著者
宮下 広大 金井 秀作 長谷川 正哉 積山 和加子 高宮 尚美
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0655, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】患者の動作・運動指導において言語教示の重要性が唱えられている一方で,運動を促す際の指導者と学習者の言語認識の一貫性については,今日のリハビリテーション分野での研究は十分であるとは言えない状況にある。そこで,本研究では異なる言語表現が筋収縮に与える影響と言語を用いた筋収縮感覚を他者と共有可能であるか調査する。【方法】健常男性12名を対象とした。2人1組とし両者をフィットネスチューブの両端を把持した状態で向き合わせ,言語教示を提示し,肘関節屈曲運動を5秒間行う牽引側,閉眼にて開始肢位を保つ受け手側とした。教示内容は形容詞表現「速く・強く」,「遅く・強く」,擬態語表現「びゅんっと」,「ぎゅーっと」,比喩的表現「綱引きでピストルの合図と同時に綱を引くように(以下,綱引き)」,「何とか持ち上がるくらいの重いダンベルを手前に引くように(以下,ダンベル)」の6種類とした。各施行終了後,速度・強度を(Visual analogue scale:VAS)を用いて主観的感覚を調査した。また受け手側には9種類の教示を提示し,筋運動感覚から牽引側の教示内容を予測させた。なお,表面筋電図の測定は右上腕二頭筋,右上腕三頭筋長頭,右上腕三頭筋外側頭とした。統計解析は,各教示間における筋出力の比較にKruskal-Wallis testを用いた。有意差を認めた場合にSteel-Dwass testによる多重比較を行った。比較する際の教示は受け手側の予測に合わせて牽引側,受け手側それぞれ行った。【結果】受け手が回答した予測教示について,一致した正答率は「綱引き」の67%が最も高く,対照的に「びゅんっと」の25%が最も低かった。各教示間のVAS速度,VAS強度,上腕二頭筋平均振幅の牽引側においては,VAS速度で各教示間に多くの有意差が認められたが,VAS強度において,有意差は認められなかった。また,客観的指標である上腕二頭筋平均振幅においては,「遅く強く」「綱引き」間,「ぎゅーっと」「綱引き」間でのみ有意差が認められた(p<0.01,p<0.05)。受け手側においては,VAS速度に,「びゅんっと」「綱引き」間,「びゅんっと」「ダンベル」間を除き,牽引側と同様の有意差が認められた。VAS強度においては,形容詞・擬態語間,擬態語・比喩間に有意差が認められたが,形容詞・比喩間で有意差は認められなかった。上腕二頭筋平均振幅においては,「綱引き」「ダンベル」間で有意差が認められた(p<0.05)。【結論】治療意図による言語の使い分けの必要性が示唆された。また適切な比喩的表現は牽引側,受け手側,両者にとって最も統一した筋収縮活動を起こした。このことから,運動指導を担う理学療法士には他者と共有しうる多彩な比喩表現の必要性が示唆された。
著者
吉川 桃子 平谷 尚大 佐々木 克尚 小松 勝人 掛水 真紀 福岡 知之 津野 雅人 沖田 学
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.AbPI2023, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 リハビリテーションや運動指導における言語は,患者に運動学習を促すための方法の1つである.宮本ら(2005)は,臨床において主観的で抽象的な言葉の重要性を唱えている.また,日岡ら(2010)は,知能が低下した患者に行為を共感覚を用いた抽象概念で説明することが有効であると報告している.さらに,言語と運動について平松ら(2009)は,擬態語の提示は意図する行為をシミュレートさせる可能性があり,擬態語は言語教示において運動をシミュレートさせる有効な手段の一つであると述べている.しかし,使用する副詞や比喩表現の違いが実際の動作へ及ぼす影響について検討されたものは少ない.そこで,本研究の目的は情態副詞,擬態語,メタファー言語が実際の動作にどのような影響を及ぼすかについて明らかにすることである.【方法】 対象は健常成人6名 (男性2名,女性4名:平均年齢20.8±1.47歳)とした.実験の内容を理解できない者や条件の理解を誤った者は除外した.実験課題は,紙面上に描かれた外周800mmの正方形を右回りに2分間のトレースを行う課題(平林ら,1998)である.その際,以下の4つの条件を設定して行った.条件1は何も教示なしで課題を行わせた.条件2は「ゆっくりなぞって下さい」の文章を提示して行わせた(情態副詞条件).条件3は「じわじわなぞって下さい」の文章を提示して行わせた(擬態語条件).条件4は「1番遅く動くものは何ですか?」と問い,「そのようなイメージでなぞって下さい」の文章を提示して行わせた(メタファー言語条件).これら4つの条件をランダムに提示した.また,知的機能検査としてMini-Mental State Examination(以下,MMSE),Frontal Assessment Battery(以下,FAB),Trail making test A(以下,TMT-A),ブーバ/キキ実験を実施した.統計処理は,各条件のトレースした長さをKruskal-Wallis testを用いて比較検討した.また,各条件の特性を分析するために,個人別に長くトレースした順に順位付けを行い,それらにMann-Whitney’s U testを用いて比較検討した.なおBonferroniの不等式修正法を用いた有意差調整により統計学的有意水準を0.0083未満とした.【説明と同意】 全ての対象者から事前に本研究の目的,方法を十分に説明し,書面で同意を得た.【結果】 知的機能検査の平均値と標準偏差は,MMSEは29.7±0.8点,FABは17.3±0.8点,TMT-Aは82.1±24.6秒であり,対象者は知的能力や注意能力が低下していなかった.ブーバ/キキ実験では全ての対象者がでこぼこした図形が「ブーバ」,ぎざぎざの図形が「キキ」と判断した.統計処理の結果は,各条件でのトレースした長さの平均値と標準偏差は,条件1は16979.2±12739.86mm,条件2は4031.33±3272.83mm,条件3は2166±1372.41mm,条件4は1531±1350.74mmであり,各条件間で有意差は認められなかった.しかし,個人別にトレースの長い順に順位付けを行ったものは, 全ての対象者が条件1を最も長くトレースした.そのため,条件1は他の4つの条件と比較し,有意にトレースした長さが長かった.また,条件2は条件3より長くトレースした人数が有意に多かった.【考察】 今回の研究では,具体的な運動速度を提示せずに自由に動作を行わす場合と比較し,速度の遅い意味をもった言語を提示することで動作がより遅くなった.その中でも,動きやその状態の質および様子を表す副詞を修飾した場合と比較し,音や速度をイメージさせるような副詞を修飾した場合により動作への影響が大きくなった.つまり,単純な動作指示に情態副詞,擬態語,メタファー言語を修飾することで,より意味に対応した形に運動制御が変化し,さらに擬態語は情態副詞より運動制御に影響を及ぼすことが明確となった.これは,擬態語が情態副詞と比較し,状態や感情,身振りなどの音を発しないものをいかにもそれらしく音声に例えて表した語句であるため,より動作のイメージが想起されやすかったためであると考える.【理学療法学研究としての意義】 本研究では,情態副詞,擬態語,メタファー言語の提示が運動制御に影響を与えることを明らかにした.このことから,単純な運動指示を提示するのではなく,状態副詞,擬態語,メタファー言語を修飾することが運動指導においてより有効な方法であることが示唆された.今後は,認知症高齢者や脳卒中患者を対象として本研究の応用性を検討する必要がある.
著者
三輪 是法
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.1244-1250, 2022-03-25 (Released:2022-09-09)
参考文献数
3

