著者
田辺 けい子 水尾 智佐子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.402-410, 2020-06-25

助産師は正常分娩のエキスパートと称されますが,分娩の医療化の最たる無痛分娩の下では,専門性を発揮することができないのでしょうか。時代と共に女性の出産観が変わってきている今,本対談では,無痛分娩を通して「助産」の本質を考えてみます。
著者
弟子丸 元紀 宮川 太平 鈴木 高秋
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.787-790, 1977-07-01

I.はじめに 頭部外傷後遺症による性格変化に関しては,すでに多数の報告がなされている。しかし,長期経過例の病理組織学的検討を行つた報告は少ない3,5,13,21)。特に性格変化との関係についての検討は非常に少ない5)。 本例は受傷後,7年4カ月を経過し,性格変化として躁うつ的状態を示し,死後剖検により病理所見は,前頭葉眼窩面に限局した皮質挫傷巣のみであつた。そこで本稿では,性格変化と病理所見との関連性について考察を行つた。
著者
和田 裕子 末長 敏彦 橋本 修治
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.147-151, 2003-02-01

要旨 ジアゼパムやクロナゼパム治療に抵抗性のgeneralized spasmによるのけ反り発作に対して,ヒト免疫グロブリン(IVIG)静注療法が奏効した抗GAD抗体陽性のstiff-person症候群の男性例を報告した。本例は58歳時に右下肢と腰背部の筋硬直で発症し,ジアゼパム6mg内服で軽快していた。63歳時に再び,両下肢と腰部の筋硬直,のけ反り発作,左下肢に限局したpainful spasmが出現した。ジアゼパム18mg/日とクロナゼパム2.0mg/日の内服でpainful spasmは消失し,筋硬直も軽度改善したが,のけ反り発作に対しては無効であった。IVIG療法開始3日目にはのけ反り発作は消失し,つづいて筋硬直も改善し,10日目には階段昇降が可能になった。本例のように難治性ののけ反り発作を有する例に対してもIVIG療法は有用であると考えた。
著者
上田 敏
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.515-521, 1980-07-10

はじめに 障害の受容(acceptance of disability)はリハビリテーションにおける「問題解決の鍵となる概念(キイ・コンセプト,key concept)」の一つである.客観的(外形的)にはリハビリテーションのゴールが達成されていながら,障害者(患者)本人の障害の受容が達成されていないために結局リハビリテーションが完結しないという場合が少なくない.リハビリテーション・カンファレンスの場でも「最大の問題は本人による障害の受容だ」という所までは全員の意見が一致しても,「では一体だれが,どのようにして障害の受容を援助するのか」という実際の方法論となると,いくら話し合っても結論がでず,結局「もう少しPT・OTを続けて様子を見よう」というところに落着いてしまうこともしばしばである. このように重要な障害の受容であるが,これを正面からとりあげた論文は内外ともに意外に少く,部分的に触れているものを含めても,筆者が直接に接することができたのは20篇のみであった1~20).これらの中で理論的にもっとも詳しく包括的なのはWright2)の古典的な名著の策5章“Value Changes in Acceptance of Disability”であり,教科書的によくまとまったものとしてはHerman5),高瀬10),古牧17)などがある.また最近の中司15),松田他19),蕪木他20)はこの問題への実証的なアプローチとして価値高いものである. 筆者は心理学または精神医学の専門家ではないが,リハビリテーション医としてこれまで多くの身体障害をもつ患者・障害者に接し,障害の受容に到る苦痛に満ちた過程に触れ,また可能な限りその過程を促進し,援助しようとつとめてきたし,その過程で持った感想を述べたこともある11,14).また昨年,筆者の所属する東大リハビリテーション部の全職員の参加する勉強会のテーマに障害の受容を選び,数ヵ月にわたって,いくつかの症例の検討を通じて,障害の受容にいたる心理的ダイナミックスの法則を理解することと,その援助の上でリハビリテーション・スタッフの果たすべき役割と注意について議論を重ね,得るところが大きかった.特に長期にわたる抑鬱から短期間のうちに劇的な立直りを示し,障害の受容のめざましい成功例だと担当者たちは考えていた一症例が,角度を変えて見直してみると,実は抑鬱期にある患者に自立を「強要」し,それが十分達成されないことに対して,批難がましい感情をもつことによって一歩誤まれば非常な危険な瀬戸際まで患者を追いつめていた可能性があり,我々にもう少し深い洞察力と患者の苦しみに対する共感力とがあれば抑鬱の期間をはるかに短かく切り上げて,数か月も早く受容に到達させ得ていたかもしれないということの認識(と反省)に到達しえたことは我々にとって一つの啓示といってもよいものであった. 本論文では文献的考察にそのような経験や反省をもまじえつつ,障害の受容の問題をよりよく理解し,よりよく対処することを目的として種々の角度からの考察を試みたい.
著者
梶村 政司
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.152-158, 1996-03-15

