著者
風早 康平 高橋 浩 佐藤 努 高橋 正明 大和田 道子 安原 正也 森川 徳敏
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

我々は2003年から阪神地域において,河川,水路等に現れる”赤水”の目視調査および水質調査を行っており,その分布の概要がわかってきたので報告する.”赤水”湧出の特徴として,比較的標高の高い六甲山麓部にも存在し,一部のものは石垣等から染み出している.これらは,ほぼすべて重炭酸型であり,pHが6-7の弱酸性のものが多くCO2が溶解していることを示唆する.”赤水”が赤褐色~オレンジ色を呈する理由は,湧き出し口でリモナイト(FeOOH)が沈殿することによる.この鉄は,地下水中にCO2があった場合に,岩石・鉱物が風化することにより地下水に溶解する.そして,浅所で酸化することにより赤褐色からオレンジ色を生じる.阪神地域では,地下から断層を通じて上昇する有馬型熱水が浅所でCO2を遊離し,気泡となったCO2が上昇し,浅層地下水を炭酸化すると考えられている.したがって,”赤水”の分布域は,有馬型熱水の上昇域に関連していると考えられる.”赤水”の分布が地下に伏在する断層と関連があるかどうか検討をおこなった.その結果,六甲,宝塚,須磨,仮屋沖(延長),芦屋,甲陽,西宮,伊丹の各断層と昆陽池陥没帯に関連づけられる”赤水”が存在していることがわかった.また,断層が存在していても赤水がほぼ見られない地域もあった.講演では,”赤水”調査の概要,産状を紹介し,詳細な分布・特徴について議論したい.
著者
大木 郁也 大場 司
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2014年大会
巻号頁・発行日
2014-04-07

秋田県南部に位置する三途川カルデラは,約1Ma以前に大規模火砕流を伴うカルデラ陥没により形成した.本地域には,カルデラ形成時に堆積したとされる虎毛山層が分布する.虎毛山層は,下位より虎毛山凝灰岩部層,皆瀬川凝灰岩部層からなる.虎毛山凝灰岩部層は,溶結凝灰岩,火山礫凝灰岩,凝灰質砂岩・黒色頁岩・礫岩の互層からなり,層厚は900mに達する.皆瀬川凝灰岩部層は,火山礫凝灰岩,凝灰岩,礫岩からなり,層厚は450mに達する.虎毛山層は,8層の火砕流堆積物(PDC-1~8),土石流堆積物(DF-1),湖成堆積物(LD-1)から構成される.これらの層序は,下位よりPDC-1,DF-1,LD-1,PDC-2~PDC-8からなる.各層の厚さはPDC-1が20m,DF-1が80m,LD-1が140m,PDC-2が50m,PDC-3が250m,PDC-4が200m,PDC-5が340m,PDC-6が160m,PDC-7が90m,PDC-8が30mである.火砕流堆積物は,塊状無層理の火山礫凝灰岩からなり,軽石と異質岩片を含む.しばしば,炭化木片を含み,脱ガスや柱状節理が発達する.PDC-4, 6は火砕流堆積物の基底部はグラウンドサージ堆積物からなる.このグラウンドサージ堆積物には,低角斜交層理が発達し,デューン構造が認められる.このうちPDC-6は,グラウンドサージ堆積物の下位にグラウンドブレッチャーが認められる.このグラウンドブレッチャーは,最大礫径2.5mの異質岩片を含む基質支持礫岩からなる.また,PDC-1, 3, 4, 8は特徴的に溶結相を伴う.溶結相には,ユータキシティック組織やスフェルライトが認められる.土石流堆積物(DF-1)は,層理が発達し,円礫を主体とする礫支持礫岩からなる.礫は平行に配向し,弱く逆級化する.湖成堆積物(LD-1)は,黒色頁岩及び凝灰質砂岩,礫岩の互層からなる.黒色頁岩にはラミナが発達し,凝灰質砂岩には葉理・層理が発達し,礫岩は塊状無層理である.湖成堆積物(LD-1)の上位のPDC-2は,水中環境での堆積を示唆する.8層の火砕流堆積物の存在は,本地域では火砕流が少なくとも8回発生していたことを示唆する.火砕流堆積物(PDC-4)の流向方向は,グラウンドサージ堆積物のデューン構造から,北東から南西方向であると推定でき,給源位置は滝ノ原火口であると推定した.休止期間を示す湖成堆積物(LD-1)が虎毛山層中部に狭在し,カルデラ陥没が少なくとも2回発生したと推定される.地層の走向は石神山周辺を中心とする半同心円構造をなし,その傾斜は半同心円の外側を向く.この構造は,石神山周辺を中心とするドーム状の隆起構造を示唆する.この隆起構造は,再生ドームであると考えられ,カルデラ中心域にあたる小安岳周辺の基盤岩の高まりの原因の一つである.再生ドームの形成と厚い火砕流堆積物の分布と環状割れ目の存在は,三途川カルデラがValles型カルデラである可能性を示唆している.
著者
大木 郁也
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

