著者
高田 哲司
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.45, pp.13-18, 2008-05-15

知識照合型個人認証の問題点を改善しうる認証手法として,画像を利用した認証が提案されている.しかしそれらの認証手法は,なんらかの理由により普及に至っていないのが現状である.そこで本論文では,画像認証においてその普及藍阻害している要因を調査する目的で,そのような認証を利用したことのないユーザに対してアンケート調査を実施した.その結果,認証システムが使用する画像種に関してはユーザが敬遠する傾向の高い画像種が明確になった.またその他にも,いくつかの設計要素に関して興味深い示唆が得られたこれらの調査結果は,今後の画像認証システムにおける設計や既存の画像認証の改善において設計方針を決定する際の指針として利用されることが期待される.In this paper, I describe about a user perception of image-based authentication systems. The purpose of this work is to extract positive and negative factors in their systems. And I consider that they will help to design a better image-based authentication systems and give a better direction to improve a system. To do that, I conducted a survey on graduate students that are inexperienced in such authentication systems. I asked them to make a ranking of five systems after I had given a lecture about them. I show a result and discuss about some indications to realize a better image-based authentication systems.
著者
有田 五次郎 荒木 啓二郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.230-237, 1983-03-15
被引用文献数
2

オペレーションを点 制御の移動を枝とする非巡回定向グラフで表現される並列プログラムのあるクラスは 各プロセッサが先着順(FCFS)で各オペレーションを実行するとき 自然に同期がとれる.木構造グラフとなるこのような並列プログラムを待ちなし並列プログラム(SPP)と呼ぶ.FCFSはFIFOメモリを用いてハードウェアで容易に実現でき SPPはMIMD型高多重並列処理における同期問題を解決する一つの手段となる.本論文ではまず並列プログラムをグラフ表現し 確定性 同値性等の幾つかの性質について論じる.ここで用いる定義は並列プログラムの物理的性質 すなわちセグメンテーションやプロセッサ割当てを含んでいる.次に木構造グラフで表現されるSPPを定義してその性質について考察し 最後に一般の並列プログラムをそれと同値なSPPに変換する手順を与える.SPPはデータ依存関係に基づいて構成されており 一種のデータ駆動型プログラムとみなすことができるしかしこれらはオペレーションとその間のコントロールフローで表現されており FIFOキューをハードウェアでもったマルチプロセッサシステムによって効率よく実行できる.
著者
速水 敦子 三十尾 修司 松林 元一
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.43-53, 1984

本研究では, andigenaバレイショ(2n=48)とその近縁2倍種S. rybinii (2n=24)を用い, 生長点培養における幼植物の分化効率に影響をもつと考えられる若干の要因を検討し, あわせてその培養によって得られた植物のウイルス無毒化率を調べた。その結果を要約すると次の如くである。1) 成体植物, 自然萌芽及び冷蔵萌芽の生長点組織における幼植物分化頻度は, それぞれ13.7%, 30.0%及び78.3%であった。2) 2層の葉原基をもつ約0.5mmの生長点組織の方が, 1層の葉原基をもつ約0.3mmのものより, 約17%高い幼植物分化頻度を示した。3) 生長物質無添加, BA10ppm, IAA1ppm及びBA10ppm+IAA1ppm+GA_310ppm各添加区における幼植物分化頻度は, andigenaとS. rybiniiの場合を平均して, それぞれ25.4%, 14.2%, 47.6%及び36.3%であった。また, 茎葉と根の両方を分化し, その後の生育も良好な個体の頻度は, 上記4実験区で, それぞれ1.3%, 0%, 8.0%及び26.5%であった。したがって, 分化後の幼植物の生育を考慮に入れると, BA及びIAAのほかにGA_3の添加が必要と考えられる。4) S. rybiniiは重度の罹病株であったにもかかわらず, その幼植物分化頻度は37.5%で, 軽度の罹病株であったandigenaの22.4%より高い値を示した。5) 生長点由来植物のウイルス無毒化率は, 0.5mmの生長点を用いた場合が90.9%, 0.3mmのそれを用いた場合が, 100%であった。しかし, 幼植物の分化頻度を考慮に入れてウイルス無毒化植物の育成率を算定すると, 前者が39.5%, 後者が26.1%となる。なお, この無毒化率と他の要因すなわち供試植物の生育段階及び生長物質の培地添加量比との間には明らかな関係は認められなかった。
著者
鞍田 崇
出版者
人間環境大学
雑誌
人間環境論集 (ISSN:13473395)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.71-77, 2006-03-31

