著者
江見 圭司
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.462-466, 2018-04-15

筆者はこれまで,ETソフトウェアデザインロボットコンテストでオブクジェクト指向設計の教育とモデル図の審査をおこなってきた.その経験と実績を踏まえて,オブジェクト指向設計の初心者が間違いやすいポイントをクラス図,シーケンス図,ユースケース図などをもとに解説する.
著者
秋山陽平 河西勇二 岩田昌也 高橋栄一 佐藤文明 村川正宏
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2013論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.945-952, 2013-07-03

太陽光電池パネルの寿命は一般的に20年といわれているが、工業製品である以上一定の確率で故障が発生する。しかし、現状での太陽光発電システムでは、パネル単位での異常を検出することが難しい。そのため、パネルの異常を抱えたまま太陽光発電システムが運用され、期待する発電量に達しないケースが発生している。このため、太陽光電池パネルの価格上昇や通信工事費用増加を招くことのない異常検出システムの研究開発が急務である。これまでに、産業技術総合研究所では直流電力線を利用した独自の電力線通信方式を用いて、パネル毎にデータ通信装置子機を実装し、発電情報の状態モニタリングを可能としている。今回我々は、データ通信装置子機において計測された膨大な発電情報をネットワーク上の仮想データベースであるクラウドサーバ上に集約・蓄積させることで、ブラウザ上でパネル単位での発電状況を逐一観測可能な状態モニタリングと早期に異常を検知する異常検知システムを開発した。さらに、一枚のパネルを遮光することにより擬似的に異常パネルを作成し、開発したシステムを用いて評価実験を行った。
著者
ディプタラマ 石黒 裕也 成澤 和志 篠原 歩 ジョーダン チャールズ
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.154-161, 2015-10-30

一般化三並べはFrank Hararyによって提案された2人完全情報ゲームであり,碁盤面上に先手後手が交互に石を1つずつ置き,あらかじめ定められた動物を先に作ったプレイヤが勝ちというゲームである.2人完全情報ゲームの勝敗判定問題は与えられたゲームに対して,先手必勝,後手必勝または引き分けとなるかを判定する問題である.オセロや五目並べなど,多くの2 人完全情報ゲームの勝敗判定問題はPSPACE完全であることが知られている.それに対して,代表的なPSPACE 完全問題としてQuantified Boolean Formula (QBF) に対する充足可能性問題(TQBF)が存在し,TQBFを高速に解くプログラム,QBFソルバが開発されてきた.本研究では一般化三並べの拡張であるGTTT(p,q)およびTorusGTTT(m,n)の勝敗判定問題をTQBFに帰着し,QBFソルバを用いてゲーム勝敗判定問題を解く.ゲームのパラメータによっては既存のゲームの探索手法より,QBFソルバの方がより速く勝敗判定問題を解けることが見られた.
著者
鄧 紅
出版者
北九州市立大学国際教育交流センター
雑誌
北九州市立大学国際論集 = CIEE journal, the University of Kitakyushu (ISSN:13481851)
巻号頁・発行日
no.13, pp.55-80, 2015-03

「日本における儒教国教化論争について」の第二弾として、まず「福井再検討」以後の主な動向とみられる「渡邊2005」および「福井2005」の合評会部分を検証し、合評会の学術性の欠如を指摘する。そして渡邊「儒教国家論」について、五つの指標を中心にくわしく検証し、その内蔵したトリックを暴露し、論理学的錯繆を批判する。
著者
植田 康孝
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
vol.27, 2017-03-31

