著者
井上 寛
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.271-287, 1998-10-05

Artona(Balataea)martini Efetovタケノホソクロバ:本種とA.funeralis(Butler)ヒメクロバについては杉(1997)を参照されたい.本土から食草と共に移入されたものである.Hyblaea puera(Cramer)キオビセセリモドキ:大林隆司氏によって父島でクマツズラ科のハマゴウで幼虫が発見された.杉(1982,蛾類大図鑑,pl.35:14)の写真は父島産の雌である.Banisia myrsusalis elaralis(Walker)ヒメシロテンマドガ:父島と母島でそれぞれ1♀がとれているにすぎず,本土では屋久島産の1♀しか知られていない(井上,1982:304).Banisia whalleyi Inoueコシロテンマドガ(新称):父島と母島に多産する特産種.Belippa boninensis(Matsumura)オガサワライラガ:父島と母島に多産する特産種で,新属Contheyloidesのもとに記載されたが,この属を本文でBelippaのシノニムにした.Gathynia fumicosta islandica Inoueアトキフタオの小笠原亜種:原名亜種とちがって極めて変異性に豊んでいる.父島と母島に多産.スズメガ科は,エビガラスズメ,キョウチクトウスズメ,ホシホウジャク,イチモンジホウジャク,キイロスズメの5種がとれているが,確実に土着しているものが此のうちどれかはっきりしていない.Utetheisa pulchelloides umata Jordanベニゴマダラヒトリのミクロネシア亜種:土着性はあやしい.Hyphantria cunea(Drury)アメリカシロヒトリ:竹内・大林両氏によると,父島で1994年に発見され,以来定着してしまったらしい.Nyctemera adversata(Schaffer)モンシロモドキ:父島で2頭とれただけで土着しているかどうかわからない.Nola infranigra Inoueシタジロコブガ:父島と母島には土着しているようである.シャクガ科の追加.Pelagodes antiquadraria(Inoue)オオサザナミシロアオシャク:第2報で既に記録したが,久万田博士が父島でヒメツバキ(ツバキ科)を食べている幼虫から羽化させた1♂を検することができた.Perixera illepidaria(Guenee)コブウスチャヒメシャク:大林氏によってガジュマル(イチジク科)とレイシ(ムクロジ科)で幼虫が飼育され1♂1♀の成虫がえられた.本州でわずかしか得られていない珍種(井上,1982:444).Gymnoscelis subpumilata Inoueホソバチビナミシャクは第2報で記録したが,竹内氏によってマンゴウ(ウルシ科),ワダンノキおよびセングングサ(以上キク科)から父島と母島で幼虫が発見された.Gymnoscelis tristrigosa tristrigosa(Butler)トベラクロスジナミシャク:これも第2報で記録した種だが,シロトベラ(トベラ科)で竹内氏が幼虫を飼っている.沖縄県ではオキナワトベラが食草として知られている(井上,1982:514).Gymnoscelis esakii Inoueケブカチビナミシャク:竹内氏はマンゴウ(ウルシ科)から幼虫を得て成虫を出している.Collix ghosha ghosha Walkerオオサビイロナミシャク:大林氏によって父島でモクタチバナ(ヤブコウジ科)で,竹内氏によって兄島で同じ植物から幼虫が飼育された.メイガ科の追加.Eucampyla estriatella Yamanakaシロチビマダラメイガ:四国・九州・奄美大島・沖縄本島から記載された種で,父島と母島でとれている.Cryptoblabes gnidiella(Milliere)ネッタイマダラメイガ(新称):地中海地方が原産と推定され,幼虫が果実,干果などにつくところから,人為的に世界の熱帯圏に運ばれ土着してしまった.Microthrix inconspicuella(Ragonot)サビイロマダラメイガ:山口県を基産地とするSelagia manoi Yamanaka,1993は同じ著者(1998)によってM.inconspicuellaのシノニムとされた.アフリカからインド,ネパール,日本(本州)などに広く分布する.Indomyrlaea eugraphella(Ragonot)シロフタスジマダラメイガ(新称):東南アの広分布種で,父島と母島で7頭とれている.Hampson(1896)は乾燥タバコとMimusops elengi(アカテツ科)を食草とし,Meyrick(1933)はジャワから今はシノニムとされているSalebria iriditisという新種を書いたとき食草としてクサギ属(クマツズラ科)と名称不明の果物を挙げている.Musotima kumatai Inoueクマタミズメイガは母島産の1♂で第3報で記載したが,父島でとれた2♂1♀を検した結果,色彩斑紋に大きな変異のあることがわかった.M.colonalis(Bremer)ウスキミズメイガに近縁だが,外観ばかりではなく雄交尾器の形態にも明確なちがいがある.Eurrhyparodes tricoloralis(Zeller)オオアヤナミノメイガ(新称):父島でとれた1♀にこの種名を当てはめたが,アヤナミノメイガの仲間はまだ十分に種の解析が行われていないので(井上,1982:332),将来学名が変更されるかもしれない.Palpita munroei Inoueオオモンヒメシロノメイガ:第3報では種名未定で記録したが,この属についてはInoue(1996b)の論文で詳しく書いたのでそれを参照されたい.
著者
山本 雅道 沖野 外輝夫
出版者
信州大学山地水環境教育研究センター
雑誌
信州大学山地水環境教育研究センター研究報告 (ISSN:13487612)
巻号頁・発行日
no.1, pp.99-108, 2003-10