1.はじめに 「アジア競技大会広島1994」(以下アジア大会)は,記録的な猛暑と異常渇水の状況のなかで開催される運びとなった.漕艇やカヌーの会場へも渇水の影響が現れ,一時「競技は不可能か」と思わせる低水位の川やダムの現状があった.しかし,これまでの準備と願いの甲斐あって,首都以外の地方都市で初めて開催されることとなった.地方での開催であるが故に,国内はもとよりアジア諸国関係者からも多くの注目を集めていた.また,わが国においては昭和33年の東京大会に次いで2度目の開催である. 今回,診療所医務班が参考にしたのは,1985年神戸で行われたユニバーシアード大会であった.これまで多くの国際スポーツ大会が開催されていたが,いずれも理学療法士の参加は非公式なものであった.
著者
田中 啓規 寺岡 睦 佐伯 昌彦
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.436-444, 2016-08-15

要旨:作業に根ざした実践2.0(Occupation-Based Practice 2.0;以下,OBP 2.0)は,クライエントの作業機能障害の種類を評価し改善しつつ,クライエントを取り巻く環境で生じる信念対立に対処していく方法論である.本報告では,子育てに困難さを抱える脳性麻痺のあるクライエントの母親に対して,OBP 2.0を用いた評価と介入を実施し,発達領域の作業療法におけるOBP 2.0の臨床有用可能性を考察した.その結果,子育てに重要な役割を持っていた母親に対する作業機能障害の種類と信念対立への評価と介入が,適応的な子育ての形成に有用であった.脳性麻痺のあるクライエントの母親に対してOBP 2.0を用いた評価と介入を実施し,良好な結果を得たので報告する.
著者
大谷 稔男
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.18-22, 2013-04-10

要約 インスリンを同一部位に繰り返し注射するとアミロイドが沈着して結節を生じることがあり,インスリンボールとも呼ばれる.インスリンがアミロイドを形成する過程では,インスリン分解酵素の機能低下などが関わる可能性がある.インスリンボールは常色~褐色調の結節で,ときにlipohypertrophyとの鑑別を要する.最近われわれは,1型糖尿病患者の上腕に生じたインスリンボールを経験した.臨床像から皮膚悪性腫瘍も疑ったが,病理組織学的所見からアミロイドーシスと診断した.インスリン注射部位(腹部,上腕,臀部,大腿)に結節をみた際は,インスリンボールも念頭に皮膚生検を行い,診断を確定することが肝要である.インスリンボールへの注射は疼痛が少なく好んで行われる傾向があるが,インスリンの効果は顕著に減少する.診断後は内科医とも連携して,注射部位のローテーションを患者に指導する必要がある.
著者
三浦 一陽
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1154-1158, 1997-11-10

精液は大別すると2つの構成成分から成り立っている.精液のそのほとんどは精漿といわれる液体成分であり,残りの細胞成分である精子は全精液の1%にも満たない. 精漿は以前より副性器の機能や精子の運動機能に影響すると考えられており,精漿に対する多くの研究がなされてきた.本稿では精漿成分が精子運動においてどのように妊娠に重要な役割を果たすのか,あるいは精漿が精子運動に対して,いかに抑制的に作用するのかなどについて,筆者らの多少の経験と文献的考察をもとに述べるが,精漿に関しては,その詳細はいまだに不明な点が多いのが現状である.
著者
竹迫 直樹
出版者
南江堂
巻号頁・発行日
pp.941-944, 2017-10-01