「シンギュラリティ(技術的特異点)」とは,人工知能が人間の能力を超える時点を言う。ヒトは自らの学名を傲慢にもホモ・サピエンス(賢明なヒト)と名付けたが,ホモ・スタルタス(愚かなヒト)になる瞬間である。近年の急激な技術進化により「シンギュラリティ」はもはや夢物語とは言えなくなっている。英オックスフォード大学のニック・ボイスロム教授の調査では,「シンギュラリティ」が到来しないと回答した人工知能分野の研究者は僅か10% に過ぎなかった。厚生労働省発表に拠れば,2016 年に生まれた子供の数(出生数)が98 万1,000 人となり,初めて100 万人を割り込んだ。出産に携わる20 ~ 39 歳の女性は2010 年(1,584 万人)から2014 年(1,423 万人)の4 年間で160万人以上減るなど構造的な問題であり,今後も進展する。団塊世代のピーク1949 年には269 万,第2 次ベビーブームのピーク1973 年には209 万人もいたから,半分以下の激減である。猛スピードで少子高齢化が進展する日本では,特定職種における労働力不足が深刻化している。人手不足を解消する,という社会的要請に応じる形で,人工知能の浸透が進む。人工知能に置き換えられる労働人口の割合はアメリカ(47%)やイギリス(35%)と比べて,日本(49%)が最も高い。これは,労働者が比較的守られて来た日本で,置き換えが遅れていたためである。人工知能の進化によって,産業構造や人の働き方が激変する。伴って,近い将来,私たち生活者の価値観や生き方が大きく変わるようになる。人工知能によって労働や生活における問題の大半が解決された場合,人間はどのような悩みを持つ存在になるのか。人工知能の進化は,人間の拠って立つ軸,例えば,信念や価値観,行動の判断基準を変えることを迫る。日本人は子供の頃から「働かざるもの食うべからず」と教えられ,「勤勉」を尊ぶ価値観が日本人の精神には深く根付いて来た。しかし,2016 年女性人気が爆発した深夜アニメ「おそ松さん」は,6 人の兄弟が揃って定職に就かず,遊んで暮らす「脱労働化生活」を送る。全員同じ顔と性格を持つ6 つ子が登場していた原作に対し,それぞれに細かくキャラクタを設定し声優の割り当てを別としたことにより,キャラクタごとに「推し松」と呼ばれる熱狂的な女性ファンが続出し,社会現象となった。人間は,2030 年に到来すると予想される「シンギュラリティ」以降には,仕事を減らすための人工知能が増え,「おそ松さん」的脱労働化生活を送るようになる。「おそ松さん」的ライフスタイルとは,ある程度,物質的な欲望を満たした場合,「モノ」の充足を超えて,文化や芸術,旅行,あるいは自分自身の想い出など,「コト」についての関心を増やすことである。政府がすべての国民に対して最低限の生活を送るために必要とされる現金を支給する「ベーシック・インカム」制度の導入により,お金のために労働する,お金を使って消費するという生活から少しでも自由になることを可能にする。社会のために必要な「仕事」を人工知能が肩代わりしてくれるのであれば,賃金が支払われるだけの「労働」を行うことを中心とした生き方よりも,個性を大切にする生き方の方が余程「人間らしい」と言える。過去の常識に振り回されることを防いで,創造的な行動を行うことが,「おそ松さん」的「脱労働化生活」を実現することである。歴史家ホイジンガが説いた「人間はホモ・ルーデンス(遊ぶ存在)」の体現である。
著者
稲葉 一浩
雑誌
夏のプログラミング・シンポジウム2012「ビューティフルコード」報告集
巻号頁・発行日
pp.75-82, 2013-01-11

アルゴリズムやデータ構造は,速度やメモリ消費など効率面での評価が第一になされることが多いが,「美しさ」もまた,その価値を計る重要な指標である.なかでも,神秘的・魔術的な美しさではなく,わかりやすい美しさ,言い方をかえれば,キーアイデアさえつかめば誰でもいつでもどこでも応用できる類いの,「近寄りやすい・親しみやすい」美しさには価値があろう.本稿では,筆者が今までに出会ったアルゴリズムの中から,そのような親しみを感じたアルゴリズムを紹介し,また,いかにそれらのアイデアに親しんで異なる問題に転用したかの実例を論ずる.
著者
岡崎 まりえ OKAZAKI Marie
出版者
岩手大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
岩手大学大学院人文社会科学研究科研究紀要
巻号頁・発行日
vol.17, pp.127-147, 2008-07-01

