著者
AUKEMA Justin
出版者
International Research Center for Japanese Studies
雑誌
Japan review : Journal of the International Research Center for Japanese Studies (ISSN:09150986)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.127-150, 2019

This paper examines the early postwar history of the physical remains of World War II through the example of Keio University’s Hiyoshi Campus. During the war, the Japanese Imperial Navy’s Combined Fleet used this site as their headquarters, and they built a massive underground tunnel system there. Furthermore, after the war, the campus was confiscated and used by the U.S. Occupation Eighth Army until 1949. Yet this history of the Hiyoshi Campus was almost completely forgotten until the late 1980s. This paper argues that the reasons for this lie in the postwar history of the site and the university. Namely, Keio intellectuals in the early postwar sought to portray the school as an historical pioneer of liberal democracy in Japan. Yet in this historical rewriting, instances of liberal cooperation with militarism such as Keio’s wartime past became inconvenient truths, and the physical wartime remains on campus, as visible reminders of this past, became unwanted and undesirable anachronisms. In this way, the paper argues that the forgetting of war sites such as the Hiyoshidai tunnels was, in some ways, a byproduct of the creation of a liberal-democratic postwar Japan.
著者
北村 達也 Tatsuya Kitamura
出版者
甲南大学知能情報学部
雑誌
甲南大学紀要. 知能情報学編 = Memoirs of Konan University. Intelligence & Informatics Series (ISSN:18830161)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.209-215, 2019-02-28

日本語教育用の教科書に含まれる単語がその教科書において初めて現れる課(初出課)を自動的に判定するシステムを開発し,その利用状況を調査した.その結果,2018年4月1日から7月31日までの四半期に10,000回を超えるアクセスがあり,そのうちの約9割は日本国内からのアクセスであった.また,利用者100名を対象としたアンケート調査の結果,利用者の約6割が日本語教師を職業としている人であった.そして,利用者の約8割がこのようなシステムの有無が教科書の選定に影響すると回答した.
著者
片山 善博 Yoshihiro Katayama
雑誌
現代と文化 : 日本福祉大学研究紀要 = Journal of culture in our time
巻号頁・発行日
vol.131, pp.1-16, 2015-03-31

遺族が故人とのつながりを維持することがグリーフケア(特に遺族のケア)にとって重要であるという研究が様々な課題を抱えながらも主流になりつつある.とはいえ,遺族の個人に対する関係は一方的なものである.近年の承認論の研究では,自己と他者との間の承認関係が自己の成り立ちやアイデンティティにとって極めて重要であることが指摘されている.従って,遺族が故人との承認関係を維持するためには,故人が他者の地位にあることが望ましいことになる.遺族ケアの課題として,できるだけ双方向的なつながりを維持できるための故人の他者化が必要である.しかし,故人はいわゆる実在する他者ではない.そこで本論では,どのような他者化が可能なのか,また双方向的なつながりの維持のために何が必要なのかを考察した.精神的な他者化を推進する個別的なケアと同時に,こうした関係を安定的に維持させる社会・文化的な価値の創造が必要であると結論づけた.
著者
小林 尚司
出版者
日本赤十字豊田看護大学
雑誌
日本赤十字豊田看護大学紀要 = Journal of Japanese Red Cross Toyota College of Nursing (ISSN:13499556)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.19-26, 2010-03

本研究は、遺族の悲哀に伴う医療者への怒りについて、何故怒りが生じたのかに関心をおく。今回、自宅で義母を看取った後、担当訪問看護師に対する強い怒りを感じた女性に、3 回の面接調査を行った。そこで語られた怒りの経験を再構成することで、訪問看護師に対する怒りの背景を探求する仮説モデルを作成した。死別後の訪問看護師に対する怒りは、死別後に訪問看護師から得られるサポートに対する不満によって生じると考えられた。またその不満は、訪問看護師に対するサポートの期待の大きさによって異なり、期待の大きさには、看取り前の信頼関係、看取りのあり方に対する自責の念が影響すると考えられた。
著者
清原 舞子
出版者
東洋英和女学院大学大学院
雑誌
東洋英和大学院紀要 = Journal of the graduate of Toyo Eiwa University (ISSN:13497715)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.95-117, 2017-03-15

The purpose of the present study is to examine aspects of creative regression from the viewpoint of ego boundary, sence of reality and superior sensation, which are supposed to be signposts of pathological regression.Based on the Graphic Rorschach test, I have newly developed a Digital Rorschach test, introducing an experimental examination for use on a tablet computer.On research focusing on artists, as the characteristic of Rorschach, the more total reaction numbers, more Dd%, less F+%, more Σc, more ΣC・SumC, more At% have appeared.As a result of using the Fisher and Cleveland (1958) “–body image boundaries score–”, the artists group is found to have higher barrier and penetration scores as well. The aspects of permeable and impermeable ego boundaries were suggested by Landis (1970) as the “–resilience of boundaries–”.Furthermore, as a result of dividing artists into three groups (musicians, painters, and performers), the musician group has a mostly equal B score and P score, the painter group has a higher B score, and the performer group has a higher P score. Also, it has been suggested that P score is related to concept-dominance – blot-dominance by D.G.R.In previous research, as the classified result of the concept-dominance of normal-adults, “the balance or imbalance between blot and concept” has mostly dominated. In this study, however, the Mx type “mixture imbalance between blot and concept,” –which is not usually seen in normal-adults, has been seen in about 65 % of the artists group. The Mx type has been associated with schizophrenia.Finally, a qualitative view has been added based on the ideas of “–deviant verbalization–” and “–confabulation– ”.
著者
大橋 直義 福田 景道
雑誌
歴史叙述と文学
巻号頁・発行日
pp.27-40, 2016

