著者
青木 克仁 Katsuhito Aoki
出版者
安田女子大学
雑誌
安田女子大学紀要 = Journal of Yasuda Women's University (ISSN:02896494)
巻号頁・発行日
no.46, pp.1-10, 2018-02-20

プラトンは、利己主義的な個人を道徳に従わせるにはどうしたらいいのか、という問いに答えを見出そうとした。プラトンにとって、民主制に対応する人間類型は、「必要な欲望」と「不要な欲望」という区別がなくなった人間なのである。つまり、自由・平等を謳う民主制には、本来は「不要な欲望」にカテゴライズされるべき欲望を追求する利己主義的個人が跋扈することになるという、プラトンが最も忌み嫌う脆弱性が存在している。こうしたプラトンの目から見れば、堕落した政体である民主制には、人間類型としての利己主義という問題が浮き上がってくる。彼の主著とされる『国家』では、まさに、この「利己主義」の問題が取り扱われている。本論考において、利己主義に対するプラトン的処方箋とはどのようなものだったのか、という問いを扱うが、その処方箋が現代社会においては、うまく機能しなくなっていることを示す。
著者
宮原 辰夫
出版者
文教大学
雑誌
文教大学国際学部紀要 = Journal of the Faculty of International Studies (ISSN:09173072)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.85-117, 2015-07-01

This paper will examine the narrativeness of Islamic dynasties (Saiyid,L?d?,Mughal and S?r) in North India and its architecture using various books, such as“Histry of the Rise of the Mahomedan Power in India” by Ferishta (Persian chronicler,1560-1620),“B?bur-n?ma”of Babur. In other words, it will examine the power and culture of Islamic dynasties in north India, and it will also investigate the succession of Islamic cultue and its blending with the Hindu / Indian cultue.
著者
久保 ゆかり
出版者
東洋大学人間科学総合研究所
雑誌
東洋大学人間科学総合研究所紀要 = The Bulletin of the Institute of Human Sciences,Toyo University (ISSN:13492276)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.133-151, 2019-03

This paper first presents an overview of the typical development of social understanding in early childhood, followed by a review of ASD (autism spectrum disorders) research on social understanding that demonstrates children with ASD have difficulty not with propositional (explicit) mentalizing but with intuitive (implicit) mentalizing. It implies intuitive mentalizing itself is essential for interpersonal understanding in daily life. Based on the implications of ASD research, developmental processes of social understanding in early childhood are reconsidered, and directions for future research on children’s social understanding is discussed.
著者
槙野 文命 Makino Fumiyoshi
出版者
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
雑誌
宇宙航空研究開発機構特別資料 = JAXA Special Publication (ISSN:1349113X)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-SP-12-007, pp.1-210, 2013-03-29

資料番号: AA0061888000
著者
池田 成一
出版者
岩手大学人文社会科学部
雑誌
言語と文化・文学の諸相
巻号頁・発行日
pp.59-77, 2008-03-21

宮沢賢治(以下賢治)が思想的関心を引きやすい文学者であることは誰しも認める所であろう。ここで「思想的関心をひきやすい」とは,賢治を文学者としてだけではなく一人の独自の思想家と考え,彼の思想を再構成しようとする試み,あるいは,特定の思想的立場から彼の作品にアプローチすることによって自らの思想の例証とする試み,あるいはその両者の混合を誘発しやすい作品群や伝記的事実を彼が残したことをさす。そもそも賢治が有名になるにあたって思想家・哲学者である谷川徹三が大きな役割を果たしたが,その後も梅原猛など,思想家・哲学者が賢治について発言する例は多い。また,文学研究者を自認するであろう人々の賢治論でも,現代思想を積極的に援用する例が多いのである。むしろこの傾向は近年強まっているように思われる。その例としては,ポスト・コロニアリズムまたはクレオール主義(西成彦,小森陽一),ソシュールやラカンなど(千葉-幹),ドゥルーズ=ガタリ(岡村民夫),ベンヤミンやアドルノ(中村三春)等があげられよう。さながら賢治は現代思想の実験場となっている感がある。このような文学者として他の例を探せば,ドイツのヘルダーリンが近い存在であろう。ヘルダーリンは彼自身が独自の思想家とみなされる面をもちながら,その文学作品にはヘーゲル的,ハイデガー的,マルクス的,ベンヤミン・アドルノ的等,多様な思想的解釈がされているのである。
著者
独立行政法人 国立女性教育会館
巻号頁・発行日
2019-05-29