ドイツには,目に見える「壁」と目に見えない「壁」がある。前者は,ドイツがまだ東西に分断されていた頃の国境のことであり,後者は,心の中に存在する「壁」である。17年前,ニュースはベルリンの壁の開放と長年わけ隔てられた同胞との再会に歓喜する人々の姿を,逮日放送した。だが,人々はあれほど喜んでいたことを忘れ,今心の中に,再び東西ドイツを隔てる壁を,以前の何倍もの高さで築いていると感じずにはいられない。 去年,日本に交流事業でやってきたドイツ・ハンブルクの青年たちは,「汚い」,「貧しい」,「(経済的に)遅れている」といった否定的な形容詞で東ドイツのイメージを語り,「親がそう言っていた」とか「学校でそう習った」と答えた。統一して17年も経つとはいえ,東西ドイツ人の間には,親から子に受け継がれるような根強い偏見があって,どうやらそれが「心の壁」の主要因となっているようだと,私は思ったのである。 今回の研究の目的は,この「心の壁」という問題を紹介し,そうした問題がなぜ,どのように生じているのか,そのメカニズムを考えることである。そして単なる制度的な統一ではなく,「心の壁」を解決しての真の統一を実現するために何ができるか,考えてみたいと思う。
著者
新谷 敏朗
雑誌
第77回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, no.1, pp.203-204, 2015-03-17

トランプの一人遊びを意味するソリティアにはいくつもの種類があるが、その中で台札から始まる列の完成を目的とするものについて、ひとつの仮説を提示する。対象は、「籠城」とその変種である。これらはすべてのカードを表向きにした状態でプレイするので完全情報ゲームである。特定の初期局面を根とするゲーム木を作成することによって解を求めることができる。「籠城」について計算を行ってみた範囲では、場に空の列が3列以上できた場合で解が存在しない場合はなかった。つまり、「空列の個数が3以上になれば、成功可能である」という性質が成り立つのではないかと推測できる。このことは人間がプレイする際に大きな指針となると考えられる。
雑誌
立教經濟學研究
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.167-172, 2018-01
著者
松本鮎美 ウ小軍 松浦宣彦
雑誌
画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2011)論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.683-690, 2011-07-20

動的システムをモデル化する際には,一つのシステムに対して一つのモデルを用いるのが一般的である.しかし,このような事前モデルを用いて観測データからシステムの状態推定を行う場合,観測条件の変動などにより推定誤差が大きくなる傾向にある.これは,観測データの欠落や変動のためである.本研究では,観測データの変動によって起こる推定誤差の低減を目指し,事前モデルを構築する際に,学習データから部分的なデータを取り出し,全体データと部分データのそれぞれに対してモデル化を行う.さらにそれらの複数のモデルに対して関連付けを行うことで,一つの動的システムに対して階層的なモデル構築を行う方法を提案する.本論文では,この階層的モデルを人物の3次元動作推定に適用し,観測データの欠落や観測条件の変動にも安定して3次元動作推定が可能であることを確認した.
著者
鵜島 三壽 中村 真 Mitsuhisa Ushima Makoto Nakamura
出版者
関西外国語大学・関西外国語大学短期大学部
雑誌
研究論集 = Journal of Inquiry and Research (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.102, pp.131-151, 2015-09

シルクロードに関する無形文化遺産として、中央アジアから西アジアにかけての分布するムカーム(マカーム)をあげることができる。これは、多様な旋法による旋法音楽で、長大な組曲形式をとることが特徴である。ムカームに用いられる楽器は多種多様で、形態はもちろんのこと、多くの点で共通点がある。ムカームが広範囲に分布するだけに楽器にも共通点があるのだが、これまで詳しい楽器製作工程は報告されていない。 今後研究の深化をはかるには、技術的な視点を持ち、製作過程を通した楽器それ自体の検討が必要である。本稿では弦楽器の習得のみならず、弦楽器製作でも基本となるドゥタールを取り上げ、ウズベキスタン国立音楽院伝統楽器製作修復工房でのドゥタール製作を紹介する。ここで製作される楽器は、学生からプロの演奏家までが使用しているため、ウズベキスタンにおける楽器製作の全体像をつかむ上でも定点とすべき位置にある。
著者
岸田 依子
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国際日本文学研究集会会議録 = PROCEEDINGS OF INTERNATIONAL CONFERENCE ON JAPANESE LITERATURE (ISSN:03877280)
巻号頁・発行日
no.22, pp.61-78, 1999-10-01