カルデラ内イグニンブライトは,カルデラ外に比べ,カルデラ形成に伴う噴火の始まりや終わり,その後の情報をより完全に記録している.しかしながら,厚いカルデラフィル堆積物により埋積されるため,カルデラ底部へアクセスできないなどの問題点がある.それゆえ,カルデラ内イグニンブライトの層序及び地質構造,堆積相を連続的に記載した例は少ない. 本研究は,カルデラ内イグニンブライトを連続的に観察できる理想的な例として三途川カルデラをとりあげ,そのカルデラ内イグニンブライト(虎毛山層)の層序や地質構造,堆積相を記載し,年代測定を行った.その結果,三途川カルデラの噴火史及び地質構造発達史について明らかにした.秋田県南部に位置する三途川カルデラは,カルデラ形成時に堆積したとされる軽石流堆積物(虎毛山層)により埋積される.虎毛山層は主に結晶に富むデイサイト質の火山礫凝灰岩,ブレッチャ,凝灰岩からなる.全体の層厚は1500m以上である.更新世(1.2 Ma;K-Ar法)に相当し,女川から西黒沢相当層間の基盤岩を不整合関係に被覆する.本層は5つの岩相からなる.5つの岩相とは,(1)ユータキシティック組織が発達した塊状無層理の火山礫凝灰岩(emLT), (2)塊状無層理の角礫岩(mlBr), (3)斜交層理が発達した火山礫凝灰岩(xsLT), (4)平行層理が発達した凝灰岩(//sT), (5)遍在的に成層構造を持つ火山礫凝灰岩(dsLT)である.emLTは本層の主体をなし繰り返し分布する.mlBr及びxsLTはemLTの下位に発達し,//sT及びdsLTはemLTの上位と中部にそれぞれ発達する.5つの岩相はシャープまたは漸移的に変化する.これらの岩相の特徴及び接触関係はすべてイグニンブライトの岩相を特徴づけるため,本層はイグニンブライトのシーケンスからなると判断できる.イグニンブライトに先行する降下軽石堆積物が欠如することやイグニンブライトの層厚が1500 mを超えること,本層の分布がカルデラ内に限られることから,本噴火は約1.2 Maにマグマ溜まりの天盤崩壊をトリガーとして発生し,プリニー式噴火フェーズのないイグニンブライトを形成するフェーズから始まったと考えられる.さらにイグニンブライト岩相が繰り返し分布することから,本層は7層の火砕流堆積物(PDC-1 to PDC-7)に識別される.7層の火砕流堆積物の存在より,本噴火で発生した大規模火砕流はwaxingとwaningを繰り返しながら少なくとも7回の火砕流パルスを発生させたと解釈できる.大規模火砕流の給源方向は,イグニンブライト中に発達するデューン構造やインブリケーションの方向から推定でき,北東から南西方向であると考えられる.給源方向にある大鳥谷沢では結晶に乏しいことやmlBrが多く狭在することからも支持される.また,虎毛山層は高松岳周辺を中心に環状に分布し,外側へ急傾斜する.この地質構造は高松岳を中心としたドーム状の隆起構造を示唆する.この隆起構造は,後カルデラ期の再生ドームと考えられ,虎毛山層形成後に発達したと考えられる.
著者
河田 尚孝 磯崎 秀樹 菊井 玄一郎
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