天台大師智顗(538-597)が『摩訶止観』で説く「一念三千」は,不可思議なる対象として人間の心を表した言葉で,三千という数字は法華経の十如是と地獄界から仏界までの十界,そして五蘊世間・衆生世間・国土世間の三種世間の乗数によって導かれている.『摩訶止観』巻五上では,止観という修行による対境として最初に陰入界境を説明する.陰入界は実体をもたない人間存在を表し,まず迷いの原因である識陰の心を観察する必要があるという.その観察法として十種の方法をあげ,その第一番目が観不思議境である.五陰,十法界,十如是,三種世間の関係を詳述した後,心の様相として「一念三千」が説かれる.すなわち,我々の心は十種の人格的要因(十界)と現象の構成要素(十如是),さらに環境的外部要因を含めた関係性(三種世間)によって成り立っているということで,換言すると,心は他者によって形成されているといえるであろう. そこで現代における心の研究分野である精神分析の理論に基づいて考察すると,そもそも精神分析は,正常な人間は存在しないという立場に立っており,悩める主体である「分析主体」自身が自らの問題を主体的に解決していく営みであるということを知る.精神分析では,自我という自己像は他者との関係を通して作りあげられた虚構であり,また,主体というものは存在せず,意識と無意識との関係性において,一瞬,無意識の主体が出現するとしている.すなわち,『摩訶止観』で観察対象となる陰入界が他者によって形成された自我であり,観察結果として得られる一念三千という心が無意識の主体であると考えられる.換言すると,悩める分析主体が一念三千という境地に至ることによって,生き方を自ら選択できる可能性が生まれるということであり,ここに仏教と精神分析との類似性が確認できる.
著者
辻 大地
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2018-04-25