Socho Shuki, a travel diary of the renga master Socho, covers a span of time of six years, starting with the 2nd year of the Daiei period (1522). It describes Socho's two trips between his home in Suruga and the capital, and his journeys to Echizen and Omi―the details serve well an inquiry into the life of medieval renga masters.The trip between the countryside and the capital implies the existence of a border, but this is itself divided into a multitude of borders. The last part of the Muromachi period witnesses a strengthening of the shugo system (by which each of the shugo daimyo was ruling over a part of the country) controlling the whole country―the control over land and people belonged exclusively to the daimyo, who were thus giving their possesions a status very close to that of a small country in itself. This is why in Socho's travels the borderlines between country and country are given more attention than the natural borderlines of mountains, rivers, peaks and slopes; and also this is why the renga poems in the diary are, more than often, offered not to the gods of the mountain or of the road, than to the respective country rulers. Renga masters, being semi-priests, differ from the ordinary people―they belong to the border between the sacred and the profane; their renga seances in the ruling daimyo castles and residences can be viewed as having a magic function of sanctuary. In this age of unceasing strife over and alteration of borderlines, when countries were in antagonist positions, renga meetings, based on common rules of composition as pre-scripted by yoriai and shikimoku, were a place where a different type of order and associations was brought about through the unification and harmonization of creative powers. As a meeting place as well as on the level of the creation process, renga was an art that brought the cosmic interrelatedness of things and the harmony to light.The journey of Socho Shuki starts in the 75th year of Socho's life. It was a trip intended to make him spend his last days in the Syuon'an in Takigi related to Ikkyu, that is, for him personally it also was a trip from his birthplace to the place he wished to die in, the place he wanted to make the departure point to the other world. This paper is an attempt to look at these various borders and at their symbolic meanings.
著者
高久 健二
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.151, pp.161-210, 2009-03-31

朝鮮民主主義人民共和国の平壌・黄海道地域に分布する楽浪・帯方郡の塼室墓について,型式分類と編年を行い,関連墓制との関係,系譜,および出現・消滅の背景について考察した。その結果,楽浪塼室墓の主流をなす穹窿式塼天井単室塼室墓については,四型式に分類・編年し,実年代を推定した。さらに,諸属性の共有関係からその他の塼室墓との併行関係を明らかにした。これらの変遷過程をみると,穹窿式塼天井単室塼室墓1BⅡ型式が成立・普及する2世紀後葉~3世紀前葉に大きな画期があり,その背景としては公孫氏による楽浪郡の支配と帯方郡の分置を想定した。これらの系譜については,中国東北における漢墓資料との比較検討の結果,典型的な穹窿式塼天井塼室墓は,とくに遼東半島とのつながりが強いことを指摘した。塼併用木槨墓については,木槨墓から塼室墓へと変化する過渡的な墓制ではなく,塼室墓の要素が木槨墓に導入された墓制であることを指摘した。これに基づいて塼併用木槨墓が造営された1世紀後葉~2世紀前葉に,すでに塼室墓が出現していたのではないかという仮説を提示した。石材天井塼室墓と横穴式石室墓については,いずれも穹窿式塼天井塼室墓と併行して造営された墓制であり,とくに石材天井塼室墓は塼天井塼室墓から横穴式石室墓への過渡的な墓制ではなく,横穴式石室墓の天井形態が塼天井塼室墓に導入されたものと考えた。さらに,これまで不明確であった楽浪・帯方郡末期~滅亡後の状況について,穹窿式塼天井塼室墓・石材天井塼室墓・横穴式石室墓の分布状況や銘文資料などから検討した結果,3世紀中葉以降は平壌地域から黄海道地域へ在地豪族が移動し,これに代わって平壌地域へ新興勢力が流入しており,郡県体制が大きく変容していった時期であることを明らかにした。