著者
大谷 宗啓
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.480-490, 2007-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
26
被引用文献数
9 1

本研究は, 高校生・大学生を対象に, 従来, 深さ・広さで捉えられてきた友人関係について, 新観点「状況に応じた切替」を加えて捉え直すことを試み, その捉え直しが有意義なものであるかを質問紙調査により検討した。因子分析の結果, 新観点は既存の観点とは因子的に弁別されること, 新観点は深さ・広さの2次元では説明できないものであることが確認された。また重回帰分析の結果, 新観点追加により友人関係から心理的ストレス反応への予測力が向上すること, 新観点による統制の有無により既存観点と心理的ストレス反応との関連に差異の生じることが明らかとなった。
著者
藤井 恭子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.146-155, 2001-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
16
被引用文献数
11 6

本研究では, 青年期の重要な友人との関係における心理的距離をめぐる葛藤について検討する。具体的には, 青年が友人との心理的距離をめぐり,「近づきたいけれども近づきすぎたくない」,「離れたいけれども離れすぎたくない」というように,「適度さ」を模索して生じる葛藤である。本研究ではこの葛藤を,「山アラシ・ジレンマ」として捉え,(1) 青年期の友人関係における「山アラシ・ジレンマ」を抽出する,(2)「山アラシ・ジレンマ」に対する心理的反応の仕方を明らかにする,(3)「山アラシ・ジレンマ」とそれに対する心理的反応の仕方の関係について, 心理的距離の程度から明らかにする, ことを目的として研究を行った。その結果, 近づくことに対するジレンマ, 離れることに対するジレンマにおいて, 心理的要因がそれぞれ2つずつ抽出された。それらは, 対自的要因によるジレンマと, 対他的要因によるジレンマであると整理された。また, 生じた「山アラシ・ジレンマ」に対して,「萎縮」,「しがみつき」,「見切り」という3つの心理的反応があることが明らかとなった。さらに, 対自的要因による「山アラシ・ジレンマ」ほど, 心理的反応に結びつきやすく, その傾向は相手との心理的距離を遠く認知しているほど強まることが明らかとなった。
著者
大角 明宏 寺西 潔 北村 将司 長澤 みゆき 神頭 徹
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.22, no.7, pp.1080-1083, 2008-11-15 (Released:2009-06-04)
参考文献数
16
被引用文献数
4 3

非常に稀な肺原発の腫瘍である淡明細胞腫の1例を経験した.症例は60歳の女性で,検診で胸部異常陰影を指摘された.診断および治療目的で胸腔鏡下右肺部分切除を行った.病理所見では,淡明な胞体を有する細胞が胞巣状に密に増殖し,間質には毛細血管が増生し,類洞様血管に囲まれていた.特殊染色はPAS陽性,免疫染色ではMelan A陽性であり,淡明細胞腫と診断した.病理学的には腎の淡明細胞癌の転移も完全には否定できなかったが,腹部CT上明らかな腎病変がないことから肺原発の淡明細胞腫と考えられた.
著者
中野美代子著
出版者
講談社
巻号頁・発行日
2010
著者
比嘉 理麻
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第55回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.C18, 2021 (Released:2021-10-01)

本発表では、沖縄県名護市辺野古の基地建設の進行にともなって、熾烈化する抗議行動の最前線で、機動隊や海上保安庁の暴力により心身に傷を負い、抗議に行けなくなった人びとが、新たに勝負できる領域を模索するなかで見出した、<生き方としての基地反対運動>でも呼びうる動きを積極的に掬いあげる。現在生まれつつあるのは、狭義の政治運動におさまるものではなく、むしろ、政治の限界を踏み越えて、<生き方>と接続される基地反対運動である。本発表では、従来の「政治運動」で傷ついた人びとが、口にするようになった「これは、政治じゃない」という言葉に耳を傾け、基地反対運動を「非政治化」し、より広い領域を巻き込みながら、自らの<生き方>として展開する新たな基地反対-環境運動を理解することを目指す。
著者
吉岡 至
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.65-92, 2021-03-31

2019年2月24日、沖縄で実施された県民投票は辺野古沿岸への普天間飛行場移設・新基地建設のための「埋め立て」の賛否を問うもので、沖縄の民意をあらためて示す一つの重要な機会であった。本稿は沖縄の地方新聞である『沖縄タイムス』と『琉球新報』が県民投票をめぐる争点や沖縄の民意をどのように伝えたのか、その報道の特徴を明らかにすることを目的としている。報道内容の分析を通じて、2つの側面― 県民投票に関する「全県実施」の可能性と「反対」の民意を強調していることを、その特徴として指摘した。
著者
鈴木 睦
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.112-121, 2003-07-31 (Released:2017-04-29)
被引用文献数
1

