著者
前原 裕之 野津 湧太 野津 翔太 行方 宏介 本田 敏志 石井 貴子 野上 大作 柴田 一成
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

Recent space-based observations (e.g., Kepler mission) enable us to investigate the nature of “superflares” on solar-type stars (G-type main sequence stars). The bolometric energy of superflares ranges from 1033 erg to 1036 erg which is 10-104 times larger than that released by a typical X10 class solar flare. Most of the stars with superflares show large-amplitude photometric variations associated with the stellar rotation which suggest that the stars with superflares have large starspots. Spectroscopic studies of superflare stars revealed that the chromospheric activity correlates with the amplitude of brightness variations.We analyze the correlation between starspots and superflares on solar-type stars using the data from the Kepler mission. Our analysis shows that the fraction of the stars showing superflares decreases as the rotation period increases and as the amplitude of photometric variations, which is thought to correlate with the area of starspots, decreases. We found that the fraction of superflare stars among the stars with large starspots also decreases as the rotation period increases. This suggests that some of the slowly-rotating stars with large starspots show a much lower flare activity than the superflare stars with the same spot area and rotation period.Assuming simple relations between spot area and life time and between spot temperature and photospheric temperature, we compared the size distribution of large starspots with the area of >104 MSH (micro solar hemispheres; 1 MSH=3x1016 cm2) on slowly-rotating solar-type stars with that of sunspot groups. The size distribution of starspots shows the power-law distribution and that of larger sunspots lies on the same power-law line. The size distribution of spots from the Kepler data suggests that the average appearance frequency of the starspots with the area of >3x104 MSH on the solar-type stars with the rotation period similar to that of the Sun is once in a few hundred years.We also found that the frequency-energy distributions for flares originating from spots with different sizes are the same for solar-type stars with superflares and the Sun. These results suggest that the magnetic activity on solar-type stars with superflares and that on the Sun is caused by the same physical processes.
著者
野津 翔太 野村 英子 Walsh Catherine Eistrup Christian
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

原始惑星系円盤(以下、‘円盤’) 内では凍結温度の違いにより、分子種(e.g., H2O, CO, HCN, CO2)ごとにスノーラインの位置は異なると考えられる。その為、円盤ガス・ダスト中のC/O比は、中心星からの距離に応じて変化すると考えられる。例えばH2Oスノーラインの外側では、多くの酸素がH2Oの形でダスト表面に凍結する一方、炭素の多くはCOなどの形で円盤ガス中に留まるので、ガス中でC/O比が大きくなる。また、近年太陽系外ガス惑星大気のC/O比が見積もられ始めているが、観測されたホットジュピターの中にはC/O~1 のガス大気を持ち、円盤外側での形成・大気獲得を示唆するものも存在する (e.g, Madhusudhan et al. 2011)。この様に円盤と惑星大気のC/O比を比較する事で、惑星大気獲得・移動の過程に制限を加えられる事が検討されている (e.g., Oberg et al. 2011, Eistrup et al. 2016)。これまで我々は、円盤の化学反応ネットワーク計算と放射輸送計算の手法を用いて、円盤内のスノーライン位置とC/O 比の分布や、それらを同定するのに適した分子輝線(赤外線~サブミリ波)の調査を進めてきた (e.g., Notsu et al. 2016, ApJ, 827, 113; 2017, ApJ, 836, 118)。今回我々は、まずGuillot et al. (2010, A&A, 520, A27) の手法を用いて、中心星からの照射で決まる系外ガス惑星大気の放射平衡な物理構造を計算した。その上で、系外惑星大気の化学構造と惑星形成環境の関係を探るべく、中心星からの距離、およびC, O, Nの元素組成比などを様々に変えた場合について、系外ガス惑星大気の化学平衡計算を行っている。その結果、大気温度が減少するとCH4の組成が増加する傾向が見えた。また同様の大気物理構造の場合でも、C/O比が太陽の値に比べて高くなると、大気下部でCH4, HCN などの組成が増加する事などが見えてきた。講演では、現状の計算結果を紹介した上で、観測で得られた系外ガス惑星大気の化学構造との関連についても簡単に議論する予定である。
著者
渡辺 満久
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

1.はじめに下北半島北西部においては、南へ傾動するような地殻変動が進んでおり、MIS 5eの旧汀線高度は大間岬付近では約60m、約10km南方の佐井周辺では約20mまで低下している(渡辺ほか、2012、活断層研究、No.36)。このような高度変化は、四国の室戸岬に見られるものに匹敵し、日本では最大級のものである。また、大間岬周辺には、間欠的隆起が起こっていることを示す隆起ベンチも認められ、その高度も北ほど高い。このような地殻変動をもたらす原因として、大間の北方海域から下北半島北西部の地下へと連続する、低角度の活断層の活動が想定されている(渡辺ほか、2012)。大間原子力発電所は、このような地殻変動が進行している地域の北端部(最も隆起が大きい地域)において建設が進められようとしている。発表者らが上記の事実を指摘するまで、事業者(電源開発)と当時の評価組織は、異常な隆起現象を認識していなかった。現在、事実関係は概ね認めてはいるが、その原因は定常的で緩慢な隆起運動であり、地震性隆起を否定している。しかし、過去80年間の水準点測量結果によれば、そのような地殻変動は進行していないことが明らかにされている(渡辺ほか、2012)。本発表では、大間原子力発電所の敷地内には、多数の「将来活動する可能性のある断層等」が存在することを報告する。現地調査には、平成25~27年度科学研究費補助金(基盤研究(C)研究代表者:渡辺満久)の一部を使用した。2.将来活動する可能性のある断層等大間原子力発電所建設敷地には、MIS 5eとMIS 5cに形成された海成段丘面が分布している。これらの段丘堆積物の基盤を成すのは、後期中新統の易国間層である。易国間層中には、S-10断層・S-11断層・cf-1断層などが確認でき、後期更新統の海成段丘堆積物を変形させている。S-10断層は、電源開発がシームS-10と呼んでいるものであるが、これに沿って変位が生じていることは明らかであり、ここではS-10断層と呼ぶ。S-10断層は、易国間層中の層面すべり断層であり、MIS 5cの段丘堆積物を切断して(変形させて)いる。複数の活動履歴が読める可能性がある。 S-11断層は、S-10断層と同様に、電源開発がシームS-11と呼んでいる断層である。S-11断層も、易国間層中の層面すべり断層であり、MIS 5cの段丘堆積物を切断して(変形させて)いる。電源開発は、変位が生じていることは認めているものの、それらは岩盤の強風化部の変状であるとしている。ただし、そのメカニズムは不明である。cf-1断層は、易国間層を切断する断層である。MIS 5c以降には活動していないことは確認されているが、MIS 5e~MIS 5cの間の活動の有無は確認されていない。また、cf-1断層は、上述のS-10断層を切断している。なお、電源開発の図面では、易国間層上部を切断するcf-1断層が、上部層と下部層の境界で突然消滅するように描かれている。その他、易国間層を切断する、E29断層・E33断層などがあり、MIS 5eの段丘堆積物を切断して(変形させて)いる。3.地盤の安定性上記したように、大間原子力発電所敷地内には、多数の「将来活動する可能性のある断層等」が存在している。S-10は、原子炉予定地の直下、10~20mの位置にある。いくつかの施設は、S-11やE-29などの断層を掘削して建設するように見える。コントロール建屋は,cf-1断層の直上にある。このような不安定な地盤に原子力施設を建設することは合理的であるとは思えない。原子力施設は、理学的に健全な土地を選び、工学的に安全に建設すべきである。なお、電源開発の図によれば、断層の上盤を除去すれば施設への影響を取り除ける、という考えが読み取れる。本当にそれでよいのだろうか?
著者
野津 翔太 野村 英子 本田 充彦 廣田 朋也 秋山 永治 Walsh Catherine Millar T.J.
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

