著者
二瓶 直登
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻
巻号頁・発行日
2009-03-23 (Released:2012-03-01)

報告番号: 甲24662 ; 学位授与年月日: 2009-03-23 ; 学位の種別: 課程博士 ; 学位の種類: 博士(農学) ; 学位記番号: 博農第3372号 ; 研究科・専攻: 農学生命科学研究科応用生命化学専攻
著者
植村 邦彦
出版者
関西大学経済・政治研究所
雑誌
多元的経済社会の展開
巻号頁・発行日
pp.19-48, 2003-03-31

一つの妖怪が世界をうろついている。「帝国」という妖怪が。すでに1997年には、極東の片隅でもこう言われていた。「帝国の到来をめぐる予言が今日ほどさかんだったことはない。しかもそれは、一地域における帝国の誕生ではなく、世界帝国とも言うべきものの出現である(1)」。この「世界帝国」の表象について、『帝国とは何か』の編者の一人である増田一夫は、次のように説明している。「われわれの目前で成立しつつあるかもしれないとされる帝国は、武力制覇によって成立するのでもなく、中心的な核もなく、あくまで匿名であり続けると言われている。このイメージは政治よりも経済、経済よりもコミュニケーションの分野で実際に起こっている事態を想起させる。ピラミッドや樹[ツリー]状の組織ではなく、無限に接続し合い絡み合うウェブもしくはネットワーク。あらゆる地点からのランダム・アクセスの可能性を備えた開かれたシステム。根茎[リゾーム]状の組織。これはドゥルーズとガタリの著作『資本主義と分裂症』において提示されたイメージにほかならない(2)」。そのように述べたうえで、増田は次のように結論を保留している。「そして『帝国』。その到来の予感は、一部の人々の期待を代弁しているにすぎないのかもしれない。……しかし『帝国』は、たんに、国民国家が弱体化してゆくなか、その崩壊の後に来る事態を『混沌』と呼ぶのを忌避して用いられる名にすぎないのかもしれない(3)」。このような叙述からわかるように、最近現れた「帝国」という言説は、イマニュエル・ウォーラーステインによって提起された資本主義「世界システム」論やその上部構造としての「インターステイト・システム」論に取って代わる、新しい世界認識の概念として論じられているのであって、従来の「帝国主義」論や「帝国主義の問題を『意識』に即して見ること(4)」をテーマとする「帝国意識」論とは問題関心が基本的に異なると考えるべきであろう。本論文は、このような意味での「帝国」論の最新の成果であり、2000年にアメリカで出版されるとすぐに大きな話題を呼んだマイケル・ハートとアントニオ・ネグリの共著『帝国(5)』を取り上げ、その内容を紹介したうえで、その理論的な有効性について考えようとするものである。
著者
矢野 正隆
出版者
東京大学大学院経済学研究科
巻号頁・発行日
2012-11 (Released:2013-07-04)

第38回全国歴史資料保存利用機関連絡協議会全国大会, 2012年11月8日~9日, 広島県民文化センター 日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究(B)「文化資産としてのマイクロフィルム保存に関する基礎研究:実態調査からの実証的分析」(課題番号:24300094)研究代表者:小島浩之(東京大学大学院経済学研究科)
著者
廣森 直子
出版者
青森県立保健大学研究推進・知的財産センター研究開発科雑誌編集専門部会
雑誌
青森県立保健大学雑誌 (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-11, 2012-12

現在、高い専門性が求められつつも、十分な労働条件や社会的地位が得られていない「専門職」も多く、そのような傾向は女性が多くの割合を占めている専門職でより顕著ではないかと考える。本研究では、司書と栄養士を事例として取り上げ、専門職として女性がいかにキャリア形成しているのか、またそれを支える専門性とは何かについて、専門職として働く女性と、資格を取得しながらも専門職として働いていない女性(潜在専門職)を対象にインタビュー調査を行い、実証的に明らかした。キャリア形成過程の分析からは、資格の社会性の低さや職場における職業能力形成の重要性、非正規化によるスキルアップやキャリアアップの困難といった状況がある。専門性についての分析からは、専門性が発揮できる職場であるかどうかという職場に規定される側面、組織内や周辺からの認識によって規定されている側面があり、あいまいで相対的な専門性であるといえる。個人の、または集団としての専門性を保障するためのフォーマル/インフォーマルな専門職集団の役割も重要である。In recent years, there are many "professional occupations" which are lacking in labor conditions and social status in spite of being an occupation which requires a high level of expertise. This trend is more distinct in occupations which are dominated by women. In this study, conducted through interviews of a librarian and dietician, it is explained how women in these occupations develop their careers and their expertise which supports it. An analysis of their career development process shows that the workplace qualifications of women in "professional occupations" have low social status and importance of career skill development in their workplace is not recognized. In addition to the above, non-regular staff have fewer opportunities to improve their skill set and have fewer chances for career advancement. An analysis of their skills shows that procedures implementedby the workplace and a lack of understanding of their skills by colleagues and fellow professionalslimits skill development. Therefore, formal and informal groups of "professionals" within theseoccupations are very important to reinforce both skill and career development of women in these "professional occupations".
著者
蔀 関月
出版者
京都 : 菱屋孫兵衛
巻号頁・発行日
1797-05