第二次世界大戦後(1946~1999年)の諏訪湖の魚類群集の変遷を漁業統計を中心に分析した。漁業統計は,諏訪湖漁業協同組合の年度ごとの漁獲統計表を,暦年に整理し直して用いた。諏訪湖の総漁獲量は1946年より1970年にかけて増加し,それ以降減少に転じ,1999年には1946年以降での最低漁獲量を記録している。漁獲物は,魚類,貝類,エビ類に大別し,それぞれの漁獲量の変遷について検討した。1970年頃までの漁獲量上昇期には,貝類が漁獲量の1/2~1/3を占めていた年もあるが,魚類の中ではワカサギとフナが主要な漁獲物であった。また,この時期には多様な魚種が漁獲されていたことは特筆に値する。1970年以降では,漁獲物の大半がワカサギとなり,貝類の漁獲量は激減,フナも減産の一途を辿った。近年は,ワカサギ,フナ,コイ以外の魚種はほとんど採取されなくなっており,ワカサギに次いで漁獲量第2位であったフナに替わってコイの漁獲量が増える傾向にある。1970年を境に諏訪湖の漁獲量が減少した理由の-つに湖畔の埋立,浚渫工事による沿岸域の水生植物帯の減少を挙げることができる。最近の諏訪湖の総漁獲量は1970年代のおよそ1/4程度であり,ワカサギの漁獲量もおよそ1/10に減少している。その主な原因としては,漁業者の高齢化や魚価の低廉化による漁獲意欲の減退も考えられる。しかしながら,最近の漁獲量の減少を漁業者の漁獲意欲減退だけでは説明できない状況もあり,諏訪湖の湖沼環境が変化したことの影響についても合わせて検討する必要がある。生息魚類相の変化では,オオクチバス(ブラックバス)やブルーギルなどの外来魚種の増加やウキゴリの増加など,今後の推移を注意深く見守る必要のある事象が目に付くようになっている。
著者
中田 孝憲
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.36, no.8, pp.711-716, 1982-08-20

画像応答システム(VRS)は, 電電公社が開発を進めている会話形画像情報システムのひとつであり, 本稿ではこれまでの実験サービスを通じて確認された, 本システムの諸装置, ソフトウェアの特性および利用状況, 効用などサービス面での調査実施状況について紹介する.
著者
山中 芳和
出版者
岡山大学
雑誌
研究集録 (ISSN:04714008)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.77-85, 1994

国学思想において、このような被治者たるものの心構えが、政治論的文脈の中で説かれるようななったのは、前章で指摘したとおり本居宣長においてであった。すなわち、宣長は『古事記伝』において「政」という言葉について次のようにのべている、政は、凡ての君の国を治坐す万の事の中に、神祇を祭賜ふが最重事なる故に、其余の事等をも括て祭事と云 とは、誰も思ふことにて、誠に然ることなれども、猶熟思に、言の本は其ノ由には非で 奉仕事なるべし、そは天下の臣連八十伴緒の天皇の大命を奉はりて、各其職を奉仕る、是天下の政なればなり、さて奉仕るを麻都理と云由は、麻都流を延て麻都呂布とも云ば、即君に服従て、其事を承はり行ふをいふなり 即ち「政」は「奉仕事なるべし」とのべ支配を形成する命令と服従の二つの要素のうち、被治者における服従の側面から政治を基礎づけたのであった。命令と服従あるいは治者と被治者との関係は「身分制的」社会における「上と下」の関係に外ならないのだが、本節ではこの問題に関して宣長学における「世間の風儀」の意義を中心に考察していくことにする。
著者
上條 明弘
出版者
首都大学東京
雑誌
小笠原研究年報 (ISSN:03879844)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.49-69, 2009-05-31

洲崎は父島のほぼ中央に位置し、その地名は、1765年に幕府の名により巡見を行った嶋谷市左衛門によって付けられた。1827年、英国軍艦の艦長ビーチーは本諸島の領有を宣言する銅板を洲崎の樹木に打ち付けた(その銅板は現在オーストラリアにある)。1830年、最初の定住者セーボレー達は洲崎に居を構えた。1852年、ペリー提督が父島に来航し、洲崎にあった大洞窟の記録を残している(その大洞窟は少なくとも1945年までは残っていたが、現在はなくなっている)。1861年、小笠原回収のため幕府の水野外国奉行ら一行は咸臨丸で父島に来航、当時の洲崎の様子を記録した。

