著者
山中 章弘
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.968-972, 2014 (Released:2016-09-30)
参考文献数
20

複雑に絡み合う脳内の無数の神経の中から,標的とする神経細胞の活動だけを狙い,透過性の高い光を用いて極めて高い時間精度でその神経の活動を操作するオプトジェネティクス(光遺伝学)の進化が著しい.特に個体動物の脳内の一部の神経細胞の活動を操作し,個体の行動をも制御可能な点が画期的である.新しい実験手法である光遺伝学の基礎知識から同実験手法をげっ歯類に応用した最近の研究について紹介し,将来の創薬分野への応用の可能性について論じる.光遺伝学は,2005年に開発された新しい実験技術である.特定の波長の光を感知して活性化され,細胞機能に影響を与えうる分子(光活性化タンパク質)を特定の細胞に発現させると,その細胞機能(特に神経活動)を光で操作することが可能となる(図1).そして,その結果として表出する行動を解析することで,行動発現を制御する神経回路機能の動作原理を明らかにすることが可能となった.これまで長年決着がついていなかった様々な生理現象に対して光遺伝学が適用され,その解決に貢献してきている.例えば,記憶が海馬の神経細胞に実際に記録されていること,グリア細胞機能が呼吸機能にかかわっていること,不安を引き起こす扁桃体の神経回路が明らかになっている.そのため光遺伝学は急速に発展し,神経科学の研究に不可欠な実験技術として幅広く普及しはじめている.そのことは2010年のNature Methodsが全分野の中から選ぶMethods of the yearに光遺伝学が選出されていることからも伺える.光遺伝学を用いた研究を行うには,十分な分子数の光活性化タンパク質を標的細胞の細胞膜へ発現させること,そして,その細胞へ十分な量の光を照射するという2つのステップが存在する.
著者
伊藤 隆史
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.659-664, 2021 (Released:2021-12-25)
参考文献数
44

感染や組織損傷の兆候を察知すると,好中球は活性化する.活性化した好中球は,微生物やデブリスを貪食したり,好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps: NETs)と呼ばれる網状構造物を細胞外に放出したりして,感染防御に寄与している.その一方で,同様のメカニズムが,組織損傷を悪化させてしまう要因にもなっていて,NETs放出は適切にコントロールされる必要があると考えられる.本稿では,感染症病態におけるNETs放出の光と陰について概説し,そのなかでも特に,血栓症との関連について考察していく.

10 0 0 0 OA 3つの法則

著者
田口 善弘
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
大学の物理教育 (ISSN:1340993X)
巻号頁・発行日
vol.98, no.2, pp.29-33, 1998-07-15 (Released:2018-04-27)
被引用文献数
1

10 0 0 0 OA 電気事業要覧

著者
逓信省電気局 編
出版者
電気協会
巻号頁・発行日
vol.第20回 昭和4年3月, 1929

10 0 0 0 OA 女十題

著者
竹久夢二 画
出版者
加藤潤二
巻号頁・発行日
vol.[3], 1937

10 0 0 0 OA 灸研究の現在

著者
會澤 重勝 校條 由紀 東家 一雄 仲西 宏元 戸田 静男
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.601-613, 2003-11-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
12
被引用文献数
3 4