報告者は昨年度までに、前近代アラブ・イスラーム社会の性愛観念においては、男性/女性という身体的性に基づく区分よりも、成人男性/非・成人男性という社会通念に基づく区分が重要であったことを明らかにしてきた。本年度執筆した、ジェンダー研究に関する書籍の項目(「同性愛/異性愛」『論点・ジェンダー史学』2021年刊行予定、「中世ムスリム社会の男性同性愛と政治」『ひとから問う世界史―ジェンダー視点から』2022年刊行予定)は、主にこれらの成果に基づくものである。一方で、昨年度から今年度にかけての本研究の成果として、中世イスラーム社会において「同性愛」概念に類似した意識が芽生えていた可能性を見出した。すなわち特定の人物がある時点において、中傷行為における言説上の展開や医学知識の伝播によって、実際の行為の有無に限らず「同性と性愛関係を結ぶ者」として捉えられるようになるという可能性である。これは上記の区分と必ずしも矛盾するわけではないが、先行研究が無批判的に前提としてきたテーゼに修正を迫るものである。この内容は、比較ジェンダー史研究会とイスラーム・ジェンダー学科研研究会の合同研究会(「同性愛の比較文化史」)で比較史的観点から問題提起する報告を行なったほか、関連する内容を含む論文を学術誌に投稿し現在査読審査中である。加えて現在までの研究成果に対して第11回日本学術振興会育志賞を受賞した。3年間の本研究課題によって、当初の計画に則った成果に加え、上記の通り「同性愛」概念の形成過程に関する新たな気づきを得られた。そこで来年度以降は、育志賞の副賞によって採用予定の特別研究員(DC2)として本研究を発展させ、博士論文に結実させたい。
著者
伊藤 和也・豊澤 康男・高梨 成次
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.450-457, 2011-12-15 (Released:2016-08-31)
参考文献数
7

本報では,東日本大震災における災害復旧・復興工事中の労働災害の現状を概観した後,内陸型活断層地震である,新潟県中越地震,新潟県中越沖地震における災害復旧工事中の労働災害の調査・分析結果を示し,さらにその結果をもとに事業継続計画にて利用される復旧曲線の考え方を援用して,地震被害の状況に応じた災害復旧工事における労働災害発生の可能性について検討を行った結果を示す.そして,これらの分析を踏まえて東日本大震災の現在までの状況と今後の動向について示した.
出版者
今日の話題社
巻号頁・発行日
vol.第1巻 (トラ・トラ・トラ われ奇襲に成功せり), 1967
著者
佐藤 歩夢 青木 輝勝
雑誌
研究報告知能システム(ICS)
巻号頁・発行日
vol.2011-ICS-164, no.3, pp.1-6, 2011-10-21