2 0 0 0 OA 西川如見遺書

著者
西川忠亮 編
出版者
西川忠亮
巻号頁・発行日
vol.第2編 天文義論 2巻, 1907
著者
又吉 宣
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

リゾフォスファチジン酸(LPA)は生体内で様々な働きを持つ生理活性脂質として近年注目を集めている。癌細胞に関してはLPA刺激が癌細胞の増殖や遊走といった悪性形質の発現に働くことが報告されている。その受容体はLPA1-6の6つのタイプがこれまでに知られているが、2003年に発見されたLPA4に関してその働きはよくわかっていない。今回、頭頸部扁平上皮癌細胞株を用いLPA刺激に関する増殖能、遊走能を調べる実験を行った。次に遺伝子導入によりLPA4を過剰発現させた頭頸部扁平上皮癌細胞株を用い同様の実験を行うことによってLPA4を介したシグナリングが癌細胞の悪性形質発現抑制につながる可能性を見い出した。
著者
山口 俊光 渡辺 哲也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.408, pp.121-124, 2006-11-29
被引用文献数
1

In this paper, we propose a new method of assisting Kana-Kanji conversion for people with visual impairment. There are many homophone words in Japanese, shosai yomi is one of effective methods of assisting. However, it is difficult to decide with shosai yomi when semantic of word and semantic of kanji character are different. Our method, "Jisho setsume yomi", provides the sematic information of the word and usage. We developed program for evaluation and distributed it to people with visual impairment. We obtained generally positive respose from the evaluators.
著者
川崎 浩二 飯島 洋一 高木 興氏 小林 清吾
出版者
一般社団法人 日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.676-683, 1991-10-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
15

The progression rate of newly occurred pit and fissure incipient caries of first molars was investigated every 6 months for 24 months. The subjects were 93 1st and 2nd grade elementary school children who did not perform school-based fluoride mouthrinsing. The progression rate after 12 months was approximately 60%, and the non-progression rate was approximately 40%. Cumulative progression rates after 12 months were approximately 60% for the 1st grade, and 40% for the 2nd grade, and the same rates after 24 months were 70% for the 1st grade, and 60% for the 2nd grade. These data were compared with our previous data derived from the same grade of elementary school children who performed school-based fluoride mouthrinsing. There was no statistical difference in the progression of incipient caries between these two schools. This lack of difference may be explained in terms of the complicated form of pits and fissures, or it may be that the fluoride mouthrinsing period was too short to be effective against caries progression.
著者
吉永宗義
雑誌
周産期医学
巻号頁・発行日
vol.32, pp.557-560, 2002
被引用文献数
1
著者
山口 豊 中村 結美花 窪田 辰政 橋本 佐由理 松本 俊彦 宗像 恒次
出版者
東京情報大学
雑誌
東京情報大学研究論集 (ISSN:13432001)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.13-20, 2014-03-01

近年、教育界において自傷行為が数多く報告されている。自傷行為については、わからないことが多く、予防支援のためには、心理的要因を検討することが望まれる。そこで、本研究では、自傷行為と心理特性との関連を予備的に検討する。関東地方A高校2年生1クラスの39名に対し、2010年11月に無記名自記式質問紙調査を実施した。調査項目は(1)属性(性別)(2)学校について(学校満足度)・家庭について(居心地・愛着)(3)故意に健康を害する行為(経験・念慮)の有無(4)自傷行為(経験・念慮)の有無( 5)心理的要因に関する尺度(5項目)であった。結果は、次のとおりである。(1)喫煙(経験1人・念慮3人)、飲酒(経験18人・念慮3人)、ダイエット(経験4人・念慮6人)、過食嘔吐(経験8人・念慮3人)、過量服薬(経験0人・念慮2人)であった。(2)自傷行為有(経験4人・念慮3人)、無32人であった。(3)特性不安、抑うつ、自己否定感の各尺度値が基準値を超え、特性不安尺度、抑うつ尺度、自己否定感尺度間に強い正の相関がみられた。(4)自傷行為(経験・念慮)と心理特性尺度との相関については「抑うつ」「自己否定感」において有意、「特性不安」において有意傾向であった。(5)自傷行為(経験・念慮)有無2群における心理特性については、有群が無群に比して「抑うつ」「自己否定感」において有意に、「特性不安」において有意傾向で課題が見られた。これらのことから、次のことが考えられる。心理的課題を抱える生徒は複数の心理的問題を同時に抱え、学校生活の大変さがうかがわれた。健康を害する行為や自傷行為の一定数は、そのことに関連している可能性が推察される。特に、自傷行為(経験・念慮)については、統計学的に心理的課題との関連が推測され、対象者の一部が、自傷行為という行為を通して、心理的課題に独自に対応しているのではないかと考えられる。自傷行為予防支援に向けての本格的調査が必要である。