過粘稠症候群はまれな病態ではあるが,診断が重要であり血漿交換により速やかに症状が改善する.免疫グロブリンの異常を伴う疾患においてはこのまれな病態も潜んでいるかもしれず,眼底所見・神経学的所見などにより早期に治療に入ることが重要である.
著者
鈴鹿 有子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.41-48, 2010-04-30

Ⅰ はじめに インピーダンスとは抵抗のことで,インピーダンスオージオメトリーとは音のエネルギーが外耳,鼓膜,中耳へと伝達される際に,何らかの抵抗で伝わりにくくなる。その抵抗(音響インピーダンス)を測定する検査法である。 またインピーダンスオージオメトリーは鼓膜や中耳伝音系の異常にとどまらず,内耳や後迷路,顔面神経の情報も与えてくれる。他覚的検査であるので,信頼性も高く,短時間ですみ,純音聴力検査が不可能な乳幼児でも測定可能である。全自動式の機器が多く,手技的に難しい検査ではないが,正しい検査の心得は必要である。普及率も高く,以前から聴力検査とともに耳鼻咽喉科の診療に欠かせないものになっている。 現在インピーダンスオージオメトリーでできる検査は大きく分けて①ティンパノメトリー検査と②耳小骨筋反射検査である。 インピーダンスオージオメトリーの原理 音は外耳から入って,鼓膜,耳小骨,中耳を経て内耳に伝えられる。その経路で音エネルギーに対しての抵抗を音響インピーダンスという。インピーダンスオージオメトリーとは外耳からの音を与えて,跳ね返ってきた音を測ることで,どれだけの音が反射されたか,つまりどれだけの音が鼓膜や中耳を通っていったかを測定する。インピーダンスは小さいほうが抵抗なく音が伝達されたことになる。もちろん鼓膜,耳小骨を経るので,その分での抵抗があるのが正常であるが,鼓膜インピーダンスはきわめて小さいので,大部分の音は通過する。もし鼓膜インピーダンスが大きいということであれば,鼓膜が厚く,硬くなっていることを意味し,鼓膜のみでなく中耳腔に滲出液が貯まった場合は病態が著明に反映されるので,中耳インピーダンスともいう。外耳道から入った音のエネルギーは,耳小骨へ伝わり,耳小骨や耳小骨筋を動かすのにも消費され内耳へ伝わる。ということでインピーダンスオージオメトリーでは鼓膜,耳小骨,耳小骨筋,中耳腔,内耳の情報を得ることができる。
著者
岩下 明徳
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.424, 1996-02-26

消化管壁の全層,すなわち粘膜,粘膜下層,固有筋層,漿膜(外膜)のすべての層にわたる炎症を全層性炎症と言う.この言葉は,炎症性腸疾患inflammatory bowel disease(IBD)と総称されるCrohn病(特に大腸Crohn病)と潰瘍性大腸炎の病理組織像の差異を表現する際によく使用される.例えば,Crohn病の炎症反応はリンパ球集簇を主とする全層性炎症を特徴とし,潰瘍性大腸炎のそれは,急性電撃型を除き,粘膜と粘膜下層に限局する表層性炎症(superficial inflammation)を特徴とするごとくである. 大腸Crohn病は上述したように全層性炎症を示すので全層性大腸炎(transmural colitis)とも呼ばれる.なお,全層性炎症のみられる他の腸疾患として,腸結核,単純性潰瘍,腸型Behçet病,虚血性腸炎などが挙げられる.一方,主として粘膜と粘膜下層に限局する表層性炎症を示す腸疾患には非特異性多発性小腸潰瘍症がある.
著者
清水 誠治 富岡 秀夫 小木曽 聖 石田 英和 眞嵜 武 池田 京平 上島 浩一 横溝 千尋 高島 英隆
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.423-430, 2018-04-25

