- 著者
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松尾 真一郎
- 出版者
- 情報処理学会
- 雑誌
- 情報処理
- 巻号頁・発行日
- vol.64, no.10, pp.e1-e7, 2023-09-15
ブロックチェーンと関する研究開発は,Satoshi Nakamotoの未査読の論文から想起される形で,基礎的な研究から幅広い応用の実現までさまざまな形で行われている.一方でその多くは,Satoshi Nakamotoの発明につながる技術史を考えた場合,Satoshi Nakamotoの発明がサイバー空間におけるトラストの実現方法に与えたインパクトを台無しにしているか,それゆえにブロックチェーンそのもののセキュリティを犠牲にする結果になっており,結果として「Why Blockchain(なぜブロックチェーンを使うのか)」というう疑問を生じさせている.本稿では,改めてSatoshi Nakamotoの発明が与えたインパクトを振り返り,ブロックチェーンがもたらしているもの,もたらしていないものを振り返った上で,今後のブロックチェーンの研究開発の方向性を述べる.