原始惑星系円盤(以後、"円盤")において、中心星近傍では高温のためH2Oはダスト表面から脱離し気体となるが、遠方では低温のためダスト表面に凍結する。この境界がH2Oスノーラインであり、ダストの合体成長で惑星を作る際、H2Oスノーラインの内側では地球型の岩石惑星が形成される。一方外側ではダストの総量が増加する。このため重力で周りのガスを大量に集める事が可能となり、木星型のガス惑星が形成される (Hayashi et al. 1981, 1985)。そのためH2Oスノーラインを観測的に同定する事は、微惑星・惑星形成過程や、地球上の水の起源を考える上で重要である。太陽質量程度の前主系列星(T Tauri星)周りの円盤の場合、円盤赤道面におけるH2Oスノーラインは、中心星から数auの位置に存在する。しかし、撮像観測によってこの様な円盤のH2Oスノーラインを検出する事は、空間分解能が足りない為に困難である。一方で円盤はほぼケプラー回転している為、円盤から放射される輝線はドップラーシフトを受け広がっている。この輝線のプロファイル形状の解析から、輝線放射領域の中⼼星からの距離の情報が得られる。そこで本研究(Notsu et al. 2016, 2017)では、数値計算の結果に基づき、H2O輝線プロファイルの観測から円盤内のH2O分布、特にH2Oスノーラインを同定する方法を提案する。具体的にはまず円盤の化学反応ネットワーク計算を行い、H2Oの存在量とその分布を調べた。この際、中心星にT Tauri星 (Tstar~4,000K, Mstar~0.5Msun) とHerbig Ae星 (Tstar~10,000K, Mstar~2.5Msun) を考えた2つの円盤物理構造モデルを用いた。するとH2Oスノーラインの内側の円盤赤道面付近だけでなく、円盤外側の上層部高温領域や光解離領域でもH2Oガスの存在量が多い事が分かった。またその計算結果を元に、円盤から放出されるH2O輝線のプロファイルを多数の輝線について計算した。その結果、アインシュタインA係数(放射係数)が小さく(~10−6−10−3 s−1)、エネルギーが比較的高い(~1000K) 輝線のプロファイルを高分散分光観測で調べる事で、H2Oスノーラインを同定できる可能性がある事が分かった。そして、この様な特徴を持つH2O輝線が、中間赤外線からサブミリ波までの幅広い波長帯に多数存在し、その強度は波長が短い程大きい事が分かった。更に、Herbig Ae円盤の方がT Tauri円盤に比べ中心星の温度が高くH2Oスノーラインの位置が中心星から遠い事から、スノーラインを同定しうるH2O輝線の強度が大きくなる事が分かった。本発表ではこれらの解析結果を紹介した上で、今後のALMA観測でのH2Oスノーラインの同定可能性について議論を行う。また、最近新たにALMA band 5 領域のH2O輝線の計算も行っており、その結果も併せて紹介する予定である。参考文献:Notsu, S., et al. 2016, ApJ, 827, 113 Notsu, S., et al. 2017, ApJ, 836, 118
著者
山崎 新太郎 片岡 香子 長橋 良隆
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

