、甲板上から撮影されたデジタルカメラデータと同条件で採集された甲板法の2種類を得、デジタルカメラデータのRGB表色系値と比較するためにCIE等色関数によってスペクトルデータをRGB値へと変換した(それぞれドーム法変換RGB値、甲板法変換RGB値とする)。デジタルカメラ写真のRGB値とは、甲板法変換RGB値の方が相関が高く、ドーム法とは関係性が低かった。また、甲板法変換RGB値によるクロロフィルa濃度推定の誤差が、デジタルカメラ写真によるクロロフィルa濃度推定の誤差量とほとんど同じ大きさであったため、デジタルカメラ写真によるクロロフィルa推定の主な誤差要因は海面反射の影響が大きいことが推察された。 L.M. Goddijn; M White, Using a digital camera for water quality measurements in Galway Bay, Estuarine, Coastal and Shelf Science (2006), 66, 429-436.M. Hayashi; J. Ishizaka; M. Toratani; T. Nakamura; Y. Nakashima; S. Yamada; Evaluation and Improvement of MODIS and SeaWIFS-derived Chlorophyll a Concentration in Ise-Mikawa Bay, Journal of The Remote Sensing Society of Japan (2015), 35, 245-259.T. Leeuw; E. Boss, The HydroColor App: Above Water Measurements of Remote Sensing Reflectance and Turbidity Using a Smartphone Camera, Sensors (2018), 18, 256-271.A. Tanaka; H. Sasaki; J. Ishizaka, Alternative measuring method for water-leaving radiance using a radiance sensor with a domed cover, Optics Express(2006), 14(8), 3099-3105
著者
佐藤 怜 秋本 洋平 佐久間 淳
出版者
人工知能学会
雑誌
2019年度 人工知能学会全国大会(第33回)
巻号頁・発行日
2019-04-08

Neural Architecture Searchが深層学習のアーキテクチャを自動的に設計するためのアプローチとして注目を集めている. 本研究では, アーキテクチャと重みを同時に最適化するone-shotアーキテクチャ探索の高速化を目的とし, 貢献度分配を導入した方策勾配による探索法を提案する. 提案手法では, 貢献度と呼ばれるアーキテクチャを構成する複数の部分それぞれに対しての報酬を定義し, これをアーキテクチャパラメータの勾配の計算に用いる. 実験で, 最近提案された勾配法によるone-shotアーキテクチャ探索の先行研究と比較し, 提案手法では同程度の精度のアーキテクチャをより高速に発見できることを示す.
著者
東 久美子 塚川 佳美 近藤 豊 Dallmayr Remi 平林 幹啓 尾形 純 北村 享太郎 川村 賢二 本山 秀明 的場 澄人 青木 輝夫 茂木 信宏 大畑 祥 森 樹大 小池 真 小室 悠紀 對馬 あかね 永塚 尚子 繁山 航 藤田 耕史
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

2014年春にグリーンランド氷床北西部のSIGMA-Dサイトで225メートルの深さまでのアイスコアが掘削された。積雪のアルベドに影響を及ぼす物質として注目されているブラックカーボン(BC)の変動を高時間分解能で復元するため、国立極地研究所で開発されたアイスコア連続融解析装置(CFA)を用いてこのコアの深度6~113mを高時間分解能分析した。CFAはアイスコアを融解しながら連続的に分析する方法であるが、融解部に接続したWide-Range SP2 (Single Soot Photometer)によりBCを分析した。コアの上部6mは空隙の多いフィルンであり、CFAを用いることができなかったため、約5cmの長さ毎に切り、試料表面の汚染を除去して融解した後、SP2で分析した。主としてナトリウムイオン濃度と酸素同位体比の季節変動を利用してこのコアの年代決定を行い、1年を12に分割して月毎の変化を調べた。ブラックカーボンの質量濃度と数濃度はともに1870年頃から増加し始め、1920~1930年頃にピークを迎えたが、その後減少に転じた。1870年頃からの濃度の増加は、化石燃料の燃焼によって発生する人為起源のブラックカーボンがグリーンランドに流入したためであると考えられる。化石燃料起源のBC濃度の増加に伴ってBCの粒径が大きくなる傾向が見られた。これはグリーンランドに到達する化石燃料起源のBCの粒径が森林火災起源のものよりも大きいことを示唆している。BC濃度の季節変動を調べたところ、BC濃度の増加は主に秋~冬に生じていることが分かった。また、人為起源のBCの影響がない時代にはBC濃度は夏にピークを示していたが、人為起源のBCが多量に流入した時代には冬にピークを示していたことも分かった。夏にはしばしばBCが短期間だけ50µg/Lを超える高濃度になることがあったが、これは森林火災によるものと考えられる。本発表では、SIGMA-Dコアの結果を他のグリーンランドコアと比較して議論する。
著者
綿田 辰吾 Iyan Mulia 山田 真澄 Dimas Sianipar
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