寛政9年(1797)5月,刊 26.3×18.4cm 5巻8冊 一: 53丁, 56コマ 二: 39丁, 42コマ 三: 44丁, 47コマ 四: 49丁, 52コマ 五上: 40丁, 43コマ 五下: 31丁, 34コマ 附録一上: 36丁, 39コマ 附録一下: 35丁, 38コマ 序: 藤波二位季忠卿 画: 蔀関月
著者
片岡 直樹 Kataoka Naoki
出版者
新潟産業大学東アジア経済文化研究所
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.1-17, 2012-07

長谷寺銅板法華説相図の銘文に関しては従来多くの研究がなされてきたが、いくつかの文字については論者によって解釈が異なるものがある。本小論では金石文の研究においては銘文の原字を忠実に読み解く作業がなにごとにも優先するという立場から、あらためて銅板銘中の文字の校訂をはかり、あわせて全文の通釈を施しておくことにしたい。また、近年では文字の彫刻技法の面でも先学によるすぐれた研究がなされており、その内容は本銅板の制作背景を考察する上で看過できない要素を含んでいる。先学の指摘を踏まえて若干の私見を述べてみたい。
著者
"肥後 伸夫"
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学水産学部紀要=Memoirs of Faculty of Fisheries Kagoshima University (ISSN:0453087X)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.56-67, (Released:2016-10-28)

"In the fishing operated with the use of the towing nets of the same construction, the yielded catch-differentials may, reasonably, be attributed to the difference in the towing-forse of the trawlers. Basing on the materials obtained by the subsidiary trawlers belonging to the Fish-meal fleets operating on the Bering Sea in 1963 and in 1965, the possible relationship between the catches of the eastern net and the towing-force of the trawler which is to be denoted by the resultant of the Gross tonnage and the Horse Power of the main engine was put under investigation, with the following results obtained : 1) The increase of the Horse Power of the main engine of the trawler seemed to have been coincided with the responsive increase of the catch per one unit of the towing net, which was to be observed most remarkably at the good-catching period. 2) Each increase in the total tonnage seemed to have been accompanied by the increase in the catch per one unit of the towing net, though this was not so remarkable as in the above mentioned case. 3) The towing speed might be regarded as one of the chief factors in the formation of this relationship between the catch and the Horse Power of the main engine, but the versatility of the towing speed, easily influenced by the net-size, sea-condition and the catches make necessary the execution of the spot investigations."
著者
玉井 建也
出版者
コンテンツ文化史学会
雑誌
コンテンツ文化史研究 (ISSN:1883874X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.22-34, 2009-04 (Released:2010-03-15)

アニメなどのコンテンツ作品のファンが作品の舞台となった場所を訪れる「聖地巡礼」を歴史的に考察した。アニメ『かみちゅ!』の舞台となった尾道をフィールドとして考察した。近世期では歌枕として認識されていた尾道であるが、次第に近代になるとそのような認識は薄れ、社寺参詣や眺望の良さが強く認識されるようになっていった。戦後以降は映画の街として栄え、訪れる観光客だけでなく、受け入れる地域社会もそれに対応していくようになった。近年はアニメやマンガの舞台としても取り上げられるようになり、特に『かみちゅ!』ファンが御袖天満宮を訪れ、アニメの絵を奉納する行為が数多く見られた。しかし、そのような行為はファンたち内部のみでの自己満足というべき循環作用であることを意識せねばならない。
著者
大堀 裕美
出版者
日本語コミュニケーション研究会
雑誌
日本語コミュニケーション研究論集 (ISSN:21865655)
巻号頁・発行日
no.3, pp.25-34, 2014-02-01 (Released:2017-03-10)