灸の生体に及ぼす作用についての研究は, いまだ十分とはいえない.全日本鍼灸学会学術大会では, 1997年にミニシンポジウム, 1998年にパネルデイスカッション「ここまで判った灸の科学」, 2001年にシンポジウム「鍼灸と免疫」などの特集が組まれて, それに対する研究成果の議論がなされてきた。そして, 年を追うごとにその内容が深まってきているといってよい。このようなことから, 2003年の第52回全日本鍼灸学会学術大会 (香川大会) では, 現在日本での最先端の研究者によるシンポジウム「灸研究の現在」が企画され, 以下のようにまとめられた。會澤重勝 : 灸基礎研究の概観では, 各種データベースにもとついて現在までの研究論文について述べられている。灸の特に基礎的研究は, 免疫学, 解剖学, 生化学, 神経生理学その他さまざまな方面から研究が試みられている。そして, その研究者の多くは全日本鍼灸学会で発表をしている。そのことから, 本学会の灸研究に果たしている役割は, 多大なものといえる。校條由紀 : 施灸部位の組織学的検討では, 施灸後の皮膚組織が変化する範囲が施灸部位を中心として見られた。その範囲は, 施灸終了60分後も拡大していた。特に, 皮下組織の変化の範囲は文の底面の広さを長時間経過しても超えていた.このことは, 施灸刺激の程度を決定する上で参考になる。東家作雄 : 灸の免疫系への作用が, 実験動物を用いて施灸皮膚所属リンパ節におけるサイトカインmRNA発現様式について検討された。作L-12, IFN-γのようなサイトカンのmRNAに発現様式が認められ, その作用機序に文含有成分の関与することが示唆された.仲西宏元 : 温灸の作用機序の検討から, 灸刺激特に温灸は鍼刺激とは異なる伝達系があり, 灸刺激の局所的な刺激が生理活性物質を奮起し, 機能の活性を引き起こし, この効果が神経系にも影響を与えると考えられた。ただし, 灸の原料であるヨモギの産地によって, 含有する金属元素の含有率の違いが大きく認めたことから, 同質重量の刺激を行ってもその治療効果に差が生じるのではないかと推測された。以上のように, 日本ではさまざまな角度から灸研究がなされているといってよいであろう。今回のシンポジウムは, 「灸研究の現在」を情報提供することが出来, 鍼灸医学の発展に寄与出来たものと思われる。
著者
佐藤 洋一 衣川 太一
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.5, no.s1, pp.s9-s12, 2021 (Released:2021-04-20)
参考文献数
7

占領期のパーソナル写真は、アメリカ人など外国人が撮影された写真がデジタルアーカイブとして紹介されているが、撮影場所などの明確なキャプションがないものが大半である。また戦災による被災箇所を写した都市部の写真も一定数存在し、都市史的にも貴重だが、撮影地点が同定されず、写真史料としての限界を作っている。こうした限界を打開する方法はないか。本稿では占領期のパーソナル写真を事例として、写真撮影地点の同定作業を進めるための一般的な方法的枠組みを提示することを試みる。
著者
橋本 博文
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.182-193, 2011 (Released:2011-03-08)
参考文献数
33
被引用文献数
14 13

本稿の目的は,これまで文化心理学において議論されてきた相互協調的自己観に焦点を当て,日本人の相互協調性が共有され,維持される一つのプロセスを分析することにある。文化的自己観尺度を用いた研究1と研究2の結果をもとに,本稿ではまず,現在の日本人が相互協調的な心のあり方や生き方を必ずしも好ましく受け入れているわけではないこと,そして日本人にとっての相互協調性はあくまで文化的に「共有」された信念であることを主張する。さらに,相互協調的に振る舞う人に対する印象評定を扱った研究3の結果から,相互協調的に振る舞うことで他者から好意的な反応を得るだろうという予測,そしてその予測を生み出す文化的共有信念の重要性を指摘する。また,実施した一連の研究知見をもとに,日本人の相互協調性に関する本稿の理解――個々人が共通して持っている価値や信念ではなく,文化的に共有されている(他者の行動原理に関する)信念こそが,日本人に相互協調的な振る舞いをさせる誘因となると同時に,この誘因に従う行動そのものによって相互協調行動が維持され,そうした行動に関する信念もまた共有され維持されるという理解――について議論し,本稿が採用する文化への制度アプローチが,今後の文化心理学研究に与えるインプリケーションを考察する。
著者
三田地 真実
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.92.20406, (Released:2021-11-30)
参考文献数
36

This paper discusses what psychologists should do to help the general public in response to the new coronavirus infectious disease (COVID-19) in Japan. Four things psychologists could do are listed in the Japanese Psychological Association article entitled “Against Violence in the Home.” However, the style of the article seems insufficient for psychologists to perceive the article as general behavioral guidelines for helping people suffering from psychological stress. Psychologists should be encouraged to publicly disseminate relevant information because the current domestic policies may cause confusion for the public as they provide insufficient behavioral principles and research-based perspectives. This paper proposes three different levels of roles for taking actions as psychologists: as a professional individual, as a member of an academic society, and as a public figure disseminating relevant information. To be impactful in carrying out these roles, setting up a “place” where individual practices and opinions can be quickly aggregated is required. Moreover, it is important for psychologists to listen to public voices and be prepared to focus their professional lives on tackling social issues.