パラメータの最適化は、統計的機械翻訳のパフォーマンスを向上させるために不可欠です。 MERTは標準的な目的関数としてBLEUを使用する最適化ツールです。 しかし、日本語と英語のように語順が非常に異なる言語間の翻訳では、BLEUは人間の判断との相関が非常に低いです。したがって、BLEUの代わりにRIBESのような人手相関の高い評価関数を最適化プロセスの目的関数として使用する方がよい。 本稿では、MERTの目的関数として用いたRIBESの効果を調べ、SMTが原文とは大きく異なる語順を決定する際に、RIBESがBLEUよりも優れていることを見出した。
著者
池田 流弥 安藤 一秋
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

旅行者が土産を選ぶ際,その場所でしか手に入らない土産の需要が高まっている.その理由として,オンラインショッピングサイトで様々な土産が購入できることが挙げられる.しかし,現地でしか購入できない土産情報をまとめたWebサイトやサービスは存在しない.そこで,本研究では,現地でしか購入できない土産の情報を提示するシステムの構築を目的とする.本稿では,ブログ記事から土産の品名および販売店舗名を自動抽出する手法を提案する.そして,実験により提案手法の有効性を確認する.
著者
宮崎 邦洋 村山 菜月 山本 裕樹 牛山 史明 大澤 昇平 松尾 豊
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

サブスクリプション方式のサービスを採用している企業が増えつつある昨今,ユーザ離脱予測はより重要な課題となっている.既存研究では既に多くの機械学習モデルを用いた研究が行われているが,ユーザ離脱予測は時系列データと非時系列データなどの多様なデータ組み合わせて学習させねばならず,それらを上手く組み合わせた学習モデルは十分に研究されていない.一方で,深層学習の技術は依然発達しており,その特徴としては様々なデータとモデルをEnd-to-Endで学習できることが挙げられる.本研究では,ロボアドバイザーのサービスを運営するウェルスナビ株式会社のデータを用い,深層学習を用いたユーザ離脱予測モデルを提案する.具体的には時系列データや非時系列データを一つのモデルで学習させる手法を提案する.実験ではベンチマークとなる既存研究の分類器の精度を上回る結果を得たことで,本手法の有効性が実証された.
著者
鶴田 穣士 岡 夏樹 田中 一晶
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

音楽を用いたコミュニケーション手段として,ジャムセッションというものがある.それを人間と機械の間でも可能としたものがジャムセッションシステムであり,今まで多く研究がなされてきた.ジャムセッションではボーカルがスキャットと呼ばれる歌唱法を用いることがある.本稿では,ユーザの演奏に対してシステムが初音ミクを用いてスキャットを返すという形態のジャムセッションシステムを提案する.また,この提案システムでは,ジャムセッションを通してユーザが好むスキャットの言葉を強化学習することを目指した.提案システムの実装を行い,ユーザが好むスキャットの言葉の学習を確かめた.
著者
橋口健太 田島怜一郎
出版者
サイエンスキャッスル
雑誌
サイエンスキャッスル2014
巻号頁・発行日
2014-12-19