沿岸域や浅水域では過去に大地震に伴う数百から数千m2以上の大規模な崩壊や地すべりが発生している.これは水で飽和した地質が大地震により液状化したり破壊されたりすることにより強度を失うことで発生するものと考えられる.しかし,近年の大地震により大規模に沿岸域が崩壊・喪失した事例や,その痕跡として浅水域に地すべり地形が確認されたものは,液状化の発生事例数やその範囲に比べると明らかに小さい.沿岸域や浅水域における大規模崩壊や地すべりの発生には,加えてさらに特異な条件が必要であることが示唆される.沿岸域には人口が集中し,もし沿岸―浅海域における大規模崩壊の条件を理解することができれば,特に地震時の危険性に注意を払うべき場所が明確になるだろう.本講演でとりあげる福島県・猪苗代湖では,その沿岸に地すべりの地形であることを示す馬蹄形滑落崖と,それから伸びた舌状地形が複数認められる.この状況の存在は猪苗代湖が前述のような大規模崩壊を発生させやすい特異な条件を備えていることを強く示唆し,それを地質学的かつ地盤工学的に詳しく検討すれば,前述した地すべりの発生条件の解明に繋がるものと思われる.筆者らは,2015年と2016年の2カ年に渡って3.5 kHzサブボトムプロファイラによる音響地質構造探査を,のべ120 kmに渡って猪苗代湖全域を網羅するように実施した.この音響地質構造データと,2012年に福島大学が猪苗代湖湖心部で湖成堆積物を貫通するように採取した約28m長のコア(INW2012コア)との対比を行った.その結果,湖底における斜面の安定性と地すべりについて特に得られた知見を以下に3つ列挙する.1)猪苗代湖の湖心より南部の水域において湖形成以降の湖底堆積物の全体の音響地質断面画像が得られた.同水域の底質は全域に渡って一貫した成層構造であり,層内に水平に連続して認められた強反射層の一部はINW2012コアに認められた広域テフラ層準と一致していた.また,湖底堆積物底面には湖形成以前の砂礫層と位置する反射が認められた.この湖心から南部の水域では湖成層が安定的に堆積してきたものと思われる.一方で湖の北部では湖底最表層での音響の減衰が大きいため下方の構造を認識できなかった.おそらく,北部では磐梯山の火山活動及び長瀬川の流入による砂礫成分の流入が活発であるため最表層での音波の反射と減衰が大きいと思われる.従って北部に認められる大規模な地すべり地形は粗粒の堆積物の下位に存在すると思われる.2)得られた音響地質断面画像では,ほぼ全てに渡って,無構造な堆積物であることを示す音響的透明相が頻繁に認められた.これらは猪苗代湖の湖成層内では,流体またはガスの噴出がこれまでに複数繰り返されてきたことを示唆し,湖成層がこれまでに複数の地震の影響を受けてきたことを示すと考えられる.特にその密度は湖心部で約13 m下から湖成層底部までの区間で高い.この深度は浅間火山起源のAs-Kテフラ層準(18, 100年前;廣瀬ほか2014)より1 m下である.この深度は約2万年前に相当し,この時期に猪苗代湖の周辺で大地震が発生した可能性がある.3)猪苗代湖南部を起源とする長さ2.8 km,最大厚さ約25 mの大規模な湖底地すべりを示す地質構造が発見された.この地すべりは前述のAs-Kの約1 m下に存在し,この湖底地すべりの主たる運動は,塊状移動体の滑動によるものである.地すべりは0.8度の傾斜を持つすべり面で発生し,下方末端には約1 kmに渡って複数のスラストと褶曲を伴って衝突変形している様子が観察できた.この地すべりは音響探査により地層の変形構造とすべり面が追跡できた貴重な例であり,今後,この地すべり体を直接掘削し,その地質と構造および材料的な地震に対する反応性の面から分析すれば,沿岸域や浅海域で崩壊・地すべりが発生する条件の解明に迫れるものと思われる.<文献>廣瀬孝太郎・長橋良隆・中澤なおみ(2014)福島県猪苗代湖の湖底堆積物コア(INW2012)の岩相層序と年代.第四紀研究,日本第四紀学会,157-173.
著者
加納 靖之
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

歴史地震の研究において,ある地震の有無(実在・非実在)や発生日時の認定は,もっとも基本的な作業といえる.しかしながら,文書の作成時から現代にいたる伝来(特に書写)の過程や,現代における解読や解釈などの各場面において,日時の取り違えが発生しうる.ここでは,規模が比較的小さい地震もふくめ,日時の取り違えのある地震を取りあげ,修正案を提示する.日時の取り違えは,次のような場合に発生すると考えられる.(1)史料そのものが違っている場合,(2)自治体史などの編集時に間違えた場合,(3)史料集の編集時に間違えた場合.(1)の史料そのものが違っている場合に該当するのは,天保二年の会津の地震である.これについては,史料が1点だけの場合,間違いの可能性に気づくことは困難である.史料の記述そのものに矛盾がないかを丁寧に検討することにより,あるいは,同じ日に複数の史料があれば,相互に矛盾がないかを検討することにより,間違いをみつけることができる可能性がある.(2)の自治体史などの編集時に間違えた場合に該当するのは,飛越地震の際の『天保一五年(弘化元年)御林山内取調箇所附帳』の扱いである.これは(1)と同様に記事そのものから間違いに気づくことは難しい.しかしながら,原史料にもどって検討できれば,記述を訂正することができ,それにより地震についての正しい情報を得られる可能性がある.(3)の史料集の編集時に間違えた場合には,宝永地震についての『南牟婁郡誌』の記事,享保の『月堂見聞集』の京都の地震,享和の畿内・名古屋の地震,文政の中部・近畿の地震,天保の佐賀の地震,善光寺地震の際の越後高田の記事が該当する.日記の省略部分を補う際に生じた年月日の取り違えが多い.本文はきちんと解読できており,場合によっては,史料集の他の部分に同文で収録されているにもかかわらず.編集の際に,いわば勘違いにより別の日付のところに入ってしまったものもあると考えられる.日付に関しては,干支でかかれることも多く,年月日との対応を確認することで間違いを防ぐことができるだろう.年月日の取り違えによって,単に発生年月日が間違って認定されるだけでなく,場合によっては実在する地震が複製されて,実在しない地震として認定されてしまうことがある.『月堂見聞集』に書かれた複数の地震や1847年2月15日の越後高田の被害のような例である.これらの間違いを放置すると,地震活動度を過大評価してしまう可能性がある.特に,無被害の中小地震もふくめた有感地震の活動度を検討するような場合,結果に大きく影響する可能性がある.
著者
岩渕 弘信 岡村 凜太郎 Sebastian Schmidt
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