2018年12月22日UT14時30分頃、インドネシアスンダ海峡周辺のジャワ島・スマトラ島を津波が襲い400名余が犠牲となった。この津波の発生とほぼ同時期にAnak Krakatau火山が噴火し、火山の標高が噴火前後で300mから100mへと低下したと報告されているため、津波は陸上または海中の山体崩壊が引き起こしたと考えられている。噴火直後のSAR画像から南西方向に山頂部を含め山体が崩落し海中に消失している。周辺の検潮記録から、津波の発生は13時58分頃と推定される。インドネシア国内では火山噴火や津波発生時に強い地震の発生の報告はないが、日本を含むインドネシア国内外の広帯域地震計には周期50-100秒の長周期の地震波(S波・レイリー波)が明瞭に記録されている。S波は14時11分に日本の南西諸島へ、14時16分に北海道へ到達している。表面波も14時27分に北海道を通過している。どの地震波も13時56分頃にAnak Krakatau火山付近で長周期の地震波発生イベントがあったことを示している。遠地実体波から震源時間関数は100秒以内(1分程度)であり、スンダ海峡周辺の4観測点の地震波形3成分は、最大5x1011Nの力が、最初に20秒間でほぼ北東方向わずかに上向き、さらに50秒で南西方向に方向でわずかに下向き向きに働いたことで説明できる。力の方向と角度は、Krakatau海底カルデラ外縁部に成長していたAnak Krakatau山体の低角(8度)南西方向へ水深250mのカルデラ底へ崩壊とそれに伴う津波の可能性を指摘していたGiachetti et al. (2012, Geol. Soc. London) の山体崩壊モデルとほぼ一致する。山体崩壊の質量はEkstrom and Startk (2013, Science) が経験的に求めた陸上地滑りの最大力と質量の比例式から3x1011kgと推定され、山体の密度を2gr/cm3を仮定すると山体崩壊体積はおよそ0.15km3となり、検潮記録から推定されている海底地滑りを引き起こした体積0.2km3とおよそ一致している。津波を引き起こすような地震が現地では検知されなかったため、津波警報は発令されなかった。一方、津波の発生と共に発生したと考えられる長周期地震波は地震発生イベントの40秒後にはJakartaに到達した。もし今回観測されたような長周期地震動が定常的にインドネシアでモニターされれていれば、Anak Krakatau山体崩壊の早期検知とそれに伴う津波発生の可能性は津波被害発生前に把握できたかもしれない。
著者
加藤 愛太郎 上田 拓
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

We reconstructed the spatiotemporal evolution of seismicity associated with the 2018 Mw 5.6 northern Osaka earthquake, Japan, to discuss the source fault model of the mainshock rupture, the possible link between this rupture and known active faults, and subsequent crustal deformation. We first relocated the hypocenters listed in the earthquake catalog determined by the Japan Meteorological Agency using a double-difference relocation algorithm. We then searched for the earthquake waveforms that closely resembled those of the relocated hypocenters by applying a matched filtering technique to the continuous waveform data. The relocated hypocenters revealed two distinct planar alignments with different fault geometries. A combination of the relocated hypocenters and focal mechanisms suggests that the mainshock rupture initiated on a NNW–SSE-striking thrust fault, dipping ~45° to the east, with the rupture propagating to an adjacent sub-vertical ENE–WSW-striking strike-slip fault ~0.3 s after the initial mainshock rupture, resulting in the simultaneous propagation of dynamic rupture along the two faults. The strike-slip fault is oblique to the strike of the Arima-Takatsuki Fault, indicating that blind strike-slip faulting occurred. While the east-dipping thrust fault is located deeper than the modeled extent of the Uemachi Fault, a simple extrapolation of the near-surface geometry of the Uemachi fault partially overlaps the mainshock rupture area. Although it is unclear as to whether a blind thrust fault or a deep portion of the Uemachi Fault ruptured during this mainshock–aftershock sequence, a mainshock rupture would have transferred a static stress change of >0.1 MPa to a portion of the east-dipping thrust fault system. Intensive aftershocks have persisted along the northern and southern edges of the source area, including moderate-magnitude events, whereas the seismicity in the central part of the source area has shown a rapid decay over time. Delayed triggered aftershocks were clearly identified along the northern extension of the rupture area. Because the background seismicity is predominant in this northern area, we interpret that aseismic deformation, such as cataclastic flow lubricated by crustal fluids, triggered this off-fault seismicity.
著者
上田 拓 加藤 愛太郎
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