2012年の金環日食では、太陽の周辺減光の研究を行った。周辺減光とは、中心部に比べ周縁が暗い現象である。しかし、月の輝きは周縁まで明るく、お盆に例えられる。これに疑問を持ち、月の輝きについて研究を始めた。色々な月齢の月の写真を撮り、陸地の数箇所を測光した。その地点の太陽光の入射高度、地球への反射高度、方位角を、グノモンを使い実験的に求めた。また、月の地表に例えた紙などの複数の素材を用い、自作の実験装置で、様々な角度で反射実験を行った。これらの測定から月の表土は、紙やすりに似て反射は散乱が多いことが判明した。月の表土であるレゴリスと紙やすりの特徴を比べ、お盆のような月の輝きについて考察を行った。
著者
塩見 雅彦 田部井 隆雄 伊藤 武男 大久保 慎人
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

西南日本の地殻変動場は,フィリピン海プレートの斜め沈み込みによる弾性圧縮変形が支配的である.先行研究におけるGPS変位速度データの解析から,量的には小さいながらも,中央構造線(MTL)を境とする前弧スリバーのブロック運動と,MTL断層面の部分的固着による剪断変形が確認されている.地殻変動場の理解には,これらの定量化と分離が必要である.本研究では,南海トラフ・プレート境界面上の固着分布,前弧スリバーのブロック運動,MTL断層面上の固着分布の同時推定を試みた.推定にはマルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法を用いた.MCMC法は,マルコフ連鎖に基づく極めて多数の反復計算によりパラメータの事後確率分布を確率密度関数として求める手法で,パラメータが高次元であるようなモデルに対しても解を推定することができる.解析には,2004-2009年の期間の近畿から九州へ至る291点のGEONET最終座標解から算出した3次元 GPS変位速度に加え,MTLトラバース稠密GPS観測37点と海底地殻変動観測12点を加えた,合計340点の変位速度を使用する.この変位速度場を,グローバルプレートモデルMORVELを基に,アムールプレート準拠に変換する.深さ5-50 kmのプレート境界面を1000枚以上の三角形要素群で近似し,さらに四国西部から東部に至る長さ約250 kmのMTL断層面を,深さ下限15 km,傾斜角45度の56枚の三角形要素群で表現する.推定するモデルパラメータは,各断層面上のカップリング率と,アムールプレートに対する前弧スリバーのブロック運動のオイラーベクトルである.陸上のGPS変位速度のみから推定した結果をCASE-A,陸上データに海底地殻変動観測結果を加えたデータセットから推定した結果をCASE-Bとした.本研究の特色は,陸域から海域にわたる変位速度データを全て使用し,MCMC法を導入したことによって,前弧スリバーとその境界のより詳細な変動を議論した点にある.解析の結果,深さ15 km以浅のプレート境界面で,CASE-Bの方がAより大きなすべり欠損速度が推定された.CASE-Bではトラフ軸付近まで50 mm/yr以上の値が推定されたのに対し,CASE-Aでは30 mm/yr程であった.一方,15 km以深ではCASE-A,Bともに,類似したすべり欠損速度分布が得られた.土佐湾の深さ15-25 kmのプレート境界面上に50 mm/yrを超える最大すべり欠損速度が推定された.この領域は1946年南海地震(Mw8.1)の主破壊域とほぼ一致し,次の地震に向けてひずみを蓄積している状態であると解釈できる.25 kmより深部では,豊後水道(深さ30-40 km)を除いて,すべり欠損速度が急激に減衰する.豊後水道では,40-50 mm/yrのすべり欠損速度が推定された.この領域では,6-7年間隔で長期的スロースリップが発生し,1回あたり約300 mmの累積すべり量が見積もられている.発生間隔とすべり欠損速度を考慮すると,この領域に蓄積されたひずみは繰り返しスロースリップの発生により解放されていると考えられる.推定された前弧のブロック運動は反時計回りの回転を示し,アムールプレートに対する相対速度は約5-7 mm/yrであった.MTL断層面浅部の固着は一様ではなく,四国東部ではほぼ完全に固着しているのに対し,西部や中部では固着が弱い.MTL断層面の北傾斜構造と固着分布から,MTLの北側に剪断帯が形成されていることが示唆される.本研究により,プレート間固着による地殻の弾性変形やブロック運動を定量的に分離できただけでなく,従来は分離が困難であったMTL断層面の固着による影響も同時推定できたと言える.
著者
高橋佳代
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第56回総会
巻号頁・発行日
2014-10-09