Estimation of cloud properties such as the cloud optical thickness and effective droplet radius is usually based on the independent pixel approximation (IPA) assuming a plane-parallel, homogeneous cloud for each pixel of a satellite image. Prior studies have pointed out that horizontal and vertical inhomogeneities produce significant errors in the retrieved cloud properties. The observed reflectance at each pixel is influenced by the spatial arrangement of cloud water in adjacent pixels, which necessitates the consideration of the adjacent cloud effects when estimating the cloud properties at a target pixel. We study the feasibility of a multi-spectral, multi-pixel approach to estimate the cloud optical thickness and effective droplet radius using a deep neural network (DNN), which is a kind of machine-learning technique and has capabilities of multi-variable estimation, automatic characterization of data, and non-linear approximation. A Monte Carlo three-dimensional radiative transfer model is used to simulate the reflectances with a resolution of 280 m for large eddy simulation cloud fields in cases of boundary layer clouds. Two retrieval methods are constructed: 1) DNN-2r that correct IPA retrievals using the reflectances (from 3D simulations) at 0.86 and 2.13 µm and 2) DNN-4w that uses the so-called convolution layer and directly retrieve cloud properties from the reflectances at 0.86, 1.64, 2.13 and 3.75 µm. Both DNNs efficiently derive the spatial distribution of cloud properties at about 6×6 pixels all at once from reflectances at multiple pixels. Both DNNs outperform the IPA-based retrieval in estimating cloud optical thickness and effective droplet radius more accurately. The DNN-4w can robustly estimate cloud properties even for optically thick clouds, and the use of a convolution layer in the DNN seems adequate to represent three-dimensional radiative transfer effects.
著者
片岡 章雅 塚越 崇 百瀬 宗武 永井 洋 武藤 恭之 デュルモンド コーネリス ポール アドリアーナ 深川 美里 芝居 宏 花輪 知幸 村川 幸史
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

原始惑星系円盤内において合体成長中のダストのサイズを観測的に測定することは惑星形成の理解を進める上で重要である。我々は、従来とは全く独立な手法として、ミリ波偏光観測によるダストサイズ制限を理論的に提案した。これは、ダストの熱放射が別のダストによって再び散乱されることによっておこる偏光が、輻射場の異方性のために観測されることを利用する。我々は、実際にALMA望遠鏡を用いて原始惑星系円盤 HD 142527 を観測し、後期段階の原始惑星系円盤からのミリ波における偏光を初めて検出した。更に、偏光ベクトルの向きから、我々が提唱した散乱偏光の証拠を捉えることに成功した。このことから、ダストの最大サイズは150ミクロン程度であることがわかった。この一連の研究は惑星形成過程におけるダスト成長に対する制限が飛躍的に向上することを示唆しており、今後のALMA偏光観測による惑星形成研究の更なる盛り上がりが期待される。
著者
齊藤 雅典 岩渕 弘信 Yang Ping Tang Guanglin King Michael Sekiguchi Miho
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

Microphysical properties and ice particle morphology of cirrus clouds are important for estimating the radiative forcing associated with these clouds. Many satellite measurements allow us to estimate the cloud optical thickness (COT) and cloud-particle effective radius (CER) of cirrus clouds over the globe via multiple retrieval methods such as the bi-spectral method using visible and near-infrared cloud reflectivities, the split-window method using thermal infrared brightness temperatures and the unconstrained method using lidar signals. However, comparisons among these retrievals exhibit discrepancies in some cases due to particular error sources for each method. In addition, methods to infer ice particle morphology of clouds from satellite measurements are quite limited. To tackle these current problems, we develop an optimal estimation based algorithm to infer cirrus COT, CER, plate fraction including horizontally oriented plates (HOPs) and the degree of surface roughness from the Cloud Aerosol Lidar with Orthogonal Polarization (CALIOP) and the Infrared Imaging Radiometer (IIR) on the Cloud Aerosol Lidar and Infrared Pathfinder Satellite Observation (CALIPSO) platform. A simple but realistic ice particle model is used, and the bulk optical properties are computed using state-of-the-art light-scattering computational capabilities. A rigorous estimation of the uncertainties related to the surface properties, atmospheric gases and cloud heterogeneity is performed. A one-month global analysis for April 2007 with a focus on HOPs shows that the HOP fraction has significant temperature dependence and therefore latitudinal variation. Ice particles containing many HOPs have small lidar ratio due to strong backscattering. The lidar ratio of cirrus clouds has a negative correlation with the temperature where the cloud temperature is warmer than −40℃, for which the median HOP fraction is larger than 0.01%.
著者
田中純夫 辻田知晃 佐渡幹也 西田敬志
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第57回総会
巻号頁・発行日
2015-08-07

Ⅰ 目的 昨年の発表ではBaron-CohenらのEmpathizing-Systemizing理論に基づいて,「男性脳」の特性を示すものは回避型の愛着の得点が有意に高いことを報告した(田中・佐渡・西田,2014;西田・田中,2014)。 今年度は特に成人前期までに内的作業モデルを通して形成された愛着スタイルに着目して,自閉症スペクトラムの特性とどのように関連するのかを探ることを目的とする。Ⅱ 方法1対象:首都圏の大学に在学する大学生225名(男性104名,女性121名,平均年齢19.7)2期間:2014年7月初旬3質問紙の構成:(1)対象者の属性:性別,学年,年齢等からなる。(2)一般他者版成人愛着スタイル尺度(Brennan, 1988):下位尺度は「見捨てられ不安」18項目,「親密性の回避」12項目からなり合計30項目で構成される。(3)内的作業モデル尺度(戸田, 1988):成人の内的作業モデルの質を評価するための尺度である。下位尺度は「安定型」「アンビバレント型」「回避型」の3つからなり,各6項目の合計18項目で構成される。(4)自閉症スペクトラム指数(Autism-SpectrumQuotient, Baron-Cohen, 2001以下「AQ」とする):下位尺度は「社会的スキル」「注意の切り替え」「細部への注意」「コミュニケーション」「想像力」の各10項目からなり,合計50項目で構成される。(5)AS困り感尺度(山本・高橋,2009):自閉症スペクトラムの行動特徴を有する学生の日常生活における支援ニーズの把握を目的としており,合計25項目で構成される。Ⅲ 結果・考察 成人前期の愛着スタイルと自閉症スペクトラムとの関連を検討するために,成人の愛着を測定する「一般他者版成人愛着スタイル」および「内的作業モデル」と自閉症スペクトラムを測定する「AQ全体」と「5下位尺度」および「AS困り感」との間で相関係数を算出した(Table1)。主な結果は以下の通りである。○一般他者版成人愛着スタイルの下位尺度「見捨てられ不安」「親密性の回避」の双方が「AQ全体」および「社会的スキル」「コミュニケーション」という対人関係の側面との間に明確な正相関が示された。○AQ尺度の全般および「AS困り感」は,内的作業モデルの「安定型」との間では負相関を示し(女性の方がより明確に関連している),内的作業モデルの「アンビバレント型」「回避型」とでは正相関を示した。安定した愛着形成は定型発達の基盤となりうること,また発達的な弱点を補填しうる可能性が示唆される。(本研究は,平成26~28年度日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(C)26380954(研究代表者:田中純夫)の助成を受けて実施した調査の一部を使用している。)
著者
島崎 邦彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