平成27年に民間企業に入社した新規学卒者を、5年間追跡するパネル調査の第一回調査~第四回調査データを用いて、入社1年目から4年目にかけて生じた変化を分析しました。(令和元年5月刊行)
著者
矢口 芳生
雑誌
福知山公立大学研究紀要 (ISSN:24327662)
巻号頁・発行日
no.1, pp.5-49, 2018-03-31

ここ数年、「地域経営」や「地域経営学」という用語は広く使われ、一般化してきている。厳密に使われているわけでもない。「地域再生」や「地方創生」という政策課題が広く社会化する動きと軌を一にしている。政府も様々な局面において「地域経営」の視点を強調し、これに関係する学会の動きも活発化している。既存大学においても、2016 年度から地域創生・再生、地域経営に関係する学部として再編する動きが目立った。たとえば、地域デザイン科学部(宇都宮大学)、国際地域学部(福井大学)、芸術地域デザイン学部(佐賀大学)、地域資源創成学部(宮崎大学)がある。高知大学は2015 年度に「地域協働学部」を新設した。福知山公立大学は、「地域経営学部」をもつ全国初の大学として2016 年4 月に開学した。今や「地域経営」や「地域経営学」はあまりに多種多様に使用され、混乱さえ感じられる。未だに確定的な定義はない。本稿では、「地域経営」や「地域経営学」の定義に関し、一定の整理を行うことを目的とする。第一に、「地域経営」等の用語が頻繁に使用されるようになった2000 年以降の動向と、地域活性化論議が活発化した社会的な背景を明らかにすることである。第二に、その用語を提起した政府機関および関係組織や学界および研究者の動向と、提起した内容を整理する。本稿で扱う「地域経営」や「地域経営学」に関係する組織および内容等は、次の3 つの分野である。①関係省庁:地方分権、地域再生や地方創生、人口減少・超高齢社会等を問題にする内閣府、総務省、国土交通省等の関係省庁、また、政府に関係する民間組織、地方自治体等であり、これら組織が発信する地域経営・地域経営学。②学界:日本学術会議経営学委員会「地域経営学の研究・教育のあり方検討分科会」の見解、また青森公立大学発の地域経営学会が発信する地域経営・地域経営学、並びに地域活性化の問題を扱う地域活性学会における地域経営・地域経営学。③研究者個人:地域経営・地域経営学に関係する図書・論文のなかで研究者個人が提起・展開する地域経営・地域経営学。これら分野における議論を整理するためには、一定のルールが必要である。本稿では、関係組織や学界並びに関係図書等における「地域経営学」の定義(対象・課題と方法等)、発生・定着の経緯と背景、学術・科学上の位置づけ、各分野における到達点に関して整理する。続いて、「地域経営学」の今日的意義および今後果たすべき役割を明らかにしつつ、「地域経営学」の定義の吟味を行う必要がある。定義、意義や役割が明確になれば、大学における教育研究のあり方、また地域社会への貢献のあり方にも大きな影響を与えるであろう。この課題は、最終章の拙稿に譲る。
著者
小栗 賢章 三武 裕玄 杉森 健 佐藤 裕仁 長谷川 晶一
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.170-173, 2020-08-22

身体的なインタラクションを行う自律キャラクタの行動・動作の開発過程で求める表現に適うようになるまでには,テストプレイを行い,試行錯誤による微調整が必要である.しかし,複数人を相手とするテストプレイでは開発の現地に必要な数のテストプレイヤーを集めることは容易であると限らない.そこで本稿では,遠隔・複数人のテストプレイヤーがVR機器を用いてテスト実行中のキャラクタプログラムに参加し,キャラクタの動作を即時確認・調整することを可能とする共有VRフレームワークを提案・実現した.