【目的】 本研究の目的は,学校期における体罰経験が自己肯定意識に及ぼす影響を明らかにすることである。体罰は明確に禁止されているにも関わらず継続されてきた。学校現場で体罰が容認され続ける要因の一つに,体罰が子どもに与える影響について明確に示されていないことがあると考えられる。体罰に関しては種々意見があるが,体罰否定論の根拠とされる心理学実験は限られた被験者を対象に行われたものを根拠にしており,学校現場での体罰が子どもの心身の成長に与える影響を検討した研究は少ない。よって,本研究では子どもの健全な人格の形成への影響を理解するため,自己肯定意識(平石,1990)に注目し,体罰経験が自己肯定意識に与える影響を検討する。特に,体罰経験を被害者がどのように捉えたかという体罰に対する個人の認知に注目し検討を行う。【方法】1.調査方法:2013年10~11月,A県の大学生(1年生~4年生)726名に対し,心理学およびキャリア関連の授業後に質問紙の協力依頼をし,その場で配布,回収した。倫理的配慮として回答は任意で無記名であり,希望者に結果をフィードバックする旨を記載した。得られたデータのうち欠損のあるものを除いた655名(男子,458名,女子172名,不明25名)を分析対象とした。2.調査内容:1)体罰経験・体罰目撃経験・体罰加害経験:これまでの学校期における上記経験の有無,態様,被害内容について。2)体罰経験の捉え方:体罰経験後の生活の変化に対する認知2項目。3)体罰容認意識:体罰は学校生活に必要かどうかについて2項目。4)自己肯定意識:平石(1990)の自己肯定意識尺度のうち対自己領域の 「自己受容」,対他者領域の「自己閉鎖性・人間不信」「自己表明・対人的積極性」「被評価意識・対人緊張」の計26項目を使用し,5件法で回答を求めた。 【結果】1.体罰被害体験と加害経験との関連 体罰被害経験×体罰加害状況のχ2検定が有意(χ2(3,N=655)=39.23,p2.体罰被害状況と体罰容認意識の関連 体罰被害状況×体罰容認意識のχ2検定が有意(χ2(2,N=655)=7.02,p3.体罰経験,その捉え方と自己肯定意識との関連 自己肯定意識の各下位尺度を構成する項目の評定値の平均点を尺度得点(「自己受容得点」「自己閉鎖得点」「対人積極性得点」「対人緊張得点」)として算出した。 体罰経験の有無および被害の重症度を独立変数,自己肯定意識の下位尺度得点を従属変数として分散分析を行ったところ,有意差は認められなかった。 体罰経験の捉え方と自己肯定意識との関連を検討するため,体罰経験後に「学校が嫌になった」等ネガティブな変化を認知している群をネガティブ群,「技術・技能が上達した」等ポジティブな変化を認知している群をポジティブ群,双方とも認知している群を葛藤群とし,各群を独立変数,自己肯定意識の各下位尺度得点を従属変数について分散分析を行ったところ「対人緊張得点」において群の効果が有意であった(F(3,327)=3,98,p【考察】 体罰被害経験が体罰加害経験および体罰容認意識と関連することが明らかになった。一方で、自己肯定意識との関連を検討すると,体罰被害経験の有無や被害の重症度と自己肯定意識との関連は示されず、体罰経験の認知が自己肯定意識に影響する事が示された。体罰経験を両価的に捉えている者は対人緊張を高めている可能性が示唆された。