要旨●ヒト腸管スピロヘータ症(human intestinal spirochetosis;HIS)の自験例43例について臨床的検討を行った.41例は生検組織またはEMR標本のHE染色で偽刷子縁の所見により,2例は内視鏡検査時に吸引した腸液の直接塗抹で診断された.症状の有無別では無症状例が31例,有症状例が12例であった.生検は主にポリープやびらんから採取され,組織診断は低異型度管状腺腫13例,過形成性ポリープ8例,炎症性変化7例,過形成性結節4例であった.有症状12例中9例は他の疾患が判明し,3例はアメーバ性大腸炎を合併していた.他の原因疾患がみられなかった3例の内視鏡所見は,右側結腸を中心とした半月ひだの浮腫と発赤であった.その内2例では慢性下痢がみられており,腸液の直接塗抹でHISと診断され,遺伝子解析でBrachyspira pilosicoli(BP)が同定された.抗菌薬による治療は1例で行われたのみで,他の症例は無治療で症状が改善していた.HISについての文献的考察を行った.
著者
松本壮吉 尾関百合子
出版者
医薬ジャーナル社
巻号頁・発行日
pp.127-134, 2014-05-25

結核はAIDSやマラリアと並ぶ世界三大感染症であり,2013年には860万人の発症と130万人の死亡をもたらしている。WHOは2050年までに結核の根絶を目指しているが,それには新薬に加え,効果的な新ワクチンが必要であろう。我々は結核の病原体の源泉である潜在性結核について,その機構を解析してきたが,潜在性結核の90%が終生結核を発症しないという事実は,ワクチン開発のよりどころになると考える。現行の結核ワクチンBCG(Mycobacterium bovis bacille Calmette-Guérin)は小児の粟粒結核や結核性髄膜炎に対して顕著な効果をもつ一方,結核発症の多くを占める,内因性再燃に起因する成人型肺結核に対する効果は低調である。BCGは生ワクチンで,投与後も長期にわたって宿主内で生存することから,効果は持続すると考えられてきたが,実際には投与後,時間経過とともに減衰する。我々はマウスモデルにおいてもBCGの防御効果が経時的に低下することを見出している。本稿では,結核ワクチン開発に関する現状と潜在期の抗原を利用した新しい結核ワクチンの開発に向けた私たちの取り組みについて紹介する。
著者
寺岡 睦 京極 真
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.249-258, 2014-06-15

要旨:本論では,作業に根ざした実践(occupation-based practice;以下,OBP)の新理論であるOBP 2.0の理論と実践を示した.従来のOBPは作業機能障害の解決に取り組むが,信念対立によって制約される限界があった.本論で示すOBP 2.0は,作業機能障害の種類と信念対立解明アプローチを理論統合し,ひとつの理論で2種類の問題に対応できるように構築した.また本論では臨床実践におけるOBP 2.0のモデル提示を行った.OBP 2.0は,作業療法の新理論として有益であると考えられた.
著者
永田 哲也
出版者
南江堂
巻号頁・発行日
pp.1279-1283, 2019-06-01

Summary▪2016年に脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する核酸医薬であるnusinersen sodium(Spinraza)が,本疾患に対する治療薬として初めて米国食品医薬品局(FDA)に承認された.その後,本邦や欧州においても承認され,2018年には世界40ヵ国の6,600人の患者に使用されている.▪2016年にはDuchenne型筋ジストロフィー1)の迅速承認や,2018年にはトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーに対する核酸医薬品2種類が承認されている.▪このように,神経・筋変性疾患の治療法として核酸医薬は非常に注目を浴びている.▪本稿では核酸医薬品の種類,SMAに対するnusinersen sodiumの作用機序および臨床試験の結果を中心に概説する.
著者
津本 忠治
出版者
金原一郎記念医学医療振興財団
巻号頁・発行日
pp.184-191, 1993-06-15