CG における群集制御インターフェースに関する研究はいくつかなされているが,群集がいくつかの経路に分裂して進んでいく様子を再現しようとした研究は筆者らの知る限り存在しない.そこで本研究では,群集に対してマウスにより直観的に複数の移動経路を指定した場合の移動制御について提案し,その概要と評価結果について報告する.提案方式は,フロアフィールドモデルに対して動的なゴールを適用することで,移動経路を制御している.評価実験により,群集の移動経路と指定経路について,高い整合性が得られた.
著者
福居芳麿
出版者
巻号頁・発行日
vol.[1],
著者
Ji-Hoon KANG Seoung-Yob AHN Hun-Young YOON
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.84, no.11, pp.1514-1519, 2022 (Released:2022-11-07)
参考文献数
26

A 14-year-old spayed female Shih-Tzu was referred to the Veterinary Medical Teaching Hospital of Konkuk University for evaluation of an abdominal mass. In diagnostic imaging, two large cystic masses were identified. The affected liver lobes were surgically resected, and the specimens were submitted for histopathological evaluation and immunohistochemical staining. The two cystic lesions were diagnosed as biliary cystadenocarcinoma (BCAC). Recurrence and regional invasion were identified on ultrasonography 36 days postoperatively. The patient died on postoperative day 271. To the best of our knowledge, previously reported case studies of BCAC in dogs presented limited clinical information. In this report, we present a detailed picture comprising a range of clinical information and histopathological examination of BCAC in a dog.
著者
Ryo SAITO James K CHAMBERS Kazuyuki UCHIDA
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.84, no.11, pp.1474-1479, 2022 (Released:2022-11-01)
参考文献数
19
被引用文献数
1

Granular cell tumors (GCTs) are characterized by abundant eosinophilic cytoplasmic granules. Based on the hypothesis that canine intracranial GCT is a subtype of meningioma and its cytoplasmic granules are formed through autophagy processes, histopathological and immunohistochemical examination were performed on biopsy samples from 7 cases of canine intracranial GCTs and 15 cases of conventional meningiomas. Histopathologically, 7/7 cases of GCTs involved the meninges; foci of meningothelial-like cells were observed in 3/7 cases; brain invasion was observed in 2/7 cases. Immunohistochemically, neoplastic cells of GCTs were positive for E-cadherin and negative for S100, cytokeratin, CD204, and β-catenin in 7/7 cases. Neoplastic cells of 15/15 cases of meningiomas were positive for E-cadherin, and negative for S100 and CD204. Immunoreactivity of meningiomas for cytokeratin and β-catenin was observed in 6/15 cases and 8/15 cases, respectively. Cytoplasmic granules of GCTs were positive for ubiquitin (5/7), p62 (5/7), and LC3 (7/7). Compared to GCTs, the ratios of ubiquitin (6/15) and p62 (3/15) positive cases were lower in meningiomas, and 15/15 cases were negative for LC3. These findings indicate that the biological natures of GCTs including anatomical location, histopathological features and immunoreactivity for E-cadherin are almost in conformity with those of meningiomas. The immunoreactivity for autophagy associated molecules may suggest the possible involvement of autophagy in cytoplasmic granule formation of canine intracranial GCTs.

1 0 0 0 枚方市史

著者
枚方市史編纂委員会 編
出版者
枚方市
巻号頁・発行日
vol.第5巻, 1984

1 0 0 0 小学二年生

出版者
小学館
巻号頁・発行日
vol.1(2);三月號, 1946-03
著者
木内, 石亭
出版者
巻号頁・発行日
vol.[1],
著者
米司 健一 田中 正行 奥富 正敏
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.38(2005-CVIM-149), pp.47-52, 2005-05-12

画像撮影時の手ぶれや,対象が動くことによって画像にぶれが生じる.このぶれを等速直線運動で近似すると,ぶれを表すPSF(Point Spread Function)は幅と角度の2つのパラメータで表現することができる.劣化画像の振幅スペクトルは,PSFの幅と角度によって決まる方向と周期で0となる性質を持つ.この劣化画像の振幅スペクトルの周期性と方向性を検出することによって,PSFパラメータの幅ellと角度thetaを推定する.本論文では原画像の周波数特性によらず,劣化画像の振幅スペクトルの周期性と方向性をロバストに検出する手法を提案する.また,実画像実験を通して,提案手法の効果を確認した.