■平成25-28年度科学研究費助成事業 研究成果報告書:基盤研究(C)研究課題番号25370529「発話機能を中軸とする日本語配慮表現データベースの構築」(代表 創価大学 山岡政紀) ■平成25-28年度科学研究費助成事業 研究成果報告書:基盤研究(C)研究課題番号25370576「日本語の配慮表現に関する学習者コーパスの作成と対照研究」(代表 群馬大学 牧原功)
著者
広瀬 裕子
出版者
専修大学社会科学研究所
雑誌
社会科学年報 (ISSN:03899519)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.193-211, 2014-03-10 (Released:2014-06-26)

本稿は、2000 年代に日本で繰り広げられた学校の性教育に対する批判キャンペーンに対する政府対応の経緯を考察し、文部科学省の官僚的なルーティーンに徹した対応が、高揚していた性教育批判の言説を限定化する緩衝剤として機能した様子を浮き彫りにする。2002 年の国会審議から始まった学校の性教育に対する組織的な批判は、中央および地方レベルの動きが呼応する大掛かりなものであった。東京都では性教育実践に関わって行われた教員処分が訴訟にまで発展するというケースも発生した。こうした性教育に対する組織的批判は、性教育の授業実践に萎縮ムードを生んだ一方で、学校の性教育に関する初めての全国調査の企画を具体化させ、それまで明らかにされていなかった性教育実践の実態が明らかにされることにもなった。得られたデータが示すのは、学校の性教育に対する批判は必ずしも社会に広い支持を得ていたわけではないということであった。性教育の処遇の再検討を始めた文部科学省は、性教育批判を精力的に進めていた自民党を与党の動きと呼応しながらも、中教審に検討をゆだねるなど通常のルーティンに則った対応に徹し、結果的に批判を沈静化させる緩衝材として機能した。
著者
武井 正教 鈴木 正弘 茨木 智志
出版者
歴史教育史研究会
雑誌
歴史教育史研究 = Journal for Historical studies in History Education (ISSN:13487973)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.87-103, 2017 (Released:2018-04-02)

日時:2007年8月31日 場所: 東京都国立市 聞き手: 鈴木正弘・茨木智志
著者
亀田 晃尚
出版者
法政大学公共政策研究科『公共政策志林』編集委員会
雑誌
公共政策志林 = 公共政策志林 (ISSN:21875790)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.133-146, 2018-03-24 (Released:2018-07-09)

中華人民共和国(以下「中国」という。)にとって,エネルギー不足は大きな問題となっている。国連海洋法条約上,中国は尖閣諸島周辺の石油資源の主権的権利を確保するためには,尖閣諸島の領有権を主張しなければならない。中国が経済的・安全保障的な高いリスクを背負ってまで,尖閣諸島に対する領土的野心を露わにすることは考えがたく,中国の尖閣諸島に関する領有権主張は石油資源を確保することを主眼としたものであると考えられる。中国は尖閣諸島周辺を含む東シナ海に800億バレルという莫大な石油埋蔵量を見込んでいる。米国防総省も中国の見方を裏付ける。一方,日本は32億バレルの埋蔵量しか見込んでいない。日本が中国の石油埋蔵量の認識についてどう捉えるかは,日本が中国に対してどのように対応していくかに直接関わってくる。尖閣諸島をめぐって,中国を相手に力で対抗しようとするリアリズム的対応を行えば,安全保障のジレンマに陥り,不測の事態を招きかねない。中国は尖閣諸島の領有権を棚上げしての共同開発を提唱しているが,日中双方の信頼関係が十分に醸成されていることが前提となる。したがって,いま必要なのは,中国が尖閣諸島周辺を含む東シナ海に莫大な石油資源を期待しているという現実を認識した対応であり,エスカレーション・ラダーを上げないための対話による中国への自制呼びかけや海上保安機関による冷静な現場対応に加えて,経済関係や人的・文化的交流の拡大といったリベラリズム的な不断の努力である。そうした努力の積み重ねによって日中の信頼関係は深く醸成されていくに違いない。その先に,尖閣諸島をめぐる問題の解決が見えてくるであろう。