或る経過を辿ることから、日本の原子力発電と地球科学界との関係についての討議材料を提供したい。筆者は2014年9月に原子力規制委員を退任した後、震源の規模を表す地震モーメントと断層面の形状、すなわち長さや面積との関係(以下では、その例示として入倉・三宅(2001)式をあげ、(ア)式とよぶ)について調査を行った。国交省による日本海の「最大クラス」の津波(日本海における大規模地震に関する調査検討会, 2014)が、武村(1998)式ではなく(ア)式を用いて決められたからである。原子力発電所の基準津波の設定には通常、武村式が用いられるので、なぜ(ア)式なのかという疑問を抱いた。最大の問題は、これらの経験式が地震後に得られたパラメター間の関係を示しているにも関わらず、地震発生前の地震モーメント推定に使われていることである。また、西日本に多い垂直な断層では、断層面積から(ア)式によって地震モーメントを推定すると、他の式と比べて小さな値となる。地震発生前に得られるパラメターを用いた場合には、過小評価となることがわかった(島崎, 科学, 86(7), 0653, 2016)。2015年のJpGUでこれらの結果の一部を筆者が発表したところ、大飯原子力発電所3, 4号機運転差止請求の控訴審で原告側がその結果を引用し、(ア)式を用いたため基準地震動が過小評価されていると主張した。これに対し、被告側は断層の捉え方が全く異なるもので、主張は不適切であるとした。議論の対象となっている断層はFO-A〜FO-B〜熊川断層と呼ばれ、国交省の「最大」津波の断層モデルF53に対応する。断層F53の地震モーメントが過小となっているという筆者の2015JpGUの結論は、大飯原発の基準地震動の断層モデルにも適用される。2016年6月2日筆者はこの旨、陳述書を裁判所に送った。この報道により原子力規制委員長らは筆者との面談を求め、その結果、6月20日の規制委員会で(ア)式からの地震モーメント推定をせずに、大飯原発の強震動再計算を行うこととなった。7月13日の規制委員会で再計算結果が示され、基準地震動の範囲に収まっているとし、この問題は打ち切られた。筆者が検討したところ、提示された資料には計算結果を担保すべき比較対象が含まれていないこと、不確かさの考慮がされていないことなどの不備があり、これらを考慮すると基準地震動を超える結果が予想され、これを公表した。二度目の面談後、規制委は20日、27日の委員会で検討し、再計算は無理なパラメター設定で行われたとして事実上取り消し、もとのままで問題ないとした。2016年10月の地震学会では熊本地震の断層パラメターについて多くの講演が行われた。地震発生前に震源断層を推定することは困難であり、地震本部の強震動予測手法で「レシピ」の(ア)、すなわち地震前に推定された震源断層面積から(ア)式により地震モーメントを推定すると過小評価になるが、「レシピ」(イ)、すなわち断層長から松田(1975)式で地震モーメントを推定する方が実際に近い値となることを纐纈(2016, 地震学会S15-06)は示した。大飯原発では、基準地震動設定のために行われた詳細な調査結果に基づいたとして「レシピ」(ア)を用いている。地震本部では6月10日に公表した強震動予測手法(「レシピ」)について検討が行われ、12月9日に次のような修正が公表された。「レシピ」(イ)の説明が、「地表の活断層の情報をもとに簡便化した方法で震源断層を推定する場合」から「長期評価された地表の活断層長さ等から地震規模を設定し震源断層モデルを設定する場合」へ、「レシピ」(ア)の説明が、「過去の地震記録などに基づく震源断層を用いる場合や詳細な調査結果に基づき震源断層を推定する場合」から「過去の地震記録や調査結果などの諸知見を吟味・判断して震源モデルを設定する場合」へ。『週刊東洋経済』(2017.1.21)によると、規制庁の岩田順一安全規制管理官付管理官補佐は「誤解を持たれないように補足が加わっただけで、中身はほとんど変わっていない」ととらえている。
著者
石橋 克彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