本稿では,「勧誘」の発話や構造が具体的な状況とどのように関係するかを知るためには,(1)発話(2)談話(3)言語行動という三つのレベルに分けて分析する必要があることを指摘した.人を誘い行動を共にすることを目的として行われる勧誘は,<勧誘><勧誘の内容に関する相談><実行の手続きに関する相談>という三つの部分からなる,共通した談話構造をもつ.談話型のバリエーションは「誰が誰といつどこで何をなぜするか」という勧誘に関する情報がどの程度共有されているか,既に決定しているのか,相談して決めるのか等の状況の違いによって決まり,各部分にどのような機能をもった発話が現れるかも決まる.話し言葉の教育には,発話の機能やストラテジーだけでなく,談話の構造についての知識が重要であり,状況設定に配慮することによって,談話構造や発話をコントロールしながら,「勧誘」を体系的に提示したり,練習したりすることが可能になると考えられる.
著者
久保 儀忠 栗栖 幹典 大屋敷 岳男 寺井 桃加 中川 勉 柴山 良彦
雑誌
日本薬学会第141年会(広島)
巻号頁・発行日
2021-02-01

【目的】医薬品の一包化調剤は、薬剤管理の簡便性が高まり、患者の服薬アドヒアランスの向上につながるため広く利用されている。エゼチミブ‐アトルバスタチン配合錠は、分包または一包化した際の安定性に関する資料がないため、PTPシートのまま保存及び調剤することが推奨されている。本検討は、エゼチミブ‐アトルバスタチン配合錠を多湿の条件下で保存した際の性状の変化について製剤試験を用いた検討を行った。【方法】エゼチミブ‐アトルバスタチン配合錠は、アトーゼット配合錠®HDを対象とし、相対湿度75%、30℃の条件下で4週間保存し、質量の測定、硬度試験、崩壊試験及び溶出試験を行い、保存前後における試験結果を比較した。【結果】アトーゼット配合錠®HDは吸湿により、質量が増加した。硬度試験の結果、PTPから取り出した直後の硬度が平均21.4㎏に対し、4週間保存後は平均11.7㎏に低下した。水を試験液とした崩壊試験の結果、崩壊に要した時間は、PTPから取り出した直後の場合は平均7分20秒であったのに対し、4週間保存後は平均42分38秒に延長した。溶出試験第2液にポリソルベート80を添加した試験液を用いて溶出試験を行った結果、アトルバスタチンの溶出率は保存後に著しく低下し、エゼチミブの溶出率はやや増加した。【考察】アトーゼット®配合錠は、フィルムコーティング錠であるが、吸湿によって錠剤自体の硬度は低下するものの、崩壊試験における崩壊に至る時間の延長から、フィルムコーティングの性状に変化が起こるものと推察された。また、溶出試験の結果から、高い湿度の保存条件下において、エゼチミブ‐アトルバスタチン配合錠をPTPから取り出し、長期間保存することは望ましくないものと考えられる。
著者
若杉 晃介 長田 光世 水谷 正一 福村 一成
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.219, pp.421-426, 2002-06-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
4
被引用文献数
2

近年, 農村地域における生物多様性の低下が指摘されており, 原因の一つとしてほ場整備による湿生動物の生息地破壊等があげられている.その改善策として, ほ場整備に際して, 整備区域内に生態系保全地を設ける事例が増えつつあるが, その設置間隔等は明らかになっていない.本研究は, ほ場の湿潤な場所に生息する動物の保全地を設置する場合を想定し, 保全地の最短設置間隔の指標の一つとして, 移動能力が低いとされている湿生動物のアジアイトトンボについて移動距離を調べた.調査は栃木県宇都宮市の一般的な平地水田地帯で, 標識再捕獲法を用いて2000年8月から9月に行った.その結果, アジアイトトンボの移動距離は1.1~1.2kmであること, 出現場所は湛水休耕田の存在に大きく影響を受けていることが分かった.
著者
西守 隆
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.41-47, 2003 (Released:2005-04-12)
参考文献数
5
被引用文献数
7

It is said that postural stability means almost the same as balance, but the meaning of the word balance has changed. Previously it was the capacity to maintain a quiet position such as standing and sitting. At present, it involves the capacity to excute movement in a task in the environment. This paper asks "What kind of features does a construction of balance have?" and "What is the nature of balance testing?" In physical therapy, it is useful to perform balance testing because it is related to active daily living (ADL) in patients.