A growing body of evidence suggests that seismicity is seasonally modulated in a variety of tectonic environments (e.g., Gao et al., 2000; Heki, 2003; Bettinelli et al., 2008; Ben-Zion & Allam, 2013; Amos et al., 2014; Johnson et al., 2017). Identifying cyclic variations in seismicity leads to an improvement of our understanding about the physics of earthquake triggering.San-in district, southwest Japan, is an active seismicity zone characterized as high shear strain rate by geodetic measurement (Nishimura and Takada, 2017). Moreover, Ogata (1983) has pointed out a possibility of seasonal variations in seismicity rate in the Inner Zone of southwest Japan. We here focus on seasonal variations in crustal seismicity in San-in district.We used the JMA catalog (constructed by Japan Meteorological Agency) from 1975 through 2017 (magnitude M >= 3.0 and depth <= 20 km). We applied space-time Epidemic Type Aftershock Sequence (ETAS) model (e.g., Ogata, 1998; Zhuang et al., 2004) to the catalog and used a probability-based declustering procedure based on the work of Zhuang et al. (2002) to evaluate the significance of the seasonal variations, adopting uncertainties derived from the declustering scheme.We demonstrated that semiannual variations in background seismicity rate, which increases in spring and autumn, are statistically significant from 1980 through 2017. The distribution of large historic and modern earthquakes (from 1850 through 2017, magnitude M >= 6.2, constructed by Chronological Scientific Tables) shows a similar pattern to recent background seismicity, suggesting that seismicity in San-in district has shown seasonal variations for over 150 years. There is some correlation between the monthly averaged background rate shifted backward 2 months and monthly averaged rain amount in the studied region. These results infer that seasonal variations in seismicity in San-in district can be explained by increasing pore pressure within fault zones, caused by infiltration of rainfall in autumn and decreasing surface mass due to snow melting in spring. Some correlation between seismicity and precipitation suggests that modulation of precipitation may be a key ingredient to produce time-dependence of background seismicity.
著者
山本 隆太
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