●はじめに: 地震の脅威を仮に地震動に限っても,原子力規制委員会による新規制基準は,原発の地震安全性の確保に関して極めて不十分である.原発の地震対策は,福島原発事故後に抜本的に再構築されるべきだったにもかかわらず,基本的に昔ながらの狭義の耐震設計とそのための「基準地震動」に矮小化されているからである.したがって,ある原発が新規制基準を満たしても(審査に合格しても),その原発の地震安全性は保証されない.しかも現在は,審査が甘く,新規制基準すら満たさずに再稼働しつつある.本発表では,新規制基準の枠内での基準地震動(以下Ss)の技術的問題点にも言及するが,より根元的に,基準地震動に替わるべき新たな想定地震動の概念を提案する.●新規制基準でのSs の問題点: 規制委員会規則第5号および「同規則の解釈」および関連審査ガイドが規定するSs と,実際に新規制基準適合性審査で承認されたSs は,年超過確率でみたとき,原発の安全目標である10-4 (炉心損傷頻度)〜10-6 (重大事故による大量放射能放出)に比べて著しく過小評価である.「震源を特定せず策定する地震動」には旧原子力安全委員会以来の方法論的欠陥があるし,「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」では,活断層の長さから地震モーメントを求める式の良否など以前の問題として,一般に活断層が地下の震源断層を一意的には示さないことが根本的に重要である.なお,松田 (1975) の式が今でも使われているが,石橋 (1998) 以来指摘している問題があるし,松田 (1998) で改訂もされている.また,演者が旧安全委の耐震指針改訂の際に提案した続発大余震の考慮が新規制基準に入っていないのも問題である.●狭義の耐震設計用基準地震動から「深層防護用地震動」へ: 原発事故による放射線災害から人と環境を守るための基本的考え方は「深層防護」(安全対策の多段階設定)であり,新規制基準もそれが基本だとしている.そうであれば,原発の地震安全性を確保するための地震動は,これまでのように第1層の異常運転の予防,第2層の異常運転の制御,第3層の事故を想定範囲に収める制御(ここまでが重大事故SAの防止)における設備・機器の耐震設計のためのSs として考慮するだけでは不十分である.第4層のSAの制御と影響緩和においても当然考慮されなければならない.すなわち,1万〜100万年に1度の地震に対して特定重大事故等対処施設(免震重要棟,予備電源・注水設備,可搬型設備など)や発電所内の道路なども機能を損なわないことを,厳重に確認しなければならない.九州電力川内原発を例にとれば, 水平最大加速度 540 Gal のSs-1も,同 620 Gal のSs-2も,短周期成分だけで振動継続時間が短く,米国で重視されている累積絶対速度CAV (Cumulative Absolute Velocity;佐藤, 2015) も極めて小さい.南海トラフ巨大地震が内閣府 (2012) の想定か,それ以上の規模で起これば,川内原発における短周期から長周期までの地震動の加速度,速度,変位,継続時間が第4層の設備・施設・作業を破綻させる可能性は高い.したがって,第1層から第4層までに適用される広帯域の「深層防護用地震動」(Earthquake Ground Motion for Defense in Depth, EGMDD) とでもいうべきものを新たに想定し,それに対して各層の健全性を確認する必要がある.さらに,深層防護の第5層(SAが制御できずに放射性物質が大量放出された場合の所外での緊急対応) が,(津波と地殻変動を別としても)EGMDDによって阻害されないことが,原発の総合的な地震対策の最後の砦として必要不可欠である.●国民が納得できる「深層防護用地震動」の策定を: ある原発において人々の安全と安心が得られる地震動(Ss であれEGMDDであれ)がどのようなものであるかは,地震学・地震工学によっては答が出せず,Weinberg (1972) が述べたようにトランス・サイエンスの問題である.その決定は規制委の守備範囲を超える.理学・工学専門家による検討過程,工学的対応可能性,経営的判断,住民の要求といったものをすべて持ち寄り,全関係者の討論によって,あるレベルで合意できるか,合意できずに操業をやめるか,結論を導くべきであろう.そのような場として,例えばフランスで相当程度に機能しているCLI(Commission Locale d'Information;地域情報委員会;例えば, 菅原・城山, 2010)のような仕組みをいっそう拡充・確立することが考えられる.このような取り組みをしなければ,福島原発事故を上回るような「原発震災」の再発を防げないだろう.
著者
佐藤 達樹 千木良 雅弘 松四 雄騎
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

2016年4月16日に熊本県熊本地方を震源とする地震(Mw 7.0)が発生し,最大震度7を観測した.震度6強の強い揺れに見舞われた阿蘇カルデラ西部地域では,多くの斜面崩壊が発生した.テフラからなる斜面で発生した斜面崩壊は,緩傾斜斜面で発生し,また,長距離流動した.さらに,これらの崩壊のすべり面の形成された層準にはいくつかの種類があり,調査を行った崩壊地においては,風化した軽石層にすべり面を形成したもの(軽石の崩壊)が最も多く確認され,黒味を帯びた火山灰土層にすべり面を形成したもの(火山灰土の崩壊)が次いで多く,風化した火山灰層やスコリア層にすべり面を形成したものも確認された.そこで,本研究では軽石層および火山灰土層にそれぞれすべり面を形成した崩壊に着目し,これらの崩壊メカニズムを明らかにするために崩壊地の地形・地質的特徴,各層の鉱物組成および物性を検討した.​ 調査地域の基盤は玄武岩から流紋岩までさまざまな組成をもつ溶岩流や火砕岩から構成され(小野・渡辺,1985),テフラに厚く覆われている.渡辺,高田(1990)によると火山灰土(Volcanic soil)は色調によって分類可能であり,本研究では黒色を呈する黒ボク(Bl),黄褐色を呈する赤ボク(Br),そして,両火山灰土の中間の色調を示す暗褐色火山灰土(Blackish Brown Volcanic soil, BlBr)の3つに分類した.また,調査地域で最も広く分布する軽石は草千里ヶ浜軽石(Kpfa)と呼ばれ,約30000年前に草千里ヶ浜火口から噴出した(宮縁ほか,2003). 軽石層または火山灰土層にすべり面をもつテフラ斜面の崩壊には,共通してすべり面付近にハロイサイトが存在した.軽石の崩壊において最も多くすべり面が形成された軽石層は,草千里ヶ浜軽石(Kpfa)層であり,そのすべり面は風化により粘土化した層に形成された.火山灰土の崩壊においてはBlBr層に最も多くすべり面が形成され,崩壊地内にすべり面の露出する箇所には乾燥亀裂が発達しており,高含水の粘土層がすべり面となったことが分かる.さらに,火山灰土にすべり面を持つ崩壊地にはKpfaをはじめとする明瞭な軽石層が存在しなかったことから現段階では,Kpfa層がテフラ斜面の崩壊において最もすべり面形成層となりやすく,Kpfa層がない場合にBlBr層にすべり面が形成された可能性が考えられる.Kpfa層がない理由の可能性としては,もともと堆積しなかったか,堆積の後に地すべりによって取り去られたことが考えられる.堆積しなかったとすると,その理由としては斜面が急すぎたこと,あるいは軽石の給源からの供給が少なかったことが考えられる.
著者
王 功輝 土井 一生 釜井 俊孝 後藤 聡 千木良 雅弘
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