国文学研究資料館
著者
石田 雅樹
出版者
宮城教育大学
雑誌
宮城教育大学紀要 = Bulletin of Miyagi University of Education (ISSN:13461621)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.57-67, 2016-01-29

ウォルター・リップマンの政治思想は、その「世論」民主主義批判の文脈において「エリート主義」「保守主義」と解釈され、ジョン・デューイらリベラリズムの論敵として理解されてきた。しかしながら、リップマンの「政治」と「教育」をめぐる議論を検証すると、そこにはニつの政治教育論が存在し、一方はデューイらと同様に学校教育を通じてアメリカ社会を民主的に変革するものとして、他方はそれとは別の教育論理でアメリカのリベラル・デモクラシーを再構築するものとして描かれていることに気づく。本論はこれまで論じられてこなかったこのリップマンにおける二つの政治教育論を取り上げ、一方の政治教育論が「市民教育」[メディア・リテラシー」「知能テスト批判」をキーワードとして市民の政治知識の向上に寄与するものであり、他方が「コモンローの精神」「公共哲学」「文明的作法」をキーワードとして一般公衆の精神的陶冶を強調するものであることを明らかにした。
著者
中台久 和巨 李 昇姫 北島 宗雄 星野 准一
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.2015-HCI-162, no.10, pp.1-8, 2015-03-06

文章を声に出して読む音読は幼少期に行う事で,社会で必要な表現力や想像力を支える基礎をつくるとされ,小学校では読解の授業で音読が多用されている.音読指導では,文章を読む際に相手が理解しやすいように読み方を調整する能力を重視する項目が多く見られる.しかし,児童が学校の授業以外で,聞き手を意識した音読を継続的に行う事は容易ではない.本稿では児童が音読を行う際に,家庭などでひとりでも楽しく音読ができ,聞き手を意識した音読を促す自律アニマトロニクス 「KINIJRO」 を提案する.
著者
小島 有貴 安達 拓也 濱川 礼
雑誌
第80回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.1, pp.157-158, 2018-03-13

中学生の教育課程における「電流」単元は苦手かつ興味の惹きにくい単元であること報告されている。「電流」単元の苦手対策として電気を水に例える教え方があり、効果があることが実証されている。そこで、タブレット端末を用いて参考書の電子回路図を写真撮影し、三次元水路図に自動変換するシステムを開発した。本論文ではシステムのARを用いた可視化の手法ついて述べる。ARを用いて三次元水路図を表示することで不可視な電気(電圧を水の落差、抵抗を水車の大小、電流を水の流量)を可視化する。これにより回路の働きをイメージすることが容易になり、「電流」単元の理解促進や学習意欲向上を図る。
著者
吉見 憲二
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP)
巻号頁・発行日
vol.2015-EIP-67, no.8, pp.1-6, 2015-02-21

近年,ソーシャルメディアの活用が企業マーケティングにおいても重要な役割を果たすようになってきている.一方で,ソーシャルメディア上での消費者とのコミュニケーションの失敗がかえって企業価値を損なってしまうような事例も散見される.特に,アルバイト等の従業員による不適切な発言が炎上とも呼ぶべき現象をもたらし,企業が謝罪に追い込まれるような事例については,そのコントロールの難しさが指摘されている.従来より企業の不祥事と株価に代表される企業価値との関係に着目した先行研究は数多く存在しているが,ソーシャルメディアにおける炎上事例が企業価値に与える影響について詳細には検討されていない.そこで本研究では,ソーシャルメディア上での炎上が企業への批判を招いた事例を対象に,イベント・スタディ法を用いた検証を行う.加えて,先行研究で取り上げられている一般的な企業不祥事とソーシャルメディアにおける炎上事例が同一に扱うことができるのかについて検討する.
著者
中田 謙二郎 松浦 幹太
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:21888655)
巻号頁・発行日
vol.2015-CSEC-70, no.19, pp.1-8, 2015-06-25

匿名通信システム Tor は送信者と受信者のつながりの匿名性を保証する.しかしながら,その匿名性を破る攻撃も発見されつつあり,中でも指紋攻撃は攻撃に必要な資源が少なく現実的な脅威となりうるものとして注目されている.そこで我々は,指紋攻撃に対する防御の糸口としてウルフウェブサイトを提案する.ここでウルフウェブサイトとは,トラフィック上他のウェブサイトになりすましやすいウェブサイトと定義する.それぞれのトラフィックをウルフウェブサイトに擬態させることで,通信量のオーバーヘッドを最小限に抑えたまま指紋攻撃の攻撃成功率を大きく下げることができると考える.本稿では,本提案に向けた基礎実験について記述する.