筋収縮,細胞内情報伝達など,生体内のほとんどすべての細胞機能が微量のCa2+によって制御されていることはよく知られている。本特集では,この制御機構の新しい問題点が多くの観点から解説されると思われるが,本稿ではシナプス可塑性のCa2+による制御機構について最近明らかとなってきた問題点を述べたい。 脳内の神経細胞(ニューロン)間の接点であるシナプスは,一定の入力によってその伝達効率を変えることが知られている。たとえば,特定の入力後伝達効率が長期持続的によくなったり(シナプス長期増強),あるいは悪くなったり(長期抑圧)する。現代の神経科学研究者の多くは,このようなシナプス伝達効率の変化が,記憶や学習あるいは環境に対する脳機能の適応的変化の基礎にあると考えている。
著者
安井 はるみ
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.18-24, 2006-01-10

いま,なぜクリニカルVEなのか 医療費総額が31兆円を超え,医療制度改革のなかでも医療費削減は大きな課題であり,厚生労働省が2005(平成17)年6月に実施した第15回医療経済実態調査の結果速報報告では,一般病院の赤字傾向は続いている1)。いま,看護管理者や施設管理者には,医療におけるコストを,「収入」「支出」,そして「アウトカム(結果)」としてどのようにとらえ,どんな戦略を立て戦術をどう展開するのかが問われる時代に突入している。病院や施設の存続のためには,患者や家族,地域社会,自施設に従事している医療従事者が期待している満足度向上,経営面での適切な費用対効果,新たなサービスによる他施設との差別化による収入増など,課題は山積している。 昨今の医療界の傾向として,在院日数短縮化などによる効率性重視型の「コストカット」が経営陣から迫られる一方で,継続的な質改善,質管理,質保証などを実施してきた。いずれもこれまで看護管理者が医療現場でのマネジメントを効果的に展開するために取り組んできたことであるが,新人看護職員の離職率増,患者高齢化に伴う療養上の世話の増加などにより,医療現場がかかえる課題はますます膨張し,そこで働く者にとっては疲弊感を感じざるを得ない。さらに,患者中心の質の高い医療や看護を提供することが本来の目的であるにもかかわらず,コスト削減・医療事故防止活動などに追われ,日々の業務のなかで,患者中心とは,看護の目的とは,自分自身のマネジメントのめざすものとは何なのかをじっくり考える暇もなく,目の前の業務をこなすことに忙殺されていると感じているのは筆者だけではないのではないだろうか。
著者
黒木 優一郎 上原 なつみ 中西 徹
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.53-54, 2017-04-01

56歳の男性.現病歴 2か月前から1日数行の下痢としぶり腹とが出現した.発熱や食欲低下はなく様子をみていたが,3週前からときどき血便が混じるため来院した.
著者
田中 千都 四本 かやの 田中 究 橋本 健志
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.189-197, 2015-04-15

要旨:強迫性障害の中でも重度の強迫性緩慢は,薬物療法や行動療法が十分な治療効果を示さず,社会的孤立や著しい生活機能の低下につながると言われている.症例は強迫性緩慢が著しくADLに長時間を要し言語的コミュニケーションが困難な若年女性であった.機能的自立度の改善を目的とし,生活に困難をもたらしているADLと対人面の具体的な活動に焦点化し能動性の改善を図る作業療法を行った結果,強迫性緩慢は軽減しADLと対人面は改善した.また,その後5年のフォローアップ期間も症状再燃することなく機能は保たれ地域生活を送っている.以上から,重度強迫性緩慢の患者には遂行困難な活動に対して能動性の改善を図る作業療法が有用であると示唆された.
著者
新宮 尚人 落合 美穂 河合 桃子 竹辺 雅美 安藤 晶仁
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.253-261, 2003-06-15

要旨:長期入院患者に対して,社会復帰プログラムの特徴を取り入れた,オープングループの教育セッションを試みた.そしてその役割は,①社会復帰へ向けて必要な技術を学ぶ前段階として,入院生活での対人トラブルを回避したり,病気についての理解や障害とうまく付き合う方法を見つけていくきっかけとなる,②オープングループという場の構造は,患者ニーズの把握と相互理解の場として機能している,③他職種との連携により,患者のトータルな問題評価とそれに基づいた効果的なリハビリテーションを展開できる可能性を含んでいる,という3点にあるように思われた.