During the 2016 Kumamoto earthquake, numerous landslides had been triggered in Minamiaso Village. Most of the landslides originated on steep slopes, whereas some of them occurring on gentle slopes were fluidized and the displaced debris travelled long travel distance, resulting in causalities and severe damage to many houses on the downslope. In this study, we examined the geological features of these fluidized landslides occurring on gentle slopes, and performed both in-situ direct shear tests and dynamic ring shear tests on the soils taken from the sliding surface. During the tests, the samples were prepared at different initial water contents, and dynamic tests were performed by applying cyclic loadings with regular frequency and amplitude of shear stress, and also by coseismic loading referred from seismic motion recorded in a seismic station nearby. Based on these results, we finally analyzed the possible initiation and movement mechanisms of these fluidized landslides.
著者
森田 裕一
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

1.はじめに 前回の1986年噴火から30年経過した伊豆大島は,1990年代後半から山体の膨張が始まり,現在も続いている.長期的なマグマ蓄積により,次の噴火の準備を行っていることが明らかである.一般に,このようにマグマの蓄積が進んでいる等の情報に基づく噴火の時期の予測が極めてあいまいな長期的な予測と,噴火直前に起こる極めて多数の地震発生,大振幅の火山性微動,大きな地盤変動の観測に基づき数時間から数分後に火山噴火が切迫していることを知る直前予測は比較的容易である場合が多い.しかし,防災対策上もっとも有用な数年から数ヶ月先の噴火活動を予測する中期的な予測は容易ではない.これまでの中期的な予測は,過去の噴火前に観測された事象が順を追って起こることを追認することで行われるが,噴火に至る過程の理解なしに行えば,過去と少し異なる噴火が発生したときには全く機能しない.つまり,次回の伊豆大島の噴火で大事なことは,過去の噴火事象を踏まえつつ,新たに視点に立って噴火に至る現象を把握することが何よりも大切であろう.2.温故:過去から学ぶもの 前回1986年の伊豆大島噴火の明瞭な前兆としていくつかの観測事実が報告されている.このうち噴火前兆として最も信頼できるのは,全磁力と電気伝導度の変化,火口内の熱異常,火山性微動の観測であろう.全磁力の変化は,約4年前から始まり1989年初頭から加速した.また,同時期に山頂火口を挟む浅部で電気伝導度が大きく変化した.噴火の約3ヶ月前から山頂火口内の熱異常域の拡大が見られた.火山性微動は噴火の4ヶ月前から始まり,最初は間歇的であったが,噴火の1ヶ月前から連続微動となり,徐々に振幅が大きくなり,11月15日の噴火直前には急激に大きくなった.これらのことから考えられることは,マグマに先行してマグマ溜まりから大量の高温の揮発性成分・火山ガスが上昇し,浅部の岩盤や地下水を温めた結果が観測されたと考えられる.1986年11月15日の噴火は穏やかな噴火であり,脱ガスが進んだマグマが上昇してきたと考えられるので,このような前兆現象が観測されたことと整合する.マグマに先行する揮発性成分の捕捉は,火山噴火の中期的な予測に有力であるが,全磁力の変化,火山性微動の発生までわからないのであろうか.3.知新:過去の知識から新たな視点で見るもの 揮発性成分の上昇は,火山ガスの観測などから見つかるかもしれない.しかし,測定点の依存性が大きく,全体像をつかむには広域かつ組織的な観測が不可欠であろう.別の手法として,火山性地震活動度と地盤変動,地殻応力の関係に注目した解析がある.著者は伊豆大島のカルデラ内浅部で発生する地震活動は,揮発性成分・火山ガスの上昇を捉えられる可能性を指摘してきた.地震活動は山体膨張・収縮を作るマグマ溜まりの応力変化に極めて良い対応がある.また,2011年頃からは地盤変動に比べ相対的に地震活動度が上昇していること,2013年ころからは地震活動が潮汐との相関がみられるようになったことを明らかにしてきた(「活動的火山」のセッションで発表予定).これらはすべて地震断層面の間隙圧が上昇している可能性を示唆している.最も考えられるのは,マグマ溜まりから揮発性成分の上昇が既に始まっていることを示している可能性である.揮発性成分が噴火前に大量にマグマから放出されていたら,噴火の爆発性が弱まることが知られている.このように,揮発性成分の放出は噴火様式を予測するうえでも極めて重要である.今後,次の噴火まで,地震活動のパターン変化と今後発現するであろう全磁力変化,電気伝導度変化,火山性微動の発生との関係が明らかになれば,噴火予測の高度化に役立つであろう.
著者
上垣内 修
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