人間が生存するとは、つねにすでに種々のモノと関わりゆくことを意味しているといえよう。ところが、現代社会においては、久しく、この極めて当たり前であるはずのあり方が歪められたままである。その原因としては、さしあたり科学技術の無際限な拡張に依拠した経済活動が考えられるが、問題の根本的解決のためには、さらに議論を徹底し、現代社会の背景に存するニヒリズムの克服が試みられねばならない。ハイデガーは、まさにこうした文脈でニヒリズムの問題を根源的に検討した。そこからは、一つの帰結として、人間の側の作為を離れたあり方が要せられる。だが、現実問題として顧みた場合、われわれが自らの作為性を離脱することは不可能である。その点をふまえ、柳宗悦の民芸理論に、現代社会においてあるべきモノとの関わりの手がかりを求める。
著者
谷口 勇仁
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.67-74, 2005-03-10

本稿の目的は、既存のCSR(Corporate Social Responsibility)に関する議論を検討し、「企業の論理」と「社会の論理」という2つの論理の存在を明らかにすることにある。従来、不祥事を起こした企業に対して、「CSR を果たすという当たり前のことがなぜできないのか」という意識に基づいた批判が数多くなされてきた。しかしながら、企業にとってCSR 活動を行うことは必ずしも当たり前ではない可能性もある。このような場合、批判の根底にある前提と、現実のCSR活動の根底にある前提が異なることになるため、不祥事を起こした企業に対する批判は机上の空論となる恐れがある。本稿は、このような状況を「企業の論理」と「社会の論理」のギャップとして捉えることを試みたものである。まず、既存のCSR に関する研究を「企業経営に対する提言」という観点から、「規範的アプローチ」と「手段的アプローチ」という2つのアプローチに分類して整理した。次に、この2つのアプローチを比較検討した結果、それぞれ「社会の論理」、「企業の論理」という観点からの整理であることを明らかにし、両論理の存在を導出した。さらに、2つの論理を検討した結果、「企業の論理」と「社会の論理」の間にCSR に関する解釈のギャップが存在する可能性を指摘した。
著者
朝日 雅也
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.67-71, 2004-05-01

心身の機能に障害があっても,あるいは老化に伴い介護を必要とする状態になっても,その人らしく地域の中で当たり前に暮らしていく.そんなノーマライゼーションの実現が強く求められている.そのために,様々な生活課題を解決する働きかけが実践されている.その際には,サービスの利用者を中心に据えた,利用者の思いに沿った支援が必要である.そして,利用者の真のニーズを反映するのが現場のこころである.様々な生活課題に関連した現場のこころは,今日的には,自立の支援,個別性に基づく支援,コミュニケーションの重視といった点から捉えることができる.現場のこころに向き合った支援こそ,ノーマライゼーションの実現のための推進力となりえる.対人援助に関わる人々は,現場のこころの理解を出発点とした支援のあり方を希求しなければならない.
著者
藤本 末美 福間 和美 松山 直美 中島 礼子 園田 美香 末永 貴代 徳永 活子 金子 智美 陣川 しのぶ 吉川 直美
出版者
田園調布学園大学
雑誌
人間福祉研究 (ISSN:13477773)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.21-43, 2004-03-17

地域における保健福祉活動を考えるにあたって,住民の住んでいる地域(地区)における生活や生活を支える地域組織活動が大きく影響していると考える。しかし,日常生活を営んでいる平常時には,当たり前の存在として過ごしていることが多い。しかし,災害等が発生する非常時には,平常時の生活と地区組織がどのような活動をしているかによって,生活の支え方が大きく左右されるものと考える。今回,雲仙・普賢岳噴火災害地域・K地区について災害から10年を経過した現在までの,住民の生活と地区組織活動の再編成過程について,その関連を検討し新たな知見が得られた。この知見は,今後の平常時の生活と地区組織活動のあり方や,さらに非常時である災害発生時の生活と地区組織活動のあり方に応用展開できるものと思われる。
著者
野村 恭彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.121-130, 2004-01-15
被引用文献数
8