日本のジオパークでは学校教育との定期的な教育連携活動が見られる。出前講座や実験演習といった比較的一回性の教育イベントとなりやすい教育活動に対して,地域学習(郷土学習,ふるさと学習)では,年間あるいは学校修学年限(3年・6年),場合によっては学校種を横断した一貫性あるカリキュラムが構想されている地域も少なくない。近年では持続可能な開発のための教育(ESD)の進展に伴い,ESDカレンダーのような体系的な教育カリキュラムが求められており,これまでの総合的な学習に加え,各教科の横断的なカリキュラムも認められている。こうしたカリキュラムを作成するにあたっては,学年配列と学習内容のマトリクスをたたき台としながらジオパークと関連する学習内容を当てはめていくことで,見かけ上のカリキュラムを作成することが従来は可能であった。しかし,新学習指導要領の最も基本的な転換点は,PISAに象徴されるようなコンピテンシーへの能力論的な展開であるといえ,つまりは育むべき能力と位置付けられた資質・能力(コンピテンシー)と,それを受けた各教科での見方・考え方が教育活動の軸に据えられるようになる。その結果,コンピテンシーはコンテンツ(学習内容)に先んじることとなり,カリキュラムも育成すべきコンピテンシーによって再構成されていく。ただし,学校現場レベルでは移行期間としてコンテンツベースが続くことも考えられるが,その場合でも,コンテンツに準じながらもコンピテンシーを意識せざるをえない状況に迫られる。そこで本発表では,ジオパークで育まれるコンピテンシーに関して,とりわけ地域学習のカリキュラム開発に資すると考えられるシステム思考とそのコンピテンシーの理論ついて取り上げた上で,コンテンツベースからコンピテンシーベースのカリキュラムへの移行についてシステム思考の援用を具体的に論ずる。システム思考コンピテンシーは,把握対象をシステムとして捉えるのみならず,システム的な問題解決の能力として教育分野で開発されてきた。日本の新指導要領でもコンピテンシーの問題解決能力に着目しており,その意味では地域学習も問題解決能力に資する部分を明示する必要がある。そのためには,問題解決能力の全体像を示すことが前提となるが,システム思考のコンピテンシーモデルが説明モデルとして適応できる。またジオパークの特性を生かすということは,ジオパークの持つシステマティックな特性とシステミックな特性を整理した上でカリキュラム開発に寄与することといえる。その際,システマティックな特性については従来のコンテンツベースカリキュラムでカバーしきれるためいわゆる内容の読み替えが適応可能である。一方,システミックな特性についてはESDやSDGsにおいて重視されているものの学校教育では扱いきれていない部分であり,この点についてはジオストーリーが概念的に近いが,地域学習カリキュラムの開発のためには,静的で固定されたジオストーリーではなく操作可能なジオストーリーの在り方が求められることが考えられる。
著者
阿部 國廣
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

島根半島・宍道湖中海ジオパークは日本ジオパークに認定され3年目となる。島根県でのジオパーク認定は、隠岐世界ジオパークに次いで2番目となる。隠岐ジオパークの知名度は県民にもかなり認知されているが、島根半島・宍道湖中海はまだまだという感が強い。推進協議会は認知活動と合わせ、ジオパークの活用と、教育活動が強く求められている。昨年18回目を迎えた青少年のための科学の祭典島根大会で、島根の地学系のブースにおいて、島根半島・宍道湖中海ジオパークのブースを出展し、「宍道湖、出雲平野の誕生」というてーまでコンパネで、360×270×120㎝の型枠に真さ砂で斐伊川と神門川の流域地形を作り、二川の源流部に散水ホースを固定し、散水し続けることにより、流水による堆積実験に合わせ、中国山地と島根半島に挟まれた海域に次第に土砂が堆積し、出雲平野が出来上がってくる過程を観察しながら時間の経過とともに宍道湖が形成されていく様子を理解していくものである。出雲大社のある西側は平野となって海域ではなくなっている。これは神門川水系に位置する三瓶火山の噴火による影響は無視できない。築地松で知られる出雲平野を形成した斐伊川、神門川、中国山地の花崗岩を主体とするがん性、三瓶さんの火山活動によって、北に位置する島根半島突動く産地の間に出雲平野が形成されていったことをジオパークの宍道湖中海低地帯の所信や資料と対比させながら実験を行った。
著者
佐藤 公 宇井 忠英
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

磐梯山ジオパークは5万年前と1888年の2回に発生した山体崩壊とそれに伴う岩なだれ(岩屑なだれ)で生じた地形や人々の営みに影響を与えた様子を来訪者に伝える狙いで作られた。磐梯山噴火記念館はその中核展示施設である。2018年は1888年の山体崩壊から130年、記念館の開館から30年という節目の年に当たっていた。岩なだれは日本では100年に1回程度しか発生しないため、市民にあまり知られていない。この岩なだれにスポットを当てた企画展を磐梯山噴火記念館で開催した。合わせて全国の火山系博物館でも巡回展示を行った。この巡回展を通して、参加したジオパークの連携と互いの理解が進むと考え、シンポジウムを開催したり、それらのジオパークに出向き出前講座も実施した。 この講演では企画展と出前講座の概要を紹介し、出前講座の際に実施した参加者アンケートから、地域による火山理解の違いなどを紹介する。
著者
松原 誠 西澤 あずさ 青井 真 竹之内 耕 平松 良浩 中川 和之
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