1986年の伊豆大島山頂噴火から割れ目噴火に至る一連のイベントに関して、当時存在した、島内の体積歪計1点、傾斜計3点、噴火前後の水準測量結果並びに島外の体積歪計3点すべての地殻変動観測データを包括的に説明可能な地下力源モデルについて、Linde et.al.(2016)Journal of Volcanology and Geothermal Research vol.311, p.72-78に沿って報告する。なお、体積歪データは、長周期地震波応答を用いてキャリブレーションされている。ここでは、噴火イベントを山頂噴火開始から割れ目噴火開始直前までのphase 1(Nov.15-20)と、割れ目噴火に至るマグマ貫入開始以降のphase 2(Nov.21-30)のふたつの期間に分けて論じる。Phase 1噴火は1986年11月15日17:25、山頂火口から始まった。噴火に先立ち、明瞭な地震活動、短期的地殻変動は観測されておらず、十分に火道が形成されていたことを示唆する。噴火開始後は、島内の体積歪計1点、傾斜計3点のみならず、伊豆半島の体積歪計2点でも、同期した変化が20日日界頃に概ね停止するまで観測された。これらの変化をすべて説明する最適な力源モデルとして、カルデラ内北西部の地下約4kmを中心とし、フィリピン海プレートの沈み込みに伴う最大張力軸に直交する鉛直面内に傾斜角70°の軸を持つ、アスペクト比1:0.3、長軸の長さ2.25kmの回転楕円体のマグマ溜まりの減圧が推定された。同楕円体の長軸の延長線と地表との交点は山頂火口と概ね一致している。この形状であれば、噴火前にカルデラ縁から火口付近まで繰り返し行われた水準測量で、火口付近がカルデラ縁に対して相対的に沈降していた観測事実を、同マグマ溜まりの増圧によって説明可能である。本噴火で特記すべきは、これら地殻変動観測と並行して、火口がマグマにより埋められる過程が時系列として詳細に記録されたことである。火口内の地形は既知であるので、地表に噴出したマグマ量と、地殻変動データ解析から推定されるマグマ溜まりの体積変化との直接比較が可能な希有な事例と言える。前者は後者よりも大きく、その差は同マグマ溜まりへの、さらに深い(30km程度か)マグマ溜まりからの充填が、地表への噴出と同時進行で起きていたと解釈できる。なお、近年の伊豆大島島内の体積歪、GNSS、光波測距等の地殻変動観測により、長期的な島の膨張と、それに重なる短期的な膨張・収縮が観測されており、それら変化を説明する球対称力源が、気象研究所により本研究の回転楕円体ソースとほぼ同じ場所に推定されている。これらの関係について、今後の気象研究所の解析が期待される。Phase 2Phase 1の後約1日半の静穏期を挟んで、11月21日16:15からカルデラ内で割れ目噴火が開始し、その約1時間後には山麓からの割れ目噴火に拡大した。最初の割れ目噴火の約2時間前、島内の体積歪データが顕著な変化を示しはじめ、その直後から島を北西~南東方向に縦断するトレンドの顕著な地震活動が始まった。同体積歪変化は最初は縮みで始まり、約10分で変化の極性が伸びに反転している(これが後述のダイク下端の深さに拘束を与える)。そこからは一気に伸びが加速し、その日の深夜までに伸び量が100μstrainを超えてピークを迎えた後、再度極性を反転させて、表面現象が概ね終息した23日を過ぎても、月末まで緩やかな縮みが継続した。この変化と同期して、島外の3点の体積歪計でも顕著な変化が記録された。これら地殻変動変化と、地表の割れ目火口列の分布(この直下のダイクの上端は地表に達したと考えられる)、地震活動の震源分布、噴火前後で実施された島内水準測量で明らかとなった隆起・沈降空間分布(これはPhase 1の影響も含む:ゼロ変化線の離れ具合が主要ダイク上端の深さを拘束)を概ね説明する力源モデルとして、2枚(細かく言うと4枚)の長さの異なる北西~南東走向の平行ダイクの開口と、カルデラ下約10kmに中心を置く最大張力軸方向に潰れた回転楕円体の減圧が推定された。これらの間には、地表への噴出量を差し引いたうえでの質量保存も考慮されている。筆者は、1986年の伊豆大島噴火当時、気象庁入庁3年目で体積歪計の維持管理・データ解析の任にあり、同年11月21日の割れ目噴火の約2時間前から、執務室に置かれた打点記録計に島内の体積歪計が今まで見たこともないような変化を記録するのを、島からのTV中継とともにリアルタイムで見ていた。このイベントで、火山噴火予測への地殻変動観測の重要性を痛感した次第である。現在伊豆大島には当時よりはるかに多数の地殻変動観測点が設けられており、迫り来る次の噴火に向けて、その時の教訓を必ずや活かしたいと考える。
著者
吉本 充宏 藤井 敏嗣 新堀 賢志 金野 慎 中田 節也 井口 正人
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

富士山周辺の市町村では、火山防災行政担当者は2〜3年で異動する。これらの担当者は、異動当初の数日の引き継ぎのみで、基礎的な知識等については、火山防災パンフレットや短時間の講演会を聴講するのみである。そのため、知識の伝達や対策の継続性がしばしば滞ることがある。これまでも研修会や図上訓練などを実施することにより、火山防災担当者のスキルを向上させる試みは数多く行われているが、効果が上がっていない場合も多い。図上訓練の効果を上げるには、さまざまな個々の火山や火山防災特有の知識を必要とするが、それらを簡単に提供できる仕組みもない。本研究では、行政担当者が、継続的に知識を取得し、共通課題を共有し、地元の火山噴火に的確に対応できる人材育成を目指した研修プログラムを構築することを目的とする。関係機関へのヒアリングを基に研修プログラム案を作成し、平成29年1月に試験的に研修会を実施した。プログラムの内容は火山噴火や災害の基礎知識、実際の噴火災害対応に関する知識、現行の富士山火山広域避難計画を学び、それらを振り返るための演習(図上訓練)で、実施時間は半日、他の業務と連携して行えるように富士山火山防災会議協議会山梨県コアグループ会議に合わせて開催した。研修会の運営はNPO法人火山防災機構に依頼し、研修会には、オブザーバーを含め50名が参加した。演習としては、「噴火警戒レベルに応じて実施する対策」と題してワールドカフェ形式の図上訓練を行い、最後に全体討論会として班毎の発表と講評、アンケートを実施した。 アンケートの結果、総じて定期的な火山防災研修を望む声が多く、年に1~2回程度実施し、2回の場合は担当者が新規に入れ替わる4月と秋頃に各1回程度、火山防災協議会開催時と同時期に行うのが望ましいとの情報が得られた。開催時間は演習100分程度を含め半日程度が望ましく、内容としては今回実施した内容に加えて「火山防災情報」や「住民等への広報」等の内容が必要とされる。運営面では、別途予算の確保は必要となるが、持続的に実施する場合においては担当者が変わらない民間事業者等の支援を受けることも有効だと考えられる。 本研究は、東京大学地震研究所と京都大学防災研究所の拠点間連携共同研究によって行われたものである。
著者
中川 和之
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

2015年8月15日、桜島南岳直下に約200万立方メートルのマグマが貫入し、気象庁が噴火警戒レベルを4に上げた。当時は、現象面としては、なにも起きていなかったが、鹿児島市長は、レベル4の段階で一部の地域に避難勧告を出すとともに、一大イベントだった花火大会の中止を決めた。その判断根拠となったのは、気象庁が資料提供した傾斜計のグラフだった。日頃、専門家からマグマの移動を示す傾斜計の変化について説明を受けていた市長が、そのデータの変化の様子から、「最悪、集団移転も考える事態まで想像」し、決断をした。結果的に噴火せず、観光関係者からは非難された。噴火に至る以前の危機的な状況を、関係者がどのように判断して対応をしたのか、当日の朝から、市長や鹿児島市の防災担当者、研究者、気象庁関係者らのヒヤリングを元に、報告する。