本論文では,新たなグループウェア設計の指針となる,ストラテジック・ナレッジ・パターン(SKP)を示す.SKPは,日米のナレッジ・マネジメント(KM)に成功している企業11社の半年にわたっての定性・定量調査を通じて構築された,企業の差別化戦略の3つのパターンである.これまでのグループウェア研究では,協業の目的を持ったグループの知識共有の支援には一定の成果をあげてきたが,KMの成功と失敗の分かれ目である,いかに組織の構成員に知識共有の動機付けを行うかという課題に関しては,十分な議論がなされてこなかった.本論文ではまず,KMに成功している企業は,部門を越えた知識共有が特別な取り組みではなく,「当たり前」の企業文化となっていること,その秘訣は,知識経営の「目的」,焦点を当てるべき重要な「知識」,各個人・組織の仕事の背景である「コンテクスト」の3つの可視化にあることを示す.続いて,本調査を通して発見された3つのSKP,ビジョン主導型KM,プロ型KM,創発型KMを示し,各SKPを実現するためのグループウェア設計指針について議論する.最後に,SKPに基づきグループウェア設計を行うことにより,グループウェアの提供価値を,ミクロなグループ活動支援から,経営戦略に基づく組織全体の知識創造活動支援へと,高めることが可能になることを示す.This paper describes Strategic Knowledge Pattern (SKP), which will be a new indicator for groupware design. SKP consists of three patterns of company's differential strategy which were formulated through 6-month study of 11 Japanese and U.S. companies with successful Knowledge Management (KM). Previously, groupware study has gained constant achievement for supporting knowledge sharing by groups with the purpose of collaboration. However, the issue of the method to motivate the members of an organization for knowledge sharing, which is the turning point of success and failure of KM, was not sufficiently discussed. This paper explains that first, in companies with successful KM, knowledge sharing beyond divisions is not an extraordinary engagement but ``Obvious'' corporate culture. Its secret lies in the visualization of three issues, which are ``Objective'' of KM, important ``Knowledge'' to be focused and ``Context'' which is the background of the work. Then, SKP, Vision-driven KM, KM for Professionals and KM for Emergence will be discussed. Finally, this paper indicates that by engaging in groupware design based on SKP, it is possible to enhance value provided by groupware from microscopic support of group activities to organization wide support for knowledge creating activities based on business strategy.
著者
海宝 幸一
出版者
一般社団法人照明学会
雑誌
照明学会誌 (ISSN:00192341)
巻号頁・発行日
vol.87, no.9, pp.758-760, 2003-09-01

自然採光は電気による人工照明のない時代には,建物を建てる際に最も重要視されていました.そのような時代には日の出とともに起き,太陽が沈むとともに寝る,自然な光の下での生活が基本であり,建物の中での生活についても自然光を導入することが当たり前でした.戦後,効率が高く,長寿命,低発熱の蛍光灯が量産されるようになった結果,オフィスビルなどの規模の大きな建物では,人工照明が主体となり,自然採光への配慮があまりされなくなりました.しかし近年の地球温暖化,化石燃料の枯渇といった地球規模のエネルギー問題がクローズアップされた結果,自然エネルギー利用に対する社会的期待が高まってきました.一方,かつてのオイルショック時の,我慢をする省エネルギーはもはや受け入れられない状況であることは,いうまでもありません.これからの省エネルギーは,環境レベル(ユーザーの作業環境)を維持しつつ,積極的に自然エネルギーを享受することで,結果的に無駄のないエネルギー利用が可能となるような,ユーザーに受け入れられるものであることが必要不可欠になってきました.ここでは,積極的に自然採光を行うための,基本的な考え方をまとめてみたいと思います.