(1) はじめに 公益社団法人日本地震学会(地震学会)では「行動計画2012」における「地震学の現状を一般市民の目線に立って社会に伝えていくとともに、地域防災への貢献及び社会からの要請を受け止める場となることを目指す」という考えに基づき、その具体化と手段の多様化を実現するために2017年4月にジオパーク支援委員会を設立した。ジオパークでは、火山や地質・歴史地震・津波痕跡に関するジオサイト・ガイド・案内板は数多く存在するが、自分たちの足元で起きている地震活動を認識してもらう案内方法が欠けている面があった。 防災科学技術研究所(防災科研)では、ジオサイトで足元の地球の活動を可視化するという観点から、「防災科研 地震だねっと!」というホームページ(http://www.geopark.bosai.go.jp/、以下、当サイト)を構築し、防災科研陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)で捉えた現在の地震活動や歴史地震を簡単に見られるホームページを2018年7月に開設した。これは、糸魚川世界ユネスコジオパークのフォッサマグナパークのリニューアルオープンを機に、案内板のQRコードから当サイトに接続することにより、現在の糸魚川周辺の地震活動を閲覧できるホームページである。(2)ホームページの概要 当サイトに接続すると、過去1年間の震源分布図が表示される。色で震源の深さを、丸の大きさでマグニチュードを表している。震源分布は1時間毎に更新され、最新の地震は星印で表示されている。地図には、現在地に加え、火山・活断層・河川・県境なども表示され、周辺を含めた位置を捉えやすくなっている。震源分布図の期間は過去24時間~10年間が選択可能である。記憶に残っている過去の地震もプロットされると同時に、無感の微小地震の分布も表示されるので、足元の地球内部でどのような活動が起こっているかを診ることができる。震源分布図の下には、被害地震も列挙されているので、地元での有史以来の地震活動を把握することが可能である。(3)閲覧実績 当サイト開設後、毎日20-30の所外からのアクセスが確認されている。また、フォッサマグナパークにおいて団体の見学があり、糸魚川ジオパークで当サイトについて紹介した際には、50~60のアクセスがあった。(4)ジオパークとの連携 防災科研は日本ジオパークネットワーク(JGN)と包括的連携協定を2018年10月13日に締結した。また、糸魚川ユネスコ世界ジオパークとは、当サイトの活用に関する覚書を締結した。今後、JGNを通じて、要望のあるジオパークに向けて当サイトを構築していく予定である。(5)利活用に関するアンケート結果と今後の展開 地震学会ジオパーク支援委員会では、JpGUの際にジオパーク向けに地震に関する勉強会を開催している。2018年度には、歴史地震の利活用について説明したこともあり、JGNを通じて、全国のジオパーク協議会やジオパーク推進協議会に対して歴史地震や最近の震源分布図、地震波形の展示の希望に関するアンケートを実施した。26のジオパークと7つのジオパーク構想から回答があった。以下の結果では、ジオパーク構想についてもジオパークに含める。 歴史地震に関するジオサイトは、46%の構想中を含めたジオパークに存在した。また、地元の地震活動には、91%のジオパークから関心があるという回答を得た。しかし、現在の地震活動に関する展示が存在するのは27%であった。博物館などの展示施設や屋外のジオサイトの案内板等で地震活動の展示希望については、条件によるも含めて、82%のジオパークで関心があった。条件としての多くは費用に関するものであった。当サイトのホームページの作成・運用費用は防災科研で負担しているので、ジオパーク側ではQRコードを掲載するジオサイトでの案内板の更新や、展示施設内でホームページを閲覧できるような仕組み(例えばパソコン等)を準備していただくことになる。防災科研では、ジオパークにおいて地震活動を実感する一助となるべく、それぞれの要望に沿った領域の地震活動の図を作成・提供していきたいと考えている。
著者
溝口 勝
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

火星の地下における水分移動のメカニズムを探る目的で、減圧蒸発過程での砂カラム中の水分・温度・塩分分布を測定する実験を行った。その結果、低塩分濃度では試料が凍結するが高濃度では試料が凍結しないこと、液状水移動に伴い塩分が表層に移動すること、塩分濃度が高いほど蒸発量が多いことがわかった。これらは、減圧蒸発に伴う乾燥、潜熱損失による凍結、塩濃縮によるクラスト形成や凝固点降下などの現象が関係している。
著者
今泉 文寿 早川 裕弌 經隆 悠 堀田 紀文
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

土石流はその速度,移動距離,破壊力から,甚大な災害を引き起こす土砂移動現象である。土石流の発生・流下特性は土石流の材料となりうる不安定土砂の土石流発生域における貯留状況の影響を受けていると考えられるが,土石流の発生域はアクセスが困難であり,また危険性が伴うことからほとんど明らかになっていない。そこで静岡県北部の大谷崩において,定期的な地上レーザースキャンやUAV撮影,現地観測によって不安定土砂の貯留状況が土石流の発生・流下特性へ及ぼす影響について調べた。その結果,土石流の発生位置は不安定土砂の堆積状況,および支流から土石流渓流への水の供給の影響を受けていることがわかった。土石流発生域においては渓床勾配が急なことから不飽和土石流が重要な流動形態である。さらに堆積土砂量が15,000m3を超えるときには不飽和土石流が,10,000 m3を下回るときには飽和土石流が多く発生した。また,流動形態は流下とともに変化をすることが明らかになった。このように,土石流の発生・流下特性は発生域における不安定土砂の堆積状況の影響を受け,さらに流下・堆積域で観測される土石流と流下形態が異なることがあることが明らかになった。
著者
杉岡 誠 溝口 勝
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

東京電力福島第一原子力発電所の事故で全村民が避難していた飯舘村では平成2017年3月に一部地域を除き避難指示が解除されたが、生活環境の未整備、環境中の放射能への不安から、実際に飯舘村に定住している人は1割以下である。しかしながら、飯舘村役場は農家の希望に応じた4つの農業プラン(農地を守る農業、生きがい農業、なりわい農業、新たな農業)を提案し、「農」の再生に向けて努力している。本発表では、そうした取組を紹介する。
著者
河村 聡人 早川 尚志 玉澤 晴史 磯部 洋明 柴田 一成
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-05-17

太陽は人類が最も研究している恒星ではありますが、その知見は限られた時間スケールでの観測に基づいています。太陽活動の科学的な記録は、黒点に関して約400年、エネルギーの解放を伴う突発的増光現象であるフレアに関して約160年にわたります。一方で、人々は何千年にもわたって太陽活動の痕跡を観察し記録してきました。その現象を今日の我々はオーロラと呼んでいます。我々の研究の第一のゴールは、科学的な黒点観測と歴史資料に残るオーロラの記録とを組み合わせ、過去400年の太陽活動を解明することです。我々が知りたい物理変数はフレアの強度で、現代の太陽観測に基づく統計からその強度を推定する手法を開発しました。この手法の鍵となるのは、フレア時にコロナ質量放出が起こったことを強く示唆する低緯度オーロラの観測です。黒点の大きさの科学的観測と低緯度オーロラ観測の歴史資料から、フレア強度を推定することができるようになりました。当ポスター発表では、歴史資料を用いた太陽物理学の将来性と課題を議論します。当ポスターを科学と歴史学のコラボレーションの成功の一例として提示します。
著者
神野 拓哉
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

Cloud clusters show a wide variety of shape and size, and their spatial pattern is often taken up as a typical example of fractal. However, the methods of studying fractal are in an early stage of development. In this study, we conducted fractal analysis on the perimeter of tropical clouds using satellite observation and cloud-resolving simulation of sub-kilometer resolution. We evaluated fractal dimension as a function of spatial scale (transient fractal dimension) and quantified the characteristic spatial scale of the pattern from the scale where self-similarity breaks down. From the observational data from HIMAWARI-8, It is shown that the self-similarity of the cloud perimeter persists only in the spatial scale range from 2 km up to 30 km. The limit of the self-similarity is suggested to be the characteristic scale of the pattern formation of tropical clouds. The cloud-resolving simulation data with NICAM also shows finite-size self-similarity. However, the profile of the transient fractal dimension changed with integration time far more rapidly than HIMAWARI-8 observation, and it lost its self-similarity at the end of the 48-hour simulation. This process is suggested to reflect the increase of stratiform cloud in the upper-troposphere as an adjustment